まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
ほとんど二倍かな?19話でただいま36話……
ともあれ、いっきま~すvv
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コズミック・サブリナル ~第36話~
「ああもう!要領悪すぎ!!」
勉強し、そしてさらに育成を。
何事も完璧に、と思いつつがんばるのに、なかなか思うように宇宙は成長しない。
宇宙を育てる、などという前代未聞な事柄。
確かに研究材料的には魅力以外の何ものでもないが。
だけども、何事も完璧を目指す彼女にとって。
不安定なままの足取りは、それでなくても不安な彼女の心をより不安にとさせてゆく。
自分がしっかりしないと、ルーティスがどう思うか。
そんなことを思いつつも、まともに育成してこその友情。
彼らはあれでもあの場所の宇宙の意思なのであるからして。
「ああん。ごめんなさい!」
「まったく、こんなんで、アルフォンシアはどう思うのかしら?
まあ、私のルーティスほど繊細ではないだろうけど。
あの子達、ああ見えても宇宙の意思なんだから、まともに育成してあげてこその友情でしょう?」
いいつつも、コレットにと教えているレイチェル。
そんなレイチェルの言葉に、すこしうつむき加減で、口を本で押さえつつ。
「でも、宇宙を育成するなんて始めてなんですもの……」
「私だって初めてだよ!?それに、女王陛下もロザリア様も私たちと同年代!
それなのに、みてみなよ。この窓の外の美しい聖地、完璧な宇宙の秩序。
それってお二人が一心同体。いかに強く信頼しあっているか、でしょう?
すごすぎると思わない?ねえ、私たちもあんな風になれるとおもう?
ああ、大人の完璧な関係って、憧れちゃうわ。」
などと一人少しばかり感慨にふけっているレイチェル。
同年代、とはいうものの。
確かに女王となり、そしてまた補佐官となったそのときから。
彼女たちの二人の肉体における時間率はかなり異なる。
そもそもは、ここ聖地の時間も外とは隔たった時間になっているのであるからして。
そんなレイチェルの言葉に。
「……な、なれる……かなぁ?」
きらきらと瞳を輝かせて、
何やら自分の世界にと浸り始めているレイチェルをみつつ、つぶやいているコレット。
確かにこの聖地は美しい。
それを収めている女王の性格を現しているかのごとくに、活気に満ち溢れているこの宇宙。
自分たちが生まれる少しまえ、この宇宙はこちらの宇宙に移動した、と聞いている。
年齢的には確かに同年代ではあるが。
だけども、こちら、つまり聖地と外の時間の流れはまったく異なり。
ゆえに。
どこか大人びた雰囲気を持っているのは、
もしかしたら、女王も補佐官も、そのあたりが原因なのかもしれないが。
「なれるか!でなくてならないといけないんだよ!
だって、私たちしかあの子たちの気持ちを汲んであげれないんだから!」
どちらが女王になるにしろ。
だがしかし、意思たる彼らの気持ちがわかるのは、この広い宇宙の中で自分たち二人しかいないのだ。
それが見えない重圧となって押しかかる。
育成がきちんといかないと、
あちらの宇宙にいったときに、聖獣が悲しそうな、不安そうな表情をしていることにも。
理論上ではどうすればいい、というのはデータで示されるが。
だがしかしデータの上での常識は、今回の試験においてはあまり意味を持たない。
データ上ではたとえば炎の力が求められていても、聖獣の望みは水の力。
そんなこともしばしば。
ゆえに、彼らが望んでいない。
そしてまた、必要としていないサクリアを送っても逆に『育成の妨げになる』という現実がそこにある。
だからゆえに、毎日きちんとそれぞれに学習し、そして、毎日のように聖獣の様子をみにいき。
それから育成、というバターンが続いている。
まあ、コレット一人だと学習だけで一日が終わってしまう……という現実がそこにあるにしろ。
レイチェルは、いつもきっちりと秒単位といっても過言でないくらいに一日の行動を自らきめ、
それに基づいて行動している。
「そうだけど……」
そんな二人の会話をききつつも。
何か雲ゆきが怪しくなってませんか?この二人??
などと少しばかりおろおろしつつ。
「あ、あのぉ?お二人とも、喧嘩はよくありませんよ?」
とまどいつつ声をかける品位の教官、ティムカ。
そんな彼のその言葉に。
くすっ。
思わず顔を見合わせて苦笑する二人の女王候補、レイチェルとコレット。
「セイラン様、私たちのことを誤解してませんか?」
「え?」
「喧嘩するほど仲がいいんです。さっ、レイチェル。学習、始めましょ。」
「そうね。」
戸惑うティムカをそのままに。
二人して、今日はここ、品位を高めるためにと学習を始めてゆく二人の女王候補たち。
「はぁ……やっぱり無理だよ。あんなふうになれるわけがない。くやしいけど、新宇宙なんて……
こっちの宇宙に比べたら……育成なんてぜんぜんうまくいってないよ!」
不安に押しつぶされそうになるそんなレイチェルの言葉に。
「レイチェル。私たちの宇宙はまだ生まれたばかりなのよ?これからがんばっていけば……」
話の中で不安にかられ弱音をいい始めたレイチェルにとまどいつつも声をかけているコレット。
そんなコレットに。
「そんな甘い考えにつきあってられないよ!」
自分の計算とかみ合わない。
そんなことは今までにはなかったこと。
ゆえに不安が襲い掛かる。
そんな不安に駆られたレイチェルに。
「お二人とも、聞いてくださいますか?確かにお二人の使命は想像以上に重いものがあるでしょう。
時には不安にかられてしまうこともあるとおもいます。
責任の重さに押しつぶされそうになることもあるでしょう。
ですが、そのときのために、僕たちがいて、この学芸館があるんです。苦しいときのために。」
ティムカのその言葉に、思わず顔を見合わせるコレットとレイチェル。
「一言でいいきってしまってはいけないんでしょうが。僕はこう思います。
ここで学ぶ感性とは己を知る力。品位とは己を信じる力。精神とは自分を超える力、だと。
この三つがバランスよく保たれて宇宙を担う強い心が生まれるのだと。
だから、あせってはいけません。ね?レイチェル、アンジェリーク。
あせらずにゆっくりと、それらをはぐくんでいきましょう。」
二人ににこやかにと話しかけているこのティムカ。
人を説得し、そしてまた、人々の不安を解消させるこの力は、彼の生まれついての【力】ゆえ。
そんな教官であるティムカの言葉に。
その考えとその言葉が身にしみてゆく。
それを自ら感じつつも。
「ティムカ様。今のお話、すっごくいい話でした。わかりました。」
「私も絶対に忘れません!」
感嘆しつつも、静かにうなづく二人の女王候補。
「ええ。……あ、もうこんな時間ですね。今日はこのあたりにしましょう。」
みれば、すでに時刻は学習を始めてかなりたっている。
「あ、本当だ。それじゃ、アンジェリーク。今日はここまでにして。今から公園にいかない?」
「え?公園に?」
「そ。そうときまれば、さあ、公園にレッツゴー!」
いいつつ、机の上のものを片付けて。
そのまま、コレットの手をひっぱり外にでてゆこうとするレイチェルに。
「ああん、まってよ!レイチェル!私まだいくとは!」
「それでは、ティムカ様。失礼します!」
「それではティムカ様、失礼します。」
二人して元気よく部屋から出てゆくそんなコレットとレイチェルの二人の姿が。
そんな二人の姿を見送りつつも、レイチェルの先ほどの様子にすこしばかり不安がつのる。
と、
パチパチパチ。
いきなりなぜか手がたたく音が窓の方からきこえ、振り向くと、そこにはいるはずのない人影の姿が。
「って、ヴィクトールさん!?」
「いい話だったな、ティムカ。あのレイチェルの声は大きいからな。ちょっと心配になってきてみたんだが。」
笑いつつも、
「よっと。」
いいつつ、窓からかるく飛び降りている精神の教官たるヴィクトール。
「……いったいどこから……」
「うん?窓からだが?」
「どうしてそんなところからぁぁぁ?」
二人の女王候補が退出した後、ティムカの学習室にそんな光景がしばし見受けられてゆく。
それぞれに、聖地の中でそんな光景が繰り広げられているそんな中。
「ねえ?ロザリア、だったら、一緒におでかけしましょ。ね?」
「ですから!そう軽々と聖殿を抜け出ないでくださいませ!
まったく、あなたときたら、いつまでも女王候補時代というか、学生気分が抜けないんですから…」
くどくどと、無駄とはわかりつつも、説得を繰り返しているロザリア。
「でも、今回はきちんとロザリアの許可をうけていきたいのよ。
どうしてもダメ、だというんだったら、やっぱり無断で外出するしかないのかしら?」
しゅん、となりつつ、そんなとんでもないことをいっているリモージュのその言葉に。
「ですから!陛下自らがお出ましにならなくても!
ウォン財閥総帥であるチャールズをこちらに呼び出せば…陛下自らが動く必要はありませんわ。」
どうにかして説得しようとするロザリアの言葉に。
「あら、こんな重要なことはやっぱり本人の口からいわないと。
あ、でもロザリアと一緒にお出かけするんだったら、あまり子供の姿でないほうがいいかしら?
うん、決めた。このままでいきましょう。ね?ロザリア。
私とあなたからチャールズにお願いしてほしいのよ。
私の気持ちが一番わかっているのはロザリアなんだもの。
やっぱり、こういうことは、気持ちが大切でしょ?
人を介したら、重要なことが抜けるとおもうの。ね?……ダメ?」
瞳をすこし潤まし、しゅん、となりかけているそんなリモージュの姿をみつつ。
「………はぁぁぁぁぁ……」
思わず根負けして盛大なるため息をつくロザリア。
こうなったら、何をいって無駄、というのは、ロザリアはよくわかっている。
だからこそ。
「わかりました。ですが、まさかそんな正装でいかれる、とはいいませんわよね?へ・い・か?」
「まっさかぁ。服は着替えるわよ。きゃぁあっ!だからロザリアって好きv」
いいつつも、にっこりと微笑むそんなリモージュの姿をみて。
くすりと笑い。
「仕方ありませんわ。どうせとめてもいかれるのでしょうし。手綱はしっかりと締めておかないと。」
「ああああ、ひっどぉい!ロザリア、それだと私がよくうろうろしてるように聞こえるじゃない!」
「アンジェぇ。よく抜け出して公園とか挙句は遊園地とか。
またはカティスのところに入り浸ってるのは、どこの誰かしらぁ???」
そんなリモージュの声に思わず素直な気持ちをぶつけているロザリア。
まあ、歴代の女王がどうだったのかはいざしらず。
間違いなく、頻繁に聖殿を抜け出す女王など……まずは誰も知らないであろう……
そんなとりとめのない会話をしつつ。
とりあえずは、執務の休憩時間に公園に。
というので話がまとまり。
再び執務にと専念してゆく女王と補佐官の姿が、しばしここ女王執務室にて見受けられてゆく。
二人の女王候補たちに、愛をこめてのブレゼント。
そのために、しばらくのち、リモージュとロザリアは、服を着替え。
そのまま、聖殿を抜け出し、公園にと向かってゆく。
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