まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

とりあえず。そろそろこのアトラス編もクライマックスです。
そういえば…一応原作に添った(?)平行世界なので。
原作と同じく死人などがでますので、ご了解ください(おそいってば…汗
何はともあれ。いくのですっ!

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○パラレル・トラベラーズ○ ~願い?~

あれは……
歩いてくる人影をみて思わず目を見開く。
まさか…だがしかし。
一緒にあるいてきているあの少女。
あの娘の生体エネルギーは遥かに平均値を超えていた。
ならば…目覚めても不思議ではないのかもしれない。
「…お…お……」
力のはいらない身体を何とかうごかしつつ、そちらにむかって移動する。
もはやレナ達は眼中にはない。
彼――ハルシフォムの目には自分のほうにやってきている女性。
『ルビア達』の姿しかその目にはいっていない。
一人は確実にわかるが、もう一人は…
「ルビ…ルビア…ルビアルビア……」
急激に衰弱してゆく身体をひこずりながらもそちらのほうにとあるいてゆき、
真っ白いワンピースを纏っている女性をふらつきながらも抱きしめる。

「…でも…あれは……」
ハルシフォムは気づいていないのであろうか。
思わずいいかける言葉がとまってしまう。
ゆっくりとではあるが、だがしかし、確実に。
その白いワンピースをまとった女性の身体が溶けている…という事実が嫌でも見て取れる。
足元に目を移せばその変化は一目瞭然。
急激に生体エネルギーを別の身体に注ぎ込んだことにより生じる副作用。
かつて生体エネルギーではなく魔力でそのことを試しているレナだからこそ理解ができる。
力を注ぎ込むだけではダメなのだ。
多すぎる力は逆に肉体の衰退とそして崩壊を招く。
それすらもこの彼はわかっていなかったのだろうか。
そんなことをレナは思いつつも、だがしかし。
「エルちゃん。無事だったの?」
とりあえず彼女たちとともにやってきたエルの姿をみて安堵する。
そんなレナの言葉に。
「うん。あのおね~ちゃんが助けてくれたから」
嘘でもないが事実でもない、そんなエイルことエルの返事に。
「…お。おい…レナ…あれ……」
ふとハルシフォムの様子に気づきラウリィが声をあげる。
「……あれは……」
確実にハルシフォムは急激にその肉体を衰えさせている。
それが意味することは即ち……
「ルビア……」
ずるずるとすでに勝手がままならないその体をどうにか移動させ、
二人のルビアたちのほうにと移動し、白い服のほうの女性を抱きしめる。
そんなハルシフォムを包み込むようにして、白い服のほうの女性。
本家のルビアもまた、そんなハルシフォムを抱きしめるものの、
そのまま、もうひとりの自分。
すなわち、人造人間のほうの自分に視線をむける。
すでに、彼女たちが心に決めていた事柄。
生きて罪を本当ならば償わせたいが、それはかなわない。
すでにハルシフォムは魔族と契約し。
その本来の生きるということの意味をうしなっていたのだからして。
一人で逝かすことはしたくない。
それは二人とも共通の思い。
だからこそ……
いや、本当ならば自分もついていきたいが。
作られた自分だからこそ、後始末をするのもまた役目。
そう思い、その役目を本来ならば死んでいるはずの彼女に譲った、というのもまた事実。
「ルビア……よく戻ってきてくれた……」
ハルシフォムは彼女の体が溶けかけている、ということに気づいていない。
彼自身もまた急激にその生気を失っていっている。
不死の契約が解除というか解かれた状況下においては、
今までの致命傷が一気に彼の体に押し寄せている状態。
立ち上がることもままならない。
そんな彼にあわせて、溶けかけたからだをゆっくりとその場にかがめる。
そして、そっとそんな彼の体を抱きしめる。
そんな二人の姿をみながらも、本当ならばこのまま彼を助けたい。
だけども……彼の望みはおそらく……
『ルビア』の視線をうけて、ぎゅっと目をつむりながらもその服のしたにと隠していたそれをそっと手渡す。
「って、おい!あれ……っ!」
それに気づいたラウリィがおもわず目を見開いて叫ぶと同時。
「もう。終わりにしましょう。ハルシフォム様。一緒におともいたします」
地面に座り込んでハルシフォムを抱きかかえている格好になっているルビアの手に握られているのは、
さきほどもう一人の彼女から手渡されたショート・ソードが一振り。
ドシュ……
それは彼女の両手にしっかりと握られ、そのまま変えこんでいるような格好になっていたハルシフォムの心臓辺りをつらぬいてゆく。
「ハルシフォム様…わたくしも……」
【ルビア】の体はあるいみ意志力で保っていたようなもの。
それでなくても今まで無意味に生命エネルギーをその肉体に注ぎ込まれていた。
ゆえに肉体的においても動くことはままならなかったくらいだったというのに、
それでも、彼を止めるためにとあえて自ら行動に出ている彼女。
これ以上、大切な人に罪を犯させたくはない。
それは誰でもおもうこと。
かといって彼一人でそのまま旅立たせるのはしのびない。
いつもそばにいたのに自分を責めるばかりで気づかなかった彼に対してできることは……
「ルビア…お前に倒されるのならば仕方のないこと…なのだろうね……
  今度はおいてゆかないでく……れ……」
ずるり、と力が抜けてゆくそんなハルシフォムをそっと抱きしめながらも、
彼を突き刺したショート・ソードを自らの胸につきたてる。
「…なっ!?」
ばっ。
そのあまりの光景に思わずそばにいたエイルの顔をばっと覆うレナ。
このような光景は子供にみせるものではない。
ずるり、とその場に崩れ落ちてゆく二つの人影。
やがてその体はハルシフォムのほうはだんだんとやせこけていき、骨になったかとおもうと、
そのまままるで灰のようにと崩れ落ちる。
そして、もうひとりの女性のほうもまた、その体の輪郭を完全に保つこともなく、
どろりと溶けるように液体のようになりはてその灰の上にと崩れてゆく。
「い…いったい……」
あまりの光景に思わず絶句するしかないレナ。
レナの中にといるリナのほうもまたレナの視界を通して視ているがゆえに内部で絶句する。
「…何がいったいどうなったんだ?……あんた、説明してくれるか?」
その元二人がいたそばにたたずんでいるままの一人の女性。
さきほど溶け崩れた女性とまったく瓜二つの。
そんな彼女にと確認をこめて問いかけているラウリィ。
みればたったままで声をころして泣いているその女性。
彼女もまた、ハルシフォムに創造られた存在。
それがたとえ、『ルビア』の代わりとして創造られた、とはいえ。
それでも彼女にとっても彼は大切な存在には代わりがなかった。
だから涙が止まらない。
それが彼にとって一番幸せのことだとしても。
これで彼はルビア当人とずっと一緒にいられるのだから。
そう自分自身に言い聞かせても、それでもとまらない想い、というものはある。
ラウリィが彼女に話しかけるのとほぼ同時。
「エルッ!!」
金きり声に近い声が遠くのほうから聞こえてくる。
みれば、レナたちのほうにかけてくる人影が数名。
その中の一人が、そこに小さな金色の髪の人影を見つけて声を上げたのだ。
と気づくのにそうは時間はかからない。
声の状態からどれだけ心配していたかが感じ取られる。
それこそが親の愛情の一環である、というのも。
そういうのにはいつもなら視ているだけであったが、今は異なる。
自らの身で経験してみる。
というのも確かに新鮮さを感じ、また得るものもあるような気になってくる。
そんな【エル】の心情は当然誰にも知られるはずもなく。
「あ。か~さんだ。か~さん!それにと~さんも!あとおまけもいる」
がくっ。
ばっ。
リナが駆け寄ってきて三歳の幼女―エイル=ガブリエフをがしっと抱きしめると同時。
にこやかに邪気のない声で『おまけ』と呼ばれ、がくっとなる男性が数名。
「ね~さまだぁ!」
きゃっきゃっきゃ。
とりあえず戦闘も終わったこともあり、背中に背負っていたエイルをガウリイにと手渡し、
身軽になっているリナは力強くエイルを抱きしめ。
そしてまた、ガウリイに抱っこされている状態のマイナといえば、
エルの姿をみてきゃっきゃと喜びの声をあげている。
状況をきちんと把握できているのかいないのか。
そんなマイナの姿からは判断がつきかねない。
まあ、二歳児の考え…というのはなかなかに想像つきにくいであろうが。
一瞬、駆け寄ってきたリナたちに驚くものの。
だけども、すぐさまにそれは当然のこと。
と思い直すレナ。
何しろ大切な娘がかどわかされていたのである。
必死に子供を探さない親など……たぶんいない。
その、たぶん、というのは自分たちの親のことをおもってのこと。
それは娘の力を信じているがゆえの信頼、とも呼べるのだが。
「何かあったのか?」
ふとみれば、何やら見覚えのある気配の女性がその場に一人。
確か、この姉ちゃんは……
そんなことを思いながらもとりあえず、そんな女性の横にいるラウリィにと話しかけるガウリイ。
第三者がみればこの二人は、兄弟、もしくは血縁者。
と完全におもうのは必死。
身長や雰囲気はともかくとして、この二人はよく似ている。
「どこも怪我はない!?」
パタパタ。
てしてし。
小さな娘の体をパタパタと触りながらも怪我などがないか確認しているリナ。
一方で何が何だかまったくもって理解ができていないロディマスとゾルフ。
ゼルガディスにいたっては、ラウリィやレナの顔色。
そして、そこにある灰らしきものと何やら以前よく見ていた液体のようなもの。
それらをみて漠然と理解する。
かつて、よくレゾが実験につかった動物などがそのように成り果てた光景を見たことが多々とある。
だからこそ、そこにある液体のようなものがかつて何であったのか、漠然とであるが想像がつく。
それでなくても、タリムやデイミア。
彼らがすでに魔族によって呪法をかけられていたのだ。
ならば…そこにあるあれは…人の成れの果て……
すっと無言で手をつきだし、
火炎球ファイアーボール
ぼしゅ。
そこにみえている液体にと火系の呪文をいきなり投げる。
それはせめてものたむけ。
死した誰かわからない人に対しての。
「いったい何がどうなったんだ?」
「ともあれ。エイル殿が無事でほっとしましたぞ」
自分たちのミスでもし小さな子供に何かあったら。
それが気がかりであったロディマス。
首をかしげまくりのゾルフとはうってかわり、ほっとした声をだす。
そんな会話をしている最中。
「とりあえず、ここからはなれないか?あんた。きちんと説明してくれるよな?」
いつ何どき通行人がくるともわからない。
まあ、こんな現状でうろうろする人もあまりいないであろうが。
それでも万が一、ということがある。
今まで警備兵たちがやってこなかったのが不思議なくらい。
そんなゼルガディスの提案に、
「たしかに。ゼルのいうとおりね。それにエルもおなかすいてるだろうし」
うなづきながらも、ひょいっとエルを抱き上げるリナ。
その小さな体の金色の髪がさらり、とゆれる。
「たしかに一理あるな」
いったい全体何がどうなったのか知りたいのは山々。
だが、それはおそらく話をきくにしても長くなるであろう。
というのは明白。
それゆえに、ゼルの提案をうけいれ、彼ら。
すなわち、リナとガウリイの家族を含め、ゼルガディス達三人。
そしてレナとラウリィ。
そして唯一、すべてを知っているであろう、一人の女性を伴い、
ひとまず彼らはその場を後にしてゆく。


くらい。
私は……自分が今までしてきたことは間違いではなかったはず。
そう。
彼女がよみがえるならばこの身はどうなってもかまわなかった。
ふと意識が浮上してくると、そこは昏い、とても昏い空間。
ふとそばに気配を感じ、そちらをふりむき、おもわずやさしく笑みを浮かべる。
そこにみえたのは、自分が生涯唯一愛した最愛の人の姿。
すっと差し出された手をとり、そのまま昏い空間の中の唯一ある光に向かって突き進んでゆく。

汝達の願いは純粋。
その純粋な願いにより、たしかに数多の命を軽んじたことも事実。
一度すべて無と化し、そしてまた新たな命として誕生させよう。
その新たな正をどのようにいきるかは、汝達次第――

リナに抱かれながらも、すっと意識を【彼ら】のほうにとむける。
そう。
人は自らの生き方を自らの意思で決めることができるのだから――


                     ――続く……

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あとがきもどき:
薫:やれやれ。数年ぶり(自覚あり)の打ち込み~
  そのままほったらかしてましたよ。これ(汗
L:ほおおう。
薫:ぎくっ!と。とりあえず次はこれをさくさくっと頑張って仕上げる予定です。
  たぶんこれやっていってたら漫遊の打ち込みも少しははかどるはず。
  これのほうはエル様でてこられても、ギャグ…ではないですからねぇ。
L:で?いいたいことはそれだけなわけ?
薫:あうあうあう……
  ……否定はしませんです……
L:なら、覚悟はできてるのね♪
(何ともいえない悲鳴がこだまする)
L:さてさて。ちょっと性根を入れなおして、ちょこっと根性を入れなおしてる薫はほっといて。
  ではまた、次回にて♪
  次回は、このたびのアトラス編のそうまとめらしいわよ♪
  それでは、みなさま、ごきげんよう~♪

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