まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

さてさて。ようやく滅びの砂漠!!
クライマックス?というか帰還まであと少し!(なのか?)
いまだにラスト付近のイベント?をどちらにするか悩み中……
フィプの人質?になるやつ…どれにしよ?う~ん???
ともあれ、いっきます!
どうも客観的視点だと脳内がうまく回転してないのか表現力が劣るので(まて
エル様一人称でいくのですv

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○パラレル・トラベラーズ○~いざ、決戦の場へ~

「まあ、このあたりの趣味はどうこういうつもりはないけどねぇ~」
思わずぽそっとつぶやいてしまう。
かくいう自分もこういうことはやってた口なのであまり違和感はない。
ないが、人、としての感性からしてみればやはりこれは好ましくない部類にはいる。
というのもよくわかる。
「ね~さま、これ、きれいだねぇ~」
一人、よくわかっていないマナが横で目をきらきらさせてそんなことをいってるけど。
さて…本当のことを教えるべきか、教えないべきか。
もう少ししたらここにリナ達もやってくるのはわかっている。
ずらり、と並んだ青白い光をほのかに放つ数々の水晶達。
その中には様々な姿の『姿』が見て取れる。
人間から竜、エルフにドワーフ、とにかく様々な種族がここにある。
まあ、まだマナは幼いからわざわざ正確なことを教える必要もない…か。
下手に教えて人格形成に影が差しても面白くないし。
殺伐とした景色の中に突如として出現している青白い水晶の館。
否、館、というよりはどちらかといえばドームのような球体のそれ。
そこに続く道なみにずらり、とならんでいる水晶の置物。
しかしそれらすべてには『生物』の魂が閉じ込められている。
ついでにいえば、ドームの形をなしているそれらを形勢している水晶のすべて。
それらもよくよくみればその中に様々な姿がみてとれる。
私たちが出てきたのはそれらの道の横にある小さな井戸。
井戸、のようにみえるそれはかつての都市のなごり。
砂に埋もれていたそれは今ではその姿を大地にさらけだしている。
まあ、出るのに砂が邪魔なので『消した』というほうが正しいが。
「とりあえず、リナか~さん達がもう少ししたらここにくるだろうし。
  私たちは先に中にはいってまってよ。マナ」
「は~い。ね~さま!」
そういや、中はあるいみ水晶の間のような仕組みになってるのよね。
とある世界でいうところの鏡を使った迷路みたいになってるし。
どうもマナが退屈してるみたいだし、そこでしばらく遊ぶとしますか♪


まぶしい。
今まで薄暗い場所にいたためか思わず目をつむってしまう。
「…ようやく外、のようですわね」
こころなしか多少顔色の悪いシルフィールがその灯りをみてそんなことをつぶやいているけども。
そもそも、あの場所からの道はいわゆる緊急脱出用の道であり、
地下をひたすら歩いてゆく道になっていたに他ならない。
灯り、という灯りははっきりいって設備されてなく、否、昔はあったにしろ今は機能していない。
ゆえに、明かりライティングの術を光源かわりにして進んでいたリナ達一行。
どれだけの時を歩いたのか薄暗い地下の中ではその感覚も皆無。
時を告げるようなモノがあれば別なれど、リナ達はそういった品をもってはいない。
「…長かったですぅ~……」
薄暗い延々とつづく石の道。
「でもまあ、よくたどり着けたもんだな」
つくづく感心したような声をだしているゼルガディス。
石の道、といってもまっすぐな一本道、というわけではない。
神殿からの脱出用、ということもあり道の広さは十二分に確保されてはいる。
いるが、追ってなどのことも考えて道は様々に入り組んだ形で造られている。
床や天井、壁などの石には特殊な製法がなされており、
その製法の面影を残す品は今のこの時代にはあまり残ってはいない。
ガウリイのもっている斬妖剣ブラスト・ソードがそのなごりの一つ。
ここに使われている様式は石に細かく術が刻まれており、それゆえに長い年月の間にも朽ちることはない。
かつてはこのような方法が一般的ではあったが、
降魔戦争以後、このような方法はほとんど見受けられないのも実状。
「でも。さすがはラウリィ様ですわ」
一人そんなことをいっているシルフィール。
いまだに多少顔色が悪いのは人々を救うことができなかった。
という自責の念が強いがゆえ。
「ほんと。ガウリイさんもラウリィも勘がすごいわよね」
そんな最中、呆れたようにいっているレナの姿。
顔が似てたらそういったものも似るのかな?
などとレナは思っていたりする。
「ま、ガウリイだし」
そもそも、分かれ道などにぶつかったとき、ラウリィとガウリイの意見が一致し、
そちらの道を進んだところそれが正確な道であったのだが。
それ以外の道では行き止まりであったり、罠が仕掛けてあったりするのだが。
罠のほうは管理するものがいなくなりほうっておかれたがゆえにきちんと作動しないものも多々とある。
かつてここが都として繁栄していたときには一つの部屋ですべての罠などの状態を管理していたのだが。
彼らは当然そんなことを知るよしもない。
もっとも、約一名、わかっているものもいるにはいるが、別に聞かれてもいないことを説明する義理もない。
「…僕とすれば、罠にかかってあわてるみなさんがみたかったんですけどねぇ~……」
何ごともなく出口にたどり着いた彼らに対し、ぽそっとつぶやいているゼロス。
「…おまえ、ほんといい性格してるな……」
「いやぁ。はっはっ。ゼルガディスさん。ほめても何もでませんよ?」
「ほめてないっ!」
傍らではそんなほのぼのとした会話が繰り広げられていたりする。
「しかし、おかしいですねぇ?」
「何が?」
ゼロスからすれば普通に出口が見えているのが不思議でたまらない。
その言葉にめざとく気づいてリナが問いかけるものの、
「いえ、何でもありません。さ、さくっと外にいきましょうか」
それに彼らがアレを目にしたときの反応も少しばかり面白そうですし。
リナの問いをさらっとかわし、にこやかにそのまま出口のほうにむかってゆくゼロスの姿。
元々、この出口は砂でおおわれており外とは通じてはいなかった。
まあ、ゼロス達からすればそんなものは関係ないのではあるが。
その痕跡がきれいに消えていることに多少の疑問を感じたのは事実。
しかしその疑問よりもリナ達の反応が視てみたい、というのもありそのことは深く考えずそのまますたすたと歩き出す。
「さ。ここを抜けたら気合いをいれていくわよ!」
何でもこの道を抜けた先はそのまま冥王宮にと続いているとか何とか。
まあゼロスのことだから嘘はいわないでしょうけど、事実もいわないからねぇ。
そんなことを思いつつも全員を見渡し号令をかけているリナ。
『レナ。とりあえず心構えだけはしといたほうがいいわよ?』
?リナお姉ちゃん?
心の中で問いかけてきた『リナ』の言葉の意味がわからずに首をかしげるレナ。
そういえば、とふと思い、
『リナ』からしてみればなぜか自分に対して情報が与えられたがゆえに忠告を発しているのだが。
…きっとあのエルちゃんがらみでアレもあたしに説明してきたんだろうけど……
そんなことを思いつつもそれを口にだすことはなく、だからといって詳しく説明するのは過酷すぎる。
ゆえに言葉を濁してレナに忠告しているのだが。
三者三様。
それぞれがそれぞれに様々なことを思いつつも、目の前にみえる明かりのほうへと進んでゆく。

ざらり。
ざらり、とした感覚が体全体にまとわりつく。
すでにここは『滅びの砂漠』と言われている場所の中心地近く。
滅びの砂漠は境目付近はそうではないが奥にいけばゆくほどに砂嵐がひどくなっている。
ちなみにその砂嵐はときたま人をとわず生き物の体を侵食する働きをもっている。
ゆえに滅びの砂漠を越えられた、という話しを今まで誰も聞いたことがないようなのだが。
それらを防ぐ方法がいまだに編み出せていない、というのがこの世界の実状。
一瞬、あまりの眩しさに目をつむるものの、すぐさまその明るさになれはじめる。
砂漠というので暑いのを覚悟していたがいかんせん、このあたりはさほど暑くはない。
リナ達が出てきた場所はぱっとみた目、井戸、のようにみえなくもないがそうではなく。
井戸がなんだか横になったようなそんな感じの場所。
「よくまあ、こんな場所が砂に埋もれなかったですね」
あるいみ感心した声をだしているアメリア。
実際は砂に埋もれていたのだけど彼らは知るよしもない。
一人、理解しているゼロスはといえば首をかしげるものの、
「ほら。みえてますよ。あちらが今回の目的地がある冥王様の宮です」
冥王宮の中に問題の『扉』のようなものがある。
そうリナ達は聞いている。
実際にあるのだからその説明は間違ってはいないが。
「…青い宮殿…?いえ、球体…ですか?」
ゼロスが杖で指し示した方向みて少し戸惑ったような声をだしているシルフィール。
「……まさか……」
その青白い物体の心当たりがあるがゆえに一人顔色を悪くしているリナ。
嫌でも忘れられない同じような青白い物体をリナはかつて見たことがある。
「みてください。きちんと道までありますよ?」
「?道らしきばしょまで青白く光る…とりあえずいってみよう」
「ちょっ!まっ!」
リナが制止するのも聞かずにそのままそちらのほうへと歩きだしているアメリアとゼルガディス。
果てしなくいやな予感がするのはあたしの気のせい?
いや、こういうときの予感ははずれたためしがない。
それゆえに不安がぬぐいきれない。
だからこそリナはアメリア達を止めたのであるが。
周りが砂だらけだというのにそこだけは砂がかぶさることもなく、
青白く光りながらその構築をたもっている。
まっすぐに球体のほうへとのびている青く光る道。
そしてそれにつらなるように並んでいるいくつもの柱。
「これは、いったい何……」
「き…きゃぁぁっっっっっっっっっ!!!!」
見たこともない物質であるがゆえにゼルガディスがそれに手をかざそうとしたその刹那。
周囲に悲鳴が響き渡る。
「シルフィールさん!?」
「どうした!?」
尋常でないその悲鳴にのばした手をひっこめてあわててシルフィールのほうへとかけよるゼルガディス。
そんなシルフィールの声に伴いシルフィールのほうへとかけよってゆ彼ら達。
もっとも、一人顔色もわるくその場にたたずんでいるリナをそっと背後からガウリイが支えていたりするけども。
青白い水晶。
そしてその中に見え隠れしている何かの物体。
それが何を示しているのかは…経験しているリナだからこそ『判る』。
かつての出来事が脳裏をよぎり思わず足がとまってしまう。
がくがくとその場に崩れ落ちるように座るシルフィール。
「いったい、何が……」
「…シルフィールさん?」
シルフィールは無言のままただある方向を見つめるのみ。
その先にあるのはいうまでもなく、道ぞいに並べられている柱の数々。
「…これは…いったい、何なんだ?」
みたことがないがゆえに思わずそんなこえをだしているラウリィ。
「あ~。なんか、俺、覚えがあるわ」
それをみてそんなことをいっているガウリイ。
覚えがあるも何も、これにつかまっていたのはガウリイ自身。
「…あ、あんたねぇ~……」
というか当の当人がそんなのんびりとした声をだしていればリナの気もそがれる、というもの。
こいつ、あのときのあたしの気持ち…わかってんの!?
多少の理不尽にもにた怒りがリナの中にこみ上げるものの、
「…ゼロス。あんた、しってたわね?」
その怒りをかろうじてこらえ、いまだににこにこと笑みを浮かべているゼロスに問いかける。
「おや?リナさんはこれが何かご存じなんですか?」
全員、これをみて何らかしらの反応があるだろう、とおもっていたゼロスからしてみれば、
しっているそぶりのリナの反応が意外といえば意外。
「嫌でも知ってるわよっ!これは…これはっ!」
リナがそう言いかけるとほぼ同時。
『ようこそ。僕の宮殿へ。正直ここまでくるとはおもってもなかったよ。ま、歓迎するよ。
  …もっとも、僕のところにこれれば、だけどね。あとゼロス。なんで僕の邪魔をするの?』
ゆらり、とその場に浮かび上がるように現れる一つの小さな影。
「あのぉ。冥王様?僕たちの立場を考えれば判るとおもわれるのですが……
   とりあえず、僕はすでに獣王様の元に戻っている身ですし」
自分のような下っ端が上のものに意見するようなことではない。
だからこそあえて言葉をにごしつつもにこやかに浮かんでいる影に対して語りかける。
「獣王?…めい…おう?」
いまだにショックを受けてしゃがみこんでいるシルフィールがそんな二人の会話をきいてさらに言葉につまる。
「…そういや、シルフィールにこいつの説明、してなかったっけ……」
ふとリナはそんなことを思う。
おもうが……
「ずいぶんと悪趣味ね。で?まさかここにいる輩、すべて何かにやっぱり利用してるわけ?」
『ゼロスからきいたのかな?まあいいさ。別に隠すことでもないしね。
  どうやら君はこれが何なのかわかってるようだし。だって仕方ないじゃないか。
  僕の手足となる部下達は降魔戦争でほろんでしまったんだし。使えるものは使わないと』
そう。
だから、魂そのものを水晶の中にと閉じ込めて彼らを利用しているにすぎない。
利用されてかりそめの肉体を与えられている彼らは冥王の言葉や命令には逆らえない。
駒にするのにはちょうどいい。
何よりもほとんどの種族が同族を殺したり、あやめたりすると隙ができる。
だからこそ利用して損はない。
「…リナさん、これっていったい……」
何となくだけどもわかる。
だけども信じたくはない。
だがしかし、自分の勘が告げている。
こういうとき巫女の能力が嫌になる。
かすれる声で問いかけるシルフィール。
さきほどの冥王や獣王、といった言葉もきにかかる。
「でましたね!諸悪の根源!さあ!何をたくらんでいるのかきっちりと白状してもらいますっ!」
一人、はっと我にもどり、びしっと指をつきつけて何やらいいはなっているアメリア。
「…お前は状況を考えろ……」
そんなアメリアに対してゼルガディスがコメカミに手をあてつつも突っ込みをいれていたりする。
『ま、無事に僕のところにこられたら説明してあげるよ。楽しみにしてるよ。
  あ、そうそう。彼らは解放を望んでいるから。君たちがどう対応するか楽しみだよ』
「おまちなさいっ!」
にこやかに笑みを浮かべたまま、現れたときと同様、その姿は瞬く間にとかききえる。
もっとも、今のはただの影でありいわゆる幻影のようなもの。
わざわざ伝達を伝えるのに自身がでむく必要はさらさらない。
アメリアの制止の声はそのままただ虚空にとかききえる。
「…ゼロス。きちんと説明してもらうわよ?」
「いや、説明、といいましても……」
ゼロスからしてみれば説明する理由はまったくない。
ゆえにリナの言葉に煮え切らない。
「…悪夢の王の一欠よ 天空の戒め解き放たれし 凍れる黒き虚ろの刃よ……」
「って、わかりました!わかりましたよ!いきなりその術はやめてくださいっ!!」
ゼロスのそんな様子をみて説明する気がない、と判断し。
有無を言わさずに呪文を唱え始めているリナ。
まったく、どうしてこんな人間があの御方の術を簡単に扱えるんですかっ!?
平行世界の人間云々、といっても限度、というのがありますよ!?
何やらゼロスはそんなことを思っていたりするようだけど。
それはそれ。
たかがこの程度で相変わらずに狼狽するとは情けない。
リナもリナで今のリナならば混沌の言葉を紡がずに力ある言葉だけで発動は可能だ、というのに。
それでもあえて混沌の言葉を紡ぎ出したのはゼロスをその気にさせるため。
「じゃ、しっかりと説明してもらいましょうか。とりあえずまず一つ。
  …これは、あいつの得意とする水晶で間違いないわけね?」
得意云々、ということばをきき多少目を丸くしつつ、
「?あなたは冥王様の術を目にしたことがあるんですか?
  まあ、たしかに。そのとおりです。これらは生き物の魂、ですよ?」
「「「なっ!?」」」
さらっというゼロスの言葉にその場にいた、アメリア、ゼルガディス、シルフィールの声が一致する。
「…どうりで。何か生き物の感じがすると……」
一人、唸っているラウリィ。
「生き物の…魂?」
よく意味がわからずにかすれた声で問いかけるレナに対し、
「あいつの得意技の一つよ。あいつは生き物の魂をこうして水晶にとじこめてね。
  そしてかりそめの肉体をそれらに与えて自分の駒とするの。
  当然、駒、として再生させられたものはあいつの命令に逆らえない」
かつてこの術はサイラーグ、という街一つを飲み込んだ。
死んだはずの人々が生き返ったかのようにみえ、さらには自分達の敵となり……
死んだはずの父親までもが相手の手先となってしまっていたその現実。
そのときのシルフィールの気持ちはリナとしてもやりきれない。
だから、『ここ』ではそのようなことが起こらないように自分から行動を起こした。
その結果、サイラーグは壊滅することなく、あの悲劇はくいとめられた。
「かりそめの肉体、といっても当然、生前のままの記憶も何もかもあるわけで。
  …ほんと、嫌なやつよ。人のもつ感情を利用するなんて」
まだ幼い子までもが刺客としておそってきた。
その肉体も生きていた当時のまま。
当然、痛みも感じれば血も流す。
…が、死ぬことは絶対にない。
そもそも、元となる魂を冥王自身が握っているのだから。
生かすも殺すも冥王の心ひとつ。
あのとき、ガウリイだけでなく、シルフィール達もこの水晶に捕らわれた。
そのときの苦い記憶は今でもリナの心の中にしこり、となって残っている。
「『ここ』ではあいつはどんな行動にでてるのかわからないけど…
  おそらく、想像がまちがっていなければ……
  あたし達が人である以上、人間達を刺客、として宮殿の中でけしかけてくるでしょうね……」
よくよくみれば、柱だけでなく足場となっている床にもいくつもの影が見え隠れしている。
それは小さな子供の姿から大人の姿。
人、という種族だけでなく様々な種族の姿も垣間見える。
「…え~と。リナさん、とおっしゃいましたね?
  いったい、以前そちらの世界でどんな経験をなさったんですか?
  そこまで冥王様の行動に詳しいなんて……ま、とにかく。今、リナさんが説明したとおり、ですね。
  冥王様ったら自分の手足となる部下がいなくなって雑用とかするものがいなくなったからって。
  こういった輩を利用してるんですよ。まあたしかに使いようによっては便利なんでしょうけどねぇ。
  だからって、面倒なことは僕のような下っ端に何でもおしつけて……」
ぶつぶつ。
そもそも、僕は冥王様の部下でなくて獣王様の部下なのに。
そもそも、今回の作戦もゼロスも獣王も乗り気でなかった。
しかし正式に依頼された以上、断る理由もないのも事実。
しかし、獣王グレータービーストゼラス=メタリオムとて冥王ヘルマスターフィブリゾの作戦の落とし穴はわかっていた。
自分達の力で無に還すのではなく他の力を借りて無に還す。
それはすなわち、自分達の力を否定し、あまつさえ役目を放棄している、ということ。
「で?おそらくそれだけではないんでしょう?あいつは解放云々っていってたわ。他に何があるわけ?」
あの口調だと他にも何かがあるはずである。
いまだに絶句して言葉に詰まっているレナやアメリア達とはうってかわりゼロスにさらに問い詰めるリナ。
「…その勘、すごいですねぇ。まあ、隠す必要もありませんし。聞かれたから教えますけど。
  冥王様もただ魂を閉じ込めて利用するだけでは面白くないらしく、
  とりあえずそれぞれの魂達にはある程度の魂をひきこんだら自由になれるかもしれない、
  と制限を加えているんですよ」
もっとも、そのある程度、というのをきちんと明記していない。
その数、というのは途方もない数なのだが捕らわれている魂からしてみれば詳しく聞けるはずもない。
そもそも、自分達は捕らわれの身であり口出しなどもってのほか、なのだから。
口出しすることはそのまま自身の消滅、もしくは魂の苦痛につながってしまう。
どれほどの数の魂を引き込めば自由になれるかなんてわからない。
だけどもどうしても自由になれるのならば、とその制約にすがってしまうのは生き物の性。
「…ほんっきで最低ね……」
この場に子供たちがいなくてよかった。
とつくづく思う。
アレのこと。
子供なんかいたら真っ先に狙いそうである。
そんなリナの心情を知ってか知らずか、
「…あの…この中のひとたち…魂…なんですか?」
ようやく『リナ』が何を注意したかったのかを悟り、多少声をふるわせつつも真っ先に我にと戻り問いかける。
そんなレナの問いかけに、
「そうよ。…ついでにいえば、あいつは普通にいきているものからも魂を取り出すことができるからね……
  …伊達に、ヘルマスター、死を司る存在、とは名乗ってないわよ」
「…本当に詳しいですね。以前、冥王様とあちらで対峙なさったんですか?
  それにしては、人が冥王様に勝てるとはおもわないんですけど……」
リナの説明にふと疑問を抱いてといかけるゼロス。
「まあ、それはそれで。やり方一つよ。一つの例に精神世界アストラルサイドから分離する、という手もあるし」
その手は覇王との戦いに用いたが。
「あ~。ゼナファアーマーですか。たしかにあれは厄介ですよねぇ。
   まったく。エルフ達もいらないものをつくりだしてくれて…って。なんで知ってるんですか?
   というか…本気で、リナさんってあちらの世界でいったいどんな生活を?」
始めて逢った時はまさか平行世界からの訪問者、とはおもいませんでしたけど。
というか、本当にどんな生活をなさっていたんでしょうか?
この人達は……
そんなことを思いつつ、ゼロスが問いかける。
そもそも、アレが造られている、としっているのは一部のものたちだけのはず。
それを知っている、となればそういった一件に遭遇しているということに他ならない。
こちらであれが噂になっている、という話しは今のところ耳にはいってこない。
ならば考えられる可能性は、『あちらの世界』で何かがあった、ということ。
「…まあ、一番てっとり早い方法は。ここごと、重破斬ギガスレイブで吹き飛ばしたら楽なんだろうけどねぇ~……」
それだともうあとくされなく、冥王の魔力云々、ということもなくきれいさっぱり片付く。
ゼロスの疑問というか問いかけをさらっと無視してさりげに正論を言うリナ。
「…あ。でも、もしもリナさん達がこちらにきた原因が。あの御方にあるとしたら。
  それだと元の世界に戻る方法が遠のく可能性もありませんか?」
伊達に姉達から真実を聞かされているわけではない。
「…そうなのよねぇ。…また乗っ取られてもヤダし」
「…今、なんかものすっごく怖いことをいいませんでした?」
いや、今、乗っ取られたとかいわなかったですか!?
このリナさんっていう人間!?
リナのぽそっといった台詞をききとがめ、すかさずといかけるゼロスだけども、
「とにかく!先にすすまないことにはどうにもなりません!
  まずは悪の手先をこらしめて!それから問題の場所をどうにかするか考えましょうっ!」
「…そう簡単にいくとおもうのか。お前は……」
一人何やら先走りそうなアメリアの台詞にさらにため息をつきつつも突っ込みをいれているゼルガディス。
「…シルフィール。きつそうならここでまってるか。もしくは事情を話しにもどっても……」
というかここでたおられてはかなり困る。
そもそも、真っ先に人質に取られそうな予感がひしひしとする。
そんなリナの問いかけに、
「いえ。いきます。いかなければならないんです」
顔色もわるく気丈に言い放つシルフィール。
サイラーグの代表として見届けなければならない。
その思いがシルフィールを突き動かしている。
彼らが悠長に話しをしている最中、何ものも襲ってこないのにはわけがある。
この地、不毛の大地、ともいわれている滅びの砂漠にも生き物はいる。
魔物、とよばれる生き物も多々といる。
が、しかしそれらは決してこの周辺には近づかない。
この宮の主の強さを本能的に判っているがゆえ。
それは生きているものの自然の摂理であり本能。
「で?結局、いくのか、いかないのか?」
「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
のほほんと今までかなり込み入った話しをしていた、というのに場違いな発言。
すぱぁぁっん!
「あ、あんたわぁっ!少しは自分でかんがえろっ!!」
ひさかたぶりに、リナのこぎみよいスリッパではたく音が炸裂する。
「…リナさん。ガウリイさん。夫婦漫才はともかくとして。とにかく先をすすみましょう」
先にいかなければどうにもならない。
もしかしたら、ここに『兄』を助ける手段があるかもしれない。
そんなことをおもいつつも、仕切っているラウリィ。
「…とにかく、いきましょ。…道、を歩くのはなんだかしのばれるから、横ぞいを」
「…賛成」
そこに封じられているものが魂である、と知った以上。
その上を土足で歩くことはどうにもしのばれる。
道の横を歩いたからといって、またその上を歩いたからといって彼らがどうにかなる、というものではない。
ないがそれは人の心理というもの。
誰しも自分から他人を進んで傷つけたい…と思う輩は生まれつき、いないのだから。
その成長過程でそれらを楽しむ輩が出てくるのは別として……

それぞれがそれぞれに様々な思いを抱えつつも、先にとみえる球体型の建物らしきものにとむかって歩いてゆく彼ら達。
その先に何が待っているのか、当然、彼らは知るよしもない――。


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あとがきもどき:
薫:・・・パラレルもあと少し、とおもうとどうしても思い出してしまうのが雄馬さんのこと・・・
  雄馬さんもこれに対していろいろと感想おくってきてくれてたからなぁ・・・
  いや、でも、まだご家族のほうがつらい、というのは十分にわかっている。
  わかってはいるんですよ・・・ええ・・・
  あまりこういう場で触れたら、ご家族が万が一目にしたらつらい、というのもわかってはいる。
  いるんですけど…やはりぼやかずにはいられない……
  まあ、ここでこうしてぼやいていてもどうにもならないのは百も承知。
  …と、ともあれ。
  ようやくクライマックスさんにかかりました。
  次回…アニメでもあった死人?を傷つけるシーン…どうするかなぁ?
  でもそこはそれでやはりやったほうがいいような、よくないような……
  きちんとやるか、さらっと流して傷つけた後からいくか…ですね……
  なんだかぱたっと打ち込みとまってて、気づけば○年越し・・・
  そういや、漫遊も最近ぱたっと打ち込みしてないなぁ・・・・・
  これがおわったらドラ○エパロさんの続きをいく予定です。
  何はともあれ、それではまた、次回にて。

2011年1月16日(日)某日

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