まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

さてさて。ようやく終了のコピーレゾ編vv
10話近くひっぱったわりにあっさりおわっているのはご愛嬌v(自覚あり
何はともあれ、いっきます!
コピーレゾ編、ラストです!!

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○パラレル・トラベラーズ○~行動と結果~

風と冷気の結界。
それらをまとっていなければこの場に普通立つことも難しい。
大地は熱く、さきほどの影響でいまだに煮立っている。
「ずいぶんとやってくれるじゃない?」
その効力を目の当たりにするのはリナとガウリイは二度目。
「…とにかく。レゾのためにも。俺はおまえを倒す!」
あの子を助けてやってくれ。
それがレゾの最後の望みであったがゆえに。
そんなゼルガディスの台詞をきき、
「倒す?…私を??…はは…はははははっ!!」
いきなり狂ったように笑い出す。
「そんなことが可能なわけはないでしょう?ゼルガディス。
  今は普通の人となりさがっているあなたが!それにレゾのため?私がレゾですよ?」
「違うわ。あんたはレゾが自分の目を治す実験のために作られた人造人間ホムンクルス。すなわちコピー。
  だからこそあたしたちはあんたの所業をとめるっ!!」
「おや。そこまでご存知でしたか。ですが、これは知っていますか?」
にこやかに笑みを浮かべながらもその額につけていたバンダナにと手をかける。
はらり。
バンダナがはらり、と落ちると同時に即座に燃えて灰となる。
それと同時にゆっくりと見開かれる、コピーレゾの閉じられていた瞳。

「…な…そんな……」
目の前で繰り広げられている光景に絶句しているシルフィール。
しっかりと瞳をとじていたレゾ、と名乗っていたとおもわれる人物。
その人物が目を見開いたその顔にあったものは、
片方の瞳からでている何ともいえない蔦のようなもの。
そしてまた、その瞳もまた普通ではなく洞のような中に見え隠れしている何か。
唯一、目らしい、といえるものは額にある縦に伸びた獣のような目。
「知ってるわよ。レゾがあんたに魔族を二匹も合成してる。ってこともね。だからこそ倒すのよ!」
いいつつ。
「ガウリイ!いくわよっ!」
「おうっ!」
こういう輩は先手必勝。
ガウリイの腕ならば相手の魔力というか術はその剣でたたき斬ってくれる。
それがわかっているからこそのリナの行動。
「でやぁぁぁぁぁぁ!!」
周囲にリナの叫びと、それに続いて攻撃をしかけるゼルガディスの声がこだましてゆく。

「…何がどうなって……」
自分の入り込める隙がない。
ただただ、ガウリイやリナ、そしてゼルガディス、そしてレゾのコピー、とおもわしきもの。
それらと戦っている彼らをみていることしかできないシルフィール。
常識的には考えられないガウリイの剣さばき。
どうみてもガウリイが術のことごとくを剣でたたき斬っている。
「おやおや。人間の中にも面白い人がいたものですねぇ」
にこやかに、まったく他人事のようにといっているゼロス。
「マナたちのと~さま、すごいでしょ!」
「マナ。ここは自慢するところじゃないとおもうわよ?」
とりあえず、そんなゼロスに自慢しているマナに苦笑しながらいっているエル。
だがしかし、コピーレゾのほうは傷をうけてもまたたくまにその傷がふさがり回復している様子が見て取れる。
それゆえに苦戦を強いられているリナ達。
リナとてここで神滅斬などを使えばたやすいのだが、いかんせんすぐ近くにゼロスがいる。
ゆえにためらっているので一撃必殺、とはなりえない。
ち。
あいつがいなかったら神滅斬ラグナブレードですぐに方がつくのにっ!
そんなことをリナがおもっているとは露にも思わず、
「おやおや。そんな攻撃ではこの私を倒すどころか、ひざまづかせることもできませんよ?」
そもそも、本家のレゾを倒したのはこんなものではないでしょう?
そう言外に言葉を含ませリナ達を挑発するコピーレゾ。
そんな光景をしばしながめ。
「…なるほど。そういうことでしたか」
にこやかに場違いな笑みを浮かべているゼロスの姿。

「が…がぁぁぁっ!?…な…なに…っ!?」
突如として『レゾ』と名乗っていたソレから驚愕の声が発せられる。
ふとみれば、その胸には背中から刺されたとおもわれし、みなれている錫杖の先が垣間見える。
そしてその背後にはやはり笑みを浮かべているままのゼロスの姿。
「ああ。そうそう。因果横暴、って言葉しってました?」
ずるっ。
にこやかに笑みをうかべながらも突き刺した錫杖にぐっと力をこめそのまま一気に引き抜く。
その杖の先にありえるはずのない何かの紙のようなものが一つ。
本来ならば血がこびくつくはずのその杖には何の痕跡も残っていない。
当然、といえばそれまで。
だが、それがなぜなのか知らないゼルガディスとシルフィールは絶句する。
先ほどまで瞬く間に回復していたコピーの傷の治りが嫌に遅い。
「しかし。あのレゾさん、という人も考えましたねぇ。中身にコレをいれるとは」
そういいはなち、しばし杖の先にと張り付くようにしてあるそれを手にとり、
「ふむ。どうやら僕の探し物はこれですね♡」
にっこりとざっと目を通して笑みを浮かべ、そのまま。
ポシュ。
その手の中にあるそれを瞬く間にと灰にする。
「……なるほど。そういうこと……」
なぜ、コピーレゾが幾度も攻撃をうけても瞬く間に傷が回復していたのか。
それは魔族が合成されているがゆえ、のことだとリナは思っていたが、どうやらその間違いに気づく。
ゼロスがここまでして手にいれようとするもの。
それはリナの知るかぎりはっきりいって一つしかない。
「え?え?え?さっきまであの人、横にいたのに?!」
さきほどまでは確かに自分の真横にいたはずの神官。
それなのにいきなりリナ達と戦っているコピーレゾの真後ろにと出現していた。
それもほんの瞬きする間に。
「ま、ゼロスだし」
というか空間移動すればどうってこともなければ瞬間移動も可能。
そもそも、この物質世界にあの姿で具現化しているだけであり、本体は精神世界面アストラルサイドにある。。
「?エルちゃん?それって??」
自分としてはかなり驚いているというのに、対する小さな子供達二人はまったく驚いている様子はない。
通常の状態のシルフィールならばそのことに怪訝を示すだろうが、今はその状況ではない。
「あいつにはそんなの関係ないし」
物質世界の制約云々が、魔族たる精神生命体にとってはなきに等しい。
事実、等しいも何もないのだが。
そんなシルフィールの戸惑いを含んだ声をきっぱりはっきり受け止めいいきるエル。
一方。
ふっ。
「なるほど。どうやらあんたの不死身の元はそれだったみたいね!」
軽く笑みを浮かべ、あえてそれが写本の写しであることは触れずに高らかに言い放つリナ。
下手に何かいって今このゼロスに警戒されることだけは避けたい。
少なくとも、子供達、マナとエルに危害が及ぶ可能性がある限りは。
「どうやら僕のお仕事は完了したみたいですので。それではみなさん、ごきげんよう♡」
にこやかに、そのままふわり、と浮かび上がるゼロス。
確かに、こう視界が一つもさえぎられるものもない場所においては浮かんで、というか飛んで移動する。
そのほうが第三者にとっては違和感を抱かせない。
「って、こらまて!きさま、このままこれをほうっておく気か!?」
そもそも、こいつもコレをさがしていたんじゃないのか!?
はっと我にと戻り、そんなゼロスにと問いかけているゼルガディス。
「いえ。僕のお仕事はおわりましたので。それでは♡」
いうと同時に。
ボンッv
軽やかな音とともに周囲、というかゼロスの周辺に煙が立ち込める。
それは一種の煙幕のようなもの。
「あ、まて!」
「ゼル!あんなどうでもいいゴキブリはおいといて!今はこいつをどうにかするのが先よ!」
みれば、さきほど回復しかけていたガウリイが斬った傷が再び開きかけている。
やはり……
「あんたの傷が回復してた原因は、あいつが今消した品の魔力だったようね」
そんなリナの台詞に多少顔をゆがませつつも、
「それがどうした。というのです?それでも私の優位はかわりませんよ?」
断言的にいいはなってくるコピーレゾ。
「違うわ。これでおわりよ」
いいつつ精神を集中させる。
使うのは、いつもの術。
だが、異なるのはいつもと違い魔力を増幅してから解き放つ。
「黄昏よりも暗きもの…」
ちらり、とガウリイに視線をむけて、相手が空間移動などしないように足止めを依頼する。
言葉などはいらない、暗黙の連携。
それがリナとガウリイの強み。
「…くっ…!」
相手の剣が普通ではない。
というのに気づいたのは持っていた杖が綺麗さっぱりすっぱりと斬られたとき。
あからさまに魔力剣。
それも並大抵の品ではない。
それが何なのかはコピーは知らない。
下手に剣を受ければ自身が傷つく。
だからこそガウリイから気をそらせられない。
ガウリイがもつ剣は周囲の魔力を切れ味とする剣。
相手の魔力が高ければ高いほど威力を発揮する。
ばっ!!
いきなりガウリイが間合いをとり、チャンスとばかりに身構えるコピーレゾ。
だがしかし。
竜破斬ドラグスレイブ!!!!!!」
どごぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!!!!!!!
周囲に、いつもの数十倍、ともいえる爆音が響き渡る。

「ふむ。斬妖剣ブラストソード、ですか。やっかいなものをもっていますねぇ。ま、僕には関係ないですけどね♡」
姿は消したものの、シルフィールから発せられている負の感情。
それらはたしかに彼にとってもここちよいもの。
それに個人的な興味で成り行きもきになった。
だからこそ精神世界面から成り行きを眺めていたゼロス。
それだけいい、相手があっさりと倒されたのをうけ興味をなくしたようにそのままふいっと姿を消す。

「リナ。あいついったようだぞ?」
とりあえず、近くにゼロスの気配があることはわかっていた。
だからこそ、リナに表情だけでそのことは伝えておいた。
それゆえにリナがとった行動は竜破斬ドラグスレイブを使う、という行動。
「さんきゅ~。ガウリイ。…さってと…まだ息があるみたいね……」
「だけど、魔族の気配はないぞ?」
竜破斬ドラグスレイブの直撃をうければ普通ならば即消滅。
しかも普通の竜破斬ドラグスレイブの威力とはあきらかに異なった魔力が収束していた術。
その場にころがるようにあるのは、一つの人影。
先ほどとはうってかわった人らしき表情。
すでに彼の中に合成されていた魔族の姿はない。
術に逆らい、それでも『彼ら』にとっては上司の力にはあがらえずに消滅した。
『彼』が無事なのは中にいた『彼ら』がかなり抗い抵抗したがゆえに彼まで威力が完全には及ばなかった。
だが、それも一時のこと。
「…なぜ……」
ごふっ。
問いかける口からあふれるのは赤黒い液体。
「…なぜ…私は…まけるの…ですか…私は…私は……」
自分は誰よりも強かったはず。
それなのに。
あのどうみてもひ弱そうな神官に対しても、そしてまたこのか弱そうな女性に対しても。
「それはあんたが、人の命を命とおもっていなかったからよ。
  あんたは自分の未来の先、何がしたいかなんて考えたことがあったわけ?」
すでにもう目の前の人物の命はつきかけている。
いったい、彼は今までにどれだけの人の命をあやめたのだろう。
それも理不尽な理由で。
リナとて人の命を奪ったことがない、とご大層なことをいうつもりはない。
自分の行動の結果で、いくつもたくさんの人が傷つき、そして死んでいった。
それを身にしみているからなおさらに。
「私は…そうか…私は…先をみていなかった……だから負けたのですね……」
――因果横暴、って言葉、知ってます?
さきほどあの神官が自分に対して投げかけてきた言葉。
何となくだが今さらながらに理解した。
「…あ…あの?…リナさん?ガウリイ様?ゼルガディスさん?」
ようやく戦闘が一息ついたのをうけ、やっと震える体でリナ達の近くに近寄っていき問いかけるシルフィール。
シルフィールの視界に入るのは、大地にころがる一人の人間。
「…墓はどうする?」
自分の曽祖父がもたらした結果。
「そんなものは…できうれば……私を神聖樹フラグーンのもとへ……」
神聖樹フラグーン。
復活の証。
瘴気に負けずに、逆にそれを糧として成長してゆく木。
自分もそうありたかった。
自分に芽生えた意思が魔族の意思のモノとは違う、そう思いたかったから。
さぁ……
しずかに風が体をなでる。
ああ、自然というものはこんなにもやさしいものだったんですね。
今さらながらに気づくとは…私もおろか…ですね……
そんなことをおもいつつ、ゆっくりと目を閉じる。
そのまま意識を深い闇の中にと沈めてゆく――


「しかし。それでこれからどうするの?ゼルは?シルフィールは?」
とりあえず、彼の最後の望みでもあった。
というので彼の死体をそのまま運び。
といっても術を使い、空を飛んでの移動となったのだが。
死体をそのまま運ぶ、というのは何なので石人形ゴーレムの術の応用で土で棺を作り出した。
お棺ごとフラグーンの根元に植えた後、といかけるリナ。
「私は…わたくしは、お父様といっしょに、これからもここサイラーグのために働きますわ」
その言葉に心底ほっとするリナ。
ということは、シルフィールがあのフィルさんと出会うことはない。
ということよね。
内心のそのうれしさをどうにか隠し、
「それで、ゼルはどうするの?」
そんなリナの問いかけに、しばらく考え込んだ後。
「ちょっと思うところがあるしな。すこしばかりお前らにつきあおうとおもう」
「「…え!?」」
「ってまて!ゼル!せっかくの家族水入らず旅行を台無しにする気か!?」
「これって水入らず旅行、とはいわないんじゃぁ…?」
しいていうならば不慮の事故のようなもの。
そもそも、早く元の世界にもどらないと。
そうでなければ姉ちゃんの反応がかなり怖い。
「?でもゼルのおじちゃん。あのミイラのおじちゃんとかはどうするの?」
「だ・か・ら!そのおじちゃん、というのはやめてくれ!!」
悪意のない瞳でといかけるマナに躍起になって突っかかっているゼルガディス。
「そういや。ゼル。あんたの仲間いたじゃない。彼らもくるわけ?」
「まあ、彼らには連絡をとらないといけないのは事実だな」
「そうですか。それでは皆さんたちとはここでお別れなんですね。本当にお世話になりました。
  わたくし、何もお役にてたてなくて申し訳ないですわ」
そんな会話をしているリナとゼルをみつつさみしく微笑むシルフィール。
そんなシルフィールをみながら、
「シルフィール。…えっと。とにかく元気で。…あと、気をつけてね」
サイラーグ壊滅。
というリナの知っている事態は何とかさけられた。
だがしかし、その先にまっている冥王フィブリゾの行動。
それによってはこのサイラーグの運命もまたかわってくる。
だが、それをいうわけにはいかない。
そもそも、シルフィールにはあのゼロスが魔族だ、ともいってないのだから。
ひとまず軽くサイラーグの神官長であるエルクに挨拶し、リナ達はサイラーグを後にする。
とにかくサイラーグの壊滅をどうにか防げた、という安堵感とともに――


         ――Go To Next

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あとがきもどき:
薫:さてさて。皆さんはもうお分かりになっているかとv
  レゾコピーの中に入れられていたもの。いうまでもなく異界黙示録の写本の写しです。
  レゾが実験をかねて人造人間の体内に埋め込んでいたものです。
  それでいろんな実験をしていた。という。
  中にいれられていたものは、例のゼナファに関するモノの写しの一部。
  なので応用が多少アドリブきいています。
  当然、ゼロスが狙っていたのはそれです(笑
  レゾのときには、相手が魔王の器、とわかっていたからほうっておいた。
  というか比較的協力的だったんですけどね(こらこら
  何はともあれ、次回は新たな展開ですvではまた~♪

2006年9月21日某日

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