まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

今回、ようやく現実でルネがでてきますv
こちらのお話しではアニメ&小説と同様、ルネは教団長ではありません(笑
といっても本来ならば教団長になるべくして生まれた子供…ということにはなってます。
ちなみに、ルネに関するこの話の裏設定もちらっとのせてみたりv
全てはあのとき、コレットがこの地、アルカディアに光のジェムを託したことからはじまってますv
否、それより前に彼女がこの地を育んだ…というのもありますが。
この地、アルカディアは、過去、現在、未来と、全てがつながりをみせて絡まり影響している地なのですv
何はともあれゆくのですv

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銀花の園   ~聖都と少年ルネ~

朝も早い、というのにすでに門の前にはかなりの人だかり。
「すごい人ですね」
「彼等は少しでも長く、それでいて早く聖都に入りたくてこうして朝からまっているんですよ」
感心した声をあげるアンジリェークに対して丁寧に説明しているディオン。
しっかりと閉じられた壁に囲まれた都の出入り口にとあたる門。
まるで絵本などでみる城壁のごとくに。
そんなもんの前にて朝も早い、というのにかなりの人がすでに集まっているのが見て取れる。
「さあ、我々もいきましょう」
門は硬く閉ざされているものの、アンジェリーク達は問題ないらしい。
だがしかし、
「あの?あの人たちもいれてあげることはできないんですか?」
自分たちだけ中にはいるのは何か悪いような気がひしひしとする。
「巡礼者が入れる時刻は決まってますから」
「でも……」
どっんっ。
「きゃっ!?」
ディオンのいいたいことはわかる。
わかるがこんな雪の中門が開くまでここでまっている、というのもかなり根気がいる。
そもそも風邪などを引いて体調すら崩しかねない。
それゆえにどうにか彼等も一緒に中にいれてもらえるようにお願いしようとするものの、
次の瞬間、何やら巡礼者の一人らしき人物にぶつかられ、おもわずよろけてしまう。
「あ、おい。大丈夫か?」
そんなアンジリェークをすばやく支えるレイン。
「え、ええ。ありがとう。レイン。それよりあの?大丈夫ですか?」
自分にぶつかってきた頭からすっぽりと布をかぶっている人物にと声をかける。
身長からしてアンジェリークとあまり代わりがない。
「うん。僕なら平気だよ。それよりようやく会えた。いらっしゃい。ううん。おかえり、というべき?」
にっこりと布のしたから覗く顔はアンジェリークには見覚えのある顔。
「あなたは……」
夢の中で確かルネと呼ばれていた少年。
「って、ルルルルルネ殿?!」
「なっ!?ルネ殿!?どうやって聖都から!?」
その姿をみて何やら驚きの声をあげているディオンとヒュウガ。
「あ、ヒュウガ。久しぶり~。ようやく君ももどってきたんだね。ちなみに、抜け道なんていくらでもあるものだよ?」
にこやかにそんな二人にと語りかけているのは金髪の髪の少年。
「しかし、あなたは…」
「大丈夫だよ。それにアンジリェークがはじめてこの地に来ると聞いたらおとなしくまってられないしね。
  あと……『元気そうで何よりだね。ニクス』」
何やらヒュウガたちには聞きなれない言葉でにこやかにニクスのほうを向いて語りかけるルネ、と呼ばれた少年。
歳のころならば十五かそこら。
おそらくアンジリェークと同い年くらいであろう。
すでに失われている言葉である。
それゆえにその言葉に思わず目を丸くするニクス。
『あ…あなたは……』
『まあ転生して姿かわってるからわからないだろうけど。
  君が昔家族とともにこの地にきたときにいた教団長だよ。そういえばわかるかな?』
『!?』
「あの?ルネ殿?しかし、あなたが外にでている、と知れたらそれこそ騒ぎに……」
何よりもうるさい長老たちがだまっていなさそうである。
「?その言葉は…?ルネ殿?ニクス?」
ヒュウガさんとディオンさんの知り合いなのね。
この子。
そう納得しつつも、確かにディオンとヒュウガが首をかしげているとおり、アンジェリークにも彼等の会話の意味はわからない。
もっとも、アンジリェークには彼等が何を話しているのか内容はなぜか理解できる。
彼等がまったく別の言語を話している、とわかるのになぜ理解できるのかはわからないが。
「あ、あの。えっと。あなた、いつも夢でときどきでてくる子ですよね?
  はじめまして。私はアンジェリークといいます」
とりあえず初対面?であることからエルヴィンを抱いているままで軽く頭を下げる。
「うん。知ってるよ。僕はルネ。君がここにくる、ときいたからこっそり抜け出してまっていたんだ」
そんなアンジリェークににっこりと笑みを浮かべてそんなことをいってくる。
「…ディオン。相変わらず手をやいているようだな」
そんな彼の台詞をきき、何やら同情めいた台詞まわしでディオンの肩に手をおいて何やらいっているヒュウガ。
「ルネさん…ですか。でも、まっていた。ってこんな寒い中を?」
「うん。だってとても楽しみだったんだ。君たちがくるのが」
アンジリェークの言葉ににっこりと微笑み、
「とりあえず、頭の固い頭でっかちの長老たちへの連絡はディオン達に任せておいて。
  せっかくきたんだからこの聖都を案内してあげるよ」
頭でっかち……
その言葉をきいて思わず目を点にしているジェイドに、くすっと笑っているニクス。
ふとみれば、その台詞をきき盛大にため息をついているディオンの姿が目にとまる。
「確かに。アンジェリークはそのほうがいいかもしれないな」
おそらく、彼女が聞けば悲しい思いをするかもしれない。
おそらく彼等はレインの報告をうけて彼を罵倒するのは目に見えている。
そんな相手の姿を好き好んでアンジリェークに見せたい、とは思わない。
「え?で、でも……」
「ああ。それはいい案ですね。アンジリェーク。せっかくですし。
  その子の好意に甘えさせてもらってはいかがでしょう?大人数でぞろぞろとおしかける。
  というのも何ですしね。レイン君たちには私がついていきますから、ジェイドは彼女のことをお願いします」
「うん。わかったよ」
どうやらアンジリェークの意見など関係なく、さくさくと話がまとまっていっているようである。
「じゃ、話もきまったことだし。聖都の中にはいろっか」
いって、にっこりと手を差し出してくるルネの手を苦笑しながらも握り返しかるく握手。
「でも、私たちだけ先にはいる…だなんて……どうにかならないんですか?
  それか私たちも彼等と一緒に門が開くまでまっていますから、先にヒュウガさんたちのみで……」
ヒュウガは元銀樹騎士団員であり、そしてレインは開発した装置の説明があるという名目がある。
だがしかし、アンジリェークにはこれといって聖都に入る目的、というものはいわば好奇心のほうが強い。
「なるほど。君らしいよね。…ちょっとまっててね」
そんなアンジリェークの言葉をくすりと笑いながらききつつも、
そのままとてとてと門番のところにと向かってゆくルネ。
しばし、門番とルネが何やら話していたかとおもうとやがてもどってきて、
「話はついたよ。皆、門をあけるからはいってもいいって」
にっこりとその場にいる全員を見渡し微笑みながらいってくる。
「へぇ。すごいな。お前。あっさりと規則をかえらせたのか?」
思わず感心した声をだすレイン。
教団はたしか規則と規律がかなり厳しい、そうきいていたのに簡単に時間外に門を開く、などとは思わなかった。
「本部に入れる時間は決まってるけどね。…さ、いこ」
「開門~!」
ぎぃぃっ。
ルネがアンジリェークたちとともに、門の前にいくと、門番が敬礼し高らかに声をあげる。
まだ門が開く時間前だというのに特例的に開かれる門。
門が開く、ということはすなわち、聖都の中に入ってもいい、という証でもある。
それゆえに時間外だというのに門が開いたことに驚きつつも、人々はこぞって門の中へと向かってゆく。

「ありがとね。まさかこんなに早くに聖都に入れるなんておもってなかったよ。
  どうやら騎士様とご一緒のようだけど、あなたがたも巡礼?」
門から都の中にはいると、広い大通りを中心とし普通の町並みが広がっているのが見て取れる。
その先に何やら大きな白き建物が垣間見える。
それこそが、セレスティア教団の本部でもある聖なる神殿。
門から中にと入り、そう巡礼者の一人から話しかけられる。
「ええ。そのようなものです。でもみなさん、朝早くからよく寒いのに外でまたれてましたね」
みれば、全員がどこかほっとしたような表情をしつつもそれぞれの顔にはうれしさがこみ上げている。
「少しでも長く聖都の傍にいたいからねぇ。…おや?あなたのお顔…」
そういいつつも、ふとアンジェリークの姿に今さらながらにようやく気付き、
「これは驚いた。あなた、女王様の絵姿とそっくりね」
「…え?」
神殿の中でみた女王の絵姿。
その姿と目の前の少女ははっきりいって瓜二つ。
普通の服を着ているからあまり目立たないかもしれないが、ドレスでもきれば一目瞭然であろう。
そんな一人の巡礼者の言葉に、
「え?あ、ほんとうだ」
「これは……」
何やらざわざわとし始める巡礼者たち。
「失礼。僕たちは用事があるので。いこ。アンジリェーク。それにディオン達も」
そんな彼等に対してにっこりと微笑みを浮かべ、問答無用でさくさくと先をすすんでゆくルネの姿。
「失礼。我々も急ぎますので」
何やら集まってきだしている巡礼者たちに軽く挨拶をして、ニクスもまたそんなルネの後にと続いてゆく。
後にはざわめく巡礼者たちのみが取り残されるが、彼等の脳裏によぎるのは一つの可能性。
伝説の女王の絵姿といわれている聖なる絵とそっくりな少女。
そして先のアルカディア中におこった奇跡。
金色にと輝いた空。
いまだに空に輝く光の七色のカーテンはかかってはいない。
だがしかし、ここ聖都でそのような少女をみれば、おのずと一つの可能性にと結びつける。
すなわち、あの少女こそが伝説の女王の卵なのではないか…という可能性に。

「うわ~。とてもすてきな眺め」
広く神殿、というよりは宮殿のような場所。
聖都の中にはいる門よりも小さき門が再びあり、そこをぬけると広き広場にとゆきあたる。
銀花の苑、と呼ばれている広場。
その広場を中心としてこの神殿は成り立っているらしい。
「この風景……うん、たしかに素敵な眺めだね」
かつてこの風景をみたことがある。
そう、たしかこの神殿が出来た当初に。
あのときより景色は年月が経過しているからかだいぶ変わっている。
都を囲む城壁。
その一番高い部分から周囲を見渡す。
「ここからの眺めがとても素敵なんだ。きにいってくれた?」
「ええ。とても」
見渡すかぎりの銀世界。
眼下には人々が暮らしている都の姿が目にとまる。
「でも、いいのかしら?私も同席していなくて?」
何よりも装置を開発したレインが悪くいわれていなければいいけど。
そうおもい、ふと顔色を曇らせる。
「いいんだよ。それにまだときは満ちていないしね。
  あんな頑固頭の長老達のねちねちした会話、それとも君はききたいの?」
が…頑固頭って……
それにときが満ちていない、ってどういう意味かしら?
きっぱりいいきるルネの言葉に思わず首をかしげるものの、
「そ、そういえば、ルネさんはここに住んでいるんですか?」
「うん。そうだよ。僕はここから出ることはできないから。僕は籠の中の鳥のようなものだしね」
「出ることができない。って…里帰りとかはでもできるんでしょう?」
「それは……」
きちんと手続きさえすれば普通の騎士ならば里帰りは許される。
だがしかし、ルネは普通の騎士見習い、ではない。
今までどおりでゆくならば、彼は……
「もしかして、ルネさんのお母さんってライラさんっていいませんか?」
「え?どうしてそれを……」
いきなり母親のことを言い当てられて思わず目を丸くしてしまう。
「あ。やっぱり。この間、ライラさんにお会いしたんですよ。
  ライラさんはルネさんのことをとても心配していました。…あ、そうだわ。これを……」
いつか息子にあうことがあれば渡してほしい、そういわれて預かっていた小さなポプリのサシェ。
「これは……」
アンジリェークから小さなサシェを手渡され、思わずゆっくりとそれを握り締める。
サシェから母親の感情と思いが伝わってくる。
「ルネさん。騎士の見習いというのも確かに大変かもしれませんけど。
  ですけど、やはり家族は大切だとおもいます。…会えるときにあっていないと絶対に後悔しますよ?
  …会いたくても、二度と現実では会えない人もたくさんいるんですから……」
そう、自分もその一人。
いくら望んでも二度と現実にて両親が彼女に微笑みかけてくれることはない。
常に自分の傍にいて見守ってくれている。
そう信じているものの、会いたくても会えないという現実がそこにある。
そしてまた、アンジリェークのような境遇の人々はこのアルカディアには大勢いる。
だからこそ誰にも後悔などはしてほしくない。
悔いがのこるということは一生、その悔いをひきずるのだから。
「…そう…だね」
あのときから、自分の運命はすでにきまっていた。
光のジェムがこの地に託され、そして大地と同化し自分という魂が確率したあのときから。
この地と思いと願いを共にしこの地を護ってきた。
全ての知識と記憶を携えたまま。
この地を共に宇宙意思とともに導ける存在が誕生するその日まで。
その運命のときは間近にせまっている。
「ルネさん。籠の中の鳥でも自ら羽ばたくことはできるんですよ?だから後悔がのこる選択だけはしないでくださいね」
「ルネ、でいいよ。敬語なんて必要ないし。…そうだね。たしかに君のいうとおり。
  …使命と思いは別なもの、だものね」
遠くから無事な姿を視るだけで満足するしかない。
そう自分に言い聞かせ心を偽っていたのも事実。
確かに彼女の言うとおり、あの頭でっかちの長老達を言い含める手段は山とある。
手段さえ選ばなければ方法はいくらでもあるのだから。
「そうだ。アンジェリーク。君に見せたいものがあるんだ。君もくる?ジェイド?」
「見せたいもの?」
「にゅっ」
「あ、エルヴィン!?どこにいくの!?」
するっ。
抱きかかえていたエルヴィンがするっとアンジェリークの腕の中より降り立ち、
そのままててて、と走り出す。
こんな広い場所で迷子になりでもすればそれこそ大変。
それゆえにあわててそんなエルヴィンをおいかけてゆくアンジリェーク。
「あ、アンジェリーク。まって」
そんなアンジリェークを追いかけてゆくジェイド。
そんな彼等の姿をしばしみつつ、
くすっ。
思わず笑みがもれてしまう。
「ほんと。エヴィリールは何をする気なんだろうね?」
くすくすくす。
くすくすと笑いながらも一人小さくつぶやきつつ、そんなアンジェリーク達の後を追いかけてゆくルネ。
大体の想像はつく。
おそらくかの地に彼女たちを導くつもりであろう。
そう、自身の本体でもある大本の大樹のもとに――

狂科学者。
そういわれることは覚悟していた。
だがしかし、面とむかっていわれればやはりへこむ。
人々が幸せになるためにとおもって開発した装置が産んだ悲劇。
機械で人を変えることは魂の冒涜、そうかつては思っていた。
だがしかし、機械の体であるジェイドは人の心をもっている。
機械だとて使い手の心次第だ、ということをオーブハンターとして活動している中で学んだ。
『貴様の考え方全てに同意することはできない。できないが…
  レイン。貴様の生き様を邪道だというものを私は許さないだろう』
それゆえにレインにむけてヒュウガが発した言葉。
一人になりたい、そういうレインの意思をうけてこの場に今はヒュウガはいない。
自覚するべき。
そう、たしか以前この地にきたときに子供から言われた言葉を思い出す。
それが何のことなのかあのときは理解できなかったけど、今ならわかる。
「にゅ~」
「って、おま?エルヴィン?いったいどこから…って、あ、こら!それはっ!」
ひょいっ。
ぱくっ。
とっん、といきなり考え事をしている最中、しっかりと閉じていたはずの扉。
だがしかしどこから入り込んだのかふと気付けば机の上には見慣れた子猫の姿。
そのまま机の上にとおいていたレインのお気に入りのペンを加えて閉めていたはずの扉からでていってしまう。
「って、こらまてっ!というかお前、主人はどうしたっ!」
そもそもエルヴィンはしっかりとアンジェリークが抱いていたはずである。
まあ猫なので自由といえば自由なのだが。
ガタンと席をたちあがり、そんなエルヴィンをあわてて追いかけてゆくレイン。
子猫はまるでレインをおびくかのように、立ち止まっては再び走り出し、とある方向にと導いてゆく。

「もう!エルヴィン!まちなさいぃ~~!!」
一方で建物の中に入り込んだエルヴィンをおってアンジェリークもまた走ってゆく様が、
しばしここ、セレスティザムの神殿の内部において見受けられてゆく。


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あとがきもどき:
薫:ヒュウガの今現在の年齢が二十二歳。んでもってルネの年齢が十五歳。
  ルネが聖都にやってきたのが三歳なのでもうすぐ聖都の中で十二年。
  それでたしかヒュウガが聖都にやってきたのが七歳(だったはず)
  何となく時間軸の確認をこめてのあとがきもどき(こらまて)
  次回でようやく銀の大樹♪&約束の洞窟~♪(かなりまて
  ではでは、また次回にてv

2008年6月13日(金)某日

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