「現像はこの世界ではできませんけどね。
  この世界にはまだない、科学が生み出した生活の品のひとつですよ。これ」
そんなアンリの言葉に。
「科学!?あの遠くても敵を倒せるという!?」
「それは力の使い道がまちがってますけど。そういうのがあるのも事実ですね。
  でも普通に生活していたらそんなのより、まずは太陽エネルギーを使った動力源や。
  石炭や原子力を使って作り出す力を電力に変えて…そうですね。
  簡単にいったら雷のエネルギーのような力。
  それをどの家庭にも一定した供給をして、さまざまな利用している。といったのが現状ですね。
  普通、一般家庭にはお手伝いの人とかはいないので、その家の人々が洗濯したり。
  掃除をしたりするので、それらをその力を借りて行う道具。
  そんなものが普通にどの家にもある。そんなところで僕もユーリも育ってますからね」
驚く彼らにと、アンリなりに丁寧に、あるいみダメだしするかのように説明している彼だけど。
「確かに。あれは便利でしたね。…俺ははじめ魔術かとおもいましたよ。アレは」
使ったことがあるであろうコンラッドが何やらしみじみといってるけど。
「そんなものがあるのですか?」
おどろくギュンターに。
「・・・・シナ」
なぜか一瞬、顔色を曇らせて…というかしかめて何かつぶやいているグウェンダル。
「みたほうがはやいんだけどねぇ。でも実際に使わないとわかんないかな?」
とかいいつつ、手付かずのお酒のボールをみていっているアンリ。
「水鏡?」
「そ。みるんだったらこれのほうがはやいし」
そりゃそ〜だ。
でも、そんなことよりも。
「この世界って電気もないの?やっぱり?」
「基本は魔力だね」
「でもそれらも魔族がコントロールしてますからね。
  自然の力をもコントロールできるのも。我々魔族だけですし」
アンリとコンラッドの交互の説明。
「以前俺が陛下とソフィア様をお守りしつつ、地球へと赴いたとき。
  ロサンゼルスとかいうとこにでて、ちょっと、いやかなり混乱しましたけどね。
  何しろあんな鉄の塊……としかいいようのないモノが普段の生活の足とされてるなんて……」
苦笑まじりにいってくるコンラッド。
「?それってもしかして車のこと?」
「そうです。」
そんな会話をしていると。
「僕の知らない話をするな!ウェラー卿!
  そもそも、僕はその二人があのときの赤ん坊と、兄上の言われるとおり。
  あの双黒の大賢者とは信じないからなっ!」
『ヴォルフ(ラム)!!!』
そんなヴォルフラムの言葉に、非難するようなオレとアンリを除く全員の声。
「第一!そうだとしても!だ!こいつを育てたのはうすぎたない人間じゃないか!
  そんな中で育てられた王なんてっ!」
むかかっ。
「ヴォルフラム。別に育ちも何も関係ないよ。これは魂の問題だ。
  だが、気になるのならばいっておく。
  陛下の育てのお父君は、あちらの魔王がしかるべき灰化の中から選ばれたかただ。
  何しろ陛下の育てのご両親となられるお二人だ。
  お二人については決まったときには、俺もソフィア様も対談して、会っている。
  そして、ソフィア様は心から彼らを信頼して陛下を預けられることを決められたのだから。
  それに、俺がユーリを間違えるはずがない。」
コンラッドがそう説明してるけど。
「だからといって!母親がわりだった女はどこの誰ともわからない馬の骨なんだろうがっ!
  顔がそっくりだ。なんてどうにでもなる!!
  人間なんてどんな尻軽ともわからない、女に育てられたやつなんてっ!!」
ムカッ!!!!!!!
パッチィィィィィ〜〜ンッ!
思いっきり部屋にと響く、平手打ちの音。

「…あた〜…しまった…忘れてたよ…性格はまったくかわってないんだった……」
なぜかアンリが顔を手で覆い。
「陛下っ!とりけしてください!今すぐっ!」
コンラッドなどはなぜか顔色が代わっている。
「やだねっ!」
だってこいつはどうしても許せないことをいったんだ。
「やだね!取り消すつもりも、謝るつもりもないかんなっ!!
  こいつはいっちゃいけないことをいったんだ!人として絶対になっ!
  馬鹿にしようが、悪口いおうが、オレのことならどんなことだってかまわねえよっ!
  だけど…他人の。しかも、血のつながりもないオレを育ててくれている両親へのっ!
  母親への悪口はゆるさねえ!!
  見たこともあったこともないくせに、尻軽とはなんなんだよっ!
  どこの馬の骨とはどういことだ!?あ!?馬と骨とで子供がうまれるかってんだっ!
  確かにオレを育ててくれたおふくろは人間だよ!どこからどうみてもなっ!
  お前にいわせりゃあ、けがらわしい血がながれているとかいうなっ!
  お前何様のつもりだ?人間が汚らわしいってどういうことだ!
  お前、自分の母親がそういわれたら息子としてどうおもうっ!?
  何の見返りもなく、実の子供としてかわりなく育ててくれてる両親にオレは感謝してる。
  そんな感謝してるところに、そんなこといわれて黙っていられるかっ!!
  というか、命に汚らわしいも何もないだろうがっ!すべて平等ってことばをしらないのか!?
  そもそも、シルだってそう願ってこの世界を作って再生したんじゃないのかよ!?」
自分でいってて、何かわけがわからなくなってきた。
……シルって…誰?
「絶対にとりけさない!それでも顔がきれいだからって、拳でなくて、平手で我慢したんだぜっ!?
  何のためのそんな無意味な自己過剰意識だよっ!
  この世界が一度無に還りそうになったとき、そういう偏見はなくそう。
  といって新たにこの世界は再生されたんだろうがっ!
  そして決めた決まりは何だっていうんだよっ!」
……って、あれ?オレ何いってるの?
「…ヤバ。頭に血がのぼりすぎてる……」
アンリの言葉は何のその。
「お前は昔からそうだよっ!
  いっつも種族に隔たりはないっていっててもききいれやしなかったしっ!!
  そもそも、それもあってあんな戦争なんかに発展していった、というのもあるだろうがっ!
  差別や偏見、そして誤解や恐怖をそんなだからいつまでたってももったままなんだろっ!!
  けどなっ!いっつもいってただろうが!人はわかりあえるって!わかりあえない命はないって!!」
「――はい。そこまで。ユーリ。落ち着け。記憶とかがごっちゃになりかけてる」
アンリがオレの肩に手をおいて、何かいってくるけど。
だけど、絶対に譲れない。
自分で自分が何をいってるのかわかんない部分が何かあるけど。
「これがおちつけるかっての!こいつはオレの育ての親を侮辱したんだぜ!?
  血のつながりなんてまったくないオレをわが子として育ててくれてるおやを!!
  絶対に取り消さないし謝らないかんなっ!」
そんなオレの叫びに。
「絶対に取り消さない。とおっしゃるのね?」
ツェリ様が席をたちあがりつつ、何やらいってくる。
「とりあえず、ユーリ。だからおちつけって」
アンリに飲み物を手渡され、とにかく一気に飲み干すと血のあがった頭がすっきりしてくる。
でもオレ…今何いってたんだろ?
何かこいつのことを前から知っているような気がしたのは……何で?
「絶対にとりけさないっ!」
ツェリ様の言葉に同意するようにもう一度強くいう。
そんなオレの言葉に。
「素敵v求婚成立ねv」
「―――・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
「……あたぁ〜……やっぱりまだ生きてたかぁ……」
ツェリ様のにこやかな言葉に、おもわずオレは間のぬけた声をだす。
アンリはため息まじりに何やらつぶやいているけど。
・・・きゅうこん?
ってそれってチューリップの?
「ほうらね。ヴォルフラム。わたくしのいったとおりでしたでしょ?
  こんなに美しくなっちゃったら殿方がほうっておかなくてよって」
何かツェリ様は楽しそうにいってるし。
「ソフィアお姉様の子なんだから、当然問題はないだろうし。きゃあんv子供が楽しみだわv」
いやあの……子供って……
えっとぉ?
「…いやあの?ちょっとまって?何が起こっているか教えてくれる?
  何かオレマナー違反でもやっちゃったの?」
何かツェリ様の口調からして、とんでもないような気がするのは…なぜだろう?
「アンリ?!ねえ!?誰かわかるように教えてくれる!?
  というか、こどもってなに!?きゅうこんって!?」
オレの言葉に、ギュンターはがっくりとうなだれている。
あた〜。
といったかんじだ。
「……まさかエドが決めたのがまだ生きているとはねぇ。
  ……というかさ。ユーリも彼女ももともとは同じ人だから行動とか同じだけどさ……」
額に手をあてて、つぶやくアンリに。
「こちらのマナー…教えられていなかったんですか?」
「教えてないっ!というかしてるわけないってば!」
コンラッドのため息まじりの言葉に即答しているアンリ。
えっとぉ?
だから何!?
何が起こったの!?
誰か説明してよ?!ねえ!?
「……陛下は作法違反はやっていません。
  それどころか最近じゃ貴族間でも使われていないような。
  古式ゆかしく伝統的にのとった方法で、陛下は彼に求婚されたんですよ」
ギュンターがうなだれつつも、オレにといってくる。
……何か嫌な予感がしてきたんだけど?
「…えっとぉ?念のためにきくけど……ちゅーりっぷとか花の球根じゃない…よね?」
恐る恐る問いかけるオレの言葉に。
「結婚を申し込んだんです」
「でぇぇぇぇぇええ!?んな馬鹿な!?いつ!?結婚!?
  だれがいつどうして何でねえ!?十八にならないと結婚できないっていうかっ!
  日本男児は十八から婚姻できるって法律できまってる、とかじゃなくて!?
  オレがそいつにいつそんなことを!?それにオレたち男同士だしっ!?
  それ以前に!!いつオレがそんなことをしたっていうんだよ!?いったい!?
  オレそんなのしてないよ!?」
オレの叫びに。
「……陛下。相手の左頬を平手でうつのは、貴族間では求婚の行為です」
「んな馬鹿なっ!?」
オレの叫びは何のその。
「そして打たれた者が右頬もさしだせば、その願いを受け入れた。という返事になるんですよ」
コンラッドが額に手をやりつつため息をついていってくる。
「うわぁ!?そんな馬鹿な!?馬鹿なことある!?
  んじゃあ、やっぱり拳でなぐっときゃよかったの!?つうかオレたち男同士じゃん!?
  何で育ての親を侮辱したこいつにそんなことした。となんなきゃなんないんだよっ!?」
オレの叫びに。
「珍しいことではありません。それに陛下は……
  ああ。陛下。このわたくしに何のことわりもなく、突然の求婚とは…あんまりで……
  いいえ。よろこぶことなのでしょうね。
  これで陛下は国王としてこの国に落ち着いてくださることでしょう……」
いやまて。
ちょっとまって。
かなりまってくれぃっ!


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