まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
さてさて。この回はゲームにも原作にもでていませんよv(こらまて
つまりはオリジナル的展開ですv
オーロラはいまだに完全に人々の目に留まる広さでは出現していません(笑
ですけど人というものは奇跡を目の当たりにしてゆけばおのずと期待を膨らませるものv
とりあえず、すこしばかりこれから先は人の欲望?にふれてきます。
苦手な人は今回、そして次回とスルーをばv
何はともあれ、ゆくのですv
#####################################銀花の園 ~憑依~
「うわ~」
思わず感激でその身を乗り出してしまう。
話にはきいていたけど、本当に一面銀世界だわ。
ここにくるまでにいろいろとあったものの、比較的タナトスの被害も別になく、
あったとすれば異様にほかの巡礼者たちと一緒になったことくらい。
何でもここ最近、聖地への巡礼者がどんどんと増えているらしい。
道中、マルコに確認したところ、聖地への最後くらいは自分の足ですすみたい。
とのこと。
それゆえに護衛はラシーヌまでていい、とのことらしい。
ヒュウガ曰く、聖地の少し先にある丘の上の木までいけば見張りの銀樹騎士が気付いて、
何かあってもすぐに対応してくれる、とのこと。
どうしてそんなに詳しいのか問いかけるマルコにヒュウガが元騎士団にいたことをアンジェリークが告げると、
多少なぜかヒュウガは不機嫌そうになっていたがそれはそれ。
「そういえば、ニクスさんがもっていた記事はラシーヌのことについてかかれていたものなんですよね?」
ふと古い新聞の切り抜きをニクスが持っていたのを思い出しふと問いかける。
「ええ。ですがあれは百年も前のことですからね。おそらく誰も知らないとおもいますよ?」
その伝説は多少残っているかもしれないが。
それでも確実に当時を知るものはすでにもうニクスが知る限り生きてはいないであろう。
「あとはこの重要書類とやらを渡せばとりあえず二つの依頼は完了、だな」
そんな会話をしている最中。
「…まって。何か騒がしいみたいだよ?」
ふとじっと目を閉じて聞こえてくる声にと精神を集中しつつもいってくるジェイド。
アンジェリーク達の耳には聞こえないが、たしかに何やら人々のざわめきが聞こえてくる。
それに呼応するかのごとくに、
「きゃぁぁ~~!!?」
「うわぁ~~!?」
何やら村の中のほうから聞こえてくる叫び声。
「いったい?」
「とにかく、いそごうっ!」
ひひ~んっ!
はいっ!
何が起こったのかはわからない。
だがしかし叫び声が聞こえてくるのは村のほうから。
それゆえに手綱を強く握り締め、馬を早めるヒュウガ。
ガラガラガラ。
アンジリェークたち一行を乗せた馬車は足早に巡礼の村ラシーヌへ向かってゆく。
いったい全体何がおこったというのだろう。
すでに面影がのこっていない何かの像。
その前にて巡礼者の一人がいきなり具合がわるいのかうずくまった。
ここ数日、巡礼者の数はいつにもなく増しており、聖地へ入る許可をまつのも一苦労。
「大丈夫ですか?」
ただ事ではない様子に数名の人々が声をかける。
その場にうづくまり、体を振るわせつつもまるで体を抱え込むようにして座り込んでいる一人の男性。
年のころはまだ若い青年らしいが。
「たすけ……が…たす…け……」
がくがくがく。
だんだんと意識すらもが遠のいてゆく。
ここまで、どうにかここまで自我を保つことができたのに。
勝手な行動をとった罰としてとある研究の実験体にとさせられた。
それも有無を言わさず。
命の危険を感じ取り、どうにか目を盗んで逃げ出し、巡礼者の一行に紛れ込んだ。
ようやくここまでたどり着けたというのに、自分はここまでなのだろうか。
このまま、意識を飲み込まれ自分が自分でなくなっていくしかないのだろうか。
聖都ならば自分を助けてくれるかもしれない、という淡い期待を抱いてここまできた、というのに。
「もしもし?」
「たす…が…ああああっっっっ!!!」
ぶわっ。
別の人物が男性に近寄ろうとすると、何ともいえない苦痛の叫びと同時。
男性の体から黒い霧のようなものが立ち上る。
それはまるで悪夢としかいいようがない光景。
先ほどまで確かに人であったはずなのに、ゆっくりとタナトスに憑依され侵食されてゆく男性の姿。
一瞬、何がおこったか人々には理解不能。
だがしかし、次の瞬間。
『うわぁぁぁぁ~~!!??』
その中央に核となったのであろう憑依した人間の姿をそのまま残しながら、
ゆっくりと浮き上がる巨大なタナトスが一体。
タナトスの種類的にはリッチ、と呼ばれているタナトスの一種。
特注的なドクロの顔の部分には一人の男性の姿が変わりに組み込まれている。
人がタナトスに憑依されることは滅多とないが、だがしかしまれに起こる現象としては知られている。
聖地の近くの巡礼の村、ラシーヌ。
聖地に近いがゆえに常に駐在している銀樹騎士団も存在している。
だが、そんな彼等とてその姿を目の当たりにして一瞬躊躇してしまうのは仕方ないであろう。
中央部分にみえるのはまさしく人の姿、なのだから。
「いったい何があったのですか!?」
ひとまずただ事ならぬ気配を感じ、村の外に馬車をつないで村の中にと駆け込んだ。
マルコもどうやらただ事ならぬ気配を感じて彼等とともに村の中にはいったはいいものの。
村の中はかなり騒然としており、逃げ惑う人々でごった返している。
人々の逃げ惑う波を押し分けるように彼等が走ってくる方向にと向けてかけてゆく。
ニクスの叫びと、
「…な…これは……」
目の前にある光景をみて思わず愕然としてしまう。
かつての出来事が脳裏をよぎる。
『聖騎士になれば強くなれるとおもっていた。ヒュウガ。貴様のように強くあれば……』
「カーライル……」
最後の友の言葉が脳裏をよぎる。
「まさか、そんな…タナトスが人を核として憑依してるの?!」
そういうこともありえるのは知ってはいる。
だが実際に見るのは初めて。
ヒュウガのつぶやきとジェイドの叫びはほぼ同時。
「あ、あなたは…ヒュウガ殿!?」
そこにいた銀樹騎士の一人が彼の姿に気付いて思わず叫ぶ。
「確かあなたはアーサーさん?」
たしかアーサーとなのった銀樹騎士団の一人のはず。
見覚えのある姿であるがゆえに驚きの声をだすアンジェリーク。
「おい。いったい何があったというんだ!?」
人にタナトスが憑依するなど滅多とないがゆえに尋常でない。
それゆえにその場にいる銀樹騎士団の彼等にと問いかけるレイン。
「そ、それが。巡礼者とおもうんですけど。いきなり苦しみだして…あのように……」
いわれてタナトスと化した人物のほうをみてみれば、どこかでみた覚えがある顔立ち。
「…あら?あの人…でも、どうして?」
その顔立ちにはどことなく覚えがある。
そうだわ、たしかあのコズで襲撃してきた人たちの中の一人によく似てるけど……
コズにてアンジェリークとレインを捕獲するといって銃をつきつけてきた財団員の一人によく似ている。
「…タナトスに憑依された人を助けるにはその命を断ち切るしかない」
「そんなっ!?そうだわ。タナトスを弱らせてその隙に私の力で切り離すことはできないかしら?」
重苦しく、それでいて過去の苦い記憶。
それらを思い出しながらも苦しそうに言うヒュウガの言葉に思わず叫びながらもふと思いつく。
「なるほど。たしかに。とにかくやってみる価値はあるなっ!このままだと犠牲者が出かねない」
すでに近くに数名、気分が悪そうな彼を心配して近づいていた人々が生気を吸われて倒れている。
「確かに。あなたのお力ならば…」
アンジェークの力ならばそれも可能であるかもしれない。
あるいみ一縷の望み。
「俺達が彼をどうにか助け出すから、君たちは人々を安全な場所に誘導してくれる?」
「…やってみるしかない、ですね」
彼の姿は自分と重なるところがある。
おそらくアレに負けてしまえば自分もおなじように手下として使われる駒になってしまうのであろう。
ジェイドが騎士団たちにと話しかけ、ニクスがぎゅっと杖を握り締めながらも杖を鞭状にと変化させる。
「ええ。皆を助けるために。やりましょう」
このままではタナトスと化した人も、そしてこの場にいる人たちも不幸になってしまう。
「護りの力よ…」
そういいつつ、ゆっくりと目を閉じ手を組み祈りをささげる。
ふわっ。
アンジェリークの祈りに伴い、彼女の体が淡く輝き、その輝きは周囲を包み込んでゆく。
?
何かしら?
何か負の気配が濃い部分が一箇所、取り込まれている人の中から感じられる。
それは人々に護りの力を働かせたときに感じた違和感。
アンジリェークの祈りにより、近くにいた人々全てに護りの力が働き、簡単な結界のようなものに護れる。
騎士団に誘導され、避難していた人々が目にしたものは光につつまれた少女の姿。
そう、ここ巡礼の村に住むものならば誰しも一度は目にしたことがある伝説の女王の絵姿とほぼ同じ姿がそこにある。
知らず、それぞれその場に立ち止まりその場にひざをついて祈りをささげる人々の姿がいたるところにて見受けられる。
カーライル。
お前は助けることができなかった。
だが…、カーライル、この私に力を貸してくれ。
自分が命をたった親友のことを思い出しながらもぎゅっと手にしている槍にと力をこめる。
彼とタナトスを引き離すことが可能ならば、私にも光がさすのでしょうか?
そうはおもうものの、憑依しているモノの質が完全に異なる。
目の前の人間に憑依しているのはあからさまにただの端末。
だが、自分自身は…
だからといってほうっておいていいわけがない。
「…まさか、こいつは……」
姿かたちは間違えるはずはない。
あのときコズで自分たちを襲撃してきた中の一人であるのはおそらく間違いない。
服装は変わっていても、そう簡単に人を今まで見間違えたことはない。
それゆえの確信。
だが、財団員がどうしてタナトスに憑依…まさか。
とてつもなく嫌な予感がレインの脳裏に突き抜ける。
可能性として考えられるパズルのピースはとても最悪なもの。
「みなさん!その人の腕の部分からいように負の力が増しているように感じます」
そう。
腕の部位からまるで何かが沸き出でるかのようにこのタナトスに力を与えているように感じられる。
逆をいえばその部分をたたけばタナトスは弱らせることができるかもしれない。
それゆえに確信はもてないまでも感じたままに叫ぶアンジェリーク。
「とにかく、いきましょう」
「心得た」
「今すぐに開放してあげるからね!」
「タナトスが人に憑依するなんてあってはらならいんだっ!」
いいつつも、それぞれ一斉に武器を構えて目の前にいるタナトスと化している人にと構える。
「…光の護り石よ、お願いっ!」
少しでも彼等のために、そして憑依されている人のために。
できること。
それは彼等の負担を少しでも少なくすること。
常に持ち歩いている護り石の中から光の護り石を取り出して祈りをささげる。
ふわっ。
護り石はアンジェリークの願いに答えるかのようにふわりと彼女の手の中から少しばかり浮き上がり、
ぱあっ!!!
護り石から発した光が周囲をまぶしいほどの光の中に包み込んでゆく。
これは……
人々を安全な場所に避難させた後、自分たちも何かできることがあるかもしれない。
そしてまた、報告をうけた騎士団長が現場に駆けつけてみたものは、
アンジェリークが護り石とおもわれる品を使いこなしている様子。
まぶしいほどの光りの中、四人の男性がタナトスと化しているソレにと攻撃をしかけ、
光の中、タナトスの力が弱まってゆくのが見て取れる。
「アンジェリーク!今ですっ!」
ニクスだからこそわかる。
一時、タナトスの影響力が弱くなっている、ということが。
こくん。
ニクスの叫びをうけ、
「浄化の力よ。お願い!タナトスに捕らわれた人を解放し世界を優しさで満たして!」
強く、強く祈りをささげるアンジェリークの姿。
ふわっ。
その祈りに伴い、周囲に白き羽が舞ってゆく。
パァァ……
光につつまれ、もがきくるしもながらも光の粒子と化してゆくタナトスの姿。
そして、それと同時に取り込まれていた人もまたゆっくりとその形をとりもどしてゆき、
次の瞬間。
どさっ。
完全に消え去ったタナトスの後に残るは雪の中倒れている男性が一人。
「きみ、大丈夫!?」
タナトスが完全に消え去り、安全性を確認するためにも真っ先にかけよるジェイド。
アンジェリークもまた彼の無事を確認しようと駆け寄ろうとするものの、それはヒュウガの手により押しとどめられる。
万が一のことを考えて油断は禁物。
ジェイドが危険性がないことを確認し、こくりとうなづくのをみてとり、
アンジリェークもまたそんな倒れている男性にと駆け寄ってゆく。
キラ…ッ
「?…な、こ…これは…!?」
何か雪の中、輝く小さな物体が目についた。
それゆえにかがんでそれを拾う。
小さな四角い物体。
だがそれはレインにとってとても見覚えのあるもの。
「レイン、それは!?」
ヒュウガもまたレインが拾ったそれをみて驚愕の声をだす。
レインが手にしているそれはヒュウガが戒めとして持ち歩いている品とまったく同じといっていい品。
そんな二人とは対照的に、倒れている男性の脈をとり、瞳孔を調べ、
「もう大丈夫です。疲れているみたいですけど、この人の命に別状はないみたいです」
タナトスから開放できたことにほっとする。
だがしかし、どうして彼がタナトスに憑依されてしまったのか。
その疑問はいまだに残る。
「ヒュウガ!それにアンジェリーク殿、それにニクス殿たちも!?どうしてここに!?」
それぞれがそれぞれに思いをはせる中、そんな彼等に話しかけてくる男性が一人。
今までアンジェリーク達も気付いていなかったが、ふとみればそこには見慣れたヒュウガの旧友、ディオンの姿が見て取れる。
「あ。ディオンさん」
「これはよいところへ。この人をどこかに運びたいのですが、よいところをご存知ですか?」
とりあえず今はよくても万が一、ということもありえる。
だからこそ一般人の近くは危険すぎる。
アンジェリークがタナトスを浄化したのに伴い、タナトスに襲われて倒れていた人々も一斉にと目を覚ましている。
その光景を目の当たりにし何やら周囲には人だかりができており、それぞれが祈りをささげている姿がいように目につく。
ニクスがいいたいこともわかる。
何よりもこのまま彼女をここにいるままにさせていればどんな騒ぎになるか知れたものではない。
「あ、それでは、我々の詰め所へご案内いたします」
「あ、彼は俺が運ぶよ」
ひょいっ。
いまだに目覚めない倒れている男性をひょいっと軽々と持ち上げるジェイド。
何がおこったのか周囲にいる人々には理解不能。
判っているのは、目の前に見える少女の手により奇跡がおこった、ということのみ。
『カーライルがいない!?』」
『ああ。ヒュウガ。お前に手紙が残されていた』
苦くも、それでいて絶対に忘れられない思い。
あのときから、いなくなった大切な親友の姿を追い求め…そして見つけたときにはすでに…
どうしてそのようなことになったのかはわからない。
彼の命をたったのは他ならない自分自身。
だからこそ、彼の変貌の真実を突き止めるためにと教団を出た。
彼がそうやすやすとタナトスに負けるような人物ではないというのは親友、とおもっていたからこそ信じている。
だけど人の心とは弱いもの。
何か、何かが絶対にあったことは間違いはない。
聖都を見下ろす丘の上に作られた彼の墓。
不祥事を冒したものは、聖都の土地の中には葬ることはできない。
「?ヒュウガさん?どうかしたんですか?」
ぎゅっと胸を我知らず押さえているそんな彼を心配して声をかけるアンジェリーク。
「ああ。何でもない。あなたのほうは何ともないのですか?」
「私は平気です。最近浄化の力をつかってもほとんど疲れないんですよ?不思議なことに」
そう、その力はまるで自然のごとくに使いこなせるまでになっている。
はじめのころは一度の浄化でかなり疲れていた、というのに。
まるで、そう息をするかのごとくに自然と使いこなせている自分に驚きを隠しきれない。
だけどもその結果、人々の幸せをまもることができるのだから、彼女にとっては問題ではない。
「そう、ですか」
おそらくそれは彼女の本格的な目覚めが近づいている証、なのであろう。
彼女が完全に覚醒を果たしたとき、この世界はかつてのような理想郷を取り戻す。
そう古より言われているのだから。
だが、彼女と生活を共にしていて思うこと。
ならば彼女の救いはあるのだろうか…ということが気にかかる。
ただ一人の少女が世界の全てを背負い込む、というのは確かに重荷すぎる使命ではないか…と。
それでも彼女は間違いなく選ぶであろう。
人々の笑顔と幸せのために。
それが彼女、アンジリェーク、という女性なのだから。
-第61話へー
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あとがきもどき:
薫:目の前で人が異形の存在に変わってゆく様をみるのはかなり怖い、でしょうね。
といいつつこれを打ち込みしている最中、現実でも理不尽な事件発生……
ふとテレビをつけたらそれのことをやってました。
何だかそれから気力がのらずに翌日に打ち込みを回しております(あしからず
しかし、無差別って人というものは理性をもっているから人であって…何だかなぁ……
まあ、この話も人の理性はどこへ?状態な部分でもありますけどね。
何はともあれ、ではまた次回にてv
2008年6月9日(月)某日
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