まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

さてさて、このたびでてくる街の名前は私が勝手に作成しているものです。
まあ、原作&SPででてきた街で使い勝手がいいところがなかった。
というのが実情ですしね。
そもそもSPのほうはきちんとどの国のどのあたり…と明記されてないものが多いし……
ともあれ、今回からは新展開~
原作にもなかったオリジナル展開ですv
ではでは~♪

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○パラレル・トラベラーズ○~閉鎖された街~

「「「ええと………」」」
思わず三人が三人とも同時につぶやく。
「ここってこんなに警備が厳重だったっけ?」
ラルティーグ王国の中においても物流などの拠点として重要性が高い、ここラルド・シティ。
ちょうどこの街からは、ディルス王国、セイルーン王国、カルマート公国。
さらにいえば沿岸諸国連合。
そのどこにでも街道が整備されており、街道を進んでゆけばたどり着ける。
ゼフィーリアにむかいがてら、マインの村に立ち寄り、クロツ達の本拠地があるであろうあの場所。
そこを確認しようとおもっていたリナにとってはこの厳重さは理解不能。
それはどうやら、レナ達も同じおもいらしく、おもわず目を点にして同時につぶやくリナ・レナ・ラウリィの三人。
いつもならば、重要な流通の拠点の一つでもあるので街の門は閉ざされていない。
だがしかし、今では何やら厳重に警備にあたっている兵士の姿が目にとまる。
「あ、あのぉ?何かあったんですか?」
とりあえず、近くにいた旅人に話をきくレナ。
「あんたらも旅のものかい?いやぁ、こまったよねぇ。何でも発行されている通行書。
  それがなければ何か数日前から中にはいれないらしいんだよ。
  あとは身元がしっかりしていれば問題ないらしいんだけどね。しかし、そんなことどこでも教わらなかったんだけどねぇ」
どうやら旅の行商人らしいその人物もまた途方にくれて戸惑った声をだしていたりする。
「まあ、定期便の荷馬車がでてるし。それにのれば今日中に他の街にいけるしね。
  あんたたちもそのほうがいいとおもうよ?」
いいつつも、少し離れた場所に人だかりができているほうにとあるいてゆくその行商人。
「通行所?そんなものを発行してるなんて、きいたこともないですけど?」
その言葉に首をかしげているアメリア。
そういう話があれば、王族であるアメリアの耳に即座に届いてきているはずである。
たとえ、少しまえに王宮を抜け出しているとはいえ、いきなりそのようなことになるはずもない。
「噂だけどね。街の中からは誰もでれなくなってる。という噂もあるんだよ。何がおこっているのかねぇ。
  中に入り込んだ人たちとも連絡がつかないらしいし」
首をかしげているそんなアメリアに、こそっと別の旅人が小声でいってくる。
どうやら見る限り、ことごとく旅人たちは町に入るのを拒まれており、
許可されるのはいかにも怪しいような格好をしている男たちなどといったもの。
「怪しいですね。そんな報告、私が国にいたときにもありませんでしたし」
「たしかに。怪しいな。とりあえず門のところにいってみるか」
「たしか、ここの領主のラルグ公はかなりの人格者、ときいているけど」
ラルグ・シティ、というのはこの辺りを治めているラルグ家の名前をとりつけられている。
ラルグ・シティはこの辺りを治める領主の城をも抱えており、それゆえに彼を頼ってやってくる人々も多い。
そんな街でこのようなことがおこっている、となれば当然どこかに話題はのぼるはず。
だが、そんな話題はアメリア達は聞いたことすらない。
アメリアの考え込む様子に、悩んでいても仕方ないとばかりに歩き出しているゼルガディス。
そしてまた、少し考え込むようにいっているレナ。
「…ねえ、ガウリイ?はてしなく嫌な予感がするのって気のせいかしら?」
「気のせいじゃないような気がするなぁ。いくつか何かの気配が中からしてるし」
さらっ。
さらり、というガウリイの言葉。
『何か』つまり、それは人でない存在がいる、ということ。
「まったく。すこしはふかふかのベットでゆっくりと休ませてよね……」
リナのそんなつぶやきは、そのまま空気に溶け消えてゆく。

「なぜですか!?」
「なぜでも。ですっ!…悪いことはいいません。お引取りください。アメリア姫」
身分がきちんとわからないものは入れられない。
そういわれ、身分を明かして中に入れるようにお願いしたアメリア。
だがしかし、門番から帰ってきたのはまったく別の返事。
それゆえに、アメリアが意地になり、言い合っていたりする。
「あのぉ?何で身分がはっきりしてるセイルーンの皇女でもダメなんですか?」
とりあえず疑問におもったことをといかけるレナ。
「それは……われわれもこれ以上、ことを大きくしたくないからです」
どこか困ったように、それでいて言葉をにごしている門番の兵士。
「いったい、ラルド公に何かあったのですか?」
「そ…それは。とにかく、おひきとりください。あなた様の御身にまで何かありましては……」
言外に、危険だから、という言葉を含めてアメリアに礼をとりつついっている兵士。
「アメリア。仕方ないわよ。とりあえず、いきましょ」
「…むぅ」
何かを隠している。
それは判る。
判るが、街の中に入れられない、というのはどういうことなのか。
兵士の対応に疑問をおもいつつも、ひとまずその場を離れるアメリア達。
そのまましばし無言で門が少しばかりかすむ程度まで歩いてはなれ、その場にて立ち止まる。
「絶対に何かあったに違いありません」
「もしくは、悪質なはやり病がおこった、とも考えられるな」
それにしては、ごろつきのような輩を街の中にいれているのが気にかかる。
少しばかり確認した限り、街の中から誰かが出てきた、という様子もない。
つまりは、入ることも出ることも実質的に制限されている、というのに他ならない。
「とにかく。昼間、明るいうちは警備が厳重のようだし。夜になってはいりましょ。幸い、今日は新月だし」
新月であるがゆえに、月明かりはさほどない。
しかも空の具合を見る限り、おそらく夜は曇るであろう。
ここから次の街に馬車で移動する、というのも一つの手ではあるが。
何かありそうな場所をほうっておいてまで移動する気にはなれない。
第六感が告げている。
ここには何かが起こっている、と。
「たしかに。リナの意見に同感だ。夜になって街の中にしのびこもう」
街は壁によってはりめぐらされ、一応警備が敷かれている。
だがしかし、どこの世界にも裏技、というものは存在しているのだ。
特に、今この場には剣の腕が一流どころが二人と。
そしてまた、魔術に長けた人物がそろっている。
正面から入れなくても、入る方法はいくらでもある。
「…まさか…ね」
このような状況には覚えがあるがゆえにつぶやくリナ。
リナはこのような状況を知っている。
もっとも、それは城の中に入る云々、といったものであったが。
とにかく、街の中で何が起こっているのか理解し把握するのが先決。
ゼルガディスのいったとおりに、タチのわるいはやり病みたいなものがおこったのかもしれない。
だが、それならば必ず近隣の町にも連絡がいくはずである。
旅人の誰もが情報を知らない、というのはおかしな話。
あれからいく人かの旅人を捕まえては聞いてみたが、このような状況になっているなど聞いたこともない、とのこと。
それも多少疑問におもう。
少なくとも、この街から出て他の街に行こうとするならば、そこから噂が広まってもおかしくはない。
「つい数日前からなんでしょうか?なら誰も噂にのぼっていない、というのもうなづけますし」
「いや。それはないんじゃないの?アメリア?ここっていちおう重要な流通経路の町だし。
  何かあればすぐに噂になるわよ。いくらそれがたとえ前日にあったことでも」
つぶやくアメリアに即座に突っ込みをいれているレナ。
レナとて何が起こっているのかなんかわからない。
ぴくっ。
「?ガウリイ?」
「ラウリィ?」
「あ」
そんな会話をしている最中、ぴくり、と何かに反応しているガウリイ、ラウリィ、エルの三人。
「ちっ。今の悲鳴は何だ!?」
「あっちだ!」
リナ達には聞こえてはいない。
だがしかし、どうやらガウリイとラウリィは何かを捕らえたらしく、険しい表情にて剣に手をかけ走り出す。
「とにかく、いってみましょっ!」
「はいっ!」
「とりあえず、あたしは先に飛んで様子をみてくるわっ!」
「あ、あたしもいきますっ!」
アメリアもゼルガディスも高速飛行の術である翔封界レイウィングは使えない。
この場で使用が可能なのは、リナとレナ。
そしてエルとマナくらいであろう。
もっとも、マナに関してはいまだにコントロールに難点があり異なる場所にいくこともしばしばであるが。
ガウリイの様子からして、ただならないことがおこっている。
それは長い付き合いだからこそわかっている。
あのような表情をガウリイがする場合、一刻を争う、ということも。
「あ、マナもいく~」
「マナ。あたし達はのんびりといこ?」
何が起こっているのか視えたがゆえに、できればマナには見せたくない。
というか、そのまま眠らせときたいのがエルの本音。
「あ、あたし達はだいじょうぶだし。先にいって~」
「そういうわけにもいかないだろうがっ!」
「だけど。…この匂いから察するに……」
そんなエルの台詞に思わず叫ぶゼルガディス。
何かが起こっている状況で子供二人、この場に残してゆくわけにはいかない。
そもそも、リナとレナはすっ飛んでいき、ガウリイとラウリィの姿はすでに見えない。
この場にいるのは、ゼルガディスとアメリア、そして二人の子ども達のみ。
ゼルガディスの怒鳴り声にも動じることなく、少し顔をしかめてつぶやくエル。
そう、風にのって確かな匂いがただよってきている。
この先でおこっている残酷な光景を示すかのごとくに。
「とりあえず、ゼルガディスさん。エルちゃんたちは私がみていますから。
  ゼルガディスさんもむかってください」
自分が走るのでは足手まとい。
いつもならば、正義のために率先してかけてゆきたいが、今何よりも重要なのは子ども達の安全。
「あ。ああ。わかった。…だが、無理をするなよ?」
何かがおこっている。
だから、何が起こるかわからない。
ゆえに注意を促し、そのままリナ達が向かっていった方向に走り出してゆくゼルガディス。
そんな彼を見送りつつ、
「さ。エルちゃん。マナちゃん。私たちもいきましょうか?」
子供の足並みにそろえて歩けばそれはかなり遅くなる。
はやる気持ちを抑え、とにかくエルとマナを両脇にと移動させ、互いに手をつなぎ歩き出す。
リナか~さんたち、先にたどり着くまえにもどってきてくれればいいけど…
そんなことをエルが思っているとは、アメリアは知る由もない。

「こ…これは……」
「そんな…っ!?」
目の前に広がる光景。
ガウリイやラウリィが指し示した方向。
そこには、先ほど出発した馬車が無残にも壊されており、乗っていた人々が累々と横たわっていたりする。
しかも、その体は無残にも引き裂かれていたり…と様々。
追わず口元を覆うレナ。
「とにかく!生存者を助けることが先決よっ!」
「は、はいっ!」
目を覆いたくなるような惨状。
だがしかし、一縷の望みをかけて生存者を探す。
リナ達は知らない。
あの場所から馬車などを使い他の街に行こうとする人物はすべて、『処分』されている。
ということを。
そもそも、馬車自体が一種の『罠』なのだから。
だからこそ、どの街にもあの街の噂はとどいていない。
そう。
真実を知るものが全て処分されている現状においては知るすべはない。

「いったい…何だっていうのよ……」
やるせなさだけが残る。
かろうじて息があったものですら、まるで溶けるように体が掻き消えた。
それは、その場に転がっていた元人であった人々もまた然り。
中には先ほどまでリナ達と会話をしていた旅人たちの姿も垣間見えていた。
それら全ての人間の骸がことごとくに溶けて掻き消えた。
そこにあったはずの馬車の残骸ですら気づけばいつのまにかなくなっていた。
後にのこるは、土にしみこんだどすぐろい染みのみ。
レナの想いは至極当然。
そんな中、襲ってきたレッサーデーモン達は駆けつけたガウリイとラウリィの手によってことごとく消滅させられた。
野良デーモンが突如として偶然にも出現した、というのはあまりにも偶然すぎてありえない。
ならば、考えられることは。
「…誰かが、仕組んでいる。としか考えようがないわね」
とりあえず、遅れてやってきた子ども達にあの惨劇をみせなかったことにほっとする。
助けられなかった人々のことは悔やんでも悔やみきれないが、だがしかし、どうにもできなかった。
というのもまた事実。
レナの言葉に続き、少し考え込むつぶやくリナ。
「とにかく。…やはり、答えは街の中にある。としかおもえないな」
ゼルガディスもまた、リナ達から事情をきき、思案をめぐらせてその可能性にたどりつく。
そう。
全てはあの街、ラルド・シティより始まっている。
街の中にて、何が起こっているのか。
それを知ることこそが、命が失われた人々の供養にもなるであろうから――


シィン。
いつもならば虫の声くらいしてきそうなのだが。
夜の静けさのみが静かに周囲を支配している。
とりあえず、少し離れた場所にて夜が深まるのを待ち様子をみていたリナ達一行。
少し視線を壁のほうにむければ、壁の上のあたりにいくつかのともし火が見て取れる。
つまりは、上空からの進入に備え、一応は警備しているものがいる、ということ。
「確認してみたが、壁の周囲にはほとんど見張りの姿はみえないぞ?」
念のために、男性陣が先立って周囲を探索した。
その結果、どうやら街の周辺には人っこ一人みあたらないらしい。
「それじゃ、いきますか」
く~く~
すでに夜、ということもありマナは体力にまけて眠りについている。
「んで、けっきょくどうやってはいるの?おか~さん?」
一方でまだおきているエルはといえば、リナ達をみあげつつきょとんとした声で問いかける。
方法としては、壁を壊して中に進入。
それが一番手っ取りはやい方法ではある。
だがしかし、呪文などで吹き飛ばすのでは気づかれる恐れはかなりある。
「さくっと斬るのでいいとおもうぞ?」
「確かに。下手に魔力とかつかってあいてに気づかれても厄介だな」
さらっというラウリイに、同意するかのようにいっているゼルガディス。
「なら、ガウリイの出番ねv」
ラウリィの光の剣の魔力をあいてに気取られる可能性もなくもない。
だがしかし、ガウリイの剣ならばそのような心配は無用。
「おう!まかせとけっ!」
そんなに大きな穴でなくても、人が一人とおれるくらいの大きさの穴を壁にとあける。
それはガウリイにとっても造作もない作業。
「?ガウリイさんってラウリィさんみたいに剣の腕すごいんですか?」
「たぶん。俺より上だとおもうけど」
そんな会話をしている最中、疑問におもいながらもラウリィにとといかけているアメリア。
夜なので声が響くがゆえに、小声で彼らは話している。
「しかし。ここまで静かだと逆に不気味ね」
街の中からも何の声も聞こえない。
普通ならば昼間でも夜でもにぎわっている音や声が聞こえてくるであろうに。
「とにかく、中にはいらないとどうにもならないし」
レナのそんな台詞に全員が同時にこくりとうなづく。
そのまま、闇にと紛れ、壁にと近づいてゆく。
街の中で何が起こっているのか。
リナ達はそのことをまだ知らない――


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あとがきもどき:
薫:さてさて。今回からは新展開vまあ、グロシーンは表現をかなり抑えますので。
  あまり想像しないでくださいね(こらこら
  さて、次回は、閉鎖された街の実情をお送りいたします。
  それでは~♪

2008年4月28日(月)某日

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