まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

今回はあまり表現を詳しくやっていません。
ちなみに、あくまでも生き返った、というわけではありませんよ?カーライルさんは(強調
ジェムシリーズの一件にて、夢のジェムがセイランの姿をかたどっていたことがありましたけど。
あれの応用ですよ。ええ(笑
夢のジェムが最後まで行方不明になっている、いうのもあってこのネタにおちついているわけですし。
そういや、結局実際問題として夢のジェムは気ままにやっぱり意思をもってふらふらしてるんでしょうかね?
謎です……

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銀花の園   ~カーライル~

ぴちゃん。
天井から水滴が滴り落ちてくる。
「聖都の近くにこんな場所があったとは……」
「私も驚きです」
ラシーヌの村にて朝食をとっている最中、合流するためにやってきたディオン。
そこにルネがいるのに驚いたが、だがしかし彼がどうやら長老達をだまし…もとい言いくるめて外にでたのは明白。
この次期教団長の資質を備えている少年はいったい全体何をしでかすやらまったくもってわからない。
そこにてアンジリェークが昨夜のことを話し、コンパクトに指し示されている地図を見せたところ、
「ここには絶対にいったほうがいいよ」
それをみて言い切ったルネの一言にてその場所に出向くことに決めたディオンとヒュウガ。
アンジェリークとてそんなルネの言葉に逆らおうとはおもわない。
むしろきになっていたのは事実なのだから。
「こんなに近くにあって誰もしらなかったのか?」
それこそかなりの驚きである。
洞窟の形状からいって一年やそこらでできたものではないらしい。
内部にとある鍾乳洞がそれを物語っている。
それなのに教団の誰もこの場所を把握していなかった、ということがそもそもしんじられない。
そもそもこの洞窟の周辺にはあれだけつもっているはずの雪の一つすら見当たらず、
ましてや気候もとても暖かい。
まるで、そう銀の大樹がある空間のように。
洞窟に足を踏み入れてすぐのそれぞれの感想。
「…あら?」
ふと何やら手提げ袋とそして懐の中がとても暖かい。
とても強い力を感じる。
懐のポケットには夢のジェムと呼ばれる品を常にいれてはいる。
いるが……
ぽうっ。
「あ、蝶が……」
アンジェリークがジェムを取り出すのと蝶がヒュウガの体内から出現するのとほぼ同時。
ふわっ。
蝶がジェムに止まったかとおもうと、次の瞬間。
ジェムからまばゆき光が発せられる。
そう、昨日手鏡を覗いたときの光のような、そんな感覚。
ジェム。
それは人の想いを形となして発動するもの。
それは人にあらず、全ての魂の思いに応じて発動する。
「夢のジェムはこのときのために……なるほどね」
全てはつながっている。
無意味なことなど一つとてない。
未来における自身の記憶はかの地にねづき、そして新たな自身を生み出す種となる。
ジェムは光とともにゆっくりとその形を変えてゆく。
その光はやがて人の形となり、やがてゆっくりとその形を固定しはじめる。
「…まさか…あなたは……」
「「…ま…まさか…!?」」
アンジリェークのつぶやきとヒュウガとディオンの驚愕に満ちた声はほぼ同時。
薄茶色の柔らかな髪質。
澄み切った水色の瞳。
何よりもその姿は……
「おかえり。カーライル。ようやく形を取れたみたいだね」
魂となり器となる肉体を失った彼の代わりの器。
それこそが夢のジェムという力そのもの。
ジェムそのものはサクリアを秘めたもの。
まして魂にその資質を秘めているものが使用すれば仮の器となすことはたやすいこと。
知っていたがゆえに驚くことなく、目の前に出現した銀樹騎士の恰好をしている一人の青年に声をかけるルネ。
『…まさか…そんな…カーライル!?』
叫ぶ二人の声はほぼ同時。
「…ヒュウガ。それにディオン…俺は……」
彼自身とて自分が再びかつての姿を取り戻せていることに戸惑いを隠しきれない。
自らは蝶となり常にヒュウガの傍にいて誰にも…
…そう、アンジリェーク以外にはその存在すら気付かれていなかったというのに。
「夢のジェムがもつサクリアと、カーライル。君の魂がもつサクリア。
  そして何よりもアンジリェークがもつサクリア。それらが全てそろった結果だよ」
アンジリェークがもつサクリアは全てを調和し導くもの。
彼女が今何よりも望んでいたのはヒュウガたちの悲しみをどうにか癒すこと。
「僕の目にはみえなかったけど。君が蝶となりヒュウガの傍に常にいたことはしっていたよ。
  そして君の黒い思いはタナトスに吸収され、今もさまよっている、ということも。
  だけどその黒い思いがタナトスに吸収されているからこそ君は本来魂がもっている力にてこうして姿を取り戻せた」
知識として一通りの現象、出来事は知ってはいる。
それを確実に導いてゆくのもまた彼の使命。
戸惑いを隠しきれないアンジリェークやほかの者たちとは対照的に淡々と話しているルネ。
「…そんな…まさか…いや、だがしかし…ありえないことは……」
ジェムがもつ巨大な力は過去の古文書でも証明済み。
その力は軽く星ひとつすら滅ぼすことすらもできるほどの巨大なもの。
だがしかし目の前でおこったある意味、夢物語のような出来事をすぐに信じろ、というほうがどうかしている。
「えっと。感動の再開は後回しにしたほうがよさそうだよ。…くるよ?とてつもなく強いのが」
感じる気配はとても濃厚で、それでいて今まで戦ったこともようなうな強いもの。
緑色の霧が周囲に立ち込め、次の瞬間、そこよりでてくる一つの影。
姿かたちはまるで馬のようでいて、その上半身は羽の生えた人型のような形をしているのがみてとれる。
そして何よりも今まで遭遇したタナトスよりも格段に強い負の力をこのタナトスからは感じ取れる。
地のサクリアを秘めているオーブをことごとく吸収し成長したタナトス。
「…地の主、と呼ばれるタナトス、だね。これは。このタナトスには地の力が満ちているよ。
  油断はしないでね。今までのタナトスとは…モノがちがうよ?」
どくっん。
傍にいるだけで内部のソレが鼓動を発するほどの力のつよきタナトス。
おそらくは、アレが直接にして送り込んでいる存在の一つなのであろう。
アレは全てのこの地に眠る力を吸収すべく様々な属性のタナトスを送り込んでいるのだから。
「ちっ。とにかく話は後だ!」
「みたいだな」
「ルネ殿はアンジリェーク殿とともにさがっていてください!」
二人を危険な目にあわせるわけにはいかない。
そもそも、この場には自分を含めて五人もの浄化能力者がいるのである。
彼等の手をかりることもまずないはずである。
目の前に出現したタナトスにむかい、それぞれが武器を構えて対峙してゆく。

「ではあなたは精霊のようなもの、みたいなのですね?」
洞窟をすすみながらも話をきく。
何でも常にあれからヒュウガの傍に蝶の姿となり傍にいたという。
ふと気付けば蝶の姿になっており、それゆえにヒュウガの傍にいたらしい。
戦いかたも、そしてその話し方もかつての親友そのもの。
死んだはずの…否、自分の手で命を絶つしかなかった大切な親友。
それゆえにヒュウガの思いはとても複雑でもあり、
だがしかしこうして奇跡ともいえる邂逅を果たせたことはとてもうれしくおもう。
彼の口からずっとききたかった。
自分を恨んでいたのではないか…ということを。
そしてまた、気付けなかった自分たちを許してはいないだろう、と。
すでにあれから何体かのタナトスと戦いつつも奥に、奥にとすすんでいる。
それぞれがそれぞれに思いのたけを素直にぶつけ、そして今にと至っている。
「でも、不思議なこともあるんですね。……でもヒュウガさんたちが笑顔になってよかったです」
できれば自分もすでにこの世にいない両親と会いたいとおもう。
だが、それはおそらく無理なのであろう。
カーライルのこの一件は奇跡といっても過言ではないのだから。
器となっているのが夢のジェムらしく気をぬけばその体は瞬く間に透き通る。
それでも意識をしっかりと保っているかぎり、通常の人とかわりなく触れることも可能らしい。
夢は希望をうみ、そして未来を照らし出す。
まさに、夢のサクリアがもたらした奇跡、といえる邂逅。
「それは全てはあなたのお力のおかげですよ。あなたが気にかけてくださっていたから」
アンジェリーク女王陛下。
そういいかける言葉をかろうじて押しとどめる。
それは自分自身の経験から。
彼女は自分自身がいまだにどのような存在なのか自覚していない。
下手な期待はその身に負担を強いる、というのは自分の経験でよくわかった。
蝶の姿となりヒュウガの傍で世界をみてきた。
そして彼女たちの活動も。
カーライル、という人間の器から開放された後に自身の中にある力に気付いた。
それまではやみくもにただひたすらに強くありたい、そのために地位がほしかった。
地位があれば力も伴い強くなれる、そうおもっていた自分自身の過ち。
死して真意に気付く自分の愚かさにあきれもしたがそのために大切な人たちを悲しませたことが許せなかった。
騎士道の教えの中にある常に自分自身を律し、自分自身を見つめよ。
その言葉の意味がようやく死んでから理解できたのもまた事実。
今は魂だけの存在の自分。
そんな自分が彼等と話せるのは彼女の力があってこそ。
「この洞窟から出てもその姿を保てることができるのですか?」
素朴なそんなニクスの疑問。
「さあ?それは試してみないと何ともいえない」
何かに導かれるように、アンジェリークが取り出したジェムに引き寄せられた。
気付けば自身は人の姿をとっていた。
だからこそカーライル自身にも説明のしようがない。
「それだったら、カーライルさん。私たちとともに活動しませんか?
  カーライルさんも教団にはもどりづらいでしょうし」
何よりも一度確実に死んでいるのである。
そんな彼が再び姿を…魂となりて精霊のような存在となった彼をみてどのような反応を示すのか皆目不明。
夢で彼等の過去をみているせいか、あまり抵抗を感じないのは気のせいではないであろう。
それゆえにそんなカーライルに提案をしているアンジリェーク。
「しかし、俺は……」
かつてはタナトスに心がまけてしまい憑依された経験をもつ。
そんな自分が聖なる存在の傍にいていいものか不安に思う。
「ああ。それはいい考えですね。アンジリェーク。私たちは大歓迎ですよ?
  あなたならではできることもたくさんあるでしょうしね」
生身の体ではなかなかすぐに解決できない事例もある。
ましてや彼は一度、タナトスの脅威から肉体の命を絶つしか方法はなかったとはいえ開放された存在。
そしてまた、おそらくはこうして再び姿が与えられている、ということは何らかの意味があるのであろう。
肉体が伴わない以上、遠く離れている場所の依頼でも距離を気にすることなく移動することができるはず。
ニクスのその考えはあながち間違ってはいない。
「それはいい。俺もお前がヒュウガとともに彼女の傍にいてくれたらこれほど心強いものはない」
ディオンとて常に彼女の警護のみにあたるわけにはいかない。
いまだに彼女の証は空に輝いていない。
それゆえに教団としても彼女にかまいっきりにできないのが実情。
何よりもタナトスに対抗できる浄化能力者の数は限られている。
タナトスから救いもとめる人々はそれ以上に多数存在しているのだから。
「たしかに。研究のしがいもありそうだしな」
「もう、レインったら」
どっ。
本気なのかはたまた冗談なのか…おそらく半々であろうそんなレインの言葉にアンジェリークが突っ込み、
そんな二人のやり取りをきいて思わず笑う彼等以外の人々。
「あ、そろそろ奥につくんじゃないのかな?風がかわったよ」
そんな会話をしつつも、ひたすらに洞窟の奥にと突き進んでゆく。
アンジリェークがみた夢が真実ならばこの奥に護り石があるはずである。
ふと洞窟の奥から感じていた風が止まったことに気付いて耳を済ませていうジェイド。
それと同時、今まで以上に強い負の気配を敏感にと感じ取る。
周囲にとみちる黒き霧。
自身の中に巣食っているモノがひきだされてしまいそうな、そんな感覚。
おもわずぎゅっと自身の体を抱きしめるニクス。
「これは……ウロボロス…?」
巨大な蛇のようなタナトスが洞窟全体に巣食っている。
とてもつよい力を感じるのはおそらく気のせいではないであろう。
しばし、そんな蛇のようなタナトスとにらみ合いをする彼等の姿が、
ここ、聖都から少し離れた山の上にある洞窟の内部でしばし見受けられてゆく――


「……長老!」
ばたん!
不吉な兆し。
それと同時に明るい兆しをもかろうじて示されている。
アンジェリーク達が洞窟内部で巨大な力をもつタナトスと遭遇している同時刻。
息せき切って屋敷の中にと飛び込んでくる人々の姿。
ここ、陽光の村コズ。
コズに住まう人々は竜族、とよばれる種族であり、火竜族、水竜族。
この二つの種族が存在している。
それぞれにいえることはそれぞれが占いにたけている種族であり、彼等は星星の声を聞くことが可能。
そんな彼等の占いに全てにおいて現れた不吉な兆し。
方向性を間違えばこの地は暗黒に閉ざされてしまう、との占い結果すらでている現状。
悪意あるものが巨大な負の力に誘導されるかのように負の力を増す手伝いをし、
その力は聖なる光をも飲み込み消し去ろうとしている。
占いには確かにそう示されている。
そしてその負の力の矛先がむかっている人物というのが……
「誰か。いそいでニクス殿たちに連絡を!それと念のために銀樹騎士団にも!」
このままでは彼女の…アンジリェークの命すら危うい。
だが、占いには避けてはとおれない道だとも示されている。
だからといっててをこまねいていては本当に彼女の命が失われてしまう。
それはすなわち、再びこのアルカディアが暗黒の世界に捕らわれてしまいかねない、ということを示している。
全員が全員に現れた占い結果。
それはおそらく緊急性を帯びており、また重要であるがゆえに全ての竜族の占いに長けたものが受けた告示。
だからこそ、彼等はしばし騒然となりつつ情報連絡にそれぞれが翻弄してゆく――

失敗は許されない。
そう、襲撃を命じた部下たちは全て実験台の露と化した。
自分がまだ生かされているのはまだ利用価値があるからだ、そう理解はしている。
「期待していますよ。ジェッド。それとガーネットさん。次はない、そうおもってくださいね?」
いつでもお披露目するにあたり問題はない。
だが、先日データを取りそこなった珍しい女性の浄化能力者。
彼女のデータがどうしても必要不可欠。
もしかしなくてもいまだにおぼろげなかの場所の特定ができるかもしれない。
そうなればタナトスを完全に元の空間というか次元に押し戻すことが可能となる。
ましてやタナトスが出現する時間や場所までも特定することが可能となるかもしれない。
彼女のデータがあればタナトスの周囲に簡単な結界のようなものを施し周囲を巻き込まなくてすむかもしれない。
すべては憶測。
だがしかし、女性の浄化能力者、という存在は何よりも貴重。
彼女の命一つで様々な結果が得られればそれはそれにこしたことはない。
いまだに財団の最高責任者でもある理事のヨルゴは弟であるレインのことをあきらめていないらしい。
自分、という存在がいるのに、どうしていつもいつも彼だけが……
彼よりも自分のほうがすぐれており、認められるべき。
その思いが彼を突き動かしている。
そのための犠牲などいくらはらってもかまわない。
そう、自分の居場所を確実に確保するためにはどんな手段でもいとわない。
彼が目的と研究のためならば他人の命すら簡単にどうとでもするような性格である。
そのことは今までの経験からよく理解している。
それゆえにびくりと反応してしまうのは仕方がない。
「今度は任務の失敗は許されない。了解した」
与えられた任務は今度こその実験体である女性の確保。
そしてまた邪魔をしてくるであろう人物たちの排除。
「では、検討をいのりますよ。ジェッド。それとガーネットさん」
口調だけきけば何だかにこやかな感覚をうけるがその視線は笑っていない。
つまり失敗は排除を意味している。
ガーネット、と呼ばれた女性はぐっと手に力をこめつつも、
「わかっております。すべては財団のために」
すでに幾度も失敗している。
彼女の不手際でセレスティア教団からも目をつけられたのもまた事実。
だからこそ、彼女からしても失敗はゆるされない。
目的は…例をみない女性の浄化能力者、アンジリェークの身柄の確保……


                                -第67話へー

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あとがきもどき:
薫:ようやく誘拐事件&オラージュの村にての最後の護り石ゲットv
  誘拐事件の後にジンクスの一件にうつるのですv
  そのまえに、恒例というかありがちな力の不発次期みたいなのを取り入れて…
  …とおもってたらネタがかぶったという(汗
  まさか漫画のほうでそのネタがさきにくるとは!?
  今月号さんの連載のネオさんの漫画をみたらアンジェリークが浄化の力が使えなくなってたし。
  それにニクスはニクスでラガことエレボスに完全に乗っ取られかけてるし。
  いやはや…まさか同じようなネタになるとは(汗
  ま、いっか。おそらく内容はまったくもってかぶってないはず。うん。
  何しろあちらはブロなんだしねv
  何はともあれ、次回に続くのですv
  ではまた~♪

2008年6月15日(日)某日

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