まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
忘れてる人もいるとおもいますけど、というか当人もあやしい?(こらこらこら)
ゼルガディスは22話でレゾの最後の力で元の人の体にもどっております(このシリーズは
サイトのほうはそれぞれに話が長くなったので各話のリンクに副題がでるようにしました。
ようやくガーヴ登場!それとレナ達とリナの合流vですv
何はともあれいっきま~す♪
########################################○パラレル・トラベラーズ○~魔竜王ガーヴと赤の竜神~
「って、何で姉ちゃんがこんなところに!?」
その姿をみて驚愕の声をあげるレナの気持ちも判らなくもないであろう。
一方で、
「いや、ちょっとまて。…赤の竜神騎士…様!?」
先ほどのアメリアの言葉をきいて驚愕の声をだしているミルガズィア。
ミルガズィアが水竜王でもある永遠の女王の元に用事があり出向いたのは百年ばかり前。
ゆえに今の赤の竜神騎士とは面識はない。
「そういえば。レナのお姉さんっていってたわね。お久しぶりです。赤の竜神騎士様」
白魔術都市の公式行事で巫女頭としてルナとはいく度かあったことがあるがゆえに頭を下げているアメリア。
「お久しぶりです。アメリア姫。なんかご縁でうちのレナと一緒に行動されていたみたいですわね」
そんなアメリアにひとまず挨拶をしているルナ。
「…なんかほんと、こいつらとかかわってからとんでもない存在にあいまくってるな……」
その横のほうではぽそっと何やら独り言をつぶやいているゼルガディス。
何だかここ最近で様々なことが変化しておりついてゆくのがやっと。
きっかけはレゾの魔王としての覚醒。
その結果、自分はレゾの最後の力で元の姿にともどり、そして今。
レゾの遺言ともいえるレゾの後始末をしている最中にレナ達と合流し今に至る。
「はじめまして。俺はラウリィ=ガブリエフといいます。縁がありレナと一緒に行動させていただいています」
ご丁寧にそんなルナにと頭をさげて挨拶しているラウリィ。
『お~い。そんな悠長に話しをしてる場合ではないとおもうぞ?なんか近づいてるぞ?』
ラウリィが手にしている光の刃の中よりそんな声もまたきこえてくる。
「あら。ほんと」
その気配を察知しのんびりとそれでいてまったく動じずにさらっといいつつも、
「獣神官ゼロス。よくもまあうちの妹達をいいように利用してくれたわねぇ」
にっこりといまだに多少固まっているゼロスにむかってなごやかに言い放つ。
しかしそういうルナの目は多少坐っていたりする。
「まあ、とりあえず。あとでしっかりと責任はとってもらうとして。…あらあら。ここの道が見えなくなっちゃったわねぇ」
「…たしかに。扉は消えたようですが。しかしその、『見えなく』とは…?」
先ほどラルタークが壊した岩壁のあたりをみながらも髪をさらっとかきあげつつもいうルナに対し、
戸惑い気味にとといかけるミルガズィア。
本当にこの人間があの赤の竜神騎士なのか?
という思いがミルガズィアの中にはある。
ルナは今現在気配も何もかも完全に人間のそれと同じにしている。
それゆえに多少のことでは大概のものは気付かない。
黄金竜達の中ではその存在はかの暁の竜神フレアドラゴンの力と意思をつぐもの。
として神聖視されている存在の一人。
「あの空間はこちらの物質世界とは異なる空間に位置しているから。
でもこのままだと逆に空間の歪みが広がりかねないわね。あとで訂正しておくわ」
「?」
そういわれてもミルガズィアはピンとこない。
「そういえば、ゼロスさん」
「はい?」
ルナの登場で固まっていたゼロスであるが、アメリアに問われ、ふと我を取り戻す。
「なんですか?」
「ゼロスさんはここに異界黙示録への入り口があるってしってましたけど。他にも入口とかしってるんでしょう?」
アメリアの意見は至極もっとも。
何しろここにレナ達四人をつれてきたのは他ならないこのゼロス。
「・・まあ、たしかに。一応いくつか知ってはいますけど。
簡単にいけるような場所ではありませんし。何よりお教えするわけにはいきませんよ?」
「なぜだ!?」
ゼルガディスとしてはレゾのこともありいろいろと聞いてみたいことは山とある。
自分の体が元にもどったとはいえ、レゾが他にも合成獣と化した存在は多々といる。
ゼロスのこたえに喰いつくようにやっきになっていってくるゼルガディスに対し多少こまったかのようにぽりぽりと頬をかきながら、
「そういわれましても。僕のお仕事はレナさんを異界黙示録の元につれてゆくこと。だったんですから。
ここの入口がなくなったからってはいそうですか。って勝手にみなさんを別の扉につれていったらおこられちゃいますよ」
「…あんたはどの世界でも根性無しの務め人よね…ほんとに」
そんなゼロスの言葉をききながら、エルとマナに延々と説教をしたのちにため息まじりにいっているリナ。
「まあ、僕達しがない魔族だなんて上の存在には絶対服従ですからねぇ。
今回、ラルタークさん達が敵にまわったのだって彼らを創った魔竜王ガーヴの命令あってのことですからね」
基本、魔族は己を創った存在には絶対服従。
それにはむかうことは、すなわち己の存在意義を否定することになる。
「その点、神族のほうは好き勝手にする輩もいるのが困りものなんだけどね……」
そんなゼロスの言葉にぽそっとどこか同意しつつもつぶやいているルナ。
それらが絶対に正しい、と疑問におもうことなく行動に移すがゆえに神族といえど正しい、とは限らない。
「あれ?でも上の命令に絶対服従なら。なんだって魔竜王ガーヴは自分を創った赤眼の魔王・シャブラニグドゥにさからってるんですか?」
そのあたりのことは一応アメリアも説明をうけてはいる。
それゆえの疑問。
「そもそもは千年前の降魔戦争が原因です。
あの時、赤眼の魔王様と魔竜王のお二方が水竜王と直接対決したんですけど。
水竜王を滅ぼしたというか倒したときに相打ちのような形で魔竜王も倒されちゃったんですよ。
まあ、倒されたといっても別にほろんだわけでなし。それは水竜王にもいえたことだったんですけど。
まあ今はそれは関係ありませんし。とにかく一時的に力を封じられこの世界に干渉する術を無くしただけのこと。
普通ならばほっとけばいずれ復活するはずでした」
「復活しちゃうんですか?そのまま倒されてくれていたほうが世の中のため。しいてはそれこそが正義ではないんですか!?」
アメリアの人の視点からみた意見をさくっと受け流し、
「まあ、当人の力や倒され方にもよりますけどね。
滅ぼされたもの。すなわち能力や意思や記憶や魂やらをばらばらに細分化された存在。
それらはそれらがたとえば何かにその力が宿る、ということはあっても元の形で復活することは絶対にありません。
とにかく、倒された存在はこの世界に具現化する力をうしなってしまいます。
何かの別の『器』を得れば話しは別ですが。
いい例がそちらの赤の竜神スィーフィードさんですね。
魔王様との戦いで生きとしいける存在達の間ではほろんだ、といわれてますけど。
その意思と能力、そして記憶をそのままに戦いにおいて消費した力を蓄える間人間として転生を繰り返されてますし。
まあスィーフィードさんも僕達と同じく精神生命体、でしたから。器を具現化する力を失ってそのようにしたんでしょうけど。
普通は時がたち、何らかの方法で力を取り戻せば再びこの世界に具現化することができます」
にこやかに説明するゼロスの台詞に驚愕の表情を浮かべてルナをみているアメリア・ゼルガディス・ミルガズィアの三人。
「…獣神官のくせにいい根性してるわねぇ。さらっと重要事項暴露したわね……」
ルナの声が低くなっているのは別に誰の気のせいでもないであろう。
「へ~。こっちのルナ姉ちゃんはそうなんだ。
私の世界のほうの姉ちゃんは記憶と力の一部しか受け継いでないっていってたけど。
ほとんどの力はシャブラニグドゥを封印するのに一緒に組み入れたとかってきいてたけど」
さらっとこちらもこちらで何気なく爆弾発言をしているリナ。
「つづきはあたしが説明する~!あのね、あのね。
あのときラグラディアはガーヴにちょっとしたふういんをかけたの~。
みずからの器のもつ力を鍵として。一般的には心と力とおもわれてるけど。
とにかく、それをつかってガーヴをひとにと転生させたの~。
ひととして転生してゆくあいだにヒトとは、まぞくとは、しんぞくとは、それらをかんがえなおすきっかけになるはず。だったんだけど~」
そんなリナ達の会話にとわってはいり、しゅたっと手をあげてにこやかにいっているエル。
「…エル。あんた姉ちゃんから何を習ってるのよ……。まあ、そのあたりのことはあたしもかつて聞いてるから知ってるけど」
それを聞いたもゼロスからだったけど。
その最後の言葉は口にせずにエルの頭をくしゃりとなでつつもため息まじりにこたえているリナ。
「たしか。そのうちにきおくとのうりょくをとりもどしたんだっけ?ね~さま?」
「そうそう。ガーヴのやつがまあ別に記憶と能力をとりもどそうがどうなろうが、別にかまわないしどうでもよかったんだけど」
ちょこんと首をかしげつつもエルを見上げてかつてきいたことを思い出しつついっているマナ。
「いや。それはどうでもよくないと思うんだが。俺としては……」
それまでほぼ黙っていたラウリィがぽそり、とエルの言葉にと反応する。
「いくどかてんせいをくりかえしただけでガーヴのたましいがヒトのそれとまじりあってね~。
ヒトのもつぞくせいとまぞくのぞくせいの一部がまじりあったの~。
それでもまぞくのぞくせいのほうが本来の魂のありかただからつよいんだけど。
へんなふうにガーヴのやつは解釈しちゃってエ…シャブラニグドゥのやつから離反したらしいの~」
「…エルちゃん。どこまで詳しくきいてるの?」
そんなエルに驚愕の表情を多少うかべつつもといかけているルナ。
それらは神族、魔族のトップシークレットのひとつ。
ルナのほうでも、また神族のほうでもそのあたりのことはきちんと把握している。
しかし別にそれをどうこうする気も、また魔族同士の騒乱にかかわる気もさらさらない。
ゆえにこそ傍観し見守る立場をとっていた神族達。
「…ですから。いったいこのおこさんって……。と、とりあえずまあ、今こちらのお子様がいわれたとおり。
変なふうに混ざり込んだ人間の特性のせいで魔竜王はあっさりと魔王様から離反してしまったんですよ。
その上にかつて自分を創造した赤眼の魔王様に表だって反逆し、
あまつさえかつて自分がつくった部下達を引き連れて対決姿勢をとりはじめちゃったんです。
まったく。ほんとこまったものです」
ルナの台詞に完全に固まっていたものの、エルの知っているはずのない知識を聞き別の意味で我を忘れてる場合ではない。
と意識を保っているこのゼロス。
「それで。裏切った自らが生き延びるためにはルビーアイのもと魔族がひとつにまとまっていては無理がある。
そう判断して人間を巻き込もうとしたんでしょ?ここのガーヴも。
今現在、この世界に具現化している魔王はカタートの北の魔王、レイ=マグナス=シャブラニグドゥだけだし。
その北の魔王の身に何かがあれば統率を失った魔族はそれぞれに好き勝手しはじめるでしょうし。
…かつての覇王のように」
あの覇王の計画においてリナは大切な仲間を失った、といっても過言ではない。
しかしそのきっきかけをつくったのは人間の愚かさ。
「ちょっとまってください!リナさん!北の魔王ってあの大賢者のレイ=マグナスなんですか!?」
どこか驚く部分がちがわなくもしないような気もしなくもないが、その台詞に反応しているアメリア。
「おや?人間はもしかしてしらなかったんですか?まああの戦いであの場で生き延びたものはいませんしねぇ。
ともあれ、ガーヴはそれゆえに人間やエルフ、はては竜族などをも巻き込んでカタートに攻め込み。
そしてその混乱のどさくさまぎれに水竜王さんに封印され身動きがとれなくなっている赤眼の魔王様を倒す。
まあ、そのつもりだったんじゃないんですかね?」
「『きたぞ!』」
ゼロスがそういったその刹那。
今まで警戒態勢をとりつつも剣をずっと構えていたラウリィと、そして剣の内部から同時に声が発せられる。
それとほぼ同時。
「しかし、それはあっさりとつぶされた――」
聞こえた声はレナ達の後ろから。
声のしたほうを振り向けば、そこには抜き身の剣をぶらさげ佇む竜の鎧の騎士が一人。
「おや。おもどりになったんですか?ラーシャートさん?」
というかここにはあのスィーフィードさんも正体不明のおこさんもいるのによくもまあ。
そんなことを思いつつもそのことは微塵も表情に出すことなくにこやかにそちらのほうを振り向きながら言い放つ。
「ラルターク殿の倒れた今、私だけではキサマにかてんが…すくなくともその娘だけは始末しておかんとな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?なんで娘が二人にふえてる!?」
淡々としたゼロスとは裏腹に、レナとリナの姿をみて交互に二人をみつつも戸惑いの声をあげているラーシャート。
魔族のラーシャートにとっては二人の違いなんてものははっきりいってわからない。
そもそも、二人の違いはといえば背とそして胸の大きさ程度。
雰囲気も多少異なるものの、そのあたりの細かいことまでは人間を見下している魔族である彼にはわからない。
「なるほど。お気持ちはわかりますが……」
キッン!
ゼロスがいいかけたその刹那。
ゼロスの直前に暁の光が一瞬炸裂する。
それと同時に生まれて暁の光によって消滅したのは紅い閃光。
「…何かものすっごく不本意なんですけど…スィーフィードさん……」
それが何を意味していたのか悟り、不満そうにルナのほうをみていっているゼロスに対し。
「あら?精神世界面からの攻撃はあんたの得意技だったから?
でもあんたの横にはうちのレナ達がいるのよ?それを考えたらあたりまえでしょ?」
基本、ルナは妹にはかなり甘い。
レナはそのことを自覚はしてないが。
「あ~…あたしのときはゼロスのやつ、攻撃さけきれずにぱっさりと右腕おとしてたっけ……」
かつての出来事を思い出し、ぽそっとつぶやいているリナ。
「…ほ~。まさかあの噂に名高い赤の竜神騎士がいるとは、な。
というか自らスィーフィードのお出ましとは、いったい何事だ?あんたらは基本かかわろうとはしないだろうが」
この場にいなかったはずの野太い声がレナ達の耳にと聞こえてくる。
その場にいた全員…一部を除く、が。
ともあれレナ達が声のしたほうをふりむけば、そこにはみたことのない男性が一人。
ラーシャートがいる方向とは逆の方向。
カタート山脈の頂上に続く道をふさぐようにその男はたっている。
歳のころならば二十歳すぎ。
がっちりとした体格を象牙色のコートでつつみ右手ににぎった赤い片刃の長剣で自分の肩をとんとんとたたいている姿が目にはいる。
野性的な顔立ちの表面には邪悪、ともいえる何ともいえないものがただよっている。
長くのばしている赤い髪がざあっと風にとゆれる。
「こちらにも事情があるのよ。それよりおひさしぶりね。魔竜王ガーヴ」
ここに来るまでまったくもって気配も何も感じなかった。
だがしかし、今受けた防壁の波動はまぎれもなくスィーフィードのもの。
ゆえにこそ確信がもてた。
それゆえに『それ』を放った存在に言い放ってきた人物に対し憶することなく淡々といっているルナ。
「あんたとは神魔戦争以来、か?あんためったにあれからは表にでてはこなかったからな。
まさかスィーフィードはルビーアイのやつに味方するのか?そこのゼロスと一緒にいるなんて」
視線でゼロスを指差しながらもルナに対して言い放つ。
「それは違うわよ。というか魔族の中の動乱にかかわることは許されてないわ。理に反するもの。
私は私の目的があるからよ。それにあなたこそ自らの存在意義に反することをしたらどうなるかわかってるわけ?」
静かな問いかけではあるが二人の間には冷たい空気が張り詰める。
「はん。所詮魔族といえども滅びるためにいきる。その根本的なところはかわっちゃいないさ。
…しかし、なんだって問題の娘が二人になってるんだ?」
ガーヴもまたリナとレナをみて不思議そうに首をかしげていたりする。
まあ、わかるはずもないであろう。
よもや平行世界より別の同じ存在がやってきている、などという事実を理解できるほうがどうかしている。
「…ねえ。ゼロス。あれが問題のガーヴなわけ?」
「ですけど。…しかし、こまりましたねぇ。ここでまさかスィーフィードさんとガーヴが衝突なんてしたら。
…僕、あなたを守るようにもいわれてるんですけどねえ…僕の力なんかじゃ守りきれませんよ」
レナの問いかけに多少困ったように額に指を押し当ててそんなことをいっているゼロスであるが。
いくらゼロスとてガーヴと、そしてスィーフィードの力の余波を完全に防ぐことは不可能。
自分だけならばいざしらず、力のない人間をも守りながら、となれば話しは別。
それゆえのゼロスの台詞。
「ついにでたわね!諸悪の根源!あなたがセイルーンとディルスの王宮を混乱に陥れ。
あまつさえレナの命を狙っていた悪人ね!このアメリア。正義の名のもとに成敗しますっ!
でも思っていたより想像と違うわね。もっとおどろおどろしい悪人らしい姿とおもってたけど!」
そのあたりにころがっていたちょっとばかり高さのある岩の上に丁寧によじのぼり、
びしっとガーヴのほうにむけて指を突き付けてやおらポーズをとりながらも宣言しているアメリア。
「…あいつ、状況、理解してるのか?」
そんなアメリアをみて頭をかかえてぽそっとつぶやいているゼルガディス。
「はっ。笑わしてくれる。善も悪もあるかよ。そもそも善と悪とは何なのか。
そこの元気なお穣ちゃん。考えたことがあるか?自分が生きるために戦って何がわるい?
それに俺はこけおどしは嫌いでね。バケモノじみた姿にもなれるがこの姿がきにいってるんでね。
第一、姿をかえたところで力がかわるわけでなし。誰かがおびえるってわけでなし。
なら動きやすいこの姿のほうが戦いには便利なんでね」
そんなアメリアにむかって小馬鹿にしたように丁寧に言い返しているガーヴであるが。
「何をよまいごとを!我が身かわいさに周りのものをまきこんで!世に混乱をまき散らそうとする!
それが悪でなくていったい全体何だっていうの!」
アメリアの意思は揺るがない。
「なら聞くが。おそらく確実に混乱の源になるであろう冥王の計画に踊らされているとは知りつつも、
自分が生きるために従ったそいつ。…どっちの娘かはわからねぇがな。
レナとかいうお前の仲間も悪人か?なら当然お仲間のお前も悪人ってこったな」
「うっ!?」
ガーヴの指摘に思わず押し黙るアメリア。
そんなアメリアをちらっと一瞥し、
「かかわる気がないんならちょっとぱかりほっといてもらおうか。スィーフィード。
さて。ゼロス。よくもまあいろいろとやってくれたもんだな」
ルナが表だって手だししてこない、そう判断しゼロスにと視線を定め、
「わけのわからんたくらみだけならまだしも。ラルタークは倒してくれたし。
お前達にこっちの動きを気取られないようにいろいろと動きまわって、
こそこそ根回ししていた事柄もあっさりと台無しにしてくれたしな……
ガイリアシティなんて力をいれていただけに特にいたかったぞ」
淡々とゼロスにむかって言い放つ。
「何をいっているのよ!町を火の海にかえたのはそいつでしょう!?
そこのラーシャートがこともあろうにディルスの将軍になってレナの命を狙ってなりふりかまわずに火をつけたんでしょう!」
あの場にリナだけでなくアメリアもまたセイルーンの王族、ということもあり共に出向いていた。
ゆえにこそアメリアのほうはそのように解釈していたりする。
「…何をいってるんだ?セイルーンの元気なお穣ちゃん」
アメリアがセイルーンの王族、というのはラーシャートから連絡をうけたガーヴは一応は知っている。
「そうか。お前気づいていなかったのか。
ガイリアシティを火の海にしたのはそこのゼロスだ、ということに」
ルナ…すなわちスィーフィードの出現には戸惑い固まっていたものの、上司が大事ない。
そう判断したのをみてとり多少声をふるわせつつも呆れた口調で岩の上にいるアメリアに言い放つラーシャート。
「え?で、でも……」
アメリアからすれば正体不明の魔族においかけられ、あまつさえ自分の眼下で町が火の海になるのをみていた。
それゆえにすぐには信じられない。
しかもそれは魔族のいうことである。
「はっきりといってやろう。セイルーンの姫よ。私の役目はディルス王国の戦力を手にいれること。
そして仲間がセイルーンの戦力をも手にいれる役目をおっていた。
セイルーンとディルス。大国の二つが戦力となりえれば我々の好機はます。
そしてさらに加えて竜やエルフの協力をえること。
レナという人間の抹殺はラルターク殿の役目だったのだよ。
しかし、お前達があの町にとやってきたときに正直殺してやろう、とはおもった。
だが…すぐに、ではない。いったであろう、王宮で。おまえもいたのだからな。
戦力増強のため、下級魔族にくらいはダメージを与えられるように兵士達に魔術のレクチャーをしてくれ、とな。
その仕事を終えた時点でお前達を始末してやろう、とおもったのだがな」
アメリアを始末して別のものがアメリアの姿になり国にともどり再びセイルーンを自分達のものにする。
そのはず…であった。
「しかし、その仕事より先に姿をかえたゼロスがお前達の命を狙うふりして王宮と町をずたずたにしてくれたわ。
あれでは戦力の増強どころではない。…よく考えてもみるがよい。おまえも王族ならばわかるだろう。
レナ、という人間が冥王のわけのわからん計画の一部だ、ということはわかってはいるが。
しかし、正体すらわからん計画をつぶすために自分達の進めていた計画。
それもかなり拠点、ともいえる重要なものをわざわざつぶす馬鹿がいるとおもうのか?」
「…え?ゼロスさん!?本当なんですか!?」
そこまでいわれればアメリアとてわからないはずもない。
あのとき、レナは『リナ』に心でアレがゼロスであることは告げられていたので知ってはいた。
しかし気づいたときにはすでに町には火の手があがっており……
「しかし。千年ほどお目にかからなかった間にずいぶんとイメージがおかわりになりましたねぇ」
そんなアメリアの悲鳴に近い問いかけはさくっとムシして目の前のガーヴに対してにこやかに話しかけているゼロス。
「そうか?昔はもうちょっと礼儀正しかったか?」
「逆ですね。昔はもっと気が短かったでしょう?あなたは。
そもそも『だれか』の質問や問いかけにこたえるなんてあなたはまったくしなかったでしょうに」
「たしかに。ガーヴは猪突猛進っていう人間のことわざがものすごくぴったりあてはまってたわね」
ゼロスの言葉に横で何やら同意しつつ、
「シャブラニグドゥもずいぶんとガーヴには手をやいていたからねぇ」
かつてのことを思い出しどこか遠くをみつつもそんなことをつぶやいているルナの姿。
「で、それをフィブリゾがとめてたのよね~」
「あら?エルちゃん。どうしてそれをしってるの?」
「んふふv」
しみじみとしたルナの台詞に横から口をはさんでいるエル。
正確にいうなればとめていた、というかからかっていた…というか、ともあれうまく操っていたのは確かな事実。
「まあ昔のことはどうでもいい。それより、だ!
スィーフィードがここにいる、ということは神族のほうも冥王のインケンやろうが何をたくらんでいるのか把握してるのかもしれねぇが。
ヤツはいったい何をたくらんでいやがるんだ?」
あの子供はなんなんだ?
そんなことをおもいつつも自分には関係ない、そう判断しゼロスにむかってといかける。
その切っ先の方向はすっとゼロスにと向けられている。
それは精神世界面においてもいえること。
「残念ですが。僕は冥王様からは計画の詳細は聞かされていないんですよ」
にこやかにかつてレナにも語ったことを笑みをくずさずにいいきるゼロス。
「きき方がわるかったか。なら質問をかえよう。
その計画の中身。冥王以外の誰か…たとえば獣王からは何もきかなかったか?」
「「あ」」
ガーヴの質問にアメリアとゼルガディスの短い声が重なる。
彼らもまたゼロスから計画は知らされていない。
とは聞かされている。
しかしそこまで考えが回らなかったのも事実。
もっともレナのほうは『真実』を知っていたこともあり大体見当はついていたのではあるが……
「…なかなかつっこみがするどいですねぇ。それも人間の心がまじったせいですかね?
以前のあなたはそんな考えをめぐらせるなんてまったくもってしなかったでしょうに。
たしかに。お察しのとおり獣王様からは今回の計画の詳細は聞かされています。
今回の計画の目的は……秘密です♡」
にっこりといつもの人差し指を口元にあてていいきるゼロス。
「それより。もういっこきてるんだが。…あいつ、きづいてないのか?」
「もう、いっこ?」
ガーヴのいる空間の真後ろの方向をみつつも警戒を崩してないラウリィ。
そんなラウリィの言葉に首をかしげつつもといかけるゼルガディス。
「…エル。マナ。絶対にあたしからはなれちゃ、だめよ?」
あれのこと。
人質にするには幼い子供のほうが効率的。
そう思っても不思議はない。
というか確実に何か仕掛けてくる。
それゆえに警戒を強めているリナ。
「ゼロスの役目はガーヴをおびきだすことでもあったしねぇ。
ここらいったいアレごとふきとばしたらおもしろいかも」
にこやかにリナの足元でそんなことをいっているエル。
「ね~さま。ギガスレやるの?」
「やってみたらおもしろそうかな~って」
「ならマナもやる~!」
「って、お願いだから。あんた達は大人しくしておいて~!
それがあいつに…フィブリゾの野郎にわかったら危険すぎるわっ!」
あの魂の水晶。
もし子供達の魂を水晶に変えられたら…とおもうとぞっとしてしまう。
まだ子供達があの力を使える、とは知られていないはず。
ここで知られてはもともこもない。
「…リナさん。あなた、子供達に何をおしえたんですか?」
ギガスレ、の意味を瞬時に悟り、顔色もわるくもそんなリナにといってきているルナ。
「ともかく。フィブリゾのインケン野郎の計画が判らない以上、俺もいきるために戦うしかねぇ。
あんたら人間だってそうなんだろう?生きるために戦う。
魔族とちがって一切合財自らの意思と力において世界を滅ぼすためだけに生きるというわけじゃないんだろ?」
そんなリナ達のやりとりに気づくことなく、
ゼロスのこたえにちっと舌打ちしつつも、びっと剣をレナ達の方向につきつけて言い放ってくるこのガーヴ。
「世界を滅ぼすため?」
その言葉の意味がよくわからずにオウム返しにといかけているアメリア。
「世界を滅ぼし、自分達も滅び、そして混沌へと還る。
己の意思と己の力でそれを成し遂げること。それが魔族の在り方。
そのために創られたのが魔族ってわけだ」
「ですから僕としては冥王様の計画はどうも…とおもうんですよねぇ。
ゼラス様からも協力はするが深入りするなっていわれてますし……」
ぽそっと本音をそんなガーヴの台詞をききもらしているゼロス。
「もっとも。そういう俺も千年前まではそれがあたりまえだっておもっていたがな。
だが、何度も人間の中で死んだり生まれ変わったりをしているうちに意見がかわっちまってな。
はっきりいってカタートの連中にはついていけねぇ。ただ逃げているだけでもよかったんだけどな。
しかし何かのはずみで他の赤眼の魔王の欠片が目覚めようものならそれこそこの世界ごとけされちまう。
消されるまではいかなくても神魔戦争時代へ再び逆戻り、だ。
となれば手はひとつ。こっちからしかけて赤眼の魔王の欠片をひとつづつつぶしてゆくまで。
手始めが北の魔王ってわけだ」
ぽそっといったゼロスの言葉は耳にとどいていないらしく、アメリア達にむかって淡々と言い放つ。
「……ひかりとヤミはりょうよく。たいきょくでありどうとうなるもの。
ひかりがませばやみはつよくなり、やみがこくなればそれにともなうひかりもます。
ひかりとやみがつよくなればそれだけそれらにこおうして数多の命のかがやきもます。
そのようにせかいはある。還ってもそこからふたたびあらたなやくめをむかえてたびたつ。
それらのかずだけせかいはひろがってゆく。それらが命というもののあるべきすがた」
「エル?」
「エルちゃん?」
そんな会話をききつつも、淡々といっているエル。
そんなエルを不思議そうにみているリナとルナ。
そう。
世界はそのようにできている。
否、おおいなるものに『創られた』、のだから。
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あとがきもどき:
薫:原作設定ではルナのほうは記憶はうけついでなく、力のみ。になってましたけど。
こちらの設定はそのあたりも変えてます。
さらっとゼロスが暴露しているのが何げに見どころ(?)のひとつだったり(かなりまて
エル様がさりげに正体暴露ともいえる台詞いってるけど気づいている存在はいません(笑
次回でようやく冥王フィブリゾ登場ですv
…まあ、ルナがいる時点でかなりスレイヤーズの原作とは異なってますけどねぇ。
というかそもそも問題なのはこの場にエル様当人(!)がいる、というこの事実v
何はともあれではまた次回にてv
2009年5月6日(火)某日&2010年1月5日(火)訂正
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