まえがき＆ぼやき：→前書きを読まない、というひとはこちらへ
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白銀の継承者 第５話 ～ミプロス島～
「おじいちゃん？きょうはどこにとまるの？」
目に映るものが全て珍しい。
中には、水芸を披露している大道芸人たちなどもいる。
観光客でごった返しているここは。
エルメキア帝国に位置している、ミプロス島。
迷子にならないようにと手を引く祖父に問いかける。
「うん？ここの名物の温泉がある、ホテル、ジュエリィ・フィッシュだよ。」
「ふぅぅぅぅん。」
よくわからないけど。
その名前が入っている看板がいやに目につく。
きっと、この町で有名なところなんだろうな。
などと、一人納得し。
そのまま、マルスの手に引かれているセリナ。
ドン！
「おっと。ごめんよ。」
「きゃ！」
歩いているセリナにぶつかってくる、少し前歯の出た、小柄な男性。
そのまま、謝り立ち去ろうとする。
が。
ビィン……
『・・・・・・・・・・・・・・・・。』
セリナの懐から伸びる一本の糸。
くい。
それを引っ張るセリナ。
先ほどぶつかった男性の手に。
セリナの懐に入っていた、かわいいピンク色の財布が握られていたりする。
……ドデ！
手にもっている財布の中身を確認しようとして。
いきなり、財布が引っ張られて。
勢いよく、その場にこける、ケチなすり。
「いってぇなぁ！何しやがるんだ！」
「セリナのさいふ、なんでもってるの？」
するすると。
糸を引いて、財布を自分の方にと引っ張るセリナ。
「…まあ、あんな小さい子から掏り取るなんて……」
「何て非道な……」
「男の風上にもおけないわ……」
ひそひそと。
一気に周りに野次馬の山が出来上がる。
観光名所とはいえ。
やはり、そんな財布の紐が緩んでいる、懐を狙い。
スリや置き引き。
そういった犯罪も多発するのもまたお約束。
まあ、いくら取り締まっても、それは、氷山の一角。
やはり、こんなごろつきは何処にでも存在するわけで。
そのケチなスリが掏り取った相手が、
横にいる父親らしき男性ならば、まだ救いがあるものだろうが。
倒れてわめいている男性が掏り取った相手は。
どうみても、まだ三歳にも満たない幼い女の子。
そんな小さな子供から物を盗もうなどとは。
人間として、恥ずかしい限りである。
野次馬たちの注がれる視線が、暗にそう物語っている。
「あのね？ひとのものをね？だまってとるのはあくにんなんだよ？」
財布に傷が付けられてないのにほっとする。
この財布、セリナの母であるリナの手作りなのである。
セリナにとっては、大切なもの。
「へん！だったらどうだっていうんだよ！」
やけになって、その場に座り込む。
「あのね？しらないの？あくにんにじんけんはないんだよ？」
そういって、にっこり笑い。
「こおれるもりのおくふかく、あらぶるものをすべるおう……」
何やら言い始めるゼロスの言葉に。
「おいおい、セリナ。いくらなんでも。
こんなちんけなやつ相手に
せめて、
にこにこしつつ、呪文を唱えるセリナを諭しているマルス。
そのマルスの言葉に。
すぐさまに顔色を変えるスリの男性。
始めの、ゼラス……何とかという術は聞いたこともないが。
それは、有名すぎるほど有名な、確か、黒魔術最高峰の攻撃魔法でなかったか。
「んじゃ、べつのにするぅ！」
ほっと、胸をなでおろすが。
「はくむのきりのおくのそこ、みなぎるいのちをつかさどり……」
聞いたことのない言葉を紡ぎだしているセリナ。
「……いや、あの……ど～して、異世界の魔王の術を使えるんですか？（汗）」
……え！？
今までいなかったはずの男性が。
いきなり、その親子の横にと出現している。
周りの野次馬は気づいてないようだが。
彼の目は、しっかり。
何もない空間からその男性が出現したのを捕らえて、額に冷や汗が流れ出る。
「あ、ぜろすおじ～ちゃん。え？でぃすふおっくとかゆ～ひとのじゅつでしょ？」
ディスフォック。
白霧の王。
この世界と異なる、異世界の…魔王。
その力を使ったカオスワーズを、今、セリナは唱えていたのである。
横に出現した黒い神官服の男性に、にこにこして何でもないように話すセリナに。
「……いや、ですから……
どうして、異世界の魔王の術をセリナちゃんは使えるんですか？（汗）
リナさんも無理でしょうに……」
「あのね！るなおね～ちゃんから、ほかのまおうとかいう、ひとたちのことをき～たの！
それでせりなね、つくってみたのっ！」
知識はあることに越したことはない。
というので他の世界のこともセリナに教えているルナ。
そのために。
……セリナは独学というかその勘で、異世界の術をくみ上げていたりする。
「……（汗）とりあえず、こんなしょぼい相手にそんな術はもったいないですよ。
せめて、呪いをかけるとか。」
さらりと、なごやかに、こちらもまたとんでもないことを進言しているこの神官。
「まあ、それか軽く、腕の二本三本へし折っておくとか。
それから兵士に突き出しても文句はないだろうしな。」
「えええ……セリナ、こ～げきまほうでおしおきしたい……
リナママもよくやってるもん。とうぞくたちにどらぐすれいぶ。」
「まあ、リナさんはそうでしょうねぇ。何しろ、リナさんのあだ名。
今では、
他には、
にこにこと。
わざと周りによく聞こえるようによく通った声を出しているゼロス。
「……え（汗）」
そんなゼロスの台詞をその耳に捕らえ。
ダクダクと脂汗が流れ出るのをすぐさまに感じ取るスリそのＡ。
やはり、裏に手を染めているだけのことはあり。
そこまで聞けば、それが誰を指しているのか、おのずから分かる。
「ひ……ひぇぇぇぇ！！！！！！！あのロバーズキラーの娘ぇぇぇぇぇぇ！？」
腰を抜かして、その場を逃げ出そうとするが。
「あああ！にげちゃだめなんだよ！ありがねぜんぶおいてかないと！」
「……リナさん。ど～いう教育されてらっしゃるんでしょうか（汗）」
「うんうん、さすが俺の孫だな♡」
当然の台詞をつぶやくゼロスに。
そんなセリナの言動に感激しているマルス。
……どちらが正しいのか…いうまでもないであろうが。
「えい！」
すっこぉぉぉぉぉん！
セリナが投げつけた。
懐から取り出した、なぜかオリハルコンせ製のお皿にて
「うわぁぁぁぁ……！」
きゅう。
クリティカルヒットして、頭から多少の血を流しつつ。
逃げたスリは、そのまま、地面にと転がっていた。
リナが、『乙女のたしなみ』としてセリナに持たせているのである。
このお皿……
始めは、スリッパとか、はりせんとかにしようと思ったのだが。
あまりにセリナがよく外で食べ物を貰うので。
その実用性を考えて、持たせたのがこのお皿。
少し深いので多少のお菓子などはこのお皿の中にきちんと入る。
父親であるガウリイの特訓の成果もあって。
確実に、逃げた男性の頭にヒットさせているセリナに。
『わっ！！！』
ぱちぱちと、周りから拍手と歓声が巻き上がる。
それはそうであろう。
何しろ、小さな女の子が、スリを撃退したのだからして。
話しの種になるには十分すぎる事柄である。
やがて、面白いものをみせてもらったということで。
野次馬たちから、お菓子を貰い。
ホクホクのセリナは。
そのままマルスとともに、チェックインのためにホテルにと入ってゆく。
ふと名簿に書かれた名前を見て。
「……おや、ガブリエフ？」
その名前は。
ここ、ミプロス島では、ちょっとした有名な名前であったがゆえに。
支配人がその名前に目を止めて。
ここ、ミプロス島にと存在している、
ガブリエフ一族、その本家に連絡を入れていた。
ここ、ミブロス島は。
セリナの父であるガウリイが生まれた場所。
そして……セリナの母であるリナが。
本来の時間率に戻すために、過去にて歴史を変えた場所……
「わぁい！ベットがふかふかぁ！」
家のベットもふかふかだが。
やはり、家と違う場所では意味が違う。
部屋にと入り、備え付けのベットの上で飛び跳ねる。
「ほらほら、セリナ、露天風呂にいくぞ？」
「はぁぁぁぁぁぃ！」
そんなセリナを笑顔を見つめつつ、風呂に行く準備をして、促すマルス。
ホテル、ジュエリィ・フィッシュ。
ホテルが誇る、その温泉は。
ミプロス島独自の温泉によって形勢されている。
「すごいね。おじ～ちゃん、このおんせん。
いろんなせいぶんがまじってるよ？ばらんすよく。」
温泉に浸かり、一瞬おぼれそうになったセリナを抱き上げて温泉にと浸かるマルスに。
セリナが話しかける。
「ま、ここの温泉は、世界一だって、評判だからなぁ。」
そういいつつ、セリナを片手で抱き上げて。
お湯に浸かり。
セリナの足がたうように、その膝にとセリナを乗せる。
祖父の膝の上でパシャパシャとはしゃぐセリナ。
そんなセリナ達の横では。
温泉マスターと名乗る、ジュリアーノという男性が。
温泉に入っている客のために、様々な水芸を披露していたりするが。
おぼれそうになったときに。
お湯を飲み込んで、その成分を完全に把握しているセリナだが。
それは、別に普通だとセリナは思っているので。
口にはしていない。
しばらく、温泉を満喫した後に。
食事をするために、広間にと向かってゆく二人。
「……なんで、みんな、おどってるの？」
出身地を問われた人々が、幻影の中で言われるままに踊りだす。
そんな光景をみて、首をかしげているセリナの元に。
「失礼いたします。失礼ですが、ガブリエフ家の関係者の方であらせられますか？
そちらのお嬢さんの名前の姓がガブリエフとなっていましたもので。
ぜひ、ガブリエフ家から尋ねてきて欲しい。そう依頼があったのですが。」
このホテルのオーナーが、食事をしている二人にと話しかけてくる。
このホテルのオーナーは、少し小太りしている、どこにでもいそうな人のよさそうな男性。
その言葉に少し顔をしかめ。
「……そういえば、天然のやつの実家のある所でもあったな。ここ、ミプロス島は。」
吐き捨てるようにいうマルス。
二人の結婚式のときに。
親族は呼ばなくてもいい。
そういうガウリイに内緒で、
ガウリイの実家を訪ねたマルスとセシルは門前払いをされた。
という苦い記憶が今でも新しい。
しかも、自分達の娘を何処の馬の骨とも分からない女とか。
財産目当てに決まってる。
などといわれて……
彼等流に、穏便にそれは解決させたのだが。
まあ、その穏便で。
屋敷の分館が、ニ～三個、壊滅したという、ほほえましいエピソードも。
セリナの両親が結婚した裏側に。
リナやガウリイが知らないだけであったりする事実。
マルスの言葉に。
「え？ガウリイパパの？」
キョトンとして問いかけるセリナの言葉に。
「おお、これはこれは。
ガブリエフ家の長男、ガウリイ＝ガブリエフ様のご息女であらせられますか。
なら、ぜひとも、ガブリエフ家にいらしてください。」
支配人であるオーナーの後ろに。
佇んでいるのは、小柄な男性。
その白い髭が印象的。
その人物をちらりとみて。
「……ねえ？このまぞくのひと…だぁれ？ぜろすおじいちゃん？」
天井に向かって、いきなり問いかけているセリナ。
「……え？（汗）」
いきなり、知っている名前を言われただけでなく。
見ただけで、正体を言い当てられるとは……
狼狽する彼の耳に。
「……あのですねぇ……セリナちゃん…こんな所ではなしかけないよ～に……」
溜息交じりに。
丁度、辺りが幻影マスターラゴスの手によって、薄暗くなっているのをいいことに。
セリナの横に瞬時に出現する黒い神官服に身を包んでいるゼロス。
そして、にこにこと。
「お久しぶりですねぇ♡アルゴスさん、お元気でしたか？♡」
にこにこしつつ。
オーナーの後ろにいる白い髭の老人にと話しかける。
「ゼ……ゼロス様……どうしてここに……」
そういう声は震えている。
「それは秘密です♡」
にっこりとそういうゼロスの言葉に。
「……どうやら、根性をいれかえないといけないやつがいるようだな。
いくか？セリナ？天然の家族のところに？」
「ええ！？ガウリイパパのかぞく！？うん！あいたい！いくぅ！」
マルスの言葉に、
すぐさま同意を示すセリナの言葉に。
「だ。そ～ですよ？アルゴスさん。ご案内いただけますか♡」
「は…はぁ……（汗）」
どうして、ゼロス様……獣神官様が、こんな所にいるのか。
かなり疑問ではあるが。
彼はしがない、ただの中間魔族風情。
実力ある、獣神官に逆らうことなどできるはずもなく。
「で…では、ご案内させていただきます。」
震える声で。
自分が今仕えている主、ラナティスの元に。
彼…アルゴスは、セリナ達を案内してゆく。
ラナティス＝パロ＝ガブリエフ。
ガウリイの異母弟であり。
今は、ほぼ、ガブリエフの実権を全て握っている。
といっても過言でない、その彼の元に……
－続くー
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あとがきもどき：
薫：・・・・よーやく、親玉（？）登場・・とゆーか名前だけ・・・・。
次回で、ガウリイの家族の実態があきらかに！？
・・・・・なりません（こら！！！）
んではｖまたｖｖ
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