まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちら

こんにちわ♪
さて、ボスキャラに見せかけて、
あっという間に、見せ場もなく倒された、ラナティスさん(まて!)
もう少し、ガブリエフ屋敷にお付き合いくださいなv

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白銀の継承者  第7話    ~セリナ、その真実~

静かに、塵と貸し、完全に消滅してゆくそれを見つめつつも。
その白銀の瞳はまだ揺るがない。
そのまま、静かに、部屋の奥のとある一点を見つめる。
その表情は、どうみても、三歳前の子供の表情ではない。
「な…何か…すごいプレーシャー感じません?(汗)」
精神世界から傍観していたゼロスでさえ。
その威圧感に思わず退きそうになる。
「……だね。」
いいつつも、同じく精神世界面から、
ゼロスと同じく傍観している、藍色の髪に茶色い瞳の男性もまた。
多少、いやかなりの威圧感を感じて、本体そのものに震えがくる。
そして、ちいさく。
「……これなら、あれに対抗できるかな?」
ぽそりとつぶやくその台詞に。
「……『あれ』とは何ですか?グルゥさん?」
首をかしげるゼロスに。
「いや、たいしたことじゃないよ。
  あの、今滅ぼされたラナティスの父親が以前召喚した、
  とある存在がこの屋敷の奥にいるってだけだし。」
何でもないようにぱたぱたと手を振っている。
「……え?この奥って……」
そういえば、この屋敷の瘴気は何処か違う。
「―― でてきなさいよ?それとも…こちらからいこうか?」
奥を見つめて静かに言い放つ。
ユラ……
セリナの見つめるその先に。
やがて、白銀色の光に全身を包んでいる一つの影が躍り出る。
その白銀の光の中にある影は…深遠の闇。
ドン!
地の底から、振動がこの屋敷全体を突き動かしてゆく。
「……なるほど。貴様が、あの新たな世界の……」
そういいつつ、白銀の光が収まってゆくその後には。
深遠の闇の髪の色をし、深い闇の色をした瞳の端整な顔立ちの髪の長い男性が一人。
「―― きんいろのおねいちゃんからきいてたとおりだね。……ねえ?カルティナ?」
セリナの問いかけに。
「くくくくくっ。まさか、こんなところで、新たな世界の神魔の王に出会うとはな……くく。」
その口がにやりとつりあがる。


「……って!?何であの問題児のカルティナがいるんですかぁ!?」
ずざざ!
思わず、アストラルサイドにて、退いてゆくゼロスに。
「ああ、何かいたんだよね。……まあ、僕程度じゃ、どうにもならないし。
  別にこっちに被害しかけてこないから。ほうってたんだよ。」
何でもないようにさらりといっている藍色の髪をしている男性グルゥ。
「そういう問題ですか!?分かってます!?
  グルゥさん!?あれがここにいるということは!?
  下手したら、僕達の手でなくて、あれに虚無に導かねられないんですよ!?」
「でも、勝てないし。今の魔王様じゃ。」
「そ~いう問題でもありませぇぇぇぇん!」
怒鳴るゼロスの気持ちは当然であろう。
「それより…ゼロス?今、あのカルティナが、
  あの子のことを、『新たな世界の神魔の王』っていったけど?」
にこにこにこ。
にこにこしつつ、混乱しているゼロスに話しかけているグルゥ。
「……え?」
言われてみれば・確かにそういったような気がする。


「あたらしいせかいかどうかはべつとして。
  ……ここのひとたちくるわせたの、カルティナでしょ?
  ちしき、しってるよ?あなたのこと?」
セリナが誕生するにいたり。
母なる体内で、その混沌の中で埋め込まれた知識の一つ。
カルティナ。
深闇の王、カルティナ。
かつては、とある世界の魔の王であった彼は。
今では、他の世界を無にと化すことを喜びとし。
他の世界に入り込んでは、その世界を壊滅させている。
という、神、魔族の間では、かなりのお尋ね者。
しかも、その滅ぼした世界の力を我が身に取り込んで。
さらに力をつけているのだからして。
神、魔王たちの間では
どうやら、力をためて金色の母にと戦いを挑む気らしい。
という噂が伝わっていたりもするが。
事実、そのつもりだと、そう、直接ではないが、知識にそう叩き込まれている。
うまれる前に。
そして、うまれてからも。
「せりなのたいせつなパパのかぞく、……こわした。」
そういう瞳が、さらに白銀色にと染まりあがる。
「それは、誤解ですねぇ。そもそも、この私を呼び出したのは、ここの人間なんですよ?
  目的のためなら、この世界を差し出すという契約で♡」
そういって、にっこりと笑うカルティナに。
「……でも、こわしたのはそっち!」
「おっと!」
どおおおおおおんんんん!
目に見えない、力と力のぶつかり合いが。
その場にて巻き起こり。
見えない衝撃波が、辺りに荒れ狂う。


「ちょ!?あのセリナちゃん…実力…相当なものですよ!?」
「とと!ゼロス!ここは一旦避難しないと……こっちが滅びそうだから、僕は逃げるよ!」
「あ!グルゥさん!卑怯です!」
シュン!
あわてて、その場から、逃げ出す二人の姿。


衝撃波で半分気絶していた。
視界の端に、セリナが戦っているのが見える。
……セリ……ナ……
名前を呼ぼうとして、マルスは、完全にと気を失った。


「なるほど。白銀の世界の新たな継承者。
  あの空間の新たな王……というわけですね。あなたは。」
かつて、自分が存在していたその空間。
そこに出来た新たな宇宙の、その光と闇の王。
目の前にいる少女が。
その新たな任に命じられた魂だと。
力の波動で理解ができる。
「セリナのうちゅうはまだはってんとちゅうだもん。
  それまでは、セリナ、じがといしきとちからのつかいかた。
  ママとパパたちのもとでまなびなさいって、あのきんいろのおねいちゃんがいったもん!」
それが、条件。
自分が彼等の娘に生まれてくることの。
それが何を意味するのか、セリナにはよくわかってないが。
こことは異なる、新たな宇宙。
そこに存在しかけている、新しい宇宙と一般に呼ぶにふさわしい、別名、大銀河系。
大銀河系の一つに、一組またはひとつの光と闇を統べる王が存在する。
セリナは、よく理解ができていないが。
生まれながらにして、その世界の一つ。
白銀の世界の光と闇を司る王。
その任を金色の王から命じられ、この世に生を受けているのである。
つまり、簡単にいえば、人としての役目という寿命が終わったそのあとに。
正式にその任につく定め。
当の本人がその重みをまったく理解してないのが、かなり問題であるといえばあるのだが。
金色の女性。
その言葉に目を据わらせる。
「いずれは、私が、ロードオブナイトメアに成り代わりますよ……」
かつて、部下だったというのに。
完全にその本質を理解してない愚か者というのはこういうやつのことを言う。
というその典型。
混沌そのもの、その全てを抱擁して作り出している、
その金色の王に成り代わろうとしているこの彼…カルティナ。
「そんなことにはならないよ?♡」
にっこりと、セリナは笑って。
その手に、白銀色の剣を取り出していた。

ドン!!!!!!!!!!!!!!!

すざましい揺れが、その刹那。
屋敷全体を覆ってゆく。


「……どうやら決着・・ついたようですねぇ……」
紫の目を薄く開いて、空間に浮かんでいるゼロスに。
「……あ、ゼロスおじいちゃん。」
そんなゼロスの目の前で。
目をつむり、瞬時に髪の色や瞳の色を元に戻しているセリナの姿。
「あのですねぇ!ゼロスです!ゼ・ロ・ス!いやぁ、しかし、いいものみせてもらいましたv」
まさか、あの問題児を。
こてんぱんにしとめるなどと。
分がないと判断したカルティナは、逃げようとしたが。
すぐさまセリナに捕らえられ。
その精神そのものを、小さなオーブの中にと封印された。
そのオーブを手にのせて、浮かばせたところ。
刹那、それが消え去り、どこに運ばれというか…渡されたのは。
それは、セリナのみが知りえる事実。
壊れた屋敷は、結界の中であったがゆえに。
本来のものとは変わりがない。
「あ、それよりマルスおじいちゃんが!」
あわてて、壁にとよりかかっている、マルスをゆすり起こしてゆく。


「まるすおじいちゃん!」
名前を呼ばれて目を開けると。
そこに心配そうに覗きこんでいるセリナの顔が。
「……ん?あいつはどうした!?」
そこに、人の気配がまったくしないことに気付いて。
セリナの頭をなでつつ、言っているマルス。
「セリナちゃんがやっつけちゃいましたよ。
   いやぁ、さすがにリナさんとガウリイさんの娘さんだけのことはあります♡」
まあ、まさか……異世界の王の任をあの御方から、命じられているとは……
……思わぬ収穫でしたね。
これは。
などと、心でつぶやきつつ、ゼロスがにこにこと答える。
「それはそ~と、そこにいる、おにいちゃん。
  ……いえのひとたち、もとにもどして……」
きっと、紅の瞳に涙をためて。
ゼロスの後ろの空間を睨みつけているセリナ。
ゆらりと。
セリナの声にしたがって、その場にと出現するのは。
藍色の髪に茶色い瞳の男性。
「おや、気付いてたの?セリナちゃん♡」
にこにこと、まったく、動じずにあっさりと薄情する。
「……覇王神官か?」
……どで!
思わずゼロスとグルゥ、二人仲良く床にとキスをする。
「ど~して説明してないのに分かるんですか!マルスさん!」
「わかるだろ~が!気配で!」
『わかりません!普通は!』
マルスのあっさりした答えに。
同時にゼロスとグルゥ、二人して突っ込んでいた。

「まあ、いいけどねぇ。僕もまだ滅びたくないし。
  ど~せ、あの馬鹿上司のいいつけで、ここにいただけだし。」
にこにこといいつつ。
ふわりと、手を横にとかざす。
その刹那。

ざわざわざわ……
今まで、人の気配などまったくなかった、この屋敷に。
人々の気配が戻ってくる。

ここにいた人々の全ては、
グルゥの実験材料として、とある空間に閉じ込められていたのである。
まあ、当初より半分以下に人が減っていたりするのは、しかたのないことだろうが。

ふと、正気に戻った一人の老人が。
広間にいる、セリナやゼロス、グルゥ、そして、マルスにと気付いて、声をかけてくる。
「……何だね?君たちは?グルゥ…殿?ラナティスはどうした?」
そこに、
いつもグルゥの横にいたはずの、ラナティスがいないのに気付いて言っているのは。
このガブリエフ一族の長老の一人。
「ああ、彼ならどこかにいきましたよ。止めるまもなく。」
にこにこといっているグルゥ。
……嘘ではないもんv
だって、僕が止めるまもなく滅んで混沌に旅だったんだし。
心でそう付け加えているが。
にこにこといって。
「というわけで、僕も雇い主がいなくなったので。おいとまそのうちしますけど。
  あ、そうそう。こっちの神官は、僕の知り合いでゼロス。
  でもって、この二人が、ガウリイさんの義理の父親であるマルスさんと、
  ガウリイさんの娘のセリナちゃんですよ。サールさん。」
ガブリエフ一族の長老の一人、サール=ペレ=ガブリエフ。
その白髪の混じった黒い髪が印象深い。
ついでにいえば、あごひげと口ひげを一緒に伸ばし、白い髭を蓄えていたりもするが。
「……何?」
グルゥの説明によって、サールの目が据わる。
「まあ、こんな所で立ち話というのも何ですし。どうです?
  とりあえず、会議室で話し合いませんか?♡」
にこにこと、人のよさそうな笑みを浮かべて提案してくる、ゼロスの言葉に。
サールを始めとする一族の全ては全員がうなづいていた。


「まあ、何があったのかは、後でそこのグルゥから問いただすとして。
  ……ガウリイの娘といったな。おまえは。」
完全に見下し軽蔑しきったその眼差し。
「まったく。父親が父親なら、子供も子供だ。
  よりによって、何処の馬の骨ともわからない女と結婚しおって、
  こんな子供までこさえておいて。」
一族の別の一人が、ぎろりとセリナを睨む。
彼女達を招待したのは、ラナティスだと彼らは説明をうけたが。
その肝心のラナティスはいないわ。
ふと気が付いたら、わけのわからん娘の子供がいるわで。
完全に不機嫌極まりなくなっている一族の主たる人々。
「……おい!それは、聞き捨てならねぇな!」
さすがに、こめかみをぴくつかせて、マルスが抗議の声を上げるが。
「まあ、それはいいとしよう。ここは、穏便に。
  お前たち家族が隠している光の剣。あれをこちらに戻してもらおうか?」
そういうサールの言葉に。
全員の目が怪しく光る。
全員の目が物語っている。
断ったら、この娘を人質に、ガウリイにもちかければいいだけのこと。
……と。
「あのな。あれはもうここにはないって。」
あきれたようにつぶやくマルスに。
「ふん。元の世界に戻しただと?そう手紙が来たがそんなことがあるものか。
   あれは、代々、我が一族に伝わるもの。我が一族が正統なる持ち主に他ならない。
   そんな品物を他人にまかせられるか。」
『そうだ!そうだ!』
……ぷち。
さすがのセリナも、この言葉には少し頭にきて。
セリナの中で何かが切れる。
この人達は、全員。
父を悪くいい、そして……母まで。
それがセリナには許せない。
「……だったら。じぶんたちでこうしょうすれば?」
すっと見開くその目が、一瞬、白銀色にと変化する。
「あ…あの?セリナちゃん?」
―びくり。
大の大人たちが、いきなり雰囲気が変わったセリナの威圧感に押されてたじろぎ。
ゼロスがふと気付いて声をかけるが。
「……そんなにいうんだったら。あわせてあげるよ。―― おいで。ゴルンノヴァ。」
碧い瞳が白銀色に一瞬、煌いたかと思うと。
すっと、天井に向かって、手を突き出す。

完全に他人を濃く出し、あまつさえ本質もわかっていなくて、
リナとガウリイを悪くいう、愚かもの。
セリナの目にはそう映る。
いや、事実そうなのだが。
いくらまだ、セリナが幼い子供とはいえ、精神が成長途中とはいえ ――
―― そんなセリナにも分かるほどの愚かな人間達。
―― そんなわからずやには、身をもって、分からせるのみ。
母の教育閑念でもあり、ゼフィーリアの土地柄の特徴でもある。
〃物分りの悪いものは、力とその身をもってわからせるのみ〃
その概念に基づいて行動するのみ。
このセリナ、さすがにゼフィーリア育ちのことはあり、その辺りのことは容赦がない。

「―― おいで。ゴルンノヴァ。」
セリナがいったその直後。

・・・どで!

何かが落ちてくる音と、一族が囲んでいる、
テーブルの丁度中心の頭上の空間がねじれ、ちょっとした渦が出来上がったかと思うと、
そこから一つの人影が、音をたててテーブルの中央にと落ちてくる。

『な゛!?』
いきなり、天井から人が落ちてきたのである。
……事実は天井からではないのだが。
一族の目にはそう映る。
まさか、何もない空間から出てきたなのどとは思えないらしく。
そのまま天井を睨む人々が数名。
だが、当然のことながら。
天井板は一つもどこかが外れている様子など見られるはずもなく。
小さな驚きの声を上げる人々の姿。

「……って!?ここ、何処!?」
がばっ!
テーブルの上にと起き上がり、周りをきょろきょろと、あわてて見渡しているのは。
見た目、十代くらいの漆黒の髪をショートカットにし、くりっとした瞳の男の子。
いきなり違う場所への移動。
驚きながらも回りを見渡し、そこに。
自分がいる、どうやらテーブルの上らしいが。
その周りに座っている人々の面々と気配に気付く。
「……ってぇ!?ガブリエフの一族の人間達!?
  ってことは、ここは赤瞳の魔王ルビーアイ様の世界!?どうしてこんなところに!?」
頭を抱えて絶叫する。
確か自分は仕事の途中だったはず。
何かに呼ばれて引っ張られる感覚とそれと同時に。
いきなり、ここにつれてこられたというか、ここに来ていた。
「ああ!まだ仕事が!戻らないと!」
とりあえず、こんな所に長居をするわけにはいかない。
そのまま、呆然とする一族達の目の前で、ふわりと宙にと舞い上がる。
『……え゛!?(汗)』
さすがに、目の前で呪文も唱えずに、
いきなり浮かび上がるその少年に、数名の一族の人々が絶句していたりするが。
どうしてこんな所に自分がいるのか分からないが……
とりあえずはまだ仕事の最中。
とっとと、戻って仕事の続きを。
そうおもいつつ……
――ビタン!!!
異空間移動を行おうとして、見えない力に引っ張られ、そのまま床にとずり落ちてゆく。

異空間移動をしようとしたその刹那。
見えない壁に叩きつけられただけでなく、
何かの力によって、足をつかまれてバランスを崩した。
「な゛!?」
あまりのことに混乱しつつも、その力の源を捜す。
普通できることではない。
彼の力を妨げるなどと。
彼より力のある存在でない限り。
そんな驚く彼の横に、ちょこんと座り込み。
「あのね?ゴルおに~ちゃん?
  このひとたち、ゴルおにいちゃんの、しょゆうけん、しゅちょうしてるの。
  せつめいしてもわかんないみたいだから、
  ゴルンノヴァおにいちゃんからちょくせつ、せつめいしてくれない?♡」
目の前でにっこりと、ちょこんと座って、話しかけてくるのは。
栗色の髪に碧い瞳の少女。
何となく、この雰囲気には覚えがある彼。
特にそのまとう気配に。
にっこりとそう微笑みながらいっている割に。
「え…えと……」
思わず口ごもる。
何が何だかわからない。
とりあえず文句を言おうとするが。
「……してくれるよね♡」
ぞくり。
こんな子供相手に本気で悪寒が走った。
体が硬直する、そういうこの少女の目が笑ってないような、
気がするのは…彼の気のせいであろうか……

「……何だね?君は?」
呆然とする一族の中で、まず一番初めに口を開いたのは、サール。
不機嫌極まりなく、そこにいる少年を睨む。
「おや?もしかして、サールさん。ご存知ないんですか?
  ここにいる皆さん、所有権を主張なされているんだから。当然ご存知でしょうに♡
  あなた方のいうところの『光の剣』まあ、人間がそう呼んでいるだけなんですけどね。
  ゴルンノヴァ様ですよ。お久しぶりです。ゴルンノヴァ様♡」
かたんと。
席をたち、にこにこと、腕を曲げて深くお辞儀をしているゼロス。
「おや、本当にお久しぶりですねぇ。ゴルンノヴァ様、
  たしか冥王様が、闇を撒く者ダークスター様に返却されて以降じゃないですか?
  こちらの世界に来られたのは?ゴルンノヴァ様?」
こちらもまた丁寧に腕を曲げて挨拶しているグルゥ。
「……?セリナ、誰だ?そいつは?」
やけにセリナが親しく話しかけているので、マルスが眉をひそめて問いかける。
……はっ!
まさか、セリナの好きなやつじゃないだろうな!
そんなのは認めんぞ!
などと心で思いつつ。
「あのね、こことはことなる、いかいのまおう。
  だ~くすた~のふくしんのひとり。ゴルンノヴァおにいちゃん。
  あのね?ガウリイパパがいぜんつかってたけんだよ?」
そういって、そこにいる少年を指差しているセリナに。
「ああああ!その気配!思い出した!
  君…もしかして、あのリナ=インバースと、ガウリイ=ガブリエフの娘!?」
ずざっ!
思わず壁際に退いているその少年の名前は『ゴルンノヴァ』
別名『烈光の剣』ともいい、この世界では『光の剣』として。
名前が知られていた・・異世界の魔王の腹心の一人。
「はっ!まさか、君が僕をここに召喚したの!?
  ま……まあ、『あの御方』の力を使えるあの……
  …リナという人間の娘だと……ありえないこともないけど……」
などと、いきなり一人でぶつぶつ言い始めていたりする。
「あのおかた?って、きんいろのおねいちゃんのこと?」
『いわないでくださいぃぃぃぃ!!』
セリナの言葉に、ゼロス、グルゥ、ゴルンノヴァ。
三人の声が完全に悲鳴に近い台詞で一致していたりする。
「って!?どうして僕がここに呼ばれたんですか!?
  というか、どうして異世界の腹心である僕を召喚できるんですかぁ!?」
完全にパニックになっていたりする。
ぽん。
そんなゴルンノヴァの肩にと手を置いて。
「いやぁ、ゴルンノヴァ様。どうやら、この子。
  あの御方から、白銀の王の任を受けてるようだからじゃないですか?」
にこにこと、楽しむように説明するゼロス。
「……ちょっとまて!」
「う~ん。さすが異界の腹心の負の感情vなかなかいけるよvゼロスv」
「そうですね♡」
「こら!人の負の感情を勝手に食べるな!」
狼狽するゴルンノヴァを尻目に。
にこにこと会話をしている獣神官と覇王神官の二人に、抗議しているゴルンノヴァ。
「……で?その子は何ものだ?勝手に人の家に入ってきて……」
完全に忘れ去られているサールが不機嫌にと問いかける。
「だからね?ひかりのけんってよんでたおにいちゃん、ほんにん。
  あのね?ゴルンノヴァおにいちゃん?
  このひとたちね?おにいちゃんのしょゆうけん、しゅちょうしてるの?どうする?」
にこにこと、笑いながら言っているセリナに。
「……いやだね。それでなくても、僕は、ここで千年以上。
  人間なんかにこきつかわれていたんだからね。」
憮然として言い放つ。
「そうはいいますけど。…たしか、ここに飛ばされたショックで記憶喪失になって。
  ここの世界の人間と結婚し……」
にこにこと笑みを崩さないままいうゼロスの言葉に。
「それをいうなぁぁぁぁあ!!!!///」
真っ赤になって怒鳴るゴルンノヴァ。
事実、なぜ、人間の家に、異界の魔族が伝わっていたかというと。
実に単純極まりなく。
……この世界に飛ばされたショックで。
魔族なのに記憶をなくし、そのまま人として生活し。
ここで家庭をもったという過去。
このゴルンノヴァにはそういう経緯がある。
ぜいぜいと息を切らせつつ。
「ともかく、僕はもうガブリエフ一族とは関係がない。
  それでなくても、今、闇を撒く者ダークスター様の手伝いで忙しいんだから。
  何しろ千年以上。あっちを僕留守にしてたから……仕事がかなり残ってるんだよね……」
そういいつつ、溜息一つ。
「だから、もうこんなところで、ただの剣の振りする必要なんかないし。」
そういって、ぱたぱたと手をふる。
「……何をいっているんだ?この少年は?」
完全に分かってないサールやほかの一族達が不満の声を漏らす。
「……みせないとわからないみたいだよ?みせてあげようよ?おにいちゃん?」
にっこりとそういうセリナに。
「いやだ……うっ!(汗)」
いつのまにか、セリナの手に握られている黒い刃が。
つう……
と、ゴルンノヴァの喉元を伝っている。
器用にも、汗を大量に具現化させて、ぎぎぃ……
と、セリナの方を向くと。
「せつめいしてくれるよね♡」
にっこりとそう剣を突きつけられて言われては……
断ることなどできはしない。
彼は、この剣の正体が何であるのか知っている。
伊達に、ずっと、リナの側で見ていたわけではない。
始めてリナに使用されたときなどは、こともあろうに、
不完全の呪文を自らに上乗せされてしまったこともあったりするがゆえに。
はぅ。
溜息を一つつき。
「わかったよ。」
ふっ。
そういって、手を前にと突き出す。
と、その手が一瞬揺らぎ。
『―― な゛!?それは!?』
その場の人間全ての驚愕の声がその部屋にと充満する。
その少年の片手は、彼らがよく知っている品物にと。
一瞬のうちに変化を遂げていたがゆえに。

光の剣。
その姿をどうして見間違うことがあろうか。
彼らは、この剣を巡ってずっと争いをしているのだからして。

しかし、その剣が…剣だけでなく。
少年の完全に右手が変化しているものだと。
すぐに人々は気付いて言葉を失ってゆく。
「見たとおり。これが僕のもう一つの姿。君たちには、大変に世話になったよ。
  まあ、あんまりおいしくなかったけどね。
  まあ、僕を巡って負の感情が撒き散らされるのは僕にとっては好都合だったけど。
  お察しの通り、僕は君たちが『光の剣』と呼んでいた、剣。
  ま、本当は、僕は道具なんかじゃなく。異界の魔王、つまりは、ここでいうところの。
  『赤瞳の魔王ルビーアイシャブラニグドゥ』様。それと同じ地位にある、異世界の魔王。
  『闇を撒く者ダークスターデュグラディグドゥ』様に仕えている直属の部下……
  いわゆる腹心ってところかな?僕の名前は、ゴルンノヴァ。別名、烈光の剣。
  ちなみに、彼らと同じく姿形なんて簡単に変えられるから。
  剣の形態をとってた僕を君たちがただの道具だと思っていただけ。」
くすくすと笑って、瞬時に剣と化した腕を普通の人間の手にと戻す。
「ふ…ふん!どうせトリックだ!」
一族の一人がそうわめく。
「……ふぅん。じゃ、試してみる?」
すっと睨むその視線に、一族のことごとくは凍りつく。
「……なさけないな。この程度で凍りつくようじゃ。」
「まったくだ。」
マルスがゴルンノヴァの言葉に同意する。
「おや、君はあまり怖がらないね?」
ふと、一人だけ平気なマルスに語りかけるゴルンノヴァ。
「……ルナの殺気に比べたら…いや、何でもない。」
そういいつつ、マルスの顔色が悪いのはどういうわけか。
「……ルナ?」
「あのね!すぃ~ふぃ~どのおねいちゃん!
  セリナのママのおねいちゃんでマルスおじいちゃんのむすめなんだよ!」
にこにこと、首をかしげる彼に説明しているセリナの言葉に。
「…………大変なんだね。君も……」
本気で同情されていたりするマルスである。
伊達に千年以上、この地で生活していたわけではない。
その辺りのことはよくわかっている。
「まあ、こんな物分りの悪い人間に言っても何だし。じゃあ、僕が剣そのものになるから。
  その剣に少しでも触れられたら、君たちの言い分も。少しは聞いてあげるよv」
くすくすと笑い。
その刹那。
ゆらり……
その姿が揺らめき。
部屋の空中に一つの剣がぷかぷかと浮かび上がる。
『…さて。誰が僕に触れられるかな?だったら、僕を使うことを許可してあげてもいいよ?』
くすくす笑う声が剣から漏れる。
そんな彼の精神に。
『――― ゴルンノヴァ。』
「……あれ?ダークスターさま?」
いきなり直接通信が語りかけられる。
「……どうかなさったんですか?」
見ている側には、独り言を言っているようにしか映らないが。
『―― 今、何処だ?』
「ええ。今、ルビーアイ様の世界です。
  何でも、僕を以前使っていた一族達が目の前にいますが。」
そういいつつ、直接に通信してくる上司に返事を返す。
『―― ほう、ならば話が早い。そのほう、その一族の中から一人、マスターを選べ。』
「…………は?」
いきなりのその言葉に思わず間の抜けた声を出す。
「いや!でも!僕には仕事が!」
『……あの御方からの命令でな。お前に、その一族の中から一人、マスターを選ばせて。
  そのものが死ぬまで側にいろという勅命が……さきほどあってな……』
……どこか声がわなわなと震えているのは。
おそらく、ゴルンノヴァの気のせいではないであろう。
「……まぢですか(汗)」

「……うわ……それは(汗)」
「う~ん。僕達の魔王様もよくいきなり来訪されて、弱体化してるけど。
  やっぱり他の世界もなんだね。」
会話が聞こえているこの二名。
二人して、から笑いを上げていたりするゼロスとグルゥ。

「……いや、ちょっとまて…『僕達の魔王』?」
人の一族がそんな二人の会話を耳にはさみ、突っ込みを入れていたりもするが。

「あ…あの……誰をマスターにすれば……」
声が震える。
間違った人物を選んだりしたら……どうなるのかは目に見えている。
『―― 知らん。あの御方はおっしゃらなかった。
  ……だが、お前が別な人物を選んだら……
  ……この辺りの四つの世界全てが……共同責任とかいわれてたな……』
「うどわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?んなのむちゃくちゃなぁ!」
『―― というわけで。しっかりあの御方が言われる人物を見極めてくれ!
  この我らの世界や他の世界の平穏はゴルンノヴァ!
  お前の肩にかかっている!それでは!』
「ああああ!まってくださいぃぃぃ!!!そんなのないですぅぅぅぅぅぅぅ!」
ぷつり。
絶叫を上げるが。
言いたいことだけいって、伝えるだけのことを伝えて。
完全に闇を巻く者との通信は……途絶えていた。

「ふふ……ふふふふふふふふふ!えええええい!
  こうなったら。ガブリエフ一族の全員を相手にして!誰なのか見極めてやる!」
半ばやけになりどなりつつ。
「君たち、僕に少しでも傷つけられたら。……その人物を僕の所有者と認めるよ。」
半ば、声が涙声になっているのは……気のせいではない。

目の前にあるのは、確かに、自分達一族が伝えたいた剣。
それが、どうであれ、傷を付けたら、
自分が所有を認められる、それ即ち。
このガブリエフ家を受け継ぐ権利を自動的に確保するのも当然。
「ふ…ふん!実力で剣はもらった!」
「あ!抜け駆けはずるいぞ!」
完全にもはや、この彼……
いや、剣がどうというレベルでなく。
ただ彼らが欲しいのは。
『光の剣』に付いてくる、この一族の財産と、光の剣の所有者という肩書き。

「……ねえ、おじいちゃん。セリナ、おなかすいた。ほっといて、なにかたべにいこ!
  ぐるぅおじいちゃんとぜろすおじいちゃんも!」
―― ベシャ!
「せ…セリナちゃん!その呼び方は……やめてほしいんだけど……」
さすがに、お爺ちゃんと呼ばれたのが堪えたのか。
すかさずこけつつ、抗議の声を上げてくるグルゥ。
「……なんで?ふたりとも、いちまんさいいじょういいってるし?」
『……何ででもです!』
ゼロスとグルゥ、同時に叫んでいた。


ファイアー・ボール!」
……何考えてるんだ?
というか、魔族であり、しかも異界の魔族である彼に。
この世界の精霊魔法など通用するわけがない。
しかも。
普通の剣を片手に突っかかってくる人々などもいたりする。
一応、姿をまた少年のそれにと戻し。
右手を光の剣モードと化して相手をしているゴルンノヴァ。
「……本気を出してよ…ねv」
ごぉぉぉぉぅ!
そういったその刹那。
屋敷のその部屋全てが、黒い炎で覆われ。
たったのそれだけで、数十名の一族が黒こげにとなってゆく。
「くすくすくす。ほらほら。光の剣を受け継ぎたいんだろ?
  だったら、この程度はよけなきゃvガウリイ=ガブリエフはよけれたよv」
くすくすくす。
もうこうなったら、半ばやけ。
折角だから少しでも食事しつつ、楽しみながらあの御方が示す人物を探すとするかv
発想の転換は。
何よりも、彼ら魔族にとっては、かなり重要である。


                     -続くー

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ちなみに、おまけ♪


ほう、やはりいたか。
あいつが。
下界をみつつ、そうつぶやく。
あたしが最近任命し、とある世界の王として、その魂を作り直した彼女がいる場所に。
面白いことにこのあたしに刃向かい、
いずれはこのあたしを倒して自分が全ての王に。
などと思っているあいつが。
ちょうどいいから、あの子を通じて。
あいつをここに呼んで退屈しのぎにでもしますかねv
『――セリファナレスティゥ。そのもの…カルティナを我が元に……』
あたしの直接的な精神伝令を授け。
対峙している、銀色の髪の少女の手に。
一つのオーブを出現させる。
そのオーブをかざす少女…セリナ。
『―― 我の元へ ――』
―― きんいろのおねいちゃんのところへ。
あたしとセリナの言葉が一致したその直後。
セリナの手のひらにあった、
カルティナを封印してあるオーブが、あたしの元にとやってくる。
さってv
しばらく、このカルティナで退屈しのぎでもしますかねv
「……ん……」
どうやら、目を覚ましたみたいだし。
さって、しばらくこいつで遊びますかv

うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!

なぜか、その後。
あたしのここの宮殿の中に。
悲鳴と叫び声がこだまするのが続いているけど。
ま、気のせいでしょv
この程度で、
まさかこのあたしに刃向かおうとしていたやつが、根をあげるわけがないものねv
んふふv
そだv
面白そうだしv
部下Dのやつに、あいつにあの世界にしばらくいるように命令だしておきましょv

ザクザクザク……

何か、斬り応えがないわね……
何か、すでに物もいわない物体と成り果ててるし……
なっさけないわねぇ……
もうちょっと、根性みせなさいよねv
カルvvv


                      -おまけ終了v-

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あとがきもどき:

薫:・・・・・・エル様・・・・・。一体、何を・・(汗)
  と・・・とりあえず、次回、ゴルのマスターは?(もろばれ!まて!)
  んではでは・・・・。


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