まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
今回、あまり深く突っ込みというか表現はしておりません。
ゲームでは普通に恵の雨、でしたけど、それでは何か面白みがないので、
それに雨に濡れたら風邪をひきかねませんしね(笑
というかあの服でびしょぬれになるのはどうかなぁ?
下手したら透ける可能性もなきにあらず…(爆
というわけでちょこっと変更した天候操作v
ともあれ、ゆくのですv
#####################################銀花の園 ~伝説への序章~
「ねえねえ。お母さん、お空がひかってるよ?」
空を埋め尽くす金色にと輝く空。
その空から降り注ぐ、金色の光を帯びた雨。
先ほどまでまったくもって雲ひとつない青空であったはずなのに。
青い空はいつのまにか気付けば金色にと輝いており、アルカディアの大地全てを慈しむように光は降り注ぐ。
あまりに不思議で、それでいてどこか安心できるような神秘的な光景。
光の雨は大地に、そして家々の垣根すら通り越し光の粒となり家の中にまで及んでゆく。
「…あなたっ!」
光の粒にふれ、今までタナトスに襲われ昏睡状態であった人々。
そんな人々の体が光につつまれ、次の瞬間、アルカディアの全土にわたり一気に目を覚ましてゆく。
奇跡。
そうとしかいいようのない現象。
空はありえない金色にと輝いており、人々をまるで慈しむかのように優しく大地を照らし出している。
視えるのは、いたるところで目を覚ましてゆく人たちの姿。
そしてまた、雨に触れて沈静化してゆく炎の姿。
そしてまた、現れたというタナトスが光につつまれ光の粒子となり掻き消えてゆく様子。
「アンジェリーク!?」
「アンジェリーク殿?!」
どこか遠くでレインとディオンの声を聞きながら、アンジェリークの意識は遠のいてゆく。
ふらっ。
何がおこったのかは理解不能。
だかしかし、あれほど勢いを増していた炎は瞬く間にと沈静化し、見れば燃えたはずの麦すら元通りに再生している。
その光景に驚き目を丸くしている最中、祈りをささげ体が光につつまれていたアンジリェークの体がぐらりと揺らぐ。
あわててそんな彼女を支えるものの、どうやらアンジリェークは意識を失っているらしい。
「お、おい!アンジェリーク!?」
呼んでもまったく返事がない。
彼女の意識はここにあって今はこの場にはない。
その意識はアルカディア全土に及んでおり、我が身のことのように様々な場所での出来事を視ている状態。
だが、そんなことはレインたちにわかるはずもない。
「アンジェリーク殿!?」
あわてて脈を測るがとても弱い。
「とにかく、彼女を安全な場所へ」
「あ、ああ」
一体何が起こったというのだろう。
一ついえるのは、炎が消えたのは明らかにアンジリェークが何かをした、ということに他ならない。
と。
「ディオン。子ども達は無事に保護し…レイン?それにアンジリェーク様?!」
ふと、子ども達をつれて炎が静まった麦畑の中から出てくるヒュウガ。
レインに抱きかかえられているアンジリェークをみて瞬時に顔色を変えて思わず叫ぶ。
「ヒュウガ。ちょうどよかった。こいつがいきなり倒れて……おそらく無理をしたんだとおもう」
おそらく、雨を降らせたのも間違いなくアンジェリークであることは明白。
アンジェリークが気絶するのとほぼ同時に金色に輝く空は元通り雲ひとつない空にと戻っている。
あれほど勢いをましていた炎も全て消え去り、挙句は燃えたはずの穀物すらも再生しているこの現状。
伝説の女王の力。
それは確かに常識的からすれば計り知れない。
目の当たりにするからこそ驚愕しつつも信じざるを得ない。
だが、彼女の力はまだ完全ではないはずである。
そんな中、何の補佐もなしに力を使うことは、意図を返せば命にすらも関わる。
そう。
今、翻訳している古代の文献の中にあったように。
「では、やはり、今のは……」
金色の雨に打たれて掻き消えていった炎。
そして周囲にあった燃えたはずの穀物の復活。
まるで火事などはじめからなかったかのごとくに。
まだ覚醒していないというのにこの力。
彼女が完全に力に目覚めたときにはいったいどのような能力を得るのかそれはヒュウガたちにはわからない。
「とにかく。俺は子ども達をつれてゆくから。ヒュウガとレイン殿はアンジェリーク様を」
つぶやきながらもアンジリェークの脈をとり、脈が弱いながらもしっかりしていることにほっとする。
そんなヒュウガにと話しかけているディオン。
子ども達をこのままにしておくわけにもいかない。
かといって、倒れた彼女をそのままにしておくわけにも。
優先順位的には彼女優先にしなければならないのであろうが、子ども達のみで帰らすわけにもいかない。
また、混乱するであろうこの現状をどうにか収めないといけない。
それらの役目は銀樹騎士団長である自身の役目。
そう判断しているからこそのディオンの台詞。
「わかった」
「後はたのむ」
ディオンにその場を任せ、レインがアンジェリークを横抱きに抱きかかえ、
ヒュウガが周囲を警戒しつつも、とりあえず馬車のある方向にむかって歩いてゆく。
「これは……」
まさかアンジェが何かしたの?
そうとしか思えない。
だがしかし、女王の卵の力とはとても信じられないものがある。
リースにて空に輝くオーロラをみている以上、アンジェリークが伝説にある存在だ、と疑いの余地はない。
そもそも、彼女の周囲には信じられない人たちも集まってきていたりもするのだから。
きらきらと金色に輝く雨のような粒が空より降り注ぐ。
先ほどまで雲ひとつない青空が広がっていたのに、今の空は金色の光の雲に覆われている。
そしてそれと同時に焼けたはずの穀物が見る間に再生してゆく様を目の当たりにすれば驚愕以外の何ものでもない。
炎が完全にと収まり、そして焼け落ちたはずの穀物たちも無事に再生すると同時。
空は元通りに晴れ渡り、金色に輝く雲は微塵もみあたらない。
奇跡としかいいようのない出来事。
炎に蒔かれる畑と、そんな畑を護ろうとする人々。
そしてまた、そんな人々を助けようとする女学生のボランティア。
そんな彼等の写真をとっていたベルナールからしても、この光景は何とも表現のしようがない。
あれほど燃え盛っていた炎は光る雨に触れると同時に瞬く間にと掻き消えていき、
さらには燃え落ちたはずの麦穂が再生してゆく様を目の当たりにすれば言葉を失う。
というもの。
「まさか、アンジェ…無理をしていないといいけど」
これほどのことをするとなればおそらくかなりの力を使うはずである。
何らかの彼女の力を補佐する力があれば別であろうが。
光る雨に触れると同時、体の中に満ちている力がよりいっそう力を増してゆくようなそんな感覚。
先日目覚めた力はあれから消えることはなく、そのまま彼の中に息づいている。
もっとも、いきなり浄化能力に目覚めました、などと上司にそう簡単に報告できるものではない。
ゆえに上司には報告はしていない。
アンジェリークのことが心配なのは山々なれど、だがしかし、彼とて新聞記者の端くれ。
アルカディア中の人々に真実を伝える義務がある。
だからといって彼女を危険な目にあわせるような記事は絶対に書くつもは毛頭ない。
彼女のことを省いて記事にすることはたやすいこと。
彼女は、ただ麦の収穫の手伝いをしていただけ、なのだから。
「これは…兆し…なのでしょうか?」
金色に輝く空を見つめ思わずつぶやく。
伝承にはこのような現象のことは乗っていない。
光のカーテン、虹色にと輝くオーロラというわけでもない。
それでも、この金色に輝く空からはとても優しい、全てを癒す力を感じる。
「うん。そうだよ。マティアス。あの子はもうすぐ完全に目覚める。証は空に輝くよ?」
それが彼女の力ゆえだ、そう確信しているからこそ、そんな彼の隣で屋上の端に座り込み、
足をぶらぶらさせながら空を見上げて横にいる男性にと答えている金色の髪の少年の姿。
アルカディアの全土にて、空の異変に気付いた人々が空を見上げて驚きの表情をうかべており、
そしてまた、タナトスに襲われていた人々は目の前でタナトスが光の粒子となり消えてゆく様を目の当たりにする。
今まで一度たりとてそのような現象はおこったことはない。
淡く金色に輝く空。
まるで黄金色のごとくに。
その光景はほんのわずかの間にしろ、人々の心にある種の希望の光がともったのはいうまでもない。
金色に輝く空からは嫌な感じは一切うけず、むしろ自分たちを慈しむようなそんな感覚を全員がうけた。
それが意味することは…伝説にある女王の目覚めが近いのかもしれない。
そう誰ともなく思い祈りをささげるのは…当然、といえば当然のこと。
雪の大地につつまれた地にて、雪が金色に輝くというありえない光景がしばし見受けられてゆく。
「あら?私…?」
ふと気付けば馬車の中。
気絶している彼女を運んでゆくにしても今はおそらく先ほどの現象でほかの場所も混乱しているはず。
それゆえにしばらく落ち着くまで馬車の中で休ませる。
それがレイン達の判断。
「にゅうっ」
横たわる彼女の上に掛けられていた毛布を押し上げるようにと起き上がる。
ふとみれば、そんな彼女の胸の上にちょこん、と座っているエルヴィンの姿。
「エルヴィン!…よかった。無事だったのね。というかお前、どうやってついてきたの?」
そもそも、エルヴィンは屋敷においてきていたはずだというのに。
毎回おもうけど、この子いつも神出鬼没よね。
気付けばいつのまにか自分の後にとついてきている。
それは依頼にいくときにしろいつのまにかちょこん、と後をついてきているのが現状。
ひょいっとエルヴィンを抱き上げながらも視線を合わせて問いかける。
とはいえ猫が答えるはずもなく。
「って、そういえば、火事は?それに皆は?」
どうして自分がこんなところで横になっていたのかすらもわからない。
あのとき、火が消えるように、人々が助かりますように、と心から祈った。
そこまでは覚えている。
そこから覚えているのはおぼろげながら、まるで…そう。
空から全てを見渡しているような、そんな感覚。
まるで空から全ての場所を見通しているようなそんな錯覚をうけた。
人が空を飛べるはずもないのでそんなことはありえない。
あれって夢だったのかしら?
そう自分自身で納得しつつもとにかく起き上がる。
先ほどまでは確かにお昼であったはずなのに、
馬車の窓から外をみればすでに日は暮れかけ周囲は夕焼け色にと染まっている。
どうやら馬車の中に一人、横たえられて眠っていたらしい。
なぜ、どうして?
という疑問もあるにしろ、だがしかしサリーたちやほかの生徒達。
そしてまた収穫に携わっていた人々がどうなったのかも気にかかる。
そもそも火事がどうなったのかすらわからない。
とにかく起き上がり、掛けられていた毛布を丁寧にとたたんで立ち上がる。
キィッ。
馬車の扉をあけて外にでると、馬車の前で見張りを兼ねてか寄りかかるようにしている男性が一人。
「ってヒュウガさん?」
寄りかかっている男性…ヒュウガの姿をみて声をかける。
「お目覚めですか」
「え?あ。はい。あ、あの、私一体?それよりあの、火事はどうなったんですか?」
自分がどうして馬車の中で寝ていたのかすらもわからない。
どうやらここは焔の砦の遺跡らしい。
少し離れた場所に人々が集合し、何やら話しているのが見て取れる。
アンジリェークが眠っている間に全ての今日の作業は終わり、今は解散の言葉がつむがれている最中。
刈り取った穂は荷馬車に詰まれ、銀樹騎士団の護衛のもと、モンタントにと運ばれる。
「火事は大丈夫、問題ありません。けが人も一人もでていません。それよりあなたのほうは大丈夫なのですか?」
馬車から降りるアンジェリークに対し心配しながらも声をかける。
「私は何ともありませんけど…でも、どうして私、馬車の中に?」
思い出そうとしても思い出せない。
「おそらく無理をしてお力を使われたからでしょう。あなたはいきなり倒れられたのですよ」
「?私、何もしてませんけど?」
ただ、そう強く願い祈ったのみ。
それゆえにただきょとん、とするしかできないアンジリェーク。
「あ、アンジェ!よかった~!目がさめたの!?」
心配し、すでにほかの学生たちは帰路についているものの、彼女が心配だから、
といって学校長の許可をえて残っていたハンナとサリー。
二人くらいならばニクス達がのってきた馬車に乗せて学院に送り届けることも可能。
馬車から出てくるアンジェリークの姿に気付き、駆け寄ってくる二人の姿。
「ハンナ。サリー!…って、ほかのみんなは?」
きょろきょろするものの、ほかにいたはずの生徒達の姿が見当たらない。
「もう皆、それぞれ帰ったわ。私たちはあなたが心配でのこってたの。それより、体、大丈夫?気分は?」
ぐったりとしている彼女をつれてレインとヒュウガが戻ってきたときには心臓が止まりそうなほどに驚いた。
おそらくは力の使いすぎなのであろう。
そうヒュウガにいわれても、心配なことには変わりがない。
彼女の力は未知数ではあるが、それゆえにその力の加減というものが彼女自身、わかっていない。
だからこそ心配になる。
いつ、その力の使い方を見誤り、命を落とすことになりかねないか、と。
「何ともないわ。でも二人ともありがとう」
そんな二人の心遣いがとてもうれしい。
自分を心配してくれているのがわかるから。
だがそれで彼女たちに負担をかけているのでは、という思いがぬけなくもない。
「おや。アンジリェークは目を覚ましたようですね。体に問題はありませんか?
人々とは話がつきましたし、今日のところはそろそろでは戻るとしますかね?」
収穫に参加していた人々に対してはニクスが話しをつけた。
彼等からしてもニクスは尊敬に値する人物であり、それゆえに彼のいうことは大概素直に聞き入れる。
「?そういえば、ベルお兄さんは?」
確かにベルナールも取材できていたようだが。
周囲に彼の姿が見当たらない。
「そういえば、アンジェの親戚のお兄さん、って話だったわよね。
あの人なら同僚の人がきて新聞社にもどっていったわよ?」
彼が本日、焔の砦にて取材をする、というのは上司も承知していたこと。
そんな中、アルカディア中で起こった様々な奇跡の数々。
すぐさまに彼を呼び戻せ、と上司が命令したのはいうまでもない。
だがそんなことをアンジリェークが知る由もない。
「そう。ベルお兄さんもお仕事、大変そうなのね。忙しそう」
そんな忙しい中、自分を気にかけてくれるその優しさに感謝しつつ空を見上げる。
ここからはうっすらとしかヴォードンの双子の塔は見えないが、首都ヴォードンのほうに視線をむける。
でも、お兄さん、無理をして体を壊さないでね。
それがアンジェリークの願い。
「しかし。お前が無事でよかったよ。倒れたときにはどうしようかとおもったしな」
アンジリェークが何ともないようなのをみてとり、ほっとしつつもつぶやくレイン。
「私、本当に倒れたの?覚えてないんだけど??」
そういわれても、自覚がないだけにピンとこない。
「まあまあ。とにかくここで立ち話も何ですし。ジェイドも戻ってきましたしね。
今日のところは帰るといたしましょう。話ならば馬車の中でもできますしね」
みれば積荷の手伝いをしていたジェイドもまた馬車のほうにと駆け寄ってきている姿が目にはいる。
何やら不思議な、それでいてどこか釈然としないものを感じつつ。
確かにニクスの言うとおり、このままここにいても日は暮れてゆく一方。
それゆえに、人々にお別れをいい馬車に乗り込みリースに向けて戻ってゆくアンジェリークたち一行。
アンジェリークは知らない。
今日、彼女が行ったことは、アルカディア全土に及んでおり、奇跡がアルカディア中において起こっていた。
ということを――
-第58話へー
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あとがきもどき:
薫:空が金色に輝く光景。
それはリモージュのカイリさんの漫画にもあったエリーシュオンの光景とほぼ同じですv(まて
あれと異なるのは人々が天使の姿を目の当たりにしていない、ということですねぇ。
あと、アルカディア全土にわたり奇跡が一気に起こっている、ということと。
当然、アンジェリークはそんなことを知る由もありません(笑
次回でこの回の少し後をまえぶりでやって、それからコズvです(まてこら
ほのぼの系&財団がらみをそろそろ始めたいとおもいますv
さて、オーロラが出る前に聖地にいくのはいったい何話?(汗
ともあれ、ではまた次回にて~♪
2008年6月7日(土)某日
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