まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
後半部分は、漫画の三巻の回想シーンを連想してください。
あの三人のやり取り好きですvアニメのほうでも回想としてでてこないかな?かな?
でもたぶんでないかな?
#####################################銀花の園 ~強き思いと決意~
「ヒュウガさん」
ヒュウガがむかったのは村からでてしばらくいった先にとある小高い丘の上。
そこにある墓の前にしばらくたたずみ祈りをささげている様子。
声をかけていいものかどうかわからないが、それでも彼の周囲に光る蝶が舞っているのをみてとり思わず声をかける。
「アンジリェーク殿?…それにレイン。なぜここに?」
彼等はもう部屋にもどり寝ていたはずである。
それゆえに二人の姿をみて驚きを隠しきれない。
「ヒュウガさんのことが気になって。夜外にでてゆくのがみえたから」
「お、俺はその…アンジリェークが外にでてゆくのがみえたからな。一人は危険だし」
レインもヒュウガが心配で追いかけようとしていたのだが、照れくさくてそれはいわない。
何よりもおそらく、ヒュウガの目の前にあるモノが誰のものかわかってしまったがゆえなおさらに。
「お墓…ですか?」
「…ああ。ここには我が友、カーライルが眠っている」
ずきっ。
その名前を聞くとレインの心が痛む。
アンジェリーク達がいなくなった後、ディオン達から詳しい話を聞いた。
タナトスと化した銀樹騎士カーライルを救うためにはその命を絶つしか方法はなく、
夢魂の塔にてヒュウガが親友の一人であったカーライルの命を断ち切った…と。
「ここに…ですか?…あ、でもここからは聖都がよくみえますね」
ふと視線をはずせば夜だというのに街頭にてほのかに照らし出されている聖都セレスティザムの姿が目に入る。
聖都を見渡せる場所。
ひらひらと、そういうヒュウガの声にあわせるかのように蝶はひたすらに彼の周囲を舞ったり、
もしくは彼の頭に止まってはねを休めているのが見て取れる。
「もしかして…その蝶、以前ニクスさんがいっていた人の魂が生れ変ったものかしら?」
依頼の最中、蝶のことを話題にし、ニクスがいった言葉を思い出す。
サキアのほうの伝説では人の魂は蝶となり蘇り、常に傍にいる、という。
「蝶?あなたは前にもそんなことをいっていたが……」
「?俺にもそんなものはみえないけど。またいるのか?光る蝶が?」
ときどきアンジェリークは光る蝶がそこにいる。
ということはあれど、第三者の目にはそんなものはみえない。
それゆえに周囲をきょろきょろしつつも問いかける。
「ええ。ヒュウガさんの肩に」
そういうアンジリェークの言葉に手をそっと肩にあて、
「…そうか。あなたがいうのならばそうなのであろう」
ぎゅっとその手に力をこめる。
自分を許すために傍にいるのか、はたまた責めるために傍にいるのか。
それはわからない。
だけども何らかの意思をもってもしもそうならば傍にいるのであろう。
だがしかし、自分にその姿がみえない、となれば許してくれている、とは到底思えない。
だからこそ心が痛む。
「…ヒュウガ。お門違いだ、とはわかっている。いるが…おまいりしてもいいか?…謝りたいんだ」
「…ああ」
ヒュウガの許可がでたものの何ともいえない表情をして墓に対して祈りをささげるレイン。
レインが知らないところで行われたとはいえ、レインが開発した装置の犠牲者、といえなくもない。
アーティファクトは人々を幸せにするためのもの、そう信じて研究、開発を続けていたというのに。
彼等が墓に対して祈りをささげているそんな中。
「ヒュウガ!こんなところにいたのか!」
何やら息せききって走ってくる数名の人影が目に留まる。
月明かりの下、彼等の姿が異様に浮かび上がるように映し出される。
「?ディオンさん?」
みれば、走ってきたのは騎士団長のディオンと、そして見慣れない騎士団が数名。
「ディオン。…何かあったのか?」
そのただならない様子に表情も険しく問いかけるヒュウガ。
「これはアンジェリーク殿。それにレイン殿も。それが…先ほど入ってきた最新の情報だ。
お前にも連絡しておいたほうがいい、そうおもってな」
どうやら何やら尋常でないことがおこったらしい。
「いったい何があったというのだ?」
そうといかけるヒュウガに対し、ちらりと墓にと視線を移し、
「雷鳴の村、オラージュに駐留している騎士団からの連絡だからまず間違いはないとおもう。
…夢魂の塔にタナトスが出現したらしい。討伐に向かった騎士団の全ては返り討ちにあったそうだ」
「「なっ!?」」
その言葉をきき、思わず絶句してしまうレインとヒュウガ。
「返り討ち…って、みなさん、大丈夫だったんですか!?」
嫌な予感が突き抜ける。
「我々騎士団は伊達に浄化能力を持ち合わせてはいません。完全に動けなくなるまで生気を吸われるようなことは滅多に」
だがしかし、戦える状態ではなくなったのだけは確実。
タナトスは彼等をある程度その場で騒いだ後にその場から掻き消えたらしい。
「…まさか、カーライルに憑依したタナトスが復活した…とでもいうのか?」
人に憑依するほどの力をもつタナトス。
それゆえにいつ復活するかは判りづらい。
だが、あのカーライルに憑依するほどの力をもつタナトスならば並の騎士団員では太刀打ちできないであろう。
彼の実力はヒュウガ、そしてディオンとてよく理解していたつもりである。
心の強さはともかくとして。
「その可能性が高い。とりあえず明日の報告で装置のことと、
そしてそのことについての対応が話し合われることになるとおもう」
ディオンの報告をうけた教団の上層部は早速明日、面談の様子を整えた。
その矢先のオラージュの村よりの報告。
何かが確実に動いている。
それは漠然とだが誰しも思うこと。
「あの?そのオラージュの村のほうは……タナトスはどうなったんですか?」
「それが、しばらくしたら消えたらしいのですけど、そのこともただいま情報をあつめております」
思い出すのはオラージュの村のライラのこと。
彼女たちが無事だといいけど。
だがしかし、今いるここ、ラシーヌからどう急いだとしてもオラージュの村まではかなりの日数がかかる。
どちらにしてもアンジリェークが出向いて浄化をしない以上、タナトスは幾度も蘇る。
「じゃぁ、ここでの用事が済んだらとりあえずオラージュの村に移動は決定、だな」
どちらにしてもほうっておくことはできない。
かといってここでの用事を放り出してゆくことなどできはしない。
「とりあえず、ディオン、もう少し詳しく話してくれないか?」
「それなら一度、詰め所にもどってからにしよう。アンジリェーク殿。夜は冷えます。
お風邪でも召されたら大変です。今日のところはゆっくりと体を休ませてください」
それでなくても周囲は一面の銀世界。
さらに夜、ということもあり空気がとても冷え切っている。
「確かに。アンジリェーク。おくっていこう。あ、ディオン。俺にも詳しく話しをきかせてくれるか?」
「ええ。それはかまいません」
おそらくレインも詳しくしる権利はあるはずである。
それゆえに、レインの申し出を快くうけるディオン。
ともあれ、そのままその場にいるというのも風邪をひく元にもなりかねない。
それゆえにアンジリェークを伴い、再び彼等はラシーヌの村にともどってゆく。
ここは、どこかしら?
…どこかの建物の中のようだけど?
レイン達のことが気がかりではあるが、睡魔には勝てなかったらしい。
次に気がついたときにはどこか知らない場所を視ている自分自身。
ぼんやりとした感覚からおそらくいつもの夢だと理解する。
「…君は?…確かヒュウガ、だっけ?」
流れ込んでくる光景は、何か布のかぶったものの前にてたたずんでいる少年が一人。
面影がのこっていることから、おそらくはヒュウガの子供のころなのであろう。
「あなたは?」
「君より少し先輩のカーライルだ。こんな夜中にどうしたんだい。ホームシックかい?」
なら、この人がカーライルさん?
少年が二人会話している光景。
「…?ホーム?女王陛下の絵をみたかったのだが」
「それは…騎士の規則違反だ」
「え!?」
ヒュウガの台詞に多少あきれながらも答えているカーライル、という少年。
だがしかし、次にはくすっと笑い、
「ふふ。でもま、いいか」
いって、ぐっと目の前にある布のかかっている壁にと手をかける。
ふわっ。
壁にとかけられている布が力がこめられたことにより取り除かれる。
薔薇の細かい細工が施された額縁。
そしてその中央におおきく掲げられている絵は……
あら?あれって…陽だまり邸にあるのと同じ絵?
そこには陽だまり邸のサルーンから二階に続く階段部分にあるのと同じ絵が一つ。
「ここだけの秘密にしよう。俺も女王陛下の絵がみてみたかったんだ」
じゃあ、やっぱりあれが女王様の…?
絵をみて二人して見惚れている二人の姿が視えてくる。
「…綺麗だな」
「…ああ。この人を護るために……」
二人の思っている感情までもが流れ込んでくる。
そうまるでわが身のことのように。
「カーライルは天から剣の才能を与えられた男だ。師であるガラハルト様にまったくひけをとらん」
まるで思い出のアルバムをみているかのごとくに景色は移り変わってゆく。
「カーライルならば聖騎士になれるかもしれないな。楽しみだ」
時はうつり、ヒュウガたちは子供から少年へと成長を遂げている。
「ディオン。貴様は聖騎士をめざさんのか?」
ヒュウガに語りかけている人物はおそらくディオンさんね。
面影が残っているわ。
「なれたら光栄だとはおもうが……。無茶をしまくるお前らのためにせいぜい腕をあげるさ」
みればヒュウガは手に包帯を巻いている。
練習に没頭するあまり豆がつぶれ、さらには手がしびれてしまい不注意で手を怪我してしまった。
黙々と課目に修練を積むヒュウガ。
いつも明るく人々を元気付けるかのように振舞っているカーライル。
そしてそんな二人のよい歯止め役のディオン。
「利き手は大切にな。ディオン」
「ああ」
ヒュウガさんたち…とても仲がよかったのね。
心から信頼し合えている様子が視ているだけでも伝わってくる。
「教団長殿より聖騎士候補の名前が告げられた」
騎士団員が集められ何かが発表されている。
先刻までの姿よりかなり歳をくった感じをうける男性が何やら継げている。
「カーライル。貴様とヒュウガだ」
サキア島の出身のヒュウガに本土であるこの地の剣術指導などをも教えていたカーライル。
基本は共にいずれこの地に誕生するであろう女王陛下のために精進すること。
ヒュウガのほうは別に地位など関係なくひたすらに精進あるのみ。
そんな感覚がつたわってくるが、だがしかし……
「まだやっているのか!カーライル!もうやすむんだ!」
一度もやすまず、しかも睡眠時間まで割いて徹夜で稽古を続けるカーライル。
みれば歳のほどは今とさほど変わっていない様子がみてとれる。
「これ以上稽古をつづけても意味などない!」
「放せ!ディオン!ヒュウガは槍術の達人だ、浄化能力も俺なんかよりもかなりたかい!
俺はこの剣以外に聖騎士になれる力をもっていないっ!」
誰よりも努力している、とおもうのに、どうして……
どうしていつもヒュウガにかなわない?
先に騎士団にはいったのは自分なのにいつもおいこされて……
カーライルの思いが伝わってくる。
だけど、カーライルさん、努力は他人のため、何かのためでなくて自分自身のため。
そのことに気付けばカーライルさんはもっと強くなれるわ。
そう、自分を見誤り見失っている。
そのせいで彼のもつ力もまた曇りをみせ力が十分に発揮されていないのが見て取れる。
伝えたいのに視ているだけの自分には伝えようがない。
「いいかい?二人とも。銀樹騎士たるもの、花言葉の一つでもつかって女性の気をひかなければだめだ」
ふと気付けばまた景色が変わっている。
あら?ここって?
どうやらラシーヌの村の中にとある食堂らしい。
風景がまったく同じ場所、というのはまずないから間違いはないであろう。
騎士動大全集、愛と誠の花言葉、という本を片手にして何やらいっているカーライル。
それはかつてのこの地にて炎の守護聖オスカーがしたためたものを本にしたもの。
だが、そんなことをアンジリェークたちが知るはずもない。
カウンターの前にと座り、三人で何やらお酒を飲んで会話をしているらしい。
「花ってことば、はなせたのか?」
どうやらすでにディオンはつぶれているらしいが、
ヒュウガのほうは表情一つかえずにさらに追加注文をしているさまが見て取れる。
「特訓をしようじゃないか。お、貴婦人役はディオンで決定、だな」
いいつつも手にしている花をディオンの髪にとさすカーライル。
とても仲がよくて気心しれた親友。
まるで私にとってのハンナとサリーみたい。
「さあ、どうぞ。ナイト様v」
完全に楽しんでいるような感じをうけるカーライル。
そしてまた。
「女王陛下にささげる言葉など、俺にはすぐにおもいつかん。俺の女王陛下は……」
「あ~?女王じゃなくて、俺は貴婦人……」
どうやらどちらもかなりよっているらしい。
ヒュウガのほうはまったく表情がかわらないので酔っているのがわかりづらいが。
「ヒュウガ。貴様、実は表情はかわってないがかなりよってるだろう?」
そんなヒュウガにすかさずつっこみをいれているカーライル。
優しく笑みをうかべているディオン。
彼が心から笑みを浮かべているのを始めてみたような気がする。
ヒュウガさん…いつもヒュウガさんにはそんな笑顔でいてほしいのに。
心からそんな光景を視つつも願いを託す。
ぽうっ。
あなたもそうおもってくれますか?
そんな彼女の目の前から景色が一変し、いつものような淡い色の空間にかわりゆくと同時。
光る蝶がアンジェリークの目の前にと出現する。
蝶とかさなり姿がみえるのは、今まで視ていたカーライル、とよばれていた男性の姿。
俺の思いをヒュウガたちに伝えたい…約束の洞窟へ……
「カーライルさん!?」
がばっ。
行き先はあなたのもつコンパクトが示してくれる。
そう確かに聞こえた。
おもわず彼を追いかけようとして自分の声で目が覚める。
「にゃ~」
ころっん。
それと同時、アンジリェークの胸の上でねていたエルヴィンがおもいっきり転がってゆく。
「今のは…夢?」
夢にしてはリアルでとても生々しかった。
かつてのヒュウガとディオン、そしてカーライルという人。
彼等の過去のきおくの夢。
銀樹は聖都。白銀の葉の届く場所に我ら騎士とその心あり。
銀樹騎士の誇りと意思の象徴の一つ。
その言葉が夢からさめたアンジェリークの中でもいつまでも心に残っている。
聖都の万年雪は風とともにアルカディアを舞ってゆく。
そう、心はいつも傍にある、という証でもあるその言葉。
「…とにかく、おきましょう。今日は聖都にいく日…なのよね」
どうしてそんな夢をみたのかはわからない。
今日は装置の報告をするために聖都にとゆく日でもあるのだから夢にかまけてはいられない。
そう思いを新たにし、朝の支度を始めてゆくアンジリェークの姿がしばし見受けられてゆく。
-第64話へー
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あとがきもどき:
薫:さてさて、今回はオマケもどきの小話をばv前回で触れたジェイドサイドですv
ぽうっ。
体に手をあてて様子を探る。
「うん。問題はないみたいだな。とりあえずメンテナンスの仕方とかは書いといた書類を部屋においてるから、
それを機械に詳しいヤツがみればわかるようにはしてはいるが」
サクリアによる内部の透視。
この方法ならば問題なく内部の問題箇所もサクリアにより修繕することも可能。
この方法は相手が何であれ使用することが可能。
もっとも、サクリア自体がつよき力なので生身の体ではその力の強さに逆に負けてしまうこともある。
それゆえに滅多とつかわれない方法。
「あ、あの?ゼフィル様?どうしてここに……」
「あ~。その、何だ、ついでがあったから」
真実は多少心配だったからセレスティアで買いものをするというのにかこつけて様子をみにきたのだが。
「いいか?ジェイド。これだけはおぼえておけ。お前はお前以外の何ものでもない。
卑屈になったりとかしたら承知しないからなっ!」
機械の体だからといって卑屈になる必要性はない。
自分自身が生み出したジェイド。
それゆえにリモージュにしつこく問い詰め、彼がこの地の緑の守護聖になるべく存在している。
そこまでは知らされた。
そしてまた、数多に襲い掛かる試練のために彼の体は生身ではないほうが宇宙のためにもいい。
ということを。
過去と現在と未来が交わるこの地。
本来ならば素質のある人類が発祥して、サクリアを司る存在が出現する。
だが、この地には精霊も人も数多と存在している。
ゆえに、精霊から一人、人が生み出した命から一人、そして人。
未来に確実に世界をつむげるようにと過去…否、未来より続いてきているこの地の記憶。
「…は、はいっ」
びしっと指をつきつけられ、きっぱりといわれて思わず直立不動で反射的に答えるジェイド。
あれからかなりの年月が信じられない年月が経過しているというのに目の前の彼は変わらない。
そして自分も。
それは目の前の彼が宇宙を司るサクリアを秘める神鳥の鋼の守護聖であるがゆえ――
薫:さてさて、次回でようやく聖都♪何はともあれまた次回にて♪
2008年6月12日(木)某日
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