まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
ようやくエリスさんの回。
といっても、エル様…もとい、エイルの視点で今回もいくのですv
このあたりは、本編のサイラーグの妖魔とはかぁぁぁなり異なっていますのでご了解を。
さて、一番気の毒なのは…だ~れだ(笑
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「……ちっ」
厄介。
といえは厄介。
なぜレゾがあれに魔族を二匹も合成したのか、それは今の自分にはわからない。
腹いせなのか、それとも何か考えがあったのか。
とにかくそのことによって確実にアレは意識というか自我らしきものを得たらしい。
というのは残された記録にて把握できた。
問題は、その後の記録。
アレを動かすのには大量の生体エネルギーが必要。
そのようにあの体を創造りなおしたらしい。
自分の目は開かないのにあっさりと開いたソレへのあてつけなのか。
はたまた、内部にいたあの赤き悪魔の仕業なのか。
それは彼…ゼルガディスにもわからない。
今、言えることは。
アレを持ち出したとおもわれるエリシエルを早くみつけなければ被害は格段に増える。
ということ――
○パラレル・トラベラーズ○~エリシエル=ヴルムグン~
ざわっ。
いつ目的の者が来るのか。
それは周囲の状況から判断したら一目瞭然。
人々がざわめきだしたので、彼らがきた。
というのを理解し、
「とりあえず。シルフィール。二人をよろしくね」
少し離れた場所からあのエリスであるかどうかを確認すべく教会の裏口からでてゆくリナ。
ガウリイは男手が必要。
というのもあり力仕事に借り出されている。
エリスがどこまで自分たちのことを知っているか不明だけど、
あの手配書はいったい何を目安に作ったのか、ということすらリナは知らない。
唯一、確実にいえるのは、おもいっきり悪逆非道のように書かれていた。
というその事実のみ。
ざわざわと、村の出入り口付近に人だかりが出来ている。
村の中からもそちらにむけてかけてゆく人々の姿が多数見受けられる。
おそらく、普通に見るのでは確認は不可能。
ならば、風の結界をアレンジして他人に姿がなるべく見えないような形の術を唱え、
ふわり、と上空にと浮かび上がる。
上空からならばまずさえぎるものがない限り人物の確認くらいは可能。
かといってあまり近づきすぎても相手に警戒されるのは明白。
もし、あたしが知っているあのコピーならば自我があるはずだし……
そんなことをおもいながらも、注意深く人が集まっている中心付近にと移動してゆくリナ。
ざわめくひとだかり。
その中心付近に場違いな黒いフードに黒い服らしきものを着ている一人の女性。
その女性を取り囲むようにして村人たちがひしめきあっている。
顔は見えないけど、おそらく間違いないであろう。
かつてシルフィールから聞いた弟子の容姿にすっぽりと当てはまる。
みたところ、問題のコピーのほうは一緒にはきていないらしい。
何よりも、もしあの性格のままだとすればこの村の人たちに被害が出かねない。
一番いいのは、彼女が帰るときにこっそりと後をつけていき本拠をつきとめ、そこに出向くか。
はたまた、どこか人気のない場所に呼び出すか…だけど。
呼び出しに素直に応じる、とは思えないし。
一番いいのは、アレから魔族を分離させる方法がわかれば手っ取りはやいんだけど……
様々な可能性を思い巡らせながらも上空でそんなことを考えているリナ。
エリシエルのほうはといえば、自分が探している人物の一人であるリナがまさか上空で。
しかも、自分を見ている、などとは夢にもおもっていない。
しばらく様子をみつつも、そっとその場から離れるリナ。
一番いいのは術をつかい、目印をつけることであるが、レゾの弟子だった。
というのを考慮してそれは実行に移してはいない。
人々がレゾの弟子だ、という触れ込みのエリシエルの元にいっているがゆえに、
ここ、教会内部にははっきりいって人はまばら。
シルフィールはここの教会の責任者と何やら話しがあるとかで話をしている。
その間、あたしとマナはといえば教会の礼拝堂の中にて二人で遊んでいたりする。
小さな子供からすれば、これくらいの教会の礼拝堂でもかなりの広さ。
しかも椅子などがかなりあるのでかくれんぼなどには最適。
この教会から出ないように。
と念を押されているのでとりあえずそのあたりの約束はまもっているあたし達。
しばし、妹と二人して遊んでいると、人がこの時間帯、くるはずもないのに誰かが教会の礼拝堂に入ってくる。
ふと礼拝堂の出入り口のほうをみてみると、何やら見慣れた神官姿がひとつ。
「?なんでおじ~ちゃんがここにいるの?」
その姿をみて礼拝堂の教壇にて遊んでいたマナが同じく遊んでいたあたしにと聞いてくる。
そ~いや、あいつ、サイラーグにいく途中にいたっけ……
「おおかた、例のいっけんのちょぅさだとはおもうけどね」
というか事実そうだとしか思えないけど。
さすがにSが復活した直後に滅ぼされた。
というのはいくらどんなに鈍い存在でも気づくはず。
だけども、まだこちらのことを気づかれては面白くない。
だからこそ。
「おじちゃ~ん。何かおきゃくさんがみえたよ~?」
奥の部屋にといるシルフィールと話しているこの教会の責任者にと扉のほうにいきつつ叫ぶ。
そんなあたしの声に気がついたのか、
「うん?おや。これはこれは……」
ふと教会の出入り口付近にいるソレをみてそんなことをいっているこの教会の責任者というか神父。
まあ、確かに。
見た目はどうみてもどこにでもあるありふれたような神官服なので同業、と認識するのはわかるけど。
人というものはどうして同業などとか思い込んだだけであまり警戒心を抱かないものなのか。
逆に警戒しまくる人間もいたりするのでよくまあ、『十人十色』とはとある場所の格言で考えたもの。
とりあえずあたし達はあたし達でそのまま入れ違いになるように奥の部屋にとひっこんでおく。
何やら二人が話している声がきこえてくるけど気にしない。
「あ。シルフィールお姉さん。もうお話おわったの?」
肝心なことはつっこんで彼女も聞いていないのは判ってはいるけどきいてみる。
もっとも、子供に素直にいうともおもえないけど。
「え。ええ。ですが話しをきいてもよくわからなかったですけどね」
そんなこちらの質問に苦笑まじりに一応答えてくるこのシルフィール。
このあたりは、律儀、といえば律儀。
「?なにがわからなかったの?」
そんな彼女の言葉をきき、きょとん、と首をかしげているマナ。
「いえ。別にたいしたことではありませんわ。ただちょっと、ここにきている人というのをきいていただけで。
マイナちゃんたちが気にすることではありませんわ」
いって、くしゃりとマナの頭をなでるシルフィール。
「?ここにきてる?」
「えっと。たぶんリナか~さんがみにいってるひとのことだとおもうよ?マナ」
「そなの?ならききにいく~!!」
「「……は?」」
一瞬、マナが何をいいたいのか理解できずに思わず間の抜けた声をだす。
予想外、とはこういうのをいうのかもしれない。
「れうぃぐ!」
って、それをいうなら翔封界…って、ちょっとまってっ!
換気のためにあけてあった天窓からそのままするっと飛んで出て行ってるし…マナ……
一瞬のことだったのでおもわず唖然。
「って、マナ!ちょっとまって!」
あわててマナをおいかけてあたしもまた飛び上がる。
…まさかそういう行動にでるとは。
マナの行動はときどき突発的なことをするので予測不能。
かといって心の中身までを視るというのも何となく嫌。
何やらしばし、あとに残されているシルフィールが呆然としているようだけど気にしない。
この天窓はかろうじて子供が通り抜けられるくらいの大きさ。
そもそも、彼女はたしかこの術は使えないはず。
「って、ちょっと!?マイナちゃん!?エイルちゃん!?」
シルフィールの叫び声を後にして飛んでいったマナをあたしもまたおいかけてゆく。
…そもそも、たしかマナってこの術…まだコントロールが不完全のはずなんだけど……
やはりというか何というか。
そのままあさってのほうにとんでいってるし。
ふと視ればリナか~さんのほうはこちらにきづいていないよう。
……ま、あっちのほうはたしかアレがいまいる方向だし……
このまま流されていってみますか♡
「エリス様。ぜひとも赤法師様に……」
村人たちに囲まれて嘆願するのは以前ならばとても喜ばしく感じていた。
だけども、今はそれすら苦痛に感じる。
彼らは何もしらずに……っ!
理不尽な怒りなのかもしれないが、今の自分にとってはどうでもいい。
そんな心の葛藤や想いは微塵も表にはださない。
一人でも多く、あのかたの仇をうつために利用できれば……
人というものは、助けてくれる人にはそのときにはたより、いらなくなれば排除する。
だから、その前に利用して何がわるい。
たとえ人々がいくら命を落としたとしてもあのかたの命には……
「今、レゾ様はお忙しいのでこちらにはこられませんので。
時間があるようならば私があのかたの元に案内いたしますよ?」
にっこりとあつまった村人たちにと語りかける。
そのために今まである程度の信頼を勝ち取った。
これで人が行方不明になっても自分たちのせい、とは絶対におもわれない。
だが、アレを動かすのにはどうしても人の生気が必要。
生きている人間がもつ生体エネルギーが。
なるべく行方不明になっても騒がれない者の選別。
それをもかねて一人で行動をよくしている。
エリシエルはよもや追い求めている人間のうちの一人が上空にいる。
などとは夢にもおもっていない。
赤法師レゾの付き人として、そしてまた弟子として。
その全身を真っ黒いローブに包んだ一人の女性。
それが彼女。
エリシエル=ヴルムグン。
ある程度のエネルギーを得た後は、この髪をぱっさりきってにっくきまずはゼルガディスを……
あのかたの身内だからといって、やっていいこととわるいことがある。
だからこそ、一番初めに復習をするのは彼だ、と決めている。
たかが、村のひとつや二つ。
消えても何とでもなる。
そもそも、村が消えたのと自分たちの行動と結びつけて考えるものなどいるはずもないのだから。
『おおお!!』
そんな彼女の考えを知る由もなくエリシエルの台詞に村人よりどよめきがおこる。
もとより、それを断る理由などはない。
「是非ともおつれください!」
「お弟子様!わたくしも!」
われ先にとエリシエルにと詰め寄る村人たち。
これまでも立ち寄った村々で人々を連れて行き、そしてその彼らは村に戻らなかった。
そんな実績があるにもかかわらず、人は噂のみを信じて行動する。
中には有名な伝説の赤法師レゾとお近づきになれれば自分の格が上がる。
そんな勘違いをしている存在もいる。
「しかし、先ほどもいいましたように、レゾ様は大変にお忙しいですので……
時間がいくらかかってもいいようにきちんと後々困らないようにしてきてくださいね?
とりあえず今晩、ではこの場所で。それでもいい。というひとのみレゾ様のもとにお連れいたしますわ」
にこやかに、
それでいて少し困ったようにいってくるエリシエルの台詞にまたまた村人たちのざわめきが大きくなる。
その表情から第三者が読み取れるものは、たよってくるひとはほうっておけない。
というのがレゾ様のお考えですし。
という初日に彼女がいっていた言葉。
彼女のその言葉の裏の意味を誰一人ともなく疑うこともなくざわざわさざわめきはひろがってゆく。
今晩…か。
少し離れていても風の呪文を少しアレンジすれば相手の会話は読み取れる。
つまりは今晩、おそらくアレのところに村人たちをつれていくのか。
でも何で村人をわざわざ?
エリスの台詞に一人首をかしげる。
リナが知っているのは、アレが魔族と合成されて自我をもっていたこと。
そしてオリジナルを倒した自分たちを倒せばオリジナルを超えられる。
とおもい、無関係な人々を一瞬のうちに消滅させ、また利用したこと。
そして、自分を目覚めさせた一人であろう彼女をその手で殺した。
というその事実のみ。
そもそも、リナがあの一件にかかわったとき。
すでにサイラーグの神官長であるエルクは洗脳され、サイラーグそのものが支配下にあった。
リナはゼルガディスやシルフィールから情報をきいたに過ぎない。
その光景を目の当たりにしていたわけではない。
だからこそ、リナは知らない。
このようにして集めた村人などの一部が。
あのコピーの手下としてサイラーグの町にて合成獣化されて使われていた、ということを……
コピーに合成されているのは魔族の中でも一応はまがりなりにも中級魔族二体。
中級、といえども自力で人の姿になどはなれずにかろうじて実体化できるかできないか。
という程度。
それでも、魔族の一番の糧は人の負の感情。
糧がつよければ強いほど力はましてゆく。
とはいえ限界はあるにしろ。
何もしらない無邪気な村人をそのまま実験に利用する。
というのは負の感情を得るのにもまさにうってつけ。
それゆえのエリスの行為。
それで使える手ごまが…しかも使い捨てのこまが手にはいるのならばエリスにとっては一石二鳥。
彼女にとって、赤法師レゾを倒したものたちを倒して仇をとる。
それが一番なのだから……
――続く……
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あとがきもどき:
薫:とりあえず、子供達はなぜか(確信犯?)厄介ごとに自ら進んでいっているような……
次回かその次くらいでたぶんゼルも合流する…はず……
しかし、リナは心労ばかりがたまってます(苦笑
いちばんあせっているのは誰でしょうvv
ちなみに。スレイヤーズの本編においては、リナの一人称でもあった。
というのと、すでにサイラーグは支配下になっていた。
というのを踏まえて彼女ならそれくらいはもしかしてしてたのでは……
という個人の想像を元にこの回は成り立っておりますv
騒ぎにならないのは、あまりにもレゾの噂が高名すぎて犯罪に誰も結び付けない。
という理由も……(人は巷の噂などに左右される生き物だ、というのを象徴中)
何はともあれ、それではまた、次回にてv
2008年2月4日(月)某日
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