まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

さてさて、今回は漫画の台詞とほぼ一部同じ~(こらまて
ちなみに途中でちらっとでてくるのはお約束のメンバーのうちの一人ですv(笑
なぜ彼かといえば彼が一番無難だから(こらまて
クラヴィスだと…ねぇ(爆
ともあれ、あまり突っ込んで詳しく触れてはいませんが副題のとおりですv
何はともあれいっきますv

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銀花の園   ~浄化能力装置~

「どうやら彼は大丈夫のようです」
恰好的には普通の巡礼者。
だがしかし、寝かしつけるときにその下に着ている服をみて驚いたのもまた事実。
巡礼者の服のしたに着込んでいたのは財団の制服。
ほぼ身一つで財団から逃げ出した彼はほかの着替えなど持つ余裕などなかった。
そしてまた、お金もあまりもっていなかった。
巡礼者の服は善意でほかの巡礼者たちがくれたもの。
巡礼者の一行にまぎれていたがゆえに財団に見つかることなくここまでこれたのも事実。
彼と共にきた、という巡礼者の一行からひとまず別の団員が話しを聞きに行っている。
生まれつき浄化能力を備えている人々にはタナトスの気配を少なからず察知する能力というか勘が備わっている。
だが、横たわり眠る人物からは今はそのようなまがまがしいものは感じない。
「そう、ですか。よかったです」
そんな彼等の言葉にほっと胸をなでおろす。
今、彼女たちがいるのは騎士団が常に勤務している詰め所の一角。
「…レイン。さきほどの品をみせてくれないか?」
「え?あ、ああ……」
ヒュウガにいわれて、先ほどひろった装置を机の上におく。
それをみて意を決したように懐からハンカチをとりだしてその横にことん、と置くヒュウガ。
ハンカチの中にはまったく同じ、とおもわれる装置が一つ。
「なっ!?ひ、ヒュウガ!?おまえ、それをどこで!?」
「な!?こ、これは!?カーライルの亡骸から発見されたと同じもの、レイン殿!?これをどこで?!」
レインはヒュウガがおいた品物をみて、そしてディオンはレインが置いた品物をみて驚愕の声を上げる。
「…亡骸…だと?まさか…そんな…ありえないっ!絶対にっ!だが…まさか……」
ありえない、といいつつも現実にその問題の装置は目の前にある。
それも二つも。
「まさか…ヨルゴのやつ、パックアップをとっていたのか!?危険とわかっていながら!?」
確かにそのような噂は耳に入ってきていた。
だけども信じたくなかったのもまた事実。
いくら何でも危険性がはっきりした以上、そしてレインが全ての研究成果を破棄した以上。
少なからず計画の見直しはされている。
そう信じていたかった。
叫ぶレインに対し多少驚いたようにレインに視線をむけ、
「レイン殿?貴殿は何かご存知なんですか?これについて?」
「レイン。知っていることがあるのならば教えてほしい。これは俺達の親友の亡骸からでた唯一の品。
  あいつの変貌の原因となったものではないか、そう私はにらんでいる」
「…タナトスに憑依された銀樹騎士であるカーライルを救うには命を絶つしかなかったのです。
  お願いです。知っていることがあるのならば教えてください」
交互にいってくるディオンとヒュウガの台詞に、しばらく無言で二人をみつめ。
そして、決意したように顔をあげる。
「…判った。どうやら俺のミスでもあるみたいだしな。…話は長くなるが……」
ちらり、とほかの教団員にと視線をむける。
どうやらあまり他人に聞かれたくない話にはいるらしい。
それゆえに、関係者以外をその場から立ち退かせる。
「…その装置は、かつて俺が財団にいたころ、全ての人々に浄化能力を持たせられないか。
  とおもって考案し、研究、開発していたものだ。タナトスの脅威は日々増している。
  それゆえに誰もが浄化能力をもてば脅威にさらされることなく平和にすごせる。
  そのための研究…のはずだった」
淡々と関係者が椅子に座りテーブルについたのを確認して語り始める。
「俺の浄化能力もその研究の過程で気がついたら身についていたものだ。
  常に自分の体で実験を繰返していたからな。他人を危険な目にあわせるわけにもいかなかったし。
  そして、研究の結果、確かに装置は完成した。誰しも人は体内に微弱ながら浄化能力を備えている。
  それを増幅する装置が。…だが、自分が使ったときには判らなかった欠点がそれにはあった。
  引き出された力に耐えられないがゆえか使用した人間が力に飲まれ、壊れる可能性。
  そして…あろうことか、力を引き出すと同時にタナトスまでをも引き寄せてしまう。
  財団員の一人が実験をかねて使ったときにそれが判明し、その後の研究でどうしても危険は避けられない。
  それがわかったからこそ俺は全ての研究結果を破棄して現物も全て破棄した。
  ヨルゴのやつは副作用が危険でもそれは使い手の心次第といって無理やり市販にこぎつけようとしていたからな。
  それだけは何としてもさけなければならなかった。しかし…まさか再び同じ過ちを繰返しているなんてっ!」
ぎゅっ。
一気にはなし、手を強く握り締める。
「すまん!俺のミスだ!まさか実用化してるなんて……
  …おそらく、奴等…ヨルゴは教団員に目をつけたんだ…とおもう。
  通常の人ですら装置を使えば一時確かに浄化能力に目覚めることは証明されていた。
  だが、生まれつき浄化能力をもつ騎士団員ならその効果は絶大のはず。
  俺の知らないところで、とはいえ完全に研究結果を破棄しきれなかった俺のミスだ。…すまない。
  何といってお前たちにわびたらいいのか……」
命を絶つしか方法がなかった。
そういっていた、ということはおそらく彼等はその手で親友の命を絶つ意外方法はなかったのであろう。
だからこそレインには謝るしかできない。
夢魂の塔。
そこでヒュウガはタナトスと化したカーライルを発見した。
その命を断ち切ったのもまた彼。
「…いや。おまえは装置の害をしり一度は破棄した。
  罪深きは装置の害を知りながらそれを復元して使用した人間の心だ」
「…レイン殿。あなたはその…問題ないのですか?」
「ああ。俺には何の兆候もなかった。だからその事実に気付くのが遅れた…第三者で試すまで……」
あのとき、装置を使用した人間はタナトスに憑依されたものの、命は助かった。
レインが機転を利かせて装置を破壊したがゆえに、命はたすかったものの多少の後遺症がのこってしまった。
装置が完成したあのとき、これで誰もがタナトスにおびえることなく暮らせる世の中がくる。
そう信じていたのに。
レインの思いがわかるがゆえに、レインを責めることはできない。
だがやり場のない思いはどうしても残るものの、それでもレインを責めることはしないヒュウガ。
「すまん。少し一人にしてくれ」
そういい、かたんと席を立ち上がり一人で外にと出てゆくヒュウガの姿。
そんな彼に何と声をかけていいのか誰も判らない。
しばし、その場に静寂が訪れる。
と。
「アンジェリーク。どうやら話は長引きそうですし。あなたはジェイドとともにこちらの依頼を先に済ませてきてもらえますか?」
「え?で、でも……」
何と声をかけていいのかわからない。
そんな彼女ににこやかに封筒を手渡しいってくるニクス。
「うん。それがいいね。その書類も急ぎ、といわれてたし。まだレイン達は話があるとおもうし」
このまま彼女がここにいても、おそらく彼女は悲しむばかりであろう。
他人のことすらをもわが身のことのように思い悲しむ彼女ならばなおさらに。
「ほかにも受けている依頼があるのですか?ならばそちらのほうを優先してください。
  後のことは我々に任せてください」
真実をしり、しばらく一人にしておいてほしい、と外にでていっているヒュウガ。
そしてまた、真実をしり、一人苦悩しているレイン。
ヒュウガのいったとおり、彼のせいではない。
彼がその危険性を知ったのちに全てを破棄し、二度と研究が行われないようにしたのは事実。
だが、その研究成果のパックアップを財団の上層部が控えていて再び愚考を繰り返している。
という真実はレインにとっても財団を管理、指導しているのが実の兄であるがゆえに言葉にならない。
レインにしろヒュウガさんにしろ、どうしてこんなことになったのかしら?
願うのは、それぞれ人々の幸せだったはずなのに。
レインとて悪気があって研究し開発したわけではない。
確かに誰でもタナトスと戦える力を得られればタナトスの脅威におびえることなく平和に生活ができる。
それこそ誰をも犠牲にする世の中ではなくなる。
それを夢見てレインも研究と開発に取り組んでいたであろうことは明白。
ヒュウガとてタナトスに憑依されてしまった大切な親友を手にかける以外、彼を救う術はなかった。
そういっていた。
そのときに自分がいればもしかしたら…だけどもその数年前には彼女も自分の力を知らなかった。
もし私が昔からこの力を自覚していたら?
どうしても自分のせいに思えてしまう。
だからこそ余計に悲しくなってしまう。
そんなアンジェリークの心情がわかるからこそのニクスの提案。
「アンジェリーク。この依頼も急ぎみたいだし。とりあえずもっていってこようよ。ね?」
「え、ええ……」
確かに依頼主に頼まれた人物をあまり待たせるわけにはいかないであろう。
おそらく依頼主から自分たちが書類を届けるというような旨は伝わっているはずである。
その場にかなり名残惜しい気持ちを残しつつ、ジェイドにつられその場を後にするアンジリェーク。
その胸の中に何ともいえない悲しみを抱えながら――

カーライル。
貴様は…なぜ…?
レインから装置の危険性を聞き出した。
彼はその害を知っていてもなお力を望んだのだろうか。
強くなりたい。
その思いのみで。
それとも言葉巧みに財団に言いくるめられて実験台にさせられたのだろうか。
それは今となっては誰にもわからない。
そう、誰にも……
わかっているのは、タナトスと化したカーライルを自らの手で命を絶った、ということのみ。
「あ。ここにいたんだ」
ふと聞きなれない声をきく。
ふと顔をあげるとにこやかな笑みを浮かべている人物が一人。
一目で特徴的な体つきから目の前の少年が何なのか理解する。
だがしかし、この場に彼の種族が住んでいる、とは聞いたことがない。
それとも彼もまた巡礼者の一人なのであろうか。
だが、目の前の少年から感じる気配は人とはどこかが何か異なるもの。
「君がヒュウガ、だね。はじめまして。僕はメル。ある人に言われて君たちに伝言をつたえにきたんだよ?」
にっこりとそういってくる赤い髪の少年。
その耳にある部分にはひれがついており、彼が竜族であることを物語っている。
そしてその手にもたれている水晶球。
彼等の種族は占いが得意。
そう聞いている。
それゆえに彼もまた占いを得意とするのであろう。
「え~と。あ、アルカディアのアンジェリークは今はいないんだ。今いるのは君達だけか。
  ん~。でも、ま、いっか。神鳥の陛下と神獣の陛下からの伝言を伝えるね。
  アルカディアのアンジェリークがもつコンパクトが必要な場所に導いてくれるから。
  それと、サクリアを秘めている君たちへの伝言。
  力に飲み込まれて負のサクリアを引き出さないように気をつけて、とのことだよ?」
「…な?」
「それじゃ、伝えたからね~。久しぶりだし。銀の大樹でもみてからいこっと。
  そういえば、一緒にきたセイランさんどこいったんだろ?それじゃあ、またね」
いうだけいってその場を立ち去るそのメルと名乗った竜族の少年。
カーライルとそして装置のことを考えていたがゆえに彼の言葉に含まれていた単語に反応するのがかなり遅れる。
神鳥、そして神獣という言葉が含まれていたことにようやく気付き、座り込んでいた体を起こすものの、
すでに少年の姿は人ごみの中にと掻き消えており見つけることは不可能。
「今…のは…」
そもそも負のサクリアとは意味がわからない。
何よりも神鳥と神獣、その二つの言葉は教団の上層部しか知らない言葉のはずである。
どうしてあのような少年が知っているのかすら不思議でならない。
それに、何よりも銀の大樹のことをつぶやいていた。
ヒュウガは知らない。
メルがリモージュとコレット…つまりは神鳥の宇宙の女王と神獣の宇宙の女王。
二人に頼まれて彼等に伝言を伝えに来た、ということを。
そしてまた、自分たちも彼等と同じ運命にある、ということを。

「しかし…このような装置がそんな……」
説明をうけてもまだどこか信じられない。
そもそも財団は表向きには人々の幸せのため、そう公言してはばからない、というのに。
だがしかし、先日の一件のこともあり信じる要素は多々とある。
「人に秘められた浄化能力を引き出す…ですか。しかし力とは諸刃の刃、ですからね」
力を得たがゆえに破滅していった人々をこの長い年月の間どれほどみてきたであろうか。
それゆえにニクスの言葉には重みがある。
「とにかく。あなた方にお願いがあります。特にレイン殿。
  今のことを教団長に報告してほしいのです。…ヒュウガはかたくなに聖地に入ることを拒んでいましたが。
  しかし…彼が教団を出奔したのは全てはカーライルの変容の原因を突き止めるため。
  きちんと真実を伝えたいのです」
タナトスに憑依されるなど騎士団にとっては不名誉なこと。
それは心がタナトスに屈した証と捉えられてしまうがゆえ。
それゆえにカーライルは聖地内部にて眠ることは許されなかった。
不祥事をおこした人物として。
だが、彼だけの責任ではなかった、それだけはどうしても伝えたい。
「…判った。俺のほうからも真実を知った以上。きちんと報告しておく必要はあるとおもうしな」
財団がこれ以上、どれだけ人で実験をしているかすら不明。
今、この奥で寝ている人物が目を覚ませば多少のことはわかるかもしれない。
だが…かつての研究において机上のみでの結論であるが、タナトスに憑依された場合、
そのときの記憶が失われることがあるかもしれない、という確率はかなり高い。
だからこそあまりあてにはならない。
しかし、財団が行ったことによりかつて一人の騎士団員が命を落としたことにはかわりがない。
装置を考案、開発したものとしてそのあたりのけじめはきちんとしたい。
それが装置を作ってしまった自分自身のけじめでありまた責任でもあるがゆえ。
「では、しばらくはこのラシーヌに滞在することになりそうですね。宿を確保しなくては」
「それでしたら我々が手配させていただきます」
下手に彼女、アンジェリークを巡礼者たちにあわせば間違いなく絵姿を知っている人々は騒ぎ出す。
それゆえのディオンの配慮。
「…少しばかり外の空気をすってくる」
言葉も少なめに一人で詰め所から外にと出てゆくレインの姿。
誰も悪くはないはずなのに、それでも歯車が異なりそれぞれが傷ついてしまった。
この場の重苦しい空気をアンジリェークに味あわせなかっただけまし、と思うしかありませんね。
そんな彼等の会話をききつつも、一人そんなことを思うニクス。
しかしこれも彼等が乗り越えなければならない試練の一つなのであろう。

「カーライル……」
聖地全てを見下ろせる丘の上。
ラシーヌの村から少し奥に位置している小高い丘。
聖地がある標高とほぼ同じ高さほどあるこの丘からは聖地の全てがよく見渡せる。
だからこそここに墓を作った。
彼がとても愛してやまなかった聖地に少しでも近い場所を、とおもい。
誰が悪かったわけではない。
いや、害を知りながらそれを使用した人の心が悪いのはわかっている。
それでも…あのとき、カーライルの心を知ることができなかった自分にはそれを責めることは許されない。
一人、墓の前でたたずむヒュウガ。
そんな彼の周囲にひらひらと光る蝶が舞うものの、やはりヒュウガの目にはその姿は映らない。
――ヒュウガ。お前にはいつも笑っていてほしい。
それがいつも常に傍にいるカーライルの願い、だとは今のヒュウガには伝わりようがない……


                                -第62話へー

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あとがきもどき:
薫:ちらっとまるで通りすがりの占い師さんのようにでてきたメルv
   いうまでもなく神獣の夢の守護聖となっているメルですよ~(笑
   そういえば、アニメのほうではこの装置のことでるんですかね?謎です。
   ちなみに、アニメのほうで漫画オンリーかとおもっていたオーギュストさんがでてきました(笑
   時の流れを意識する展開では彼の登場、何かいいですよねv
   ともあれ、次回はアンジリェークとジェイド側v
   ではまた次回にて~♪

2008年月6日10(火)某日

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