まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

さてさて。また副題と内容があってない。
まあ、メルローズ学園の襲撃さんはさくっと終わらせるのですよv
ええ、さく~~、と。
とりあえずは、財団員、そしてまた教団員たちがアンジェリークの力を再認識。
あるいみ、それが主ですし(こらこらこら
そして例のごとくにラストのほうにお約束をばv
ではでは、ともあれゆくのですv

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銀花の園   ~決意~

「これは……」
学園の周囲を取り囲むようにしている様々なタナトス。
「どうやら、エレボスも本腰いれてきたみたいですね……」
おもわずその光景をみてぽそっとつぶやくニクスに対し、
「エレボス?ああ、たしかタナトスを送り込んでいるとかいう諸悪の元のことか?」
伊達に研究に没頭しているわけではない。
気になるのは陽だまり邸に残された記録からは、エレボスという言葉ではなく、
【ラ・ガ】やら【ナド・ラーガ】などといった単語が目についているのも事実だが。
どうやら時代とともに呼び方が変化して伝わっているらしい。
その名前を聞いてもアンジェリークはさほど驚かない。
何よりも彼女は夢でそれと対峙していた人々の姿を視ている。
夢の中では、名前が異なってはいたが。
夢の中で伝えられた言葉によれば、それの意識がこの地に残り、そのような存在と化しているらしい。
夢なのにそれが真実だとわかるのは不思議たが、だがどこか確信がある。
それがすべての真実なのである、と。
周囲に見えるのはタナトスに壊されたのか動けなくなっている数多のジンクス。
そしてまた、そこいらに転がるミイラのような財団の服をきている人物の姿。
ところどころで戦いの音が聞こえてきているのが実状。
「ここは俺が突破する。ニクスはアンジェリークをつれてまず中に生徒達の無事を確認してくれ」
未だに本調子ではないニクスだからこそ、こんな大量のタナトス相手に戦えるかどうかわからない。
それゆえのレインの決断。
「にゅうっ」
「エルヴィン!?おまえ、いつのまに!?」
たしかに屋敷においてきていたはずなのに、なぜかちょこん、と膝の上にのっかってくる子猫の姿。
それゆえにそのことに驚きの声をあげるアンジェリーク。
それに伴い、馬車が新たにきたこともあり、タナトスは馬車の周囲に集結しかけているのが見て取れる。
「わかりました。…では、アンジェリーク。いきましょう」
馬車のままで中に乗り込むことはまず不可能。
人が通れるくらいの隙間は柵にできてはいるものの、馬車が通れる唯一の門は完全にと閉じている。
「え。あ、は、はい!レイン、気をつけて」
「ああ。おまえたちも!」
後ろ髪を引かれる気持ちになるものの、だがしかし生徒達の安全を確保することが優先。
それゆえに、レインの言葉に従い、エルヴィンをひょいっと抱き上げ、
ニクスとともに学園の中にと入ってゆくアンジェリーク。
そんな二人を見送りつつ、
「さってと。いっちょ、あばれるか!」
何しろここ数日はアンジェリークが目を覚まさないのではないか。
そうおもうとはっきりいって寝ていない。
しかもいらいらが募っている。
いいストレス発散の場にはなるであろう。
それゆえに、じゃきっと懐より銃を取り出し、数多といるタナトスに向かってゆくレインの姿。

「ニクス殿!それにアンジェリーク!?」
学園の中にとある広い講堂。
講堂の入り口にはなぜかベルナールの姿。
何でもこの学園に取材にきたところ、タナトスが襲撃してきたらしく、
生徒達を守るためにこうして外で見張っているらしい。
ベルナールに促され、懐かしい講堂の中にと足を一歩踏み入れる。
そんな二人の姿に気づき、驚愕の声をあげているメルローズ女学院の学校長の姿。
それと同時に固まり、震えるしかなかった生徒たちもまた一斉にそちらを振り向く。
「学校長殿。ご無事ですか?生徒達にも怪我などはありませんか?」
そんな彼女に優しく、それでいて心配そうにとといかけるニクスの姿。
「ええ。生徒達は全員無事です」
この講堂はすべての学部の生徒を収納できるほどにかなり広い。
一応、体育などの時間の後のことを考えて、講堂の中にはシャワー室も整備されている。
校長の言葉をきき、ほっとする。
ざっと見渡せば、全員がどこか戸惑いと不安を含んだ表情をしているのが見て取れる。
「ニクスさん。皆や先生たちをお願いしますね」
彼女たちの不安を取り除けるのは…自分にできることを。
それがアンジェリークの思い。
かといってここで祈りを捧げるのは生徒達や先生たちの迷惑にもなりかねない。
自身でもよくわからない自分の力。
夢の中で、この力は一つの世界を創造りだすことも、また破壊することも可能な力である。
そうたしか告げられていた。
そしてその力の使い方は完全に覚醒を果たしたときにおのずから目覚めるであろう、ということも。
「マドモアゼル?」
少しばかり首をかしげるニクスをその場に残し、とりあえず講堂の外にと出てゆくアンジェリーク。
「アンジェ?」
そんなアンジェリークに気がついて声をかけるベルナール。
「ベルお兄さん、何がおこるかわかりませんから、中にはいっていてください」
いいながら、すっと手を組み祈りの体制にとはいる。
心の中で願うと同時に『視えてくる』光景。
財団、そして教団、そして仲間たち。
それぞれが協力してタナトスにと立ち向かっている。
人は一人では成し遂げられないことでも、協力することにより成し遂げることが可能。
人は、一人で決して生きているわけではないのだから。
「聖なる力よ。私に力を……」
願うのは、人々の幸せと幸福。
視える光景に意識をあわせ、祈りを捧げる。
どうやらタナトスはここ、メルローズ女学院を中心として出現しているらしい。
タナトスの出現ポイントはほぼ同じ。
タナトスの浄化と再生、そして癒し。
すべてを同時に。
すべてをあるべき姿に。
それが彼女の願い。
ふわっ。
アンジェリークの祈りに伴い、彼女の背中に白き翼が出現する。
やがて、それと同時、アンジェリークを中心として淡い光りが円を描くように広がってゆく。
それは幾度みても神秘的な奇跡としかいいようのない光景。
しばし、神秘的ともいえる光景に人々は我を忘れて見入ってゆく――

「アンジェリーク殿」
ざわざわざわ。
アンジェリークの力において、タナトスは綺麗に浄化された。
それどころか壊されたはずのジンクスもすべて再生を遂げた。
女王が本来もつといわれている聖なる力。
完全に目覚めていないというのに彼女の力には驚かされる。
生徒達や教員に囲まれ、何なら戸惑っているアンジェリークにと聞きなれた声が投げかけられる。
ふとみてみれば、講堂の中にはいってくる銀樹騎士の服装をしている男性が垣間見える。
その後ろからはヒュウガの姿も見て取れるが。
駆けつけていたジェイド達はメルローズ女学院の外において後始末に忙しい。
後始末、といってもアンジェリークの力で元通りに再生されているのでそのことに関しては問題ないが。
この場にあつまっていたのは自分達だけではない。
何よりも財団にあまりアンジェリークを関わらせたくはない。
最も、財団側からすれば、タナトスが浄化された後、戸惑いながらも何やら連絡したのちに、
そのままどこかにいってしまってはいるが。
ひとまず周囲の見回り。
それがジェイド達の役目。
生徒や教員達から注がれる羨望と、憧れ、そしてまた期待がこもった眼差し。
それはかつての仲間をみる眼差しではなく、むしろ敬愛をこめた眼差しに近い。
それゆえに戸惑いを隠しきれないが、だがしかし自分の力で皆を守れたことにほっとする。
自分は自分。
それが夢を見続けていたアンジェリークが自身の中でもたらしている決意でもある。
不安と戸惑いは、誰にでもあるもの。
だが、重要なのは何よりもそれぞれの自分自身の気持ちなのだから。
「ヒュウガ。それにディオン殿ではないですか」
その姿をみて教員達にと囲まれていた二クスがそちらにと視線をむける。
学園の理事の地位にありながら篤志家として忙しい彼は滅多と学園に出向くことはない。
それゆえに何か用事があり出向くときには必ず人が集まってきてしまう。
「無事なようで何よりです。外のほうは銀樹騎士達やジェイド達が見回りをしている。
  体のほうは大丈夫なのか?二人とも?」
二人とも万全の体調ではないはずである。
それゆえに心配しながらも問いかける。
「私は大丈夫ですよ。アンジェリークのほうはどうですか?無理をしていませんか?」
ヒュウガの台詞ににこやかに答え、アンジリェークを気遣いながらも問いかけてくるニクスの姿。
「私は大丈夫です。それよりヒュウガさん達もお疲れさまでした。
  あの?ディオンさん?私に何か用事ですか?」
何だか話しがあるようなそぶりである。
それゆえに話しかけてきたディオンに問いかける。
「え。ええ。とりあえず、ここでは何ですし。陽だまり邸に戻ってからお話いたします」
ここで例の品を渡せば、学生たちが騒ぐのは目に見えている。
「まあ、たしかに。皆さんお疲れでしょうし。一度もどりますか」
このままこの場にいても出来ることは限られている。
逆にいろいろと疲れる結果になるのは明白。
未だに多少混乱しているこの状況を利用しない手はないであろう。
時間がたてば立つほどに、あっさりと帰宅するのは難しくなってくる。
ディオンの言葉もあり、とりあえず学校長などに別れをつげ、ひとまず彼らは陽だまり邸にと戻ることに。

「手紙…ですか?」
ひとまず陽だまり邸にと戻り、サルーンに全員が集まり、ディオンから手渡された手紙をみて思わずつぶやく。
「?何てかいてあるんだ?」
アンジェリークに手渡された手紙をみて、首をかしげながらも問いかけているレイン。
「それは教団からの正式な手紙。裏に教団の印の刻印がされているのがわかりますか?」
首をかしげるアンジェリークにと丁寧に説明しているヒュウガ。
「ああ。これが教団の印、だね」
アンジェリークが裏返した手紙の一部をみて納得したような声をだしているジェイドに。
「それで?刻印がある、ということは教団長様からの手紙なのではないのか?」
それをよせばいいのになぜか逆立ちしている状態で空中に浮びながら覗き込み、
そのまま体制を少しばかりとかえてディオンに問いかけているカーライル。
さすがは、肉体という器をもっていない存在、というべきなのではあろうが……
まったく知らない人が見ればかなり心臓に悪いことは間違いない。
「…カーライル。その格好はやめろ。絶対に心臓にわるい」
溜息とともに、そんなカーライルにといっているヒュウガ。
死んだはずの親友がこうして魂だけの存在となり、精霊のような姿となり存在していることは嬉しいことこの上ない。
だがしかし、性格は生前のまま。
つまり悪戯好き、という点もどうやらかわっていないらしく、
部屋にいてもときどきちょっかいをかけられているヒュウガ。
聖都にいたときには、よくルネと一緒になって悪戯指導をしていたのだからたまったものではない。
そんなことを第三者にいうわけにもいかないが、彼の性格はヒュウガもディオンも知り尽くしている。
「まあまあ。それより、何てかかれてるんだ?」
どうやらそんな彼らの忠告はまったくもって気にしないらしく、さらっと話題を元にともどし問いかけるカーライル。
「ええと……」
かさっ。
丁寧に手紙を開けて中身をみる。
封筒の中にはこれまた綺麗な紙がはいっており、丁寧な筆跡で書かれている内容が見て取れる。
「……え?」
そこに描かれている内容を目にして思わず目が点。
「何何?…『教団長へのお目通りを許すから都合がつくときに聖都にいらしてください』?
  …教団長って、あれか?たしか古より続く膨大な知識の伝道者とかいう?」
ひょいっと文面を覗き込み、記憶を手繰り寄せながらもつぶやくレイン。
「ええ。確かセレスティア教団の教団長は生まれながらにして古の知識を備えている。
  何でも幾代も生まれ変わりながら時が満ちるのをまっている。ということでしたね」
さらっというニクスの言葉に思わず顔を見合わせて目を丸くするヒュウガとディオン。
「なぜ、ニクス。それを……」
本来、一般には生まれ変わり云々などは今の時代、あまり知られていないはずである。
かつては人々にとっては周知の事実だったようだが、今はほとんどのものが其の事実を知らない。
「まあ、年の功。とでもいいましょうか。しかし、教団からの正式な招待、ですか。
  どうします?アンジェリーク?」
そんなヒュウガの疑問をさらっとかわし、にこやかにアンジェリークにと問いかけるニクス。
「せっかくの招待なんだし。いってみようよ」
「たしかに。教団ならこのタナトスが強化している対処もつかんでいるかもしれないしな」
それに何よりも、教団長には話しておかなければならないことがある。
以前、いったときには話せなかったが。
以前、解読を依頼されていた古文書の解読はすべて完了している。
まんがいち、アンジェリークを利用しようとする悪意をもったものがあれを解読した場合、
再びアンジェリークの身に危険が及ぶ、とも限らない。
ジェイドとレインの言葉をうけながらも、しばし文面に視線を落としいまだに半信半疑。
「私のようなただの女の子が面談してもいい相手なのかしら?」
思わず本音がぽつり、ともれる。
「アンジェリーク殿。ただの…って……」
思わずその言葉に目を丸くするディオンに。
「あなたらしい謙虚さだな」
ふっと笑みを浮かべてつぶやいているヒュウガ。
「じゃ、決まりだ!ついでにディオンも一緒に聖都にどうせ無理をいってでも長老達からつれてこい!
  みたいなこといわれてるだろうから、一緒にいくんだろ?」
「…カーライル…おまえなぁ~……」
どうもこの友人はこの姿になってから、かつてより容赦がなくなったような気がするのは気のせいだろうか。
いや、本来の彼の姿なのではあろう。
かつては強さを求めるあまりに自分自身すら見失っていたカーライル。
今はその枷が解かれ、ある意味自由。
彼曰く、力と時が満ちれば完全に実体化することの可能、とのこと。
「ムダだ。ディオン。こいつは以前より活発になってるからな」
あきれたようにつぶやくディオンに続き、間髪いれずに突っ込みをいれているヒュウガ。
「あ。ひどいなぁ。ヒュウガ。僕はただ、適度な緊張をあたえているだけだよ♡」
彼が一人称を『僕』、と称したときには必ず何か含みがある。
そのことは長い付き合いであるがゆえにディオンもヒュウガもよくよく理解している。
「…おまえ、聖都にいってまたルネ殿と共謀して何かたくらんでないか?」
感情を滅多に示さないヒュウガであるものの、さすがに多少顔をしかめて問いかける。
「それもいいかもねぇ」
「って、ヒュウガ!こいつにいらない知恵をつけるなっ!」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぷっ』
ヒュウガ、ディオン、カーライルのやり取りをみて思わず目を点にしつつも全員がぷっと吹き出してしまう。
仲がよい、というのはいいことではあるが、あるいみ漫才に近いものがある。
カーライルがその姿を取り戻して以後、このような光景はよく見られているので多少の耐性はできている。
できてはいるが、やはり見ていてほほえましい。
「では、決まり、ですね。それでは準備が出来次第、出発するとしましょうか?
  ついでに聖都にいきつつ、オーブハンターの仕事もこなしながら、ね」
すでにいくつかの依頼は舞い込んでいる。
それゆえに、首都ヴォードンより向こうの位置からの依頼をこなしてゆくのが最も有効。
そんなほのぼのとした会話がなされつつ、しばし時間は過ぎてゆく。

『遺跡があるなら私の力で何とかなるわ。まかせといて』
これは……
何だかいろいろなことがありすぎた。
いつものように部屋にともどり、お風呂に入り寝入ったまでは記憶している。
いつも見る夢が多少どこか違っている。
鈴を転がしたような、それでいて澄み切った声。
だけどもとても懐かしい声。
『ついでにこの世界をバリアで囲いましょう。時間の調整もまかせといて』
…ついで?
ついで、といえることかしら?
思わず夢だというのに内心突っ込みをいれてしまう。
声の主の姿はみえない。
だけども、視界に入るのは金色の髪。
どうやら誰かの目線を通してみている『夢』らしいことは理解できる。
それが誰なのかはわからないが。
周囲にいるのは、ときどき夢にでてくる人物たち。
『さってと。それじゃ、いきましょうか♡』
その言葉と同時、世界全体が光りに包まれる。
立ち込めていた霧が一気に晴れ、廃墟であったそこに何か見慣れた建物が一つ。
あら?
これ…もしかして、陽だまり邸?
みえる建物は、どうみても陽だまり邸そのもの。
『さすが陛下。すごいですっ!』
『おま~。ムダにすごいよな』
『ゼフィル!そのムダって何!?』
そんな光景をみて目をきらきらと輝かせていっている茶色い髪の少年に、
何かあきれたような感心したような声をだしている白い髪の少年。
そんな少年に突っかかるようにぷうっと顔を膨らませていっている金の髪の少年が一人。
『ほらほら。お子様たち。言い争ってないで。とにかくこの現状を把握するのにいくよっ!』
ずるずるずる~
『って!オリヴィエ様!襟首をつかまないでくださいっ!』
『ぎゃぁ~!はなせ~!!』
あら?
あの人……
以前、あったことがあるわ。
舞踏会にいく、ときまったときにやってきた女性とも男性とも見分けのつかないかなりの美青年。
『エルンスト。ついでに王立研究室もつくったから、調査をお願いね♡』
『わかりました。レイチェル、協力をお願いできますか?』
『まっかせといて♡アンジェリークや皆のために早く現状を把握しないとね!』
『だけど、レイチェル?無理はしないでよ?』
どうやら伝わってくる感覚から全員がいきなり見知らぬ土地にと飛ばされたらしい。
だけども、伝わってくる感覚は、今彼女たちがいるこの場は『アルカディア』であることは間違いない。
そこに見えるのは銀色の大樹。
全員がその場から移動する最中。
『エヴィ。アルフォーティスをお願いね』
さわっ。
姿のみえない声の主がそういうと同時、銀の大樹が風もないのにふわり、と揺れる。
エヴィ?
それにアルフォー…ティス?
【誰か】の視界と視線を通して紡がれてゆく日常。
そして、【ラ・ガ】といわれている悪の意識との戦い。
銀の大樹の中に守られるようにして封じられていた【エルダ】といわれていた青年の解放。
青年は犬のような存在となり、大きく空にととびあがってゆき、悪意を完全にと霧散させる。
それは神獣の宇宙意思であるアルフォンシア、と名づけられている存在。
宇宙には意志たる存在があり、そしてその意思を育てていったのが、
『アンジェリーク』と『レイチェル』と呼ばれている二人。
そのことも夢の中で伝わってくる。
何もない空間から力を注ぎ込み、宇宙を誕生させ、そして惑星を誕生させて生命の発展を願う。
いまだにこのときには、彼女たちの宇宙には生命とよべる存在は存在していないらしい。
あるのは、神鳥の宇宙より送られた自然溢れる惑星、のみ。
――アンジェリーク。意志に選ばれしはあなた。あなたの行動でこの地の未来はきまる。
アルカディアが消滅する、といわれつつも小宇宙として安定した、そして時は紡がれてゆく。
神獣の宇宙に誕生する新たな生命、そして聖天使、とよばれし存在。
アルカディアに誕生した『セレスティア』と呼ばれる二つの宇宙の特性をいかしたテーマパーク。
そして、サクリアを秘めたジェムの事件。
それらがまるで走馬灯のように声ととにも流れてゆき、そして瞬く間にはじけ消える。
「まって!」
がばっ。
声が遠のくのと同時に景色もゆらいでゆき、声の主をあわてて引きとめようとする。
ころっん。
それと同時に無意識のうちにベットから起き上がったらしく、胸の上でねていたエルヴィンが見事に転ぶ。
周囲をみわたせば、いつもの部屋。
今までみていたのが夢だと理解しているものの、だけどもどこかであれはかつてあった現実だ。
そう理解している自分がいる。
無から有へ。
女王の持つ力は測り知れないものがある。
夢の中ででてきた二人の女王。
姿はみえなかったが、神鳥の宇宙の女王と、そして茶色い髪をした同じ年頃の神獣の女王。
そしてそんな彼女を補佐している補佐官、とよべる彼女たちにとっての親友ともいうべき存在。
女王とは一人ではない。
すべてを一人で抱え込む必要などはない。
そう夢から目覚める瞬間に聞こえてきた声。
助けになり心を許せる存在がいることは、大きな救いとなるのだから――


                                -第74話ー

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あとがきもどき:
薫:いうまでもなく、ラストにでてきた、『誰かの視点』それはリモージュ視点ですv
  つまり、リモージュを通してアルカディアのアンジェリークに過去の光景を見せている状態です。
  エヴィルがでてくるところまでみせたいのは山々ですけど、それだと子猫が宇宙意思である。
  というのがアンジェリークにバレバレになってしまいますからね(笑
  次回から聖都参拝の回にはいるのですvその前にサンティーヌのはやり病~♪
  ではでは、また次回にてv

2008年6月24&25日(火&水)某日

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