まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
さてさて。今回ようやく火事、勃発ですv
皆さんも火遊びはやめましょうね~(笑
特に空気が乾燥しているときは危険です。
外での野外活動でのバーベキューとかでも火が燃え移ることもありますからねぇ。
何はともあれ、のんびりまったりとゆくのですv
#####################################銀花の園 ~乾燥警戒発令中~
「うん。おいしいっ!」
「というか、ずるいっ!アンジェはっ!いつもこんなおいしいものたべてるの!?」
全員の食事はせっかくだから、というのでジェイドが率先して用意。
時間をきっちりと計り、全員分の食事を用意するのはさすがとしかいいようがない。
手伝いにきていた女性たちもまた彼からいろいろ料理のコツなどをきき大変にご満悦。
簡単でそれでいて手軽に大人数が食べられる品。
カレー、という案も浮んだが、それだと煮込む時間が短くおいしくならない。
というジェイドの意見から野菜炒めなどに変更されている。
野菜をたっぷりとつかったオイルパスタ。
それゆえに美容にもとてもよい。
とあえず一息ついての食事タイム。
それぞれが地面に敷物をひき、そこに座り食事を堪能している今現在。
ほぼ全員が一箇所にあつまり食べながら、村人達などは午後からの役割分担をきめていたりする。
「食事は交代制でつくるようにしてるのよ?でもみなさん、とても料理お上手で、いつも勉強させてもらってるわ」
もっぱらデザート類はよく彼女はつくっていたが実際の食卓のメインとなるような料理はあまり知らなかった。
彼女が知らない料理を出されるたびにそのレシピを習い、作り方を習い。
少しづつだが料理のレバートリーを広げているアンジリェーク。
「でもいいな~。美男子ぞろいでしかも料理も堪能。一家に一人はほしいわよね」
見ているだけでもかなりの目の保養になる。
結婚するのならば多少考えるところがあるにしろ。
何しろ彼等は今、ニクスの援助で活動している状態。
つまりは、収入源が個々的には確定していない。
レインのほうは昔発表している様々な文献の印税収入などでかなりの収入源はあるにしろ。
ジェイドとヒュウガにいたってはほぼ無収入、といっても過言ではない。
まあ、ジェイドならば旅の空でお菓子などを作り売れば爆発的に売れるのは間違いないが。
ニクスはいうまでもなく財産家でもあり、結婚するならばはっきりいって玉の輿以外の何ものでもない。
ヒュウガのほうは立ち振る舞いからして元銀樹騎士団に所属していたらしいことはみてとれる。
噂では聖騎士に選ばれるほどの人物だった、とも話にきく。
それゆえに彼の帰還を待ち望んでいる教団員は多数に上る。
ゆえに複職すれば間違いなく金銭的な面にしろいろいろな面で結婚したとしても困ることはない。
「そういえば、ヒュウガさんの姿がみえないけど?」
ふとみれば、ジェイドたちの姿はみえるのもの、ヒュウガとそしてディオンの姿が見当たらない。
「ああ、騎士様方なら周囲を見回ってくる。とおっしゃってましたよ?」
ジェイドが子どもの声がする。
というのもあって周囲を確認しにいっているディオンとヒュウガ。
ジェイドの聴力はとてつもないものがあり数キロ先の声でも拾うことが可能。
それゆえに彼の言葉は信じるところがある。
この付近に子ども達だけがいる、となればそれは大変に危険。
おそらくはどこかの子ども達が遊びにきている可能性もある。
子どもというものはいくら危険だからといってもどうしてもそういった場所に立ち寄り遊ぶ。
それは今も昔も変わらない。
「そうなんですか」
「?アンジェお姉様?あれ、何でしょう?」
ふとアンジェリークをしばし眺めていたシャルレが彼女の背後のほうで立ち上る煙に気付く。
「?何?シャルレちゃん?」
「って、…煙?誰かが野焼きをしてるのかしら?」
ふとみれば、背後のほうで煙が空にと立ち上っている。
「?おかしいわ。あのあたりはまだ収穫はすんでない場所なのに……」
その煙に気付きアンジェリーク達を指導していた女性がつぶやくと同時、
「た、大変だ~~!!畑の一角で火がでたぞ!!」
ざわっ。
一人の男性がいきせききって走ってきて大声で叫ぶ。
ゴッ。
それとほぼ同時。
はじめは小さな煙だけだったというのにあっという間に視線の先が赤い色で染まってゆく。
長きに渡りさほど雨が降っていない。
それゆえに大地はかなり乾燥している。
そしてまた収穫目前となっている小麦畑。
…何?
これ?
とくっん。
何かが映像として脳裏に流れ込んでくる。
火の中で震えるようにして固まっている小さな二人の子どもの姿。
「と、とにかく火をどうにかしないと!」
とはいえ近くに水源はない。
ここから水源となる小川まではかなりの距離がある。
「ハンナ達は安全な場所へ避難していて!」
だからといって何もしないわけにはいかない。
「って、アンジェはどうするの!?」
そんなサリーの言葉に。
「何かできることがあるかもしれないし。皆は学校長先生の指示に従って避難して!」
空気がとても乾燥している。
おそらく火の回りは予想以上にかなり早いだろう。
何よりもところどころから収穫を始めているのである程度の空気の通り道ができている。
それはさらに火の回りを加速させる結果を生む。
うららかな昼食時の風景は一変。
臨場感あふれた緊迫した空気が周囲を包み込む。
「みなさん!おちついて!こちらにあつまってくださいっ!」
村人達などが対応に追われバタバタとする最中、必死で生徒達を呼び集める学校長。
彼女からすれば大切な生徒を危険な目にあわせるわけにはいかない。
手伝うにしてもそれなりの安全管理、というのもは必要不可欠。
「レイン!…この間の方法、とれない?」
このままでは火の回りがはやく、下手をすれば畑は全滅してしまう。
麦や小麦といった種類が交互にこの場所には植えられている。
そしてまた、ここで取れるそれらの収穫はアルカディア全土にとっても重要な意味をもつ。
ここで市場に出回る量の半分以上がとれるのだから。
ぱたぱたとレインのほうにかけより、この間、タナトスによって火事となった畑。
そこで使った方法がとれないかどうかレインにと問いかける。
「いや。たぶん無理だ。水のオーブがあったとしても数がたりなさすぎる。
しかし…火の回りが早すぎる。ちっ。空気が最近乾燥していたからな」
それにここは街や村から離れた場所。
それぞれが常に水のオーブを携帯している、とは限らない。
しかも範囲が範囲である。
オーブも数個くらいでは絶対に足りない。
「とにかく!風下だ!風下の麦たちを徹底的にかるんだ!」
的確に右往左往している人々に指示を飛ばすレイン。
たとえ火の回りが速くても、今は風はさほどでていない。
一箇所、火を食い止める隙間をつくればどうにかなる。
レオンの指示をうけてわらわらと鎌などをもち走ってゆく人々。
「学校長!私たちも!」
人々が困っているのにじっとしているわけにはいかない。
生徒達のそんな熱意に打たれつつも、
「みなさんは、人々の看病をお願いします」
大量の煙を吸い弱る人々は必ず出てくる。
風下の麦を刈る、といってもだからといって風上のほうも手付かず、というわけにはいかない。
少しでも被害を食い止めるためには多少の危険性をも冒してでも何としても火を食い止めなければ。
「…そうだわ。レオン。お願い、ついてきて!」
確かにレオンの言うとおり、水のオーブがそこいらにあるとは思えない。
だがしかし。
水の護り石ならば?
水の力を湛えた石の力を使えばもしかしたら可能かもしれない。
それは一瞬の思いつき。
「あ、お、おい!アンジリェーク!?」
走り出したアンジェリークをあわてて追いかけてゆくレイン。
レインには彼女の考えはわからない。
判るのは、彼女が火が押し迫っている危険区域に向かっている、ということのみ。
ひくっ。
こんなことになるなんておもってもいなかった。
学校で習ったばかりの火をおこすサバイバル的な行動。
習ったことを実践し、そしてそれが形となったときそれは何とも言いがたい喜びとなる。
ましてそれが子どもならばなおさらに。
火はあっという間に自分たちがいる周囲を取り囲み、逃げることすらもできない状況。
子ども達の秘密基地。
麦畑の一角を綺麗に刈り取りそこにぽっかりとした空間を作り出して秘密の隠れ家を作っていた。
子どもというものは隠れ家的なものをよくつくる。
それが大人の目からすればバレバレなものでも当人たちは隠れ家と信じて疑わない。
確かに子どもの身長よりも高く実る麦畑の中では格好の隠れ家には違いない。
だが、そこで火遊びするとなれば話は別。
ぽっかりと開いた空間であるがゆえにどうにか火は回りこんではきていない。
それでも地面には枯れた草などが敷き詰められ寝転んでも平気なように仕上げてある。
ゆえにいつ何どき火が燃え移ってくるかわかったものではない。
あまりの怖さにそこから動くことすらも、熱さが身に染みてただただ泣くことしかできない。
常にいつも両親から火で遊ぶのは禁止。
といわれていた意味がようやくわかったような気もするが、しかしときすでに遅しとはこのこと。
どんどんと火力は強くなり、二人がいる場所もどんどんと熱せられ息すらも苦しくなってゆく。
「ディオンさんっ!」
「って、アンジェリーク殿!?」
思わず驚きの表情を浮かべて叫ぶのは仕方ないであろう。
何しろこの付近は炎の熱でかなり空気が熱せられている。
しかも火がでて少ししてからいきなり風が出始めている。
それも一部的に。
風が起こる何らかの原因も考えられる。
火事と、そしてその原因…おそらくはタナトスかもしれない、ということを視野にいれつつの消化活動。
炎と熱気、そして煙でまともにたってもいられない、そんな状況。
「あら?ヒュウガさんは?」
確かに彼とともにいたはずなのに、彼の傍にヒュウガの姿が見当たらない。
「それぞれが別々に今は行動しているもので。それよりこんな危険な場所へどうなさったんですか?」
彼女にいうわけにはいかない。
炎の中から子どもの声がして、ヒュウガが危険を冒して中に入っていった、などとは。
それゆえに言葉を濁し、危険な場所にやってきたアンジリェークに逆にと問いかける。
「あ。すいません。ディオンさん、以前の水の護り石、もってますか?
おそらくそれをつかえば炎の延焼が食い止められるとおもうんです。
以前、水のオーブを炎の周囲に配置して簡易的な結界を張ることができましたし」
それで炎の延焼を食い止め被害を最小限にとどめた。
風が強くなってくる前にとにかく水のサクリアの力で結界を張らなければ被害は拡大してしまうだろう。
それでなくともここ最近、雨が降っていないので空気は乾燥し、とても燃えやすくなっている。
護り石に蓄えられている、というか護り石から感じる力は一つ一つのオーブの比ではない。
だからこそのアンジェリークの問いかけ。
アレの力を使えばおそらく結界を張ることはたやすいはず。
彼女は自分の力のみでそのようなことができる、とは思っていない。
何かの力を借りての発動。
そう認識しているのだから。
「…申し訳ありません。あれは上層部のほうに提出しております」
騎士団団長とはいえ、彼がもつにはあまりにも重要すぎる品。
ゆえに教団の上層部にと一応提出している。
彼等とてその護り石がもつ意味が何を指し示すか、というのはわかっているはずである。
だがしかし、ほかの石をアンジリェークがもっていることまでは報告していない。
下手をすれば彼女からそれを預かりもってこい、といわれかねない。
彼女の手元にあってこそ始めてその力を発揮する、というのに。
証が空に輝いていない今の現状では、頭の固い長老たちはおそらくそうは思わないであろう。
「そう…ですか」
今あるオーブだけでいったいどれだけ炎の延焼を食い止められるだろう。
そうアンジェリークが答えると同時。
ごうっ。
いきなり風が強くなる。
そして。
「だ…団長!!」
確かカールと呼ばれていた団員が息を切らせつつも走ってくる。
「どうした?カール」
「出ました!タナトスです!どうやらこの風はタナトスが起こしているらしいですっ!」
出るかもしれない、とはおもっていたが。
よもやこんなときに出てくるとは。
「出現したのは砦付近です!今はニクス殿が食い止めてくださっています!」
ジェイドも畑を護るために出向いていた。
人々が休憩地帯に選んでいたそこに残っていたのはニクスのみ。
騎士団三人もそれぞれに分かれてとにかく炎の延焼を防ぐために村人達と協力していた。
その矢先のタナトスの出現。
風がどんどんと強くなる。
それにあおられて炎の調子も強くなってゆく。
「とにかく、アンジェリーク殿はニクス殿のところにっ!ここは我々に任せてください!」
砦の付近、といわれて顔色が一気にわるくなっているアンジェリークにと語りかけるディオン。
砦の付近は学校長や生徒達がいる場所でもある。
大切な学友たちが危険にさらされている。
そう聞かされて顔色が悪くならない人はまずいない。
「にゃ~!」
「って、エルヴィン!?おまえ、いつのまに…だめっ!そっちはあぶないわっ!」
ふと気付けばいつのまにか足元にエルヴィンがやってきており、
燃え盛る炎の中にと入ってゆく。
…え?
これは何?
流れ込んでくる映像。
子ども達を護るようにして炎の中に取り残されているヒュウガの姿。
子ども達のいる場所にたどり着けたはいいものの炎が強くなり子どもをつれての脱出は困難になっている。
そんな光景がアンジェリークの脳裏にと伝わってくる。
――アンジェリーク。あなたの力は人々を幸せにするもの。祈りなさい。あなたの心の望みのままに
それと同時にいつも夢で聞こえてくる不思議な声もまた聞こえてくる。
「…っ!ヒュウガさんっ!」
炎が強さをまし、今にも炎は彼等に襲い掛かりそうなそんな光景。
思わず叫び、自然手を組み祈ることしかできない。
「?アンジェリーク?」
そんなアンジリェークに対して首を傾げつつも周囲を見渡しながら炎の強さに舌打ちしているレイン。
流れ込んでくる映像が真実なものなのかわからない。
だけども、なぜだか判る。
それが今彼らがおかれている実情だ、と。
今彼女に視えている光景は実際のものだ、と。
炎は激しさを増し、延焼を防ぐために麦を刈ろうと散らばっていた人々にも襲いかかろうとする。
そんな光景も同時に脳裏に流れ込んでくる。
まるで、そう、何かスクリーンのようなものを通じてみているかのごとくに。
お願い。
私に皆を護る力を…っ!
祈るのは人々の幸せと幸福。
今、この場に必要なのは…炎を納める恵の雨。
自然、手を組み祈りをささげる。
祈りと同時に体の中に暖かな力が満ち溢れてくるのがわかる。
脳裏に視える炎にまかれ、なす術もない人々の姿。
望むのは彼等の安全。
そして収穫目前に迫っている穀物畑の安全性。
アンジェリークが瞳を閉じて祈りをささげるのと同時。
ふわり、と彼女の背中より出現する白き翼。
白き翼はまるで全てを慈しむようにふわりと周囲に舞っていき、彼女の体からあふれる淡い光。
淡い金色の光はやがて一つの光の柱となり空にむけて舞い上がる。
それと同時、雲ひとつなかった空に金色の雲が出現し、大地を金色の光で埋め尽くす。
全てはほんの一瞬のこと。
ポッポッ……
ざぁぁぁぁぁぁ……
次の瞬間。
雲などまったくなかったはずだというのに、焔の大地に恵の雨が降り注いでゆく――
-第57話へー
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あとがきもどき:
薫:何だかあまり展開がゆっくりすぎ?
まあ、次回でようやく自然のコントロール(こらこら)の回なのですv
といってもアンジェリークは自分の力、だとはおもっておりません。あしからず(笑
んでは、次回でようやく恵の雨~v
何はともあれではまた次回にてv
2008年6月6日(金)某日
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