まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
まえぶりさんにちょこっと王宮内部での様子をばv
いうまでもなく、人々?がいうことをきかざるを得なかったのは当然といえば当然のことですv
何しろ本能的に『さからえない』ですから♪
#####################################○パラレル・トラベラーズ○~忘れられた都~
バタバタバタ!
「そっちにいた!?」
「こっちにはいないぞ!」
バタバタとせわしい足音が響き渡る。
「というか、どうやってどこかにいったのかしら?」
不思議、といえば不可思議でしょうがない。
そもそも、この国からでるには自分の許可がすくなからずと必要となる。
結界を超えればすぐにわかる。
にもかかわらずに感知できない、とはこれいかに。
「…もしかしたら、あちらの世界であの御方に関する何かの術を習ってたのかも……」
「まさか。いくら人間でもあの御方の力をおいそれとはつかえないでしょう?」
広い空間としか表現のしようのない広い部屋の一角でそんなことを話している女性が二人。
床にはふわふわ、ふかふかの水色の絨毯がしきつめられており、少し高い場所に椅子がひとつおかれている。
部屋の四方には水がたゆまなく流れ落ちており、水が壁となって周囲を覆っている。
部屋からでればすぐにわかる。
そのはずなのに。
「光と闇に属さない存在であると同時に、どちらにも属するがゆえに引き出すことは可能でも」
そう。
人、とは光にも闇にも属さず、また両方に属している存在。
そのように創られている。
それは人に限らず数多の生物などにもいえるのではあるが、人はその力を理性でコントロールするすべを学んだ。
「でも、あのレナの…いいえ、リナと同等の平行世界の人間達よ?ありえなくもないとはおもうけど…
そうでないと説明のつきようがないもの」
冥王があのままひきさがる、とはおもえない。
すくなくとも、自分の妹、ということでレナには手だしをせずとも子供をつかって何かすることは考えられる。
だからこそ子供達をもっとも安全とおもわれるこの場所、ゼフィーリアの宮殿にと連れてきていた。
しっかりと自らの…否、赤の竜神の力の加護を施した封印結界の錠をほどこして。
その封印に反発せずに脱出できる術などひとつしかない。
魔にしろ、神にしろ、そして自然界の力にしろ。
すべてはその封印結界に反応する。
しかし、それらにまったく反応することなく子供達の姿は忽然と消え失せている。
「でもあちらのリナちゃんにはルビーアイは封印されてはいないようだったけど?」
念のために確認はしてみた。
彼女にはその痕跡はまったくなかった。
直接みればその魂のありようが視ようとおもえば彼女達には判る。
多少少し気になるところ、といえば金色の痕跡が多少みえた、ということのみ。
あのとき、赤眼の魔王の気配が断たれたことにより、意識をむけてみた。
そのとき、リナがレナ達に説明しているのは視てとれた。
ゆえにこそ、彼女達の世界でも同じようなことがあった、というのは認識はできてはいたが……
「問題は。神滅斬にしろ、重破斬にしろ、使った形跡のない、新たな術、ということね」
断ち切られたにしろ、消滅させられたにしろ痕跡はのこる。
しかしそれらの痕跡はまったくない。
「あのとき。多少何か感じるものがあったからレイ=マグナス=シャブラニグドゥのところにはいってみたけど……」
自分の欠片が倒された、というのにかたくなになぜか沈黙をまもっていた。
それもどうもきにかかる。
「やっぱり直接レゾさんに聞くべきかしらね……」
彼がかつてやっていたことは一応は把握している。
その手段は確かにあっている、とは言い難かった。
しかしそこで自分が動くわけにはいかなかった、という事実もある。
もしも自分達の正体が人間に知られれば絶対に人間達はそれを理由に戦争を起こしかねない。
いつの時代も信仰、というものはその裏に狂気なるものをはらんでいる。
そのことを彼女達はよくしっている。
「そうね。それしかないわね。私は行方を探してみるわ」
「私はとにかくあの子達をさがしてみるわね」
宮殿に招き入れると同時に瞬く間に二人の子供は人気者となった。
にっこりとほほ笑まれ、とくに長女のほうにほほ笑まれて何かいわれると誰も断ることすらできない。
そもそもなぜか顔をあわすと文句をいうことすらできなくなってしまう。
それほどまでにあいらしかったのも事実。
滞在している最中、二人の存在はそこにいる存在達にとってかなり大きなものとなっていたこの現状。
二人がいない。
というのに気付いた存在達は右に左に大騒動となっている。
「ほんと、エイルちゃんとマイナちゃん、どこにいったのかしら……」
今動くのは危険極まりない、というのに。
まだ幼いあの子供たちにはそのことがわかってはいないのであろう。
水竜王…もとい、ゼフィーリア王城でもあるゼフィール王宮の中から消えた二人の幼女。
しばしそんな会話をしている二人の女性…赤の竜神騎士と永遠の女王の姿が見受けられてゆく……
「竜破斬!!」
ガッシャァッン!!
パラパラパラ……
周囲に凍りついた砂の塊がまるで雪のように激しく舞い散る。
「なるほど。砂ばかりのところに攻撃呪文をたたき込んでもそのまま砂に埋もれてしまうものね。さすがレナ!」
レナの指示をうけてある一点にと水の呪文をとなえて砂を湿らせた。
その次にゼルガディスが氷の呪文でその濡れた砂を凍らせた。
ゼロスのいっていた遺跡は今では砂の下に埋もれて久しいらしい。
ルナ達より預かった地図にもその場所は載っていた。
ゆえに何か手掛かりがあるかもしれない、というのでその地図に示された場所までやってきた七人とひとつ。
入口と思わしき場所もすでに砂に埋もれており、どこに何があったのか面影すらない。
呪文を使って周囲を把握しようにも水の加護が加わっているがゆえにあまりわからないが、
瘴気に満ち溢れている最中、人の魔力容量程度の検索でわかるはずもなく。
「しかし。光の剣にそんな使い方があったのか」
ひとしきり、何やら感心した声をあげているゼルガディスの姿がみてとれる。
「あまりこれはやりたくないからつかわないがな」
今、ラウリィが使った方法は光の剣の波動で地下に眠る何かを探すもの。
これにかかる負担は剣の持ち主であるラウリィより、内部に封じられている兄の負担が大きい。
その精神を光の剣…すなわち魔族と同調させることにより周囲を見渡して検索する、というもの。
それゆえにいつもはこのような方法はまずとらない。
自らの勘を信じて突き進んでいた。
「でもわざわざそんなことしなくても。竜破斬なら砂がガラス化するんじゃないのか?」
ある程度の温度までたっすると砂は熱せられてガラスのようにと変化する。
そのことをレゾよりきいたことがあるがゆえに多少の疑問を含めて言っているゼルガディス。
「なるときとならないときがあるみたいよ?」
詳しくはよくわからないが。
昔、それの実験をしようとして炎をつかいまくっていたときにルナにものすごく怒られた。
まあそれら証明しようとして炎の範囲を広げたり何だりとした幼き日のリナであったのだが。
それももう過去のこと。
「そういえば。今の文明ではまだ詳しくは知られてませんでしたよねぇ」
何やらひとり、ぽそり、といっているゼロス。
かつて神魔戦争時代には、人間…否、知的生命体達は今よりも高度な技術をもっていた。
戦争により一度壊滅的にまで消滅し、そしてゼロからスタートして今の状態にまでなっている。
かつては物質などを形勢するモノまでをもコントロール術を身につけていた。
創られたときにそれらの知識も同じく獣王より与えられている。
それゆえのゼロスの言葉。
「昔実験したときは、塩と砂とでガラス状にできたけど。水にいれたらすぐに分解したし。
ガラス状になるとはいってもあまり使い道とかはないとおもうわよ。
まあ、中にはカミナリとかで砂漠にそういう状態になってるところとかもあるらしいけど。
塩における物質形勢の基本となっている物質はナトリウム。
そして、砂を塊とするときにそのナトリウムがつなぎの役割を担う。
熱が加わることによって融解し珪砂とナトリウム、もしくはカリウムが凝結した状態となる。
その状態となったときにガラス状態にと砂は変化する。
砂とは本来、岩石が風化、または侵食運搬されて生じる砕屑性堆積物、
人工的に細かく砕かれた粒系が2~1/16mmのもの。
それらが一般的に砂、と呼び称されている。
しかしこの世界の人々はそこまで詳しくはない。
ゆえにどうしてガラス化するのか、までは詳しくは知るよしもない。
熱により繋がった物質は常温では固まってはいるものの温度が上昇するにしたがいその結びつきは穏やかで流動的となる。
それゆえに結晶化することは特殊なものをのぞきまずありえない。
基本、温度的には千三百度以上でそういう現象がおこりえる。
「あ。ほんとだ。みてください。今のふきとばした砂。いくつかガラスみたいにくっついてるのがありますよ」
そんな会話をきいて周囲を見渡し、塊となっている砂をみつけてアメリアがいっているが。
たしかによくよくみれば、いくつか砂とはまた違う塊が周囲にと散らばっていたりする。
「まあそんなことより。どうやら壁がみえてるわよ」
何やら話題がまったくもって別のところにいっている。
それゆえに話題の方向性を元にもどしてぽっかりと空いたクレーターの中を指差しいっているリナ。
かつてこのあたり一帯には降魔戦争時代より以前には巨大な遺跡群が存在していた。
それらは今では砂に埋もれて影も形もその痕跡すら見当たらない。
が、しかしその遺跡は高度な文明により創られていたらしく少々の力では壊れることがないらしい。
砂がガラス化したかどうか、などとは基本的にはどうでもいい。
ようは目的となる場所がみえているか否か、である。
リナの指摘に視線をうつせばたしかにそこには砂に埋もれた壁のようなものが現れているのがみてとれる。
「ああ。そのようですね。あれこそが目的の場所です」
それを目にしてにこやかに断言しているゼロスであるが。
「ならこれを壊せばいいのね?」
コンコンコン。
長らく砂に埋もれていたわりにはしっかりとした造りをそのまま保っている。
しかも砂に他は埋もれてわからないが他もかつての原型をそのまま残してそこに存在しているようである。
「とりあえず炸弾陣で壊そっか」
「いやまて。レナ。それだと周囲の砂がくずれかねない」
確かに、炸弾陣ではその衝撃でせっかく今は落ち着いている周囲の砂が崩れてきかねない。
レナがいいかけ混沌の言葉を紡ぎかけだすと横からゼルガディスがそんなレナを止めにはいる。
「たしかにね。ならラウリイかガウリイに切ってもらったほうがいいわね」
ガウリイのもっている剣は周囲の魔力を切れ味にするという剣。
かたやラウリィのもっている剣は剣の形をとっているとはいえ異世界の魔族。
それがわかっているからこそのリナの言葉。
「とりあえずこれを斬ればいいのか?」
いいつつもすらり、と剣の柄に手をかけて剣を抜き放ち。
そして……
カキィッンっ!!
「うわっ!?」
壁に向かって刃をむけると同時、何かに反発したかのように背後のほうにと吹き飛ばされるガウリイの姿。
「ガウリイさん!?…って、これ、何か壁に直接に紋が刻まれてる?」
よくよくみれば壁というかレンガのようにみえたそれには細かく何かの術のような紋がびっしりと刻まれている。
「あ。ほんとだ。セイルーンでもみたことない文字羅列ですよ。これ」
巫女頭をつとめていることもあり、古代文字にも精通しているアメリア。
が、しかしそのアメリアですらみたことのない文字の羅列。
しかしところどころにある紋からしてこれが何かの術をしめしているのは想像できる。
てしてしと壁をたたきつつそんなことをいっているレナとアメリア。
「…なるほど。ね」
おそらく古代の術がいまだにいきているのであろう。
この埋もれた紋には興味はあれど今はともかく先をいそぐのが先決である。
「天空の戒めときはなたれし 凍れる黒き虚虚無の刃よ 我が力 わが身となりて共に滅びの道をあゆまん
神々の魂すらも打ち砕き……神滅斬!」
ヴッン。
リナの混沌の言葉と力ある言葉に従い、リナの手に黒き虚ろの刃が出現する。
この壁を斬るくらいならば完全版でなくて不完全版で十分。
そもそも完全版だと魔力の消費量が半端ではない。
この先に何があるのかわからないのだから極力魔力の消費はさけたほうがよい。
それゆえに不完全版を唱えた。
ザッン!
リナの手に出現した黒い小さな短剣くらいの刃はそのままそこにある壁をまるで無と化すようにとやすやすと切り裂いてゆく。
そこに現れるぽっかりとした黒き虚ろの空間。
ぽっかりと空いた穴の先はみえないがとにかく何か奥につづいているのだけはみてとれる。
「さ。いきましょ」
そのまま、先頭をきりその中にとはいってゆくリナに続き、
「あ。おい!リナ!」
そんなリナをあわてて追いかけていっているガウリイ。
「…い、いまのってやはりあの御方の…ですよねぇ……」
いくらちいさな力とはいえ傍でそれを感じること。
それすなわち、かの存在の力を感じることに他ならない。
ゆえにこそその場で多少固まっているゼロス。
「あ。なるほど。神滅斬なら何の問題もないか」
「そういう問題ではありませんわ!あの力はそう簡単にあつかってはいけませんっ!」
一人ぽんっと手をうっているレナに対して顔色をかえて訴えているシルフィール。
「とにかく。今はそんなことよりも。この先にいくのが先決だな」
何でもこの地下空間にある遺跡は例の歪みがあるとおもわれる場所にも通じているらしい。
水などもある、というのだから表面上の砂漠を歩くよりは地下空間をとおっていったほうがはるかによい。
なんでこんな遺跡が地下に埋もれていたのかはゼルガディスにはわからない。
かつてこのあたりには巨大な都市があった、とはレゾが調べた古の文献にはのってはいた。
が、その詳しい内容まではゼルガディスも、また研究していたレゾも突き止められなかった。
「ともかく!先にすすみましょう!正義が私たちをよんでいます!」
そんな彼らの反応とは対照的に、一人はりきっているアメリア。
それぞれがそれぞれの思いをめぐらせつつも、ひとまず彼らもまたリナのあけた穴の中にと足を進めてゆく――
『これは……』
「明かり」
明かりをともし、その光によってほのかに浮かび上がる周囲の光景。
とりあえず何があるかわからないので短剣の先にかるく抑えた光量の明かりをともした。
そしてすすんでゆくことしばし。
周囲に見えてきたいくつかの建造物。
それゆえに空にむかって持続時間を眺めに調節して魔法の灯を打ち上げた。
周囲にあるのは真っ白な岩のようなもので作られている頑丈そうないくつもの建物。
自分達があるいている場所にも同じような何かがびっしりと敷き詰められている。
建物の高さはほぼ統一しており、それらが区画それぞれにわけられきちんと整列して建っている。
おそらくはかつてはかなり文明が発達していたのがそれらの建物の様子からも見て取れる。
が、しかし、全員が同じく声をもらしたのはそれらとはまったくもって別件。
「……彫像?」
「…まさか…でも…そんな……」
その場にいるそれぞれが認めたくはない。
だけども目の前にみえている現実はいやでもその事実をつきつけてくる。
上空に浮かんだ灯りにより照らし出されたのはきちんと整った街並み。
それと同時にところがしこにまるで先ほどまで生きていたかのような人や猫といった石像の数々。
しばらくすすんでゆくと広い広場のような場所があり、
その中心にはせせらぎとともに噴水が今もなお水をたたえてわき出ている。
その周囲には鳥の姿をした石像の姿も垣間見える。
まるで、あるときそのまま時がとまってしまったかのような、そんな光景。
日常がすべて石と化してしまったかのような光景が目の前にと広がっている。
「「あああっ!!」」
それと同時、その場にしゃがみこむアメリアとシルフィール。
「アメリア?シルフィール?」
そんな二人を気遣ってレナが声をかけるものの、
「……なあ。リナ……」
「…わかってる。…信じたくはないけど……」
少し意識を向ければいやでもわかる。
この町に充満している何ともいえない悲哀の声なき声。
わかりたくもないのにわかってしまう。
この石となっている人々や動物。
これらすべては石になりながらもいまだに生きている、ということが。
だからこそガウリイの問いかけの意味を悟り顔をしかめているリナ。
「こ…この石像達…みんな、生きてますっ!」
「みなさん…石になっても、ずっと生き続けて…こんなことって……」
まだ意識が閉ざされて石になっているのなら多少の救いはある。
時間はそのままとまっているようなものなのだから。
が、しかし。
アメリアとシルフィールはその巫女、という性質上、聞こえてしまった。
石像から発せられている声なき声。
意識はあるのに動くこともできない。
そんな状況でここに住んでいたものたちはいったいどのくらい永い時を過ごしていたのか。
そこにあるのは、楽にしてくれ、死なせてくれ…といった悲哀の声のみ。
噴水はどうやら何らかの方法で水を吸い上げる方法をとっているらしく絶えず地下から地上にわき出ている。
噴水から湧き出た水は四方八方にのびており、町の中にちょっとした水路を水路をつくりだしている。
しかし、周囲に咲いている花もすべて石とかしており、この場で動いているのは水のみ、という異様な光景。
「…以前、聞いたことがある。ある日いきなり石と化した街のことを」
どうやらこの町全体が壁に覆われているらしく、本来ならそこにあるべきはずの空もまた閉ざされている。
かつてこのあたりにはいくつかの街が存在していた。
それももう過去のこと。
降魔戦争が本格化したときにはすでにその街という街は消え去っていた。
そのとき何がおこったのか残っている文献はひとつもない。
古代のことを調べていたレゾですらかろうじてその街のことがかかれている石板を見つけて知っていたのみ。
昔、その街を探したが見つからなかった。
と以前ゼルガディスはレゾに聞いたことがある。
もしもレゾが今もまだ生きていたらどうするであろう。
確かに彼は非道なことを行っていた。
自分の体を合成獣にしたのもまたレゾ当人。
しかし、最後の最後に自分の体を元に戻して人の心を取り戻して逝ったのも事実。
その石板には悪魔に魅入られ魔女に滅ぼされた。
と書かれていた。
「ここは一体なんなんだ?」
後ろからにこにこと笑みを浮かべたままでついてきているゼロスに無駄とは思うがといかける。
「ここはかつてルルイエ、と呼ばれていた国のひとつの街ですよ」
かつて降魔戦争時代に突入する前。
世界はいくつもの大国があった。
今では滅びの砂漠、と呼ばれている広大な場所にはルルイエ、という国があった。
その国は他の国と異なる文化などをもっていた。
「ルルイエ?…光の剣の生誕の地?」
その名前には覚えがある。
嘘かまことかわからないが、ラウリィの実家、ガブリエフ家に代々伝わっている伝説。
ルルイエ、という国に住む人々とエルフ、ドワーフが力を合わせて異界より別な存在を呼び出し、
その力を元に様々なものを創りだした。
そのひとつが今、自分の手元にある光の剣。
そう伝え聞いている。
「おや。ラウリィさんの実家のほうではまだそんな言い伝えがのこってましたか。
まあ隠す必要もないでしょうけど、そうですよ?
もっとも、今ではルルイエ国はすべて砂の下ですけどね。はっはっはっ」
そう。
すべては砂の下。
そこに何があるのか人間はおろか他のものとて知るよしもないであろう。
自分達以外には。
「ここはまだ入口にあたる小さな町ですけど。ルルイエ国は街と街をトンネルのような街道で結んでいたんですよ。
それが蜘蛛の巣のごとくにはりめぐらされていましてね。
僕らが目的とする場所もそこを通って行くことになりそうですね」
目的の場所はこの亡国の中心地点。
「ゼロスさん!こんな現状を今まであなた達はほっといたんですか!?」
にこやかに言うゼロスに対してアメリアがつっかかるものの、
「別に問題ないでしょう?それにどうにかしろなんて命令はうけてませんし」
そもそもこの地の管轄は冥王のもの。
獣王に属している自分とはまったくもって管轄外。
それに何よりもわざわざ生きとしいけるものを助ける義理なんてさらさらない。
「光と地と風の力よ 魔の呪文を今こそ破らん 崩魔陣!」
ぱうっ。
いつのまにやらか立ち上がったシルフィールがぶつぶつと混沌の言葉を唱え力ある言葉を紡ぎだす。
それと同時にシルフィールを中心として六紡星の光がその場に出現する。
この術はゆがんだ力の流れを正常に戻すもの。
この石化現象ともいえる目の前の情景が何らかの術によるものならば解除ができるかもしれない。
そんなほのかな期待をこめて唱えるものの、
「それは無理だとおもうなぁ。なんかこれらにかかってるの魔族だけの気配でないし」
「ですね。なんか異なる気配もしてますし」
その野生の勘というか天性の勘でそんなことをいっているガウリイとラウリィ。
「…あ、相変わらずというか…ものすごい勘ですね…ラウリィさん……」
しばらく彼らと行動をともにしていたときにラウリィの野生の勘には多少驚いた。
今のこの世の中、なかなか野生の勘を残している存在はあまりいない。
それがしかも人間だというのだから珍しいことこのうえない。
人の歴史の中ではそのような存在は異物として排除されてきていた。
またそのように自分達もしむけていた。
さすがにエルフや竜族などは陽動にのってはこなかったが。
人は自分にない力をみると畏怖し排除しようとする。
だからこそ魔族がつけいる隙があるのも事実。。
そんな二人の台詞ににこにこと笑みを浮かべたままでぽそり、とつぶやきつつ、
「お二人のいうとおり。普通の今現在あなた達が知っている術ではこれは太刀打ちできませんよ。
たしか中心地に竜神の力を込めた宝玉があったはずですし。それをどうにかすればできないことはないでしょうけど」
そう、できないことはない。
「ゼロスさん!それをしっていてあなた達は何もしなかったんですか!?」
「まあまあ。アメリア。こいつにそんなこといっても無駄だってば。
…とにかく、あたし達は先をすすむしかないのよ」
こいつがこう饒舌に説明する、ということは絶対に何か裏がある。
そう勘繰るものの先に進まないとどうにもならない、というのも事実。
ゼロスにつっかかるアメリアを制しつつ、
「で?今はどのあたりなわけ?」
出発するときにもらった地図には何の変化もない。
つまりはこの地図にこめられた力がこの場所には及んでいないということを示している。
「そうですねぇ。地図でいえばこのあたりですね。で、中心地が……」
ほぼ何も記載されていないこのあたりの地図。
滅びの砂漠の地図を指し示しながらもそんな会話をしているリナとゼロス。
どうやらまだまだ先は長い。
「とにかく!先をいそぐわよ!」
「…そうね。たしかに。リナさんのいうとおり。先をすすむしかないわね」
リナのいうことも至極もっとも。
中心地にあるという竜神の力がこめられているという宝玉。
それを媒体にすればこの現状をすくなくともどうにかできるかもしれない。
しかし魔族であるゼロスの情報である。
絶対に必ずどこかに裏がある。
それはわかっているもののそれをたよりに今は進んでゆくしかない。
ゆえにこそ一人つぶやきつつも全員の顔を見渡すレナ。
納得がいかないものの、たしかに自分達にできることを今はするしかない。
それゆえにそれぞれがうなづきつつも、石像と化した人々が住まう村を後にしてゆくことに……
この先に何があるのか、それはいってみなければわからない――
―― Go To Next
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あとがきもどき:
薫:はいv今回は珪砂とナトリウムの結びつきのガラス化現象をばv(こらこらこら
おそらくスレイヤーズの世界ではそこまで科学力はまちがいなく発達してませんしね。
なのでどうして砂がガラス化するか、なんてまだ解明されてないでしょうし。
そもそもそれを研究している人がいるのかどうかも不明ですね(苦笑
石像化している町。
ドラクエの7やったことある人ならピン、とくるかな?
もしくは5。
呪いでことごとく石と化した街。
そんな光景を想像していただけたら幸いです。
ちなみに、ルルイエとはいうまでもなく、「ルルイエ異本」が元になってますよv
ルルイエ異本とはクトゥルフにでてくる海底の都ルルイエに伝わっていたといわれる古文書です。
そこにはクトゥルフやその眷属の知識、異界のものを呼び出す知識がかかれている。
といわれてるやつですv
さてさて、そろそろエル様一人称にすべきかな?(こらこらこら!
次回でさくさく~と中心地へ(の予定)
なんか今回は説明っぽい回になってしまったなぁ……(自覚あり
ちなみに、なんで他の白魔術とかつかわなかったの?という疑問もあるでしょうが。
おそらく魔族がらみの何らかの術。
人が使える術というものには限度があるとおもうのですよ。ええ。
まあ、リナからしてみればいろいろと過去の経験上自力で開発してたりはするものの、
こんな不安定なところで金色の母の力をつかったらどうなるか…というのがあるのです。
何しろいわばリナ達は今現在、砂漠の真下にいるわけですしv
何はともあれ、ではまた次回にてv
2010年1月9日(土)某日
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