まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
さてさて、ようやくアンジリェークの誘拐事件vv
これがおわればジンクスまであと少しv
ジンクスの一件にはいれば、ゲーム同様、あとは女王への道まっしぐら~、ですからねぇ。
何はともあれ、ゆくのですv
#####################################銀花の園 ~誘拐~
「よう!…って、…そっくりさん?それとも…まさかおばけ!?」
いきなりそれはないような気がしなくもないが、だがしかし当然の反応なのかもしれない。
とりあえず駐留している騎士団たちもまた彼のことはよく知っている。
知っているがゆえに馬車のところで待っている、そういってきたカーライル。
雷鳴の村、オラージュ。
聖都から数日はなれている場所にあるものの、ここまでは何事もなくたどり着けた。
村から少し離れた場所にて馬車をとめたアンジリェークたち。
そんな彼等のもとにどうやってききつけたのか、走ってくる男性が一人。
「さあ?何なんだろうねぇ」
そんな彼ににこやかに答えているカーライルであるが、どうやらかなりお茶目な性格をしている。
というのはここにくるまでに判明している事実。
「…そういや、弟がいるとかいってたし。それなのかな?まあ、いいや」
いや、それでいいのか!?
思わずそんなロシュの言葉に内心つっこみつつも、
「しかし、何でおまえがこんなところにいるんだ?ロシュ?」
至極もっともな問いかけをしているレイン。
「いやぁ。銀樹騎士団が敗北したとかいう情報を手にいれてね。それでこうしてスクープをとりに」
にっと笑うロシュであるが、さすがロシュ、といったところなのであろう。
「しかし。あんた達にせっかくきてもらって何だけど。もう例のタナトスはいないぜ?」
『え?』
さらっというロシュの台詞に思わず全員が顔を見合わせる。
「たぶん、あんたたちなら心当たりあるのかもしれないけど……」
いいつつもロシュが簡単に説明を始めてゆく。
話によれば、ロシュもまた浄化能力を持ちえている、というのもあり一人で夢魂の塔にとむかったらしい。
そこで出くわしたタナトスの写真を取りまくり…このあたりはさすがとしかいいようがないが。
それで襲われそうになったので武器にしているブーメランで応戦したところ、
戦いの最中、空より銀色の葉と白き羽が舞い降りてきたらしい。
それがたまたまロシュが与えたダメージの場所に触れたらしく、もがきくるしみ、
そのままタナトスは羽と葉っぱにつつまれるようにして光の粒子となり掻き消えた。
ロシュ独特の情報網によれば、やはりあのとき出現していたタナトスもアルカディア中にて光となり消えていたらしい。
ここまで銀の大樹の葉が舞ってくるなど絶対にありえない。
だがしかし、現実にありえないことがおこったのもまた事実。
それゆえにおそらくアンジェリークが何かしでかした、そうロシュは踏んでいる。
「おやおや。でもまあ、被害もなくて何よりです。しかし…強力なタナトスが増えてきていますね……」
先日戦ったウロボロスというタナトスもかなり強かった。
六人がかりでようやく弱らせアンジェリークが浄化したのが記憶に新しい。
そしてまた、自身を操ろうとしている負の力が日々力を増しているのがわかる。
それに比例して自身の力もまた強くなっているようなのでどうにか抑えられているこの現状。
「ああ。たしかにあんたのいうとおり。最近のタナトスはなぜかどんどん強くなっていっている。
まるで何かにあがくように、な。それはそうと何でそこの小生意気なやつがいるんだ?」
以前彼にはあったことがあるがゆえに顔をしかめていってくる。
「僕がいたらおかしい?」
「ル…ルネ殿。お願いですから下手なことはおっしゃらないでください」
何ならおろおろしつつもそんなルネにあわてて注意を促しているディオン。
どうやらディオンも彼の教育係の一人らしい、というのはここにくるまでに一応は聞いている。
「俺の情報もうからしたら、あんたは聖都からでれなかったはずだ、そうおもってな」
今の教団長は実は教団の長老たちが祭り上げた存在である。
本来の教団長となるべく人物は、生まれながらにその知識全てを兼ね備えている。
そう伝え聞いている。
そして、調べてゆく最中、そういった少年がオラージュの村で生まれた。
ということも。
それゆえに常にオラージュの村には騎士団が駐留することになった、ということも。
伊達にロシュは情報屋として生活していない。
表の情報も裏の情報もとりあえずは知り尽くしているロシュ。
だからこそのロシュの問いかけ。
「頭のかたいくそ爺たちをだまくらかして外にでるなんて簡単だよ」
「「…ロシュ殿……」」
にっこりとさらっと何やらものすごいことをいっているルネの台詞に思わず異口同音で言葉を発するディオンとヒュウガ。
「まあ、いいけど。それより、あんたたちに話があるんだ。
あ、そうだ。せっかくここまできたんだし。二人で聖母のところにでもいったらどう?」
言外にアンジェリークには聞かせたくない話である。
そうロシュの言葉は物語っている。
だがそれにアンジェリークは気付かない。
「そうだね。せっかくだし。いこ、アンジリェーク」
「え?で、でも」
ちらっとその場にいるニクス達にと視線をむける。
「我々なら大丈夫ですよ。後からすぐにいきますから」
そういわれ、確かにもう村は目と鼻のさき。
「じゃあ、私たち、先に村にいっていますね」
ぺこりと頭をさげてひとまずルネとともに村にとアンジェリークは向かってゆく。
アンジェリークの姿が見えなくなるのを確認し、
「さて。ここからはあんたたちには重要すぎる話だ。財団のことなんだが……」
険しい表情で全員をみつつも重要な話を始めるロシュの姿が、しばしその場において見受けられてゆく。
「う~ん。いい天気」
いい天気だというのに空からは常に雷の音が鳴り止まない。
「にゅぅ?」
「大丈夫よ。エルヴィン。これをもっていったらすぐにもどるんだし」
何やら忙しそうなので誰にも声をかけていない。
そもそも行く先は目と鼻のさき。
村の中に馬車を乗り入れればいいのに、ともおもうが、それでは村に迷惑がかかりかねない。
そもそも馬車の馬ようの放牧場は村の外にと位置している。
常に交代制で一人づつ、そこにて滞在している仲間のために差し入れをもってこっそりとお出かけしているアンジェリーク。
カーライルに関しては、とりあえずレインの意見もありカーライルの弟、ということで押し通すことにしたらしい。
彼自身も大変に乗り気で、話をどうやらあわせているらしい。
事実、彼には歳の少しはなれた弟がいるらしく、それゆえにさほど怪しまれたりはしていない。
「そうだわ。ついでに何かさがしていきましょう」
常に何かを携帯しておいたほうがいい。
この辺りは薬草などがかなり豊富にはえている。
あと数日、ここオラージュの村に滞在するらしいので、
その間、ライラに薬の作り方を教えてもらうつもりのアンジリェーク。
ライラもまたまさか息子であるルネに会えるなどおもっていなかったらしく、言葉にはしないもののかなり喜んでいた。
言葉もなくただ泣いていた彼女の姿は記憶に新しい。
「えっと…エルヴィン。遠くにいったらだめよ?」
籠をひとまずしたにおき、薬草を物色してはつみはじめる。
みれば、エルヴィンは周囲で草に戯れてあそんでいる姿が目にとまる。
かさっ。
ふと背後に足音がきこえ、おもわず振り返る。
一瞬、雷が空に光りその逆光にて輪郭と姿がぼやけるものの、すぐさまに思わず立ち上がる。
「あ…あなたは……」
以前、いきなり陽だまり邸の庭の中で襲い掛かってきた人物。
その人物が今は目の前にいる。
「目標、確認。これより捕獲にはいる」
淡々とした感情のこもっていない声。
「あ…あの……」
「ふしゃぁ~~!!」
そんな彼にとエルヴィンが小さい体で威嚇をするものの、まったく気にもとめず。
その手をゆっくりとのばしてくる。
だっと手元にある籠をもち、片手でエルヴィンを抱き上げる。
「エルヴィン!逃げるわよ!」
後ろから追いかけてくる気配を感じつつも、とにかくひたすらに走るしかアンジェリークには術はない。
と。
かっ。
いきなり目の前がものすごい明るさに襲われ、おもわず目をつむってしまう。
みれば、目の前に一台のオートモービルがとまっており、それのライトがアンジリェークに向けられているらしい。
空からは相変わらず雷が鳴り響き、空には稲妻すら走っている。
それだというのに稲妻がおこっているのに空は多少雲があるもののどんよりと雲ってはいない。
「何?まぶし……」
そういいかけると同時。
ぐっと背後から何か口元に押し付けられる。
「~~!?」
言葉にならないものの、それがどうやら眠り薬だと理解するのにそうは時間はかからない。
――助けて……
沈みゆく意識の中で、誰ともなく助けを求めるものの、どうにもならない。
「ジェッド。後はまかせる」
あとは目くらましをかねて彼に彼等を襲撃させるだけ。
眠らせたアンジェリークをすばやくオートモービルと呼ばれる車に押し込み、運転席にと乗り込んでゆく。
「了解した」
彼が受けている命令は、捕獲の手伝いとそして彼等への足止め。
別に怪我をさせても何をしてもかまわない。
出来れば彼等の戦闘データも一緒に採取してこい。
というもの。
「…猫、か。ふんっ」
小さな体で威嚇しまくってくるエルヴィンを横目でみつつも、すばやく車を発車させる。
とりあえずの目的はこれにて達成。
あとは彼女を財団本部にまでつれてゆき、隅々まで調べるのみ。
「…そういえば、アンジリェークは?」
「ライラ殿のところでは?」
ふと彼女の姿がみえないことに気付いて問いかける。
ロシュの忠告もあり常に彼女の行動にはここにきてからも気を配っていた。
と。
「ねえ。アンジェリーク、ここにいる?」
ひょっこりとライラのところで寝起きしているルネが顔をだしてくる。
約束の時刻になっても現れないアンジリェークを心配して迎えにきているルネ。
それと同時。
――ルネ。
いつも聞きなれている声がルネの脳裏にと聞こえてくる。
思わずその場にて硬直してしまうのは仕方ないであろう。
知ってはいた。
そのようなことがおこる、というのは。
だが、それがいつ、ということまでは……
知識として知っているだけ、というのと実際に起こった、というのではかなり違う。
「…まって。どうやら…まねかねざる客人、みたいだよ?
君たちはとにかく、アンジェリークを探してきて。俺はあいつの足止めをするから」
足音を消してしてもわかる。
近づいてくる感覚と気配で。
「ジェイド?」
「この間、陽だまり邸にしのびこんでたやつがやってきてる」
『!?』
その言葉でその意味を悟るレイン達。
「と、とにかく。手分けしてアンジリェークをさがすぞ」
「わかった」
レインの言葉をうけて、がたんと席を立ち上がるロシュ。
だがしかし、レイン達はまだ知らない。
すでに彼女は財団のガーネットにより連れ去られている後だ、ということを。
「…籠、だけが?」
村と放牧場との間にアンジェリークが持っていったとおもわれる籠だけが落ちていたらしい。
たまたま放牧場に向かおうとしていた人の目撃情報から、
何やらものすごいスピードで走ってゆくオートモービルの姿をみた、とのこと。
オートモービルこと自動車ともよばれるそれはいまだに完全に普及してはいない。
しかも、先刻まである程度攻撃をしかけてきたのちに撤退した人物のこともある。
おそらくは、ジェイドを元に複製されたジャスパードールであることは明白。
ざわざわと村人総出でアンジリェークを探すものの、姿形も見当たらない。
だが、彼女の身に危険が及んでいないことは何となくだがわかる。
最近、力が増してゆくにつれ、周囲を包み込むような彼女の力をも感じ出した。
その力にかげりは見当たらない。
「財団が何かしかけてきた、と考えるのが自然だね。
ディオン。たしか財団の近くに彼等を見張っている騎士団がいたはずだよね。
彼等と連絡をとって怪しい動きがなかったかきいてみてくれる?」
「心得ました」
ルネの指示をうけて、とりあえず連絡をとるためにと駐在所にとむかってゆくディオン。
「とりあえず、僕は精神離脱して彼女の気配をおってみるよ」
「…というか、お前そんなことも可能なのか?」
理論上はできるはずだが、成功した試しがない。
研究の過程で人の体が魂の器にすぎずに、魂、つまり精神のみで活動することも可能。
そのことはすでに机上の理論ではあるものの可能性として視野に取り入れられている。
もっとも、それに成功した人など聞いたことはないが。
それに近しいものがよくある怪談話の中の幽霊、という存在であろう。
「まあね。僕は君たちよりもサクリアの扱いに慣れてるからね」
レイン達とてサクリアを完全に使いこなせばそれくらいは朝飯前。
もっとも、ニクスに関しては今そのようなことをすれば、まちがいなく肉体をアレに乗っ取られてしまう。
というのがわかっているから進められないが。
驚いたように言ってくるレインにさらっと答えているルネ。
「とりあえず、俺はいろいろなモノから話をきいてみるよ」
力が増してゆくにつれ、木々の声すら聞こえるようになってきている。
それゆえに、アンジェリークがいなくなった付近の木々に聞き込みする、といっているジェイド。
「あ、ルネ殿。俺もおともします」
そもそも、カーライル自体が肉体という器をもたない存在。
今、人の器の形をとっているのはあくまでも夢のジェムによるもの。
「じゃぁ、おねがいしようかな?ヒュウガ達はとりあえず情報収集をおねがいするね」
情報が多いにこしたことはない。
というかそろそろあの一族のものがここにくるはずである。
そこで彼等は知るであろう。
アンジリェークが財団によって捉われた、ということを。
だが、それはルネの口からいうべきことではない。
全ては運命の導くままにコトはすすんでいるのだから……
「…ここは?」
ふと気がつくと、どこか薄暗い部屋の中の椅子に座っている自分。
あれからどのくらい時間がたったのかアンジリェークにはわからない。
ふと視線を体に走らせれば、何やら様々なコードのようなものが体につけられている。
そして頭にも何かがかぶせられているのが何となくだがわかる。
窓一つない薄暗い部屋。
周囲にはよくわからない機械らしきものがびっしりと置かれている。
「おや。ようやくお目覚めですか?」
そんな彼女に淡々と駆けられてくるどこか聞き覚えがある声が一つ。
「あなたは……」
以前、星の船の一件のときにあったことがある財団員のたしか…
「エレンフリート…さん?」
戸惑いながらも声をかける。
何がどうなっているのかアンジェリークにはわからない。
「あの?これは?いったい……」
立ち上がろうとしても、どうやら拘束具でがっしりと体は固定されているらしい。
体の自由はまったくきかない。
「喜んでください。例をみない女性の浄化能力者のその力の分析をしているだけですよ。
あなた一人の犠牲で様々な人が救われる可能性もあるのですからね」
意識を失っている最中も様々な実験を施した。
彼女には自己防衛ともいえる力も備わっていることも判明した。
そして彼女の体からは常に今知られているサクリアの全ての力が湧き出ている。
彼女がもっていた手提げ袋の中にあったはずの石は彼等がみたときには何もはいっていなかった。
別にアンジリェークが持ち歩くのをやめていたわけではなく、彼等がいないときに、
それらはアンジェリークが手にしているブレスレットの中にと吸収されたに過ぎないのだが。
彼女の手にしているブレスレットはいわば、石版の神器、と呼ばれている品と同じような働きを示すもの。
当然、そんなことをアンジリェークは知る由もない。
「分析?…あ、あの、いったい何を……」
「すばらしいとおもいませんか?あなたの命一人でいろいろな開発が可能になるかもしれないのですから。
それにあなたの力を増幅させれば、タナトスを永遠に葬ることもできるかもしれないのですよ?」
そう、あの古文書にあった時空移動。
エレンフリートの勘があたっていれば彼女の力を増幅させることによりそれも可能のような気がする。
そう、奇跡をすんなりと起こせるその力は、伝説の女王の卵に近しいものがある。
ということは、彼女はその伝説の卵か、もしくは似通った力をもっている。
そう推測しても何ら不思議はない。
だが、彼にとっては事実が全て。
伝説のようなあやふやな情報でうごくようなことはない。
「タナトスを…?というか、この拘束具は……」
「あなたが逃げ出さないためにするためですよ。ああ。それと。
実験の最中貴女が騒ぎ出さないようにするためですけどね。何しろあなたは貴重な実験材料、ですから」
にこりともしない、心のこもっていないその言葉。
まるで、そう人を使い捨ての道具のごとくにみているようなそんな感覚。
道具とて使い捨てにするのはよくない。
常に修繕を加えていき、最後までつかいきるのが道具に対してのせめてもの心というもの。
「あ、あの、私をかえしてくださいっ!」
「それはできませんね。あなたをここに連れてきたのは非常手段をもちいてますから。
あなたを帰せば下手な捜査の手がのびてくることもありえますしね。
まあ、衣食住は提供しますよ。逃げようだなんて思わないことですね」
そういうと同時、横にある機械らしき物体の一つに手をかける。
「き…きゃぁぁぁぁ~~~っ!!!」
それと同時、アンジリェークの体にものすごい電流が流れていきアンジェリークの悲鳴が部屋の中にこだまする。
いったい全体、何がどうなっているのか、アンジリェークにはよくわからない。
わかっているのは唯一つ。
どうやら無理やりにここにつれてこられた、ということ。
そしてエレンフリートがいる、ということはおそらくここは財団の関係施設のどこかの一つであろう。
ということのみ。
-第68話へー
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あとがきもどき:
薫:副題、拉致と誘拐、どちらにするかな?とおもったけど、とりあえず誘拐のほうに。
いや、何となく拉致誘拐…にしたら…次期が次期だしね…とりあえず世間の動向もありますし(汗
まあ、この誘拐シリーズはあまり詳しくは触れないつもり。
さくっと解決しないと、やはり…ねぇ(汗
そもそもゲームでもけっこうさくっといってるし。
しかし下手に誘拐さんにいったらバットエンドになってしまう…(笑
くれぐれも世界を救うためなら、とかいって許可したらアウトですよ~(笑
アンジェリークそのものが消えるか、もしくはレインととに消えるか、のどちらかになってしまう~
次回でいまだにアニメではでてきていないとおもわれるナギさんの登場ですv
ではまた次回にてv
2008年6月16日(月)某日
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