まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

さてさて、今回はジェイドが倒れる回のその後。
ジェイドの正体を暴露する回、でもあります~
ゆえにほとんど意味はない。
そういえば、ネオアンジェの世界でセレスティアってどうなってるんだろう??
あの技術状態だと水族館とか…経営無理っぽいんですが(汗
もしくは海の向こう側で普通にいまだに存在してたのかなぁ?セレスティア。
そのあたり、アニメのほうではやるかな?
まあ、触れないだろうなぁ…エトワールででてきたアルカディアのアミューズメントパークなんて(汗

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銀花の園   ~ジャスパー・ドール~

「やっとここまでこれたけど……」
男四人がかりでも、あまりの重さに汗をかなりかいている。
「しかし。いくらジェイドの身長がおおきいとはいえこの重さは……」
ヒュウガの疑問は至極もっとも。
「当人の口からいうまでまっていようかとおもったが…そうはいっていられないようだな。
  ジェイドは…アーティファクトだ」
『…え?』
どうしようか迷いながら小さくつぶやくレインの言葉に思わず聞き返すアンジェリークとヒュウガ。
そしてまた、
「じゃぁ、やっぱり彼は……」
ベルナールとて敏腕記者として知られている新聞記者。
そのことについての取材をかつてしたこともある。
当時の研究施設は原因不明の火災で何もかもが焼けてしまい資料も何も残っていないが。
「え?ジェイドさんが…アーティファクト?」
いきなりいわれても信じられない、というような表情をしているアンジェリーク。
それはヒュウガとて同意。
ジェイドには体温も、そして脈拍もある。
それゆえに彼がアーティファクト…すなわち機械、だといわれてすぐに信じる人はまずいない。
「アーティファクトには二種類ある。古代の機械を今の技術で研究、開発したものと。
  そして古代の技術でつくられた当時のまま発掘されるもの。
  ジェイドはその古代の技術で創造られ、そしてたった一体のみ今のところ確認されている、
  ジャスパー・ドール。だ。数年前に彼が研究されていた場所が災害に見舞われそれ以後行方不明になっていた。
  俺が黙っていたのは訳知りがおで俺がいうようなことではない、とおもったからだ」
ジェイドの体を丹念に探りながら説明するレインの言葉にただただ驚愕せざるを得ないアンジリェーク。
「しかし…確かに言われてみれば納得できることは多々とあるが……」
何しろお菓子作りのときなど、オーブンをあけるのに素手で取り扱っていたりしたのをみたことがある。
「しかしこれほど人間そっくりのアーティファクトが存在するとは…古代の技術とはいったい……
  ジェイドの体重の重さも、その怪力も、時間の正確さも全てはアーティファクトゆえ、か」
だがしかし、彼には確実に心というか魂がある。
それは断言できる。
ただのブログラムされたものではない、というのも。
彼には確かに感情があるのは長い付き合いではないが一緒に暮らし、仲間として生活している間に理解している。
だからこそにわかにはヒュウガとて信じられない。
彼はあまり機械にはよい感情をもっていない。
それは正体不明の機械らしきものが親友の亡骸から発見されたがゆえ。
あのカーライルがそうやすやすとタナトスに取り込まれるとは絶対に思えない。
だが、人の心とは弱いもの。
もし、その心の隙をつかれてあのような装置を身につけたとしたら?
「おそらく、さっきのヤツはこのジェイドの資料をもとにして創造られた同じヤツだろう。
  が、決定的に違うのは、今の技術ではこいつのように心を持たせたり、また感情、
  そして外観上全て同じにはできない。ゆえにあの金属音だったんだろう」
あの襲撃者の体は確実に全身が鋼鉄であった。
見た目は人間のそれと変わらなくしてあってもそれは外見上のみ。
おそらく触れればその差は歴然とわかるであろう。
だが、ジェイドにはそれはない。
人の肌と同じくやわらかで、しかもきちんと脈すらもある。
人工的な血液がきちんと人と同じようにその中を血管を模した場所にきちんと流れている。
ゆえにまず誰もが彼がそんな存在だとは気付かない。
「どうやら血はとまってるようだが……」
おそらく自己修復機能が働いたのだろう。
だが、中に入り込んでいるとおもわれる銃弾は触れた限りどうもまだ中にあるらしい。
「とりあえず、こいつの中に入り込んだ銃弾を撤去して後はこいつの自己修復機能にかけるしかない。
  俺にできることはとりあえずするが…」
「後できちんと掃除しますので、それはかまいませんよ?」
レインが言いたいことを察してにこやかに応えるニクス。
「あ。私も手伝います。これでも私は医者の卵ですっ!」
おそらく彼を医者に見せたりはできないのは今の説明でわかった。
かといってこのままほうっておけば体内にのこされた銃弾がどのような結果を招くかわからない。
「ニクスさん、今からいう品を用意してください。まずメスのかわりになる……」
実践で人を手術したことはまだない。
それは完全な資格を得ていないからそれは許されていない。
だが今はそんなことをいっている場合ではない、というのはアンジェリークでもわかる。
「じゃぁ、僕は必要なものをかってくるよ」
それぞれがそれぞれ、できることを。
ジェイドの正体が何だったとしても、ジェイドは大切な仲間、には違いないのだから。

「そう…でしたか」
何か胸騒ぎのようなものを感じた。
だから朝も早いがとりあえず見回りを兼ねて陽だまり邸がある付近を探索していた。
そんな中、ばったりとであったベルナール。
一人よりは二人のほうが買い物するのにも都合がよい。
それゆえに二人で馬車の御車台の上で話しているディオンとベルナール。
今、陽だまり邸で何がおこったのか、そしてその結果、今ジェイドが倒れている、ということ。
ディオンとてあのジェイドがアーティファクトと聞かされて驚愕するものの、
それでも彼に心がある、というのはディオンとてわかっている。
「しかし。財団は…アンジェリーク様をどうしようと……」
いまだに空に輝く証はたっていない。
だから表だって教団が彼女を保護する、というのも影響力の大きさを考えればはばかられる。
そうはいっていられない事態ではある、というのはわかっていても。
それでも。
それほどコトは重大なのだから。
「奴等の考えはおそらく、彼女の力を分析して自分たちのためにつかう、といったところじゃないのかな?
  たとえそれが彼女にどんな苦痛や、そして彼女の命を奪うことになっても」
彼等ならやりかねない。
人の命を命ともおもわずに使い捨てにするような今の財団では。
「しかし。おそらくアンジェリーク様は我々教団が聖都で彼女を保護します、といってもお聞き入れなさらないでしょうね」
彼女をみていてわかること。
それは彼女はただ護られておとなしくしているような少女ではない、ということ。
目の前で困っている人をほうっておけず、その身を削ってでも人に尽くそうとする。
そしてまたおそらくどのような罪を犯しているものでも、その慈愛の心は全てにむけられる。
このような世界に生まれてきてそのような精神を持ち合わせて成長している子どもはまずいない。
それこそ資質をもっている証、なのであろう。

「ふう。これでおそらく全部摘出したわ」
機械の体、といわれても、本当に肌の下は人のそれとかわりがない。
メスをいれて肌をきればそこからは赤い液体が流れ出し、そしてまた柔らかな肉もある。
否、肉に近い、といったほうがいいのであろう。
確かに普通の血肉とは異なるのは見て判る。
伊達に医者を目指しているわけではない。
体内に入り込んだとおもわれる銃弾、全ての撤去。
サルーンの床の上にジェイドを寝かしての緊急手術。
「よし。後は俺に任せて、お前は少しやすめ」
額に汗をかなりかいているのが見て取れる。
「大丈夫よ。私は。それより次はどうすればいいの?」
おそらくレインの見立てでは血肉の裏。
つまり本体の部分のどこかがダメージをうけた可能性がある。
そういうのでそれを調べなくてはいけない。
レインの部屋にあるいくつかの見たこともない機材をジェイドの体につなげその箇所を捜索する。
「いや、もうこれで問題はない、はずだ。あとはとにかく徹底してどこか不都合がある部分を探しだすまでだ」
修理、という言葉はおそらくジェイドには向かない。
本体にのめりこみかけていた弾丸も全て取り除いた。
数十発以上、その体にうけており横には取り出された弾丸が箱にいれられ転がっている。
おそらく人がそれをうけたら即死は間違いなかったであろう。
それだけみても財団がなりふりかまわずに仕掛けてきたことが見て取れる。
もっとも、抗議しても彼等は自分らとは係わり合いのないこと。
といってまったくもって取り合わないであろうが。
ジェイドを治すにあたり、ばたばたと屋敷の中をいったりきたり。
その最中、今まで一度も入れなかったはずの部屋の扉が開いているのに気付き、
その中にはいったところ、必要な機材全てがそろっていたのには驚いたが。
正面にあるちょっとした机の上に様々とある書類のようなもの。
そしてまた見たこともない機材が山のように置かれていた。
時間があるときにその部屋はレインとしてもゆっくりと確認してみたいところ。
「お二人とも、お疲れさまです。もうお昼を過ぎていますよ?
  とりあえずお昼ご飯にいたしませんか?」
ふと手術に熱中するあまり、時間が経過していたのに二人して気付いていなかったが、
すでに買い物にでていたベルナールも戻り、そしてなぜかディオンまで屋敷にやってきている今現在。
水が汚れては変える役目はヒュウガがし、補佐的な役割を果たしていたりする。
そんな彼等ににこやかに語りかけているニクス。
人間、多少の休憩をとらなければまいってしまう。
「あ。俺はバーガーでいい。まだこいつは目を覚まさない、何かを見落としてるかもしれないからな」
体中をスキャンするような装置をみつけてそれを使い徹底的に体の異変を調べている最中。
このような装置はいまだに財団でも開発されていない。
いまだにそこまで技術力がおいついていない。
ジェイドが倒れてはや数時間。
そんなやり取りをしている彼等の姿が、陽だまり邸の中において見受けられてゆく。

爆発。
そういっても過言ではないだろう。
意識はあるのに体が動かせない。
ダメ。
彼等が自分の中のあの力に興味をもちソレを取り出そうとしている。
人に扱える代物ではない。
『人が手にするのは過ぎた力。俺たちだって全ての力を使いこなせるわけじゃない。
  全ては陛下のお力があって保たれてる状態だしな』
自分を生み出した少年がいっていた言葉が蘇る。
そしてまた、その力はかるく惑星一つくらいならば消滅させられる力をももつ。
自分の中に込められた力は何なのかはよくわからない。
だけども、彼等の『力』をも込められて自分は作り出された。
この地、アルカディアの未来のために、という名目で。
力を吸い上げるように彼等が取り出してゆく。
その結果、何が起こるか知らないままに。
意識が朦朧としてきて、かすれゆく意識の中で聞いたのは、人々の悲鳴と叫び。
次に目を覚ましたときには、ほとんど何も覚えていなくて。
ただ、自分の名前くらいしか思い出せない。
だけども一つだけ覚えていたのは自分が何もできずに人々を助けられなかった、ということ。
人々の叫び声が耳について離れない。
「おまえさんが儂をよんだのか?」
「長老。危険ですっ!」
ふと何かに呼ばれたような気がして目を開いたその視界にはいったのは、
遠き記憶のかなたに見覚えのあるシルエット。
特徴的な耳のひれ。
だけどもそれが誰だったのかは思い出せない。
とても、そうとてもよくしてもらった人だというのはわかるのに。
「ジェイド。そうか、おまえさん、ジェイドというのか」
名乗ってもいないのに自分の名前を言い当てた。
彼等ですら名前など知らなかったというのに。
男性が握る水晶球にその真実の名前が記される。
水晶は告げている。
彼はこのアルカディアにとって必要な存在である、と。
だからこそ、星の声に従いここまできた。
全て瓦礫とかして廃墟と化しているこの場所に。
事故があったのはつい先日。
いまだに草木の燃えた後からは熱がこもっており周囲もまた暖かい。
だけども体が動かない。
声すらもだせない。
「笑って。ジェイド。笑顔は幸せの種だよ」
そう、君は確かにそういったよね。
カイ。
俺の初めての友達。
人々の悲鳴が耳につき感情がほとんど閉じられた俺に笑顔で接してくれていた大切な。
だけど、君はもういない。
だから俺は旅にでた。
君がいったその笑顔で人々を幸せにしたかったから。
こんな俺でも人々の笑顔を守れるかもしれない、そうおもったから。
そしてあの日、あの場所で俺はまるで太陽の化身のような少女に出会ったんだよ?
カイ…ねえ、きいてる?カイ?
目の前にカイの姿があるのに彼はただ黙って自分に笑顔をむけているのみ。
ねえ、君は何が…いいたいの?

「…ジェイドさん。…あなたは……」
ふと、ジェイドの隣にたたずんでいる一人の少年の姿に目をとめる。
その姿は透けており、生きている人ではない、と一目瞭然。
少しばかりアンジリェークが見たこともない姿をしているのは、それは彼が火竜族、という種族だからゆえ。
疲れて一時眠っていたらしい。
レインもまた疲れたのか多少居眠りをしているのが見て取れる。
『……いか。彼にこの歌を……』
歌?
はじめのほうの声はよく聞き取れなかった。
女王陛下、といったような気もしたような気もするがそんなことがあるはずない。
おそらくきっと聞きまがい。
おそらく少年は声をだしていないのであろう。
だが、アンジリェークの心に直接響いてくるその声はジェイドをとても大切におもっている存在だ、
ということがよくわかる。
そう。
ジェイドがすきだった歌を、彼に。
ジェイドは今、過去の苦しみに捕らわれている、だから。
アンジェリークはその歌を知らない。
だけども少年の心が直接にアンジリェークに伝わり、自然とその歌詞と節が頭にと浮ぶ。
そして脳裏に浮ぶかんきつ類がたわわに実っているとある自然に満ちた風景。
「…潮の神、その身を揺らす太陽の子……海に還りし我が友に……」
どこか切なく、それでいて暖かな。
脳裏に浮ぶは、その歌をジェイドと共にうたっていた目の前の少年が生きていた時の姿。
歌にジェイドが目を覚ますように心から祈りを込める。
ジェイドさん。
あなたを心配している人たちのために、お願い…目をさまして……
静かに歌うアンジェリークの声は陽だまり邸の中にゆっくりと響き渡ってゆく――


「…ジェイド。選ぶのはお前だ」
確かに生み出したのは自分自身。
それゆえに彼のことは気にかかる。
こっそりとセレスティアに来たついでに陽だまり邸の外から確認する。
アルカディアの中にかつてできたアミューズメントパーク・セレスティア。
かの地はいまだに聖なる力が衰えていないこともあり、セレスティア内部においてはタナトスの被害はおこっていない。
ゆえに、人々は危険を冒してでも海をこえてかの地に移住しようとする。
だが、海は危険地帯。
無事にたどり着けるかどうかもわからない。
それでも、この地に住まう人々にとってある種の心の安らぎ処となっている。
「ねえ。ゼフィル様?あまり長居してたら気付かれるよ?」
ほぼ無理やりといっても過言でない。
つれてこられたのは。
それでもついてきたのは懐かしさから。
「あ。ああ。すまん。メル。ちょっと様子をみたくてな」
「ふふ。ゼフィル様って優しいよね」
「って、おまえなぁっ!」
思わず大声をだそうとしてあわてて口を閉じる。
ここで騒げばおそらく中にいる人々に気付かれる。
そしてまた周囲を警戒しつつ見回っている銀樹騎士団の面々にも。
「とにかく。聖地にもどろうぜ」
「うん」
どうやら彼等に任せておいても大丈夫そうである。
それゆえにリモージュからもらった水晶花を使いその場に扉を出現させる。
それは簡易的な次元回廊。
その扉をくぐり彼等が向かうのは、神獣の聖地。

アンジリェークたちは知らない。
常に二つの宇宙の人々が彼女たちを気にかけている、ということを。


                                -第54話へー

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あとがきもどき:
薫:ネオアンジェででてきたあの歌さん。そのうちに歌のみで販売されるかな?
  けっこういい歌だなぁ。とおもったり。
  一番いいのはDVDに特典として巻末付録についていたらなおよしv(笑
  しかし、前書きでもいったけど、ほんっとネオアンジェの世界のセレスティア…どうなってるんだろう?
  タナトス被害が出始めたころにすでにつぶれたかな?うにゅぅ???
  だって熱帯植物園とかいろいろとあったしねぇ…謎……
  ともあれ、次回でジェイドの目覚め、それからお話しの続きにいくのですv
  ではでは~♪

2008年6月3日(火)某日

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