まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

気分がある程度のってるときに、いっきにいくのです!
たぶんこのお話はそんなに長くならない予定(あくまで予定)ですしねぇ。
だから20K前後で区切ってますし。一話も。
#####################################

全てがくるったのはいつのことだったろう。
もはや取り返すことはできない、幸せだった日々――

「ハルシフォム様!ハルシフォム様!」
ぱたぱたぱた。
必要最低限の知識は生れ落ちたときにすでに組み込まれていた。
「ルビア。どうしたんだい?そんなにあわてて?」
愛する人の姿を模した人造人間ホムンクルス
まだ彼女が存命だったときに、実験をするにあたり、ならば…というので、
二人の子供のような存在にしてはどうだろう。
という一種の思いつきだった。
そんなことは、彼女――【ルビア】は知る由もないが。
いつものように地下の実験室において、すでに魂のない冷凍保存されているルビアの前。
その前にてどうにかよみがえらせる方法はないか、と思案していたハルシフォム。
「あ。ハルシフォム様。こんなところにおられたんですか。お客さまです」
「お客?めずらしいですね?」
この屋敷にはめったに人はこない。
魔道士協会評議長、という立場にいてもこの屋敷に近寄ろうするものはまずいない。
「はい。それが変わっている人なんです。全身真っ赤なローブをきていらして……」

それが第二の始まり。
そして…終焉への序曲。

○パラレル・トラベラーズ○~残されしものの役目~

「じゃぁ。あなたはやっぱり人造人間ホムンクルスなわけね?」
当人にしてみれば、その事実は否定したいのかもしれない。
だけども事実を確認しなければ話が進まない。
「はい。私はハルシフォム様に創造られました。あのかたの大事な人の姿を模して」
リナたちがとまっていた宿屋。
無事にエルが見つかった、と宿の人に伝えたところ、
それはもう大変に自分のことのように喜んでくれた宿屋のおかみ。
他にもかなり連れがいたようではあるが、それでも客が少ないこの時期。
しかも見た目、けっこう便りになりそうな男たちならばなおさらに歓迎できる。
いつ、何どき何がおこるかわからない、そんな不安と恐怖に取り付かれているこの町。
アトラス・シティ。
そのアトラス・シティの一角にとある宿屋。
その宿屋の一階にとある食堂にて話をすべく席に座っているリナ達数名。
小さな子供たちはといえば、話そっちのけで必死にサービス、といって出されたパフェを口にしているが。
そんな光景をみればおもわず気が緩む。
この町ではこのようなほのぼのとした光景すら、ここしばらくは見受けられなかったがゆえ。
男女の二人連れが二組。
うち一組は家族らしく小さな子供が二人。
それ以外はりりしく、それでいてどこか凛とした雰囲気の黒髪の青年。
おそらく見た目、歳のころは十代後半かそこらであろう。
そんな彼にしたがっているように見える、魔道士風の男性と、騎士風情の男性。
一見すれば、どこかのいいところのあととりを護衛する人たち、ともとれなくもない。
事実は激しく異なるが。
「じゃあ。アレをやったのは、つまり契約していたヤツだ。というんだな?」
一応、他にも人目もある。
この中にもしかしたら、屍肉呪法ラウグヌトルシャヴナの名前を聞いたことがある人物がいるとも限らない。
だからこそ、言葉を濁して問いかけるゼルガディス。
きちんとことの顛末を話しにいかなければいけないだろう。
というのも理解はしている。
だが、それよりも前にきちんと話し合いをして自分たちが理解する必要性もある。
逃げたというか見逃した魔族・セイグラムがどのような形ででくるかもわからない。
リナの知っている歴史どおりにいくならば、後々仕掛けてくるのは明白。
だが、この世界はリナの知っている歴史とは多少ことなっている世界。
だからこそ判らない。
「ええ。すべては、私のオリジナルでもある彼女をハルシフォム様がよみがえらせるために……」
ルビアから語られた真実。
それはリナが知っているものとほとんどかわりのない真実。
といってもハルシフォムにとってルビアがどのような存在であったのか。
というのはリナは知らなかったが。
リナが知っていた結果は、彼女がハルシフォムを止めた。
というその真実。
一通りのことはこの【ルビア】から説明をうけて、それぞれ納得する彼ら達。
もっとも、ガウリイにおいてはよく理解していないようではあるが……
とりあえず、彼女からきいてこのたびの一件における概要は理解できた。
その大元となった人物も今はいない。
ともあれ、ルビアから概要を聞きだした後。
一晩ゆっくり休んだ後、明日の朝一番で魔道士協会に出向いてゆく。
ということで話はまとまり、今日のところは各自それぞれ体を休めることに――

「しかし…信じられませんな」
アトラス・シティの魔道士協会。
そこで何かがおこっている。
それゆえに近くの町から派遣されてきている別の協会のおえらいがた。
この町にとある教会などの神父などもこの場にはいる。
「しかし。信じられなくても、現実にあのようなことになっていますし……」
ルビアと共に魔道士教会にでむいているリナ達一行。
そこでとりあえず、このたびの事件の概要を伝えたところ。
簡単な査問委員会が執り行われている真っ只中。
といっても、この町の福評議長二人があのようになり、ましてや評議長そのものが今回の事件の一因だとは。
それこそ魔道士協会としては信じたくないところ。
しかも、魔族云々…という言葉にすら疑問を感じる。
それが一般の人々の反応。
「しかし。それが真実なのは仕方がなかろうて」
地下より、その顔だけになったタリムがそんな彼らに対して話しかける。
命をつないでいる数々のチューブ。
そして用途不明な数々の装置のようなもの。
それらすべてをひっくるめて、意見をきくために地下よりこの場に運ばれてきているタリムの顔のはいった容器。
生きている。
とはいえない、生かされているだけのタリム。
だがしかし、誰一人とてその彼の命をとめるようなまね。
すなわち、命をつないでいるチューブをはずそうとはしない。
顔だけになっているとはいえ、彼にはまだ意識がある。
誰も好き好んで人を手にかけたくはない。
「しかし…タリム殿……」
そう別の査問委員の一人が彼に話しかけようとしたその直後。
ぴくっ。
「リナ!」
いきなり叫んでリナを抱えて横にとびのくガウリイ。
一方では少しはなれた場所にいたエイルもまた、マイナを包み込むようにして防御している。
それと同時。
ガシャァァッン!!
部屋の内部に何かが割れる音が響き渡る。
そしてまた、何かがこぼれるような音も。
全員が何が起こったのか理解するよりも早く。
「――まさか、あれですんだ。とはおもっていまい?」
低く、それでいてのしかかるような声が部屋にと響きわたる。
ゆらり、とさきほどまでタリムがいたはずのその場よりうかびあがる漆黒の闇。
「いじになってるみたいだけど……」
その姿をみてぽつっとつぶやくエル。
彼女からしてみれば、そんなことはあきれる以外の何物でもない行為。
ふとみれば、その場にいた他の面々。
すなわち、魔道士協会のお偉い役目についている人々はといえばいきなりの異形のもの。
あからさまに人ではないそれを目の当たりにしておもいっきり動揺していたりする。
中には腰を抜かしていものすらも。
「……なさけない……」
思わず本音がこぼれるが、ここはリナ達に…リナか~さんたちに任せておけばいいし。
そうおもいつつ、
「マナ。これからか~さん達用事があるみたいだから。いいこで見物してようね?」
「うん!」
マナがにこやかにうなづいたのをみて、すっと誰にも気づかれないように周囲に結界を張る。
それは魔族には自分たちの姿がみえなくするような、簡易的なもの。
あからさまに弱いとおもわれる人間の子供を人質にして何かする。
ともかぎらない。
それこそ魔族の恥さらし以外の何者でもないが。
念には念を。
それに今ここで【彼ら】に気づかれては面白くない。
そんなエルとは対照的に、リナのほうはといえば。
ちらっと娘たちのほうをみてみれば、何かエルが簡易的な結界らしきものを張ったのが見て取れる。
おそらく防御壁か何かだろう。
そう即座に判断する。
この魔族に子供たちの存在に気づかれて、子供たちを盾にとられてはやっかい極まりない。
それゆえに、
「ずいぶんなご登場ね。だけどもう契約の石はないし。あんたの元ご主人もいないはずだけど?」
相手を挑発するかのように動じることなく言い放つリナ。
「…確かに。我があのハルシフォムとかいう人間の男と交わした契約はすでにない。
  ゆえに、あの男の命令を実行することもないのだが……だが、貴様たちは倒しておかねばな。
  我の誇りの為にも」
いいつつも、その手に青白い光の球を出現させる。
「ゆくぞ!」
いうなりその球をその手から解き放つ。
誇り、というのならばこのまま静かに立ち去ることこそ、魔族の誇りの意にかなっている。
それもわかってないみたいだし。
その光景をみながら思わず内心あきれるエル。
どぐわぁぁん!
当然、その一発はあたしたちの誰にもあたることなく。
横にある壁にとぶちあたり炸裂する。
それと同時。
『うわぁぁ!?』
ようやく我に戻った魔道士協会に所属しているお偉い人々。
そしてまた、神父など、といった人々が我にともどり騒ぎ始める。
ちいっ。
彼らが邪魔っ!
できれば結界に閉じ込めてほしいのがリナの本音。
というか、異空間ともいえる結界を作り出すことなく攻撃してきたこの魔族。
あまり考えがないやつなんだろうな……
そうリナの中で結論づける。
何しろたかが人に復讐するためだけに魔族であることを捨てるような魔族なのだから。

しばし、混乱の最中。
セイグラムとの戦いが魔道士協会の一室において繰り広げられてゆく――


ざわざわざわ。
正式に、今までこの町でおこっていた不可解な事件。
それらが全て解決した。
そう魔道士協会から町中に連絡がゆきとどいたのはつい先日。
外にたむろしているレッサーデーモン達の行動も最近はだいぶ落ち着いてきたらしい。
それゆえに、だいぶ以前の賑わいをとりもどしつつこの町。
当初は道に露店など並んでいなかったが、もう大丈夫。
という安心もあってか、商魂たくましい人々が店をすぐさまに開いている。
「しっかし。何かあんたらとかかわってから魔族がらみの一件がおおいのは気のせいか?」
もう人目を気にすることもないがゆえか、
空を見上げつつ表街道にてそんなことをリナ達にといってきているゼルガディス。
だがしかし、そもそもの発端はレゾにある。
彼の中に封じられていた赤眼の魔王・シャブラニグドゥの影響。
「気のせいよ」
こんな別の世界にきてまで魔族絡みの一件にかかわりまくってたまりますか。
あたしはともかく、子供たちを危険には合わせられないし。
そんなことを思いながらも、きっぱりとゼルガディスの意見を却下するリナ。
「それより。ゼルはこれらどうするの?」
少しばかり顔をしかめているゼルガディスにとといかけているレナ。
「そういうあんたらはどうする気なんだ?」
逆に問いかけるゼルガディス。
ゼルガディスからすれば、レゾの遺言を果たしたい。
彼がかつて創造ったあのコピーをまず探し出すことが先決。
昔聞いたことがある、あの研究所にまずいってみるのが近道だろう。
そう彼はおもっている。
「え?あたしは、ちょっと白魔術都市・セイルーンのほうにいってみようかな?とかおもってるけど」
噂でセイルーンのほうでちょっとしたごたごたが起こっている。
そう魔道士協会内部で耳にした。
どういった厄介ごとなのかはわからないが。
そもそも、あのドワーフおうぢには会いたくはないが、いってみる価値はありそうである。
「あたしたちは、サイラーグにいくつもりよ」
なぜ。
とはいわないまでも、きっぱりといいきるリナ。
なぜサイラーグなのか。
それは、リナ達の世界と同じような悲劇を起こさないため。
いまだ、この町の魔道士協会はしばらくごたごたするであろうが、それもしばらくしたら収まるであろう。
結局のところ、やはりというか案の定。
というか。
魔道士協会に直接仕掛けてきたあのセイグラムを滅ぼしたところ、
デイミアの屋敷の肉塊は腐った肉が溶けるようにそのまま瓦解したらしい。
高らかに笑い声を残したままで。
タリムはあのセイグラムの襲撃のときの衝撃でその命をつないでいた装置が壊れ、
静かにいきを引き取った。
さすがに、ただの伝説。
としか捉えていなかった魔族。
しかも自力で具現化している純魔族。
その攻撃をうけた後。
ということもあり、魔道士協会のほうの追求も深くはされてこなかった。
そして、このたびの一件の唯一の生き証人、とおもわれるルビアの処分もまた、不問に処す。
ということでおちついた。
いくら何でも魔族をあいてに一般人がどうこうできるレベルではなかった。
というのが魔道士協会のお偉いさん方の意見。
その裏には自分たちが何の役にもたたなかったのをだまっているように。
との意味合いもある。
ということを、リナ達は知っている。
「そうか。ならとりあえずここでお別れだな。何かいろいろあったが、あんたたちも元気でな」
一緒に行動した期間はごくわずか。
それでも力を合わせて戦った、ということは真実。
しかもそれが、とてもかなわないような相手ならばなおさらに。
連続して魔族がらみの事件に巻き込まれた。
というのも仲間意識が芽生えるのには十分。
「あんたもね。ゼル」
「またいつか」
そんなゼルに対してそれぞれ手をさしだすリナとレナ。
「で?おまえはどうするんだ?」
自分によく似ているラウリィにと問いかけているガウリイ。
何だか人事のようには思えない。
おそらく、このレナ、という少女とともにいることでこれから様々なことに巻き込まれてゆくだろう。
というのが何となくであるがわかるがゆえに。
「俺はしばらくこの子と一緒に旅をするつもりだけど?」
もしかしたら、兄の魂を開放させる方法が見つかるかもしれない。
それに何よりも彼女の境遇も人事とは思えない。
それゆえにガウリイに答えているラウリィ。
「そっか。それじゃ、ここでお別れね。…がんばってね。あなたたちも」
「ええ。リナさんたちも。無事に元の世界にもどれるようにいのってますね」
アトラス・シティにとはいる表門。
そこでそれぞれ互いに別れを交わす彼ら達。
レナとラウリィはセイルーンへ。
ゼルガディス、ロディマス、ゾルフはレゾの研究所があった、というとある場所へ。
そしてまた、リナ達親子はサイラーグへ。
出会いと別れはいつも突然。
だけど、その出会いが人の絆を強くし成長してゆく。
それが人、というもの――


               ――続く……

HOME    TOP    BACK    NEXT

##########################################

あとがきもどき:
薫:さてさて。リナ達とセイグラムとの戦いは当然のことながら魔族との戦いになれてるリナの圧勝v
  もっとも、邪魔になりまくった魔道士協会所属の人々がいますけどね。
  まあ、かなり怪我とかしてたりしたのは彼らは自業自得。
  でしょう。
  普通、しかし魔族がいきなり現れたらパニックになるでしょうねぇ……
  慣れてしまっているリナやガウリイはともかくとして……
  あの戦いにおいて魔道士協会が半壊したことのみはこのあとがきでふれておきますv(こらこら
  何はともあれ、ようやく次回からセイルーン編v
  それでは、また次回にてv
  (エル様がこられないうちに、さくっと次にすすまねばっ!それではっ!)

2008年1月31日(木)某日

HOME    TOP    BACK    NEXT