まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
さてさて、ようやくやってきました本編ですv
このお話はかなり好き嫌いが激しい部類にはいるとおもいます。
グロテスク系とか苦手な人にはお勧めいたしません。
怖いものとか好きな人はそこそこみても問題ないかもしれません。
とはいえ所詮、私、薫がかくもの。
そんなに怖くできない…という自覚はしっかりあります(日々精進…
何はともあれ、いくのですv
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光翼の腕輪 ~いつもの朝~
「美希!もう八時になりますよ!?」
いつものこととはいえ苦笑してしまう。
だがしかし、このまま甘んじているわけにもいかない。
「ん~…あともうちょっと……レイ……」
もぞもぞもぞ……
そのまま布団の中に再びもぐりこむ。
「……は~……。遅刻しますよっ!!」
ばっ!!
ため息をつきながらも布団をいきおいよくはぎとるその目は笑っている。
「うう……レイの意地悪……」
そういいつつも、しっかりといまだにのこっている毛布を体に巻きつけてまるまっているさまは、
はっきりいって食べ物の春巻き、もしくはお饅頭を連想してしまう。
「ほら!夕べも遅くまでテレビをみてるからですよっ!いつもいってるでしょう?」
早寝、早起きは子供にとっては重要なもの。
それがましてや育ち盛りの子供ならばなおさらに。
「だって…だって!一人じゃ怖くてみれないし!」
ぷうっ。
いまだに往生際がわるく体に毛布を巻きつけたままにベットの横にいる人物をみあげる子供。
そのくりっとした漆黒の瞳に漆黒の髪。
ぱっと見た目、男の子ではなく女の子でも十分とおるほどの整った顔立ち。
まつげが長く、それでいてくりっとした大きな瞳。
この子供を知るものならば、誰でもおそらく女の子の服を着せてみたい。
という衝動に駆られることはまちがいなし。
そんなまだ七歳くらいの男の子。
「とにかく。はやくしないと遅刻しますよ?というか集団登校なんですから。ほら、服をきがえてしゃんとする」
いつものこととはいえども、苦笑まじりにそのまま毛布ごとひょい、とかるく抱き上げる。
本来ならば、家庭で通信教育、という手段をとる家庭もこのご時勢多々とある。
それでも、やはり子供のうちはたくさんの友達に囲まれてその感性を磨いたほうがいい。
というのは、もっぱら大人たちの意見。
とはいえ、世の中はそう普通に子供がひょいひょい出歩いて平和、というわけではない。
平和が維持されている地区から一歩外にでればそこでは何が起こるかわからない。
「は~い」
美希、と呼ばれた子供とて学園にいきたくないわけではない。
ただ、もっと寝ていたい。
ただそれだけ。
まあ、これに関しては大人も子供もそういった思いを抱くのは至極当然の成り行きであろう。
総合住宅のその一角。
そこに住んでいるのはこの二人。
見た目二十歳そこそこくらいの女性か男性か見た目では判断つきにくい黒髪の人物。
そしてまた、女の子と見まごうようなとてもかわいい七歳の男児。
この部屋にはこの二人のみで住んでいる。
とはいえこの二人はどうやら親子ではないらしいのではあるが、この世の中、そういうことはざらとある。
ゆえに周囲の人々も詳しくはきかない、というのがあるいみ暗黙の了解となっている。
台所の奥に風呂場と洗面場。
そしてまた、その反対側に子供部屋。
台所を抜けるとすぐに玄関先があり、そこから居間と和室に移動ができる。
この総合住宅の各部屋の間取りは全て同じ。
もっとも、それぞれの部屋をどのように使用するかは借り手の心ひとつ。
もそもそもそ……
素直に返事をしつつも。
「……美希。その毛布はおいていかないとダメでしょう?」
そのまま毛布を体にまきつけたまま、ずるずると毛布と共にベットから降りてあるこうとしている美希、
と呼ばれている子供。
そんな彼に対して苦笑しながらも注意を再び促す。
「う~……」
肌寒いのにぃ~……
そんなことをおもいながらも言われたとおりに布団をはがす。
ぶる。
ぬくぬくとしていた布団と毛布からでれば毎日のことながらやはり身震いしてしまう。
「ほら。顔をあらって。ご飯たべてから歯磨きして」
「は~い」
それはいつもの光景。
香坂雫。森羅美希。
それが彼らの名前。
いつものように、布団をひっぱがし、ねぼけている美希をおこすのはいつも雫の役目。
もっとも、美希は赤ん坊のころから雫に育てられており、両親の顔すらしらない。
雫いわく、雫は美希の両親の知り合いだということ。
それでも、顔すらもしらない両親にかわり、雫の愛情をうけて美希はすくすくと育っている。
「おはよ~。ミキ」
「ま~たねぼう?」
「まあ、気持ちはわかるけどね。お布団の中が一番安心だし」
朝ごはんを食べてかばんをもって外にとでる。
すでにもう数十人の子供があつまっており、その中には本日の当直である大人の姿も垣間見える。
この団地に住む人々は、当直日を決めて子供達の安全を確認する役目を負っている。
通学路にも定期的に大人の目がひかっており、それは万が一にそなえての措置。
いくら安全、といわれているこの慶応102地区といえ何がおこるかわからない。
地区から一歩でればそこは大人ですら生きるのが難しい場所なのだからして。
そんな大人たちの思いを知ってか知らずか、子供、というものは好奇心旺盛な生き物。
ましてやそれが自分たちの命が危険、と小さい子供に判断しろ。
などとはまず不可能。
だからこそ大人が気をつける必要がある。
子供達が危険にあわないように見守るために。
歳のころは様々。
美希と同じ歳の子供もいれば、かなり年上の子供もいる。
とはいえ、この住宅にいる子供はここにいる数十名ですべて。
世帯数的にもそれほどの数になるわけではない。
少数で団地を形成し、そこに住むのも生活というか生きるための知恵。
一箇所にあつまっていれば、万が一襲撃をうけたときに全滅する恐れがある。
ゆえにこその【教会】の意向。
「うん。みんなおはよ~!!」
こういて朝、みんなの顔をみるとほっとする。
いきなりある日、昨日まで元気だった子がいなくなる、というのはこの世界ではざら。
だからこそ見慣れた友達の顔をみることは心から喜べる。
いったいいつのころからかこのような世界になったのか彼ら子供達には判らない。
少なくとも、彼らが物心ついたころにはすでにこのような世界だったことは事実。
「それじゃ、全員そろったところでみんな。きちんと並んで通園しましょうね」
『は~~い』
どうやら美希が一番最後だったらしく、全員子供達がそろったのを受けて当日の当直の係りである大人が子供達を促す。
それと同時に子供達がいつものように列をなす。
数名でひとつのグループというか列をつくり、通園する。
それはほとんどの場所において共通している通学の光景。
全ての地区において共通するのは学園はその地区の中心地帯に属している。
それら全ては子供達の安全を考えての設置。
いつものように決められた通学路をとおり、学園にとむかってゆく子供達。
その道筋にはいく人かの大人たちの姿も垣間見える。
それでも大人の男性の姿がみえない、というのはこの時勢の危うさをものがたっている。
ほとんどの大人の男性は地区に悪意あるものが入り込まないように様々な場所で見張りを行っている。
だがそんなことは子供達にとっては関係ない。
そのまま昨日の番組の話やたわいのない話をしながらも学園にとむかってゆく。
旧暦でいうならば、今現在は鳳凰峪年。
だがしかし、そういわれてもピンとこないのは子供達や大人だとて例外ではない。
確かにそう誰もが子供のころ学園でならった。
しかし、現実には大人とてそのことを覚えているものなど皆無であり、まず知識の上でしかない。
そんなこととは関係なく、今日もまた子供達は元気に学園にと通ってゆく。
「ききました?58地区でのこと……」
「その前は02地区でも最近……」
ここ最近、いっときあまりひどくなかった地震が再び活発になってきている。
それゆえか、人々が建設した『地区』ですらかつてのような安全性がたもたれていない。
大人たちにとって怖いのは、自分たちの子供がそれの犠牲になること。
自分たちならまだどうにか対抗手段はある。
だが、力のない子供がもしそのような危険なことに遭遇するとなれば話は別。
「コウサカさんのところも気をつけてくださいね」
「え。ええ」
定期的にある住宅の集会。
いきなり話をふられ、かるくうなづく香月雫。
もっぱら子供を抱えている『親』達の心配は最近の状況。
ここ数年、子供達の被害が格段に増えている。
中には子供達がいきなり消えたり、またはあからさまに食い散らかされていたり…というはなしもざら。
それも大人たちがしっかりと保護していた、というのにもかかわらず、である。
ゆえになるべく子供達には人気のないところで遊ばないように、と口をすっばくしてそれぞれが言い聞かす。
…が、子供、というのもは好奇心旺盛。
危険と好奇心、と秤にかけるとなればまず好奇心のほうが優先する。
それゆえに大人たちは気が気ではない。
こうして定期的に集会を開くことにより、さまざまな情報を寄せ合い子供達を守る。
それが彼ら『人間』にできる精一杯の防衛。
それがどこまで役にたつのか…というのはおいとくとして。
とにかくできることをする以外に生き延びる道はないのだから――
「ねえ。ほんとうにいくの?」
学園の授業はここ最近はかなり早い。
そんなならはじめっからお休みにしてくれればいいのに。
と思う子供もいたりするが。
子供達には情報は伝えられないが、ここ最近、他の地区で子供達が連続して被害にあっている。
そういう事実があるがゆえに、子供達は学園に通うものの、大概は昼前には帰宅する。
ましてやまだ年端もみたない子供ならばさらに早く帰宅する。
今日はいつもよりも一時間早く授業がおわった。
「ミキはきにならないのか?」
「でも。おか~さんたちがへんなところにいっちゃいけないっていってたし」
「でもさ。ユイ。もし何かみつけたらそれこそおか~さんたちに自慢できるじゃない?」
ごそごそ。
とりあえず、いつもの場所にかばんを置く。
学園内の裏庭にとある小さな小屋。
そこが彼らのいつもの隠れ家。
子供、というものは大人に秘密の秘密基地、というものをつくりたがる。
ソレがバレバレである、というのは知る由もなく。
「でも、どこにつながったかきになるし」
そんな会話をしているのは美希と同じクラスメートの子供達。
先日の地震により、見慣れない場所が出現した。
確かに先日まではなかったはずなのに、いきなり出現したちょっとした虚を抱えた木が一本。
好奇心に負けてその虚の中を覗いた一人の子供がみたものは、
その虚はどうやら空間をつないでいるらしく別の場所にとつづくもの。
それがどこに続いているのか、なんてことは当然子供達には判らない。
おそらくまだ、大人たちですらきづいていない、ある主の「歪みの道」。
頻発する地震によって最近、いきなりまったくはなれた場所同士がつながれる、ということが多発している。
そして、それは害をおよぼす生物の進入をもものがたっている。
そんな会話をしているのは美希を含めた男児三人と女の子が二人。
もし、安全な場所につながったのならばそれは子供達の手柄。
普通、このような『道』はほうっておくと消えてしまうが、ある特殊な方法を施すことにより持続させることが可能。
もし、そこが「植物が育つ場所」であり、汚染されてない場所ならば子供達にとっては喜ばしい。
大人たちに感謝され、いつもは制限されている食べ物ですらも一時とはいえ食べ放題にとなる。
本来ならば、『道』を見つけたらすぐに大人に連絡するのが当たり前。
だけどもやはり自分たちがみつけた場所はどんな場所につながっているのか、ときになるのは人の心理。
「少し探索してからでも報告おそくなくはない?」
まず、木に道がつながっている、というのを踏まえてその先は汚染区域ではない、というのはわかる。
万が一、汚染区域とかならばこういった植物などには道はできない。
一人のそんな言葉に顔を見合わせる子供達。
子供達とていきたくないわけではない。
だからこそ迷っている。
「すこしのぞいてから、それから報告しない?それなら問題ないだろうし」
しばし考えたのち、女の子の一人がそのような提案をする。
それくらいならば問題はないはず。
どのような場所にここがつながったのか…というのはかなりきになる。
もし、別の地区につながっているとすればそれは友達や行動範囲が広がることを示しているのだから。
好奇心と危険は隣り合わせ。
だがしかし…子供にとっては優先されるのは、好奇心のほう。
結局のところ、しばらくのそんな話し合いの後。
彼ら五人は一緒にその先……木の虚の中にと進んでゆく。
期待と不安を抱えながら――
――続く
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あとがきもどき:
薫:設定とすればSFファンタジーみたいなものかもしれません。
とりあえず、次回は子供達の行動ですね。
あと大人たちの反応?
ともあれ、それでは次回につづきます。
ではでは~♪
2008年4月1日(火)某日
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