まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

ようやく短編のアルカディア・メモリーの回に(汗
100話くらいになるかな?やっぱし
エレンフリートの表現がちと難しいな~。
彼はアニメ&小説をみてない人はわかりませんしね(汗

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銀花の園   ~財団からの依頼~

「ニクス。何をみてるんだ?」
数日前、ヴォードンの舞踏会会場でタナトス騒ぎがあったばかり。
やはりレインの予測どおり、財団側は装置は盗まれたもの、当方とは関係ない。
の一点張り。
だがしかし、どうやら教団側も彼等への不信感かぬぐいきれないらしくて定期的に監視することにしたらしい。
ここ数日異様にアンジェリーク達への贈り物が増えているのも多少気になるが、
それはおそらく日々オーブハンターとして人々の役にたっているのでそのお礼とアンジェリークは受け取っている。
真実は異なるのだが。
あの光景を目の当たりにした存在ならば確実に彼女がどのような存在かくらいは思い当たっても不思議ではない。
いまだに空にその証はかかっていないものの、それでも人というのもは希望にすがりたいもの。
「え?ああ。珍しいところからの依頼がきたもので…どうしたものかと……」
懲りないというか見境がないというか。
相手の思考が読み取れない。
オリヴィエは舞踏会の後、散々彼等への服を無理やりに彼等の部屋におしつけて本来の場所にと戻っていった。
「?どこからの依頼だ?」
珍しく依頼をみてうなっているニクスをみていやな予感がしつつもといかけるヒュウガ。
朝のサルーン。
毎朝ここで当日の依頼を振り分けてはそれぞれが行動する。
それがここ、陽だまり邸の人々の日々の日課になっている今現在。
この間、花の畑の村フルールにニクスとともに依頼で出向いたところ村人から花の種をもらい、
その種をニクスとともに花壇に植えたばかり。
花の種類は百日草。
短期間で花がつき、さらに切花などにしてもかなり持つ。
様々な色合いがあり花壇に咲き乱れればそれはそれは見ごたえがある花の一つではある。
毎朝、花壇の手入れをするのがアンジェリークとニクスの日課となっている今現在。
とはいえあまり手をいれすぎてもダメなので土の様子をみては水遣り具合を加減する、といった程度。
「それが、財団からなんですよ」
「…何だと?」
「やつら…いったい……」
一枚の手紙を見つつため息まじりにこたえるニクスに険しい表情でいうヒュウガに、
思わずガタン、と席を立ち上がりながらもこれまた険しい表情でいっているレイン。
ついこの間の疑惑もまだ晴れていないというのに、この状態で依頼をしてくるなど。
彼等の気がしれない。
いや、そうすることで自分たちは無関係、そういいたいのかもしれないが。
「それで?彼等は何ていってきたんだい?」
もしかしたらここに自分がいることが彼等に気付かれた可能性もある。
そうなれば自分は彼等に迷惑をかけないようにここから立ち去るしかない。
そう思いながらもといかけているジェイド。
ファリアンであれだけ自分を見つけて探していた彼等である。
その可能性は否めない。
「何でも彼等が所有するアーティファクトの中にタナトスが多数いるのでそれを退治してほしい。
  そういう依頼ですね。何でも海底から発掘されたという船のアーティファクト、らしいですけど」
「船…もしかしてそれは、星の船、のことか?」
「星…何だい?それは?」
ニクスの言葉にヒュウガが反応し、きょとんと首をかしげてといかけるジェイド。
「どうやら彼等はそうみてるらしいですね」
「信じられない。本当に実在したのか?…まあ、あっても不思議じゃないが」
何しろそれを用いたという聖地から守護聖までもがやってきたのである。
ない、というほうが不思議ではある。
「?あ、あの。その星の船って?」
一瞬、子どものころにみた空に浮んだ大きな白い船のことを頭に浮かべる。
だけどあれはたしか彼女たちはアウローラ号とかいってたし。
そういえば、どうしてあの船、海でもないのに空に浮んでたのかしら?
私も小さかったから見間違えたのかしら?
そんなことを思いつつも問いかけているアンジェリーク。
見間違いでも何でもなく、実際に浮遊していたのだが。
まあ五歳のころの記憶、というものはどうしてもあいまいなもの。
それゆえに自信がもてなくても仕方がない。
「サキアの伝承にあるが。その星の船は星星の間をゆきかい、天空の護り人を導いたらしい」
「星星の間を…何だか素敵ですね」
先日みた星見の塔。
あの星空の中を船で駆け巡る。
とても何だか素敵なことと思える。
「しかし。依頼は依頼です。ですが先日のこともあります。
  ゆえにアンジリェーク。あなたはレイン君とヒュウガで依頼を受けにいってください」
「ニクス。本当に財団からの依頼をうけるのか?彼女の身に危険が及ぶかもしれないというのに」
そんなニクスに対して問いかけるヒュウガであるが。
「困っているのは事実のようですしね。かといってその船はファリアンの港に隣接しているらしいですし。
  いつ何どきその船の中からタナトスがでて街の人々を襲う、とも限りません」
たしかにニクスのいうとおり。
いつまでもタナトスが船の中にいる、という確証はない。
「ですから、の二人なのですよ。相手はあの財団です。どのような手を使ってくるか。
  とりあえず私はここで彼等が何をたくらんでいるのか情報収集に専念しようとおもいますしね。
  ジェイドにはまた配送の依頼があるのでそちらを担当してもらいますし」
確かに力関係の依頼ならば彼に頼むのが一番ベストではあるであろう。
配送関係の護衛の仕事。
タナトスがでるかどうかわからないが、万が一を考えての護衛。
「確かに。街にタナトスが解き放たれてからでは遅いですね。それに困っている人たちを助ける。
  それが私たちの役目だとおもいますし。その依頼、喜んでおうけします」
ふっ。
相手に対して警戒することなく、困っているのならばほうっておけない。
その慈愛にみちた優しさはときとして命にもかかわる結果となりえる。
だが、その優しさがアンジェリークの人柄というもの。
たとえそれがどんな存在であっても彼女はその慈愛の心にて手を差し伸べるであろう。
だからこそ彼女の台詞をきき、ふっと笑みをうかべるヒュウガとニクス。
レインからすれば苦笑するしかないものの、アンジェリークは言い出したら聞かない。
それは彼女と一緒に行動をし始めてよくよく身に染みている。
「あなたならそういうとおもいましたよ。さ。とりあえず今日の朝食を食べてしまいましょう」
サルーンにて五人と一匹で朝食をとる。
それはもはや毎日の光景と化している。
小さな食卓を囲んでの食事。
そこにはまるで家族のような暖かなつながりが確かにある。
依頼を出してきたからには相手が何らかの思惑があることは明白。
だからといって時間を与えれば与えるほど相手に付け入る隙を与えてしまう。
こういうものはさくっと終わらせて相手に隙をみせないほうがいい。
ニクスの思惑は確かに的を得ている。
時間がたてばたつほどに相手に準備する時間を与える結果にもなるのだから。

ざわざわざわ。
「すごい人」
思わずその人ごみに驚きの声をだす。
先日の舞踏会のときよりもたくさんの人の姿。
ここまで多くの人ごみ、というものをアンジェリークはいまだに見たことがない。
「って、アンジェ!?」
ふと聞きなれた声がしてそちらを振り向けば、そこに一人の男性が驚愕の表情を浮かべてたっている。
「あ、ベルお兄さん!」
その姿をみてぱっと瞳を輝かすアンジェリークに、
「何だ。ベルナールじゃないか。どうしてここに?」
そんな彼にと問いかけているレイン。
そこにいたのはヴォードン・タイムズの記者でもあり、アンジリェークの親戚でもあるベルナール。
そして。
「あれ?あんたたち…まさか財団に呼ばれたのか?…というか、大丈夫なのか?レイン博士?」
そんな彼の横に紫色の髪をした何やら見慣れた少年が一人。
「あ。ロシュさん。こんにちわ。お元気でしたか?」
そんな彼ににっこりと微笑みかけているアンジェリークではあるが。
ベルナールとロシュ。
この二人とは彼等は面識があるがゆえにさほど驚かない。
「というか、まさかアンジェ。本当に財団からの依頼、なのか?
  君は彼等とかかわらないほうがいい。絶対に」
がしっとアンジェリークの肩をつかみ、力説しているベルナール。
先日、財団が舞踏会会場でタナトスをおびき寄せた可能性がある。
その情報はすでにベルナールの元にも届いている。
記事にしようにも、記事にしたら彼等は名誉棄損で訴える、といってきている以上、記事にはできない。
何よりもヴォードン・タイムズは確定された真実のみを伝える新聞なのだから。
「でも、困っているのは事実なんでしょう?ベルお兄さん、私は困っている人たちはどんな人たちでも助けたいの」
それはアンジリェークの本音。
それがたとえどんな悪事を働いていたであろう人でも彼女は迷わずに救いの手を差し伸べるであろう。
「それはそうと。なぜに情報屋と新聞記者がこんなところに?」
ヒュウガの疑問は至極もっとも。
「ああ。それなんだけど。今まで危険だから、と近づくことすら禁止されていた、財団が発掘したアーティファクト。
  それのお披露目がなされる、というので関係者や興味深深の人たちがあつまってきてるんだよ。
  何でも内部にいるタナトスをどうにかするめぼしがついたとか、で」
そこまでいい、はっとなり。
「…まさか、彼等は君たちに浄化の依頼をしてきたのか?」
とある可能性に思い当たり、はっとしながらもつぶやくベルナール。
「ああ。そのまさか。だ。何か裏があるのはわかってはいるが。こちらもやつらのいいようにされる気はない。
  だからこそ一応万全を期して二人体制できたんだがな」
ニクスは海の音をきくと発作がでる確率がある。
かといってジェイドが彼等に関わるということはそれこそアンジリェークにかかる危険性が増す。
ニクスの判断はあながちそれゆえに間違ってはいないのであろう。
「そう。だけどアンジェ。本当に無理は禁物だよ?いいね?」
「もう。ベルお兄さん、私なら大丈夫よ。頼れる仲間だっているんですもの。ね、レイン、ヒュウガさん」
心配そうなベルナールの言葉ににっこりと微笑みそこにいるレインとヒュウガに同意を促すアンジェリーク。
「いわれなくても、彼女はこの身に変えても絶対にお護りするので安心してほしい」
「できたらあんたたちも財団の動きに気をつけてくれてたら助かるけどな。
  俺たちがタナトスを退治している間にやつらが何をしでかすかわからない。
  下手をするとやつらのことだ。わざとタナトスを街中に解き放って何かしでかさないとも限らない」
ヒュウガがさも当たり前、とばかりにきっぱりと言い切り。
そしてまた、レインは様々な可能性を視野にいれて二人にと語りかける。
「レインったら。いくら何でもそんなことはしないわよ」
人を疑うことをしないアンジリェークだからこそのその言葉。
だがしかし、レインは彼等のやり方を身にしみてわかっている。
だからこそ不安はぬぐえ切れない。
「ふっ。あなたらしいな」
「お前らしいといえばお前らしいけど」
そんなアンジリェークの言葉に軽く笑みを浮かべてつぶやくヒュウガにあきれるようにいっているレイン。
そしてまた、
「あんた、この俺がいうのも本当に何だけど、少しは人を疑ってかかったほうがいいぜ?」
至極もっともなロシュの意見。
「でも確かに。レイン博士のいうことも一理ある。
  ロシュ。とりあえず手分けして財団が何か仕掛けてないか周囲を探索してみないか?
  何かあればそれこそスクープ間違いなしだし」
「たしかに。もし何か奴等がたくらんでいたりしたらそれこそ大スクープだな。
  もしかしたらいまだにつかみきれない人体実験の有無もわかるかもしれないしな」
ぴくっ。
人体実験、という言葉に思わずぴくりと反応し、ぎゅっと胸のあたりをつかむヒュウガ。
そこには常に懐にいれている大切な友人の遺品ともいえる品が入っている。
もし、もしも彼から出たあの意味不明な装置が財団がもたらしたものだとすれば、それは……
「奴等はやばい情報はどんなことがあってもひた隠しにしたがるだろうからな。
  実際、俺が飛び出したのも理不尽な実験を強行しようとしたあいつに反発したのもあるし」
「とりあえず、依頼主さんがまっているでしょうし。そろそろいきませんか?二人とも?」
何やら話しが別方向にずれてきているようなきがする。
それゆえににっこりと、レインとヒュウガをみていっているアンジリェーク。
たしかにここで長話をしている暇があれば、さくっと用事を済ませたほうが彼等にも時間を与えなくてすむ。
「あ。ああ、それもそうだな」
「では、二人とも、この場では悪いが失礼する」
交互にいうレインとヒュウガの言葉に、
「なら、僕たちもこの周辺を捜索してみるよ。何か嫌な予感もするしね」
つい先日の舞踏会での一件のこともある。
ここまで人があつまってきている中でタナトスを呼び寄せたりでもしたらそれこそ大惨事。
財団のことだからもしアンジリェークの力を聞きかじり、その能力を確認するためだけにそのようなことをしでかす。
とも限らない。
「俺は下町や裏路地のほうをみてみるわ」
そんな会話をかわしつつ、それぞれ互いに別々な方向へと歩き出してゆく。

アーティファクト財団。
古代の遺産であるアーティファクトを発掘し、またそれに似たものを開発しそのテクノロジーを使って世界を平和に導く。
そう表向きには公言している。
だがしかし、彼等がいまおこなっていることは平和とはある意味かけ離れたもの。
それはつまり、犠牲をともなう平和、なのだから。
商業都市ファリアン。
その一角にあるアーティファクト財団の本部。
そしてまた財団が保有している港の一角。
そこに山のような人だかりができている。
そんな彼等の目の前には巨大な船が一隻。
といっても長い間海底にあったことを物語るように船体には様々なものがくっついており、
年月をとても感じさせる廃船のような趣をかもし出している。
「ようこそ。レイン博士、あなたが来てくださるとは」
あまりの人の多さに周囲をきょろきょろとしているとそんなアンジリェークたちに声をかけてくる少年が一人。
「その呼び方はよせ。エレン」
「そちらこそ、その呼び方はやめていただきたいものだ。遠路はるばるおこしくだって感謝します。
  私は今回のプロジェクトの責任者のエレンフリートです」
どうみてもまだ十四かそこらにしかみえない薄赤髪のめがねを掛けた少年がそういってくる。
どこか雰囲気がとげとげしく感じるのはおそらく気のせいではないであろう。
それを敏感にヒュウガは感じるものの、アンジェリークは悪いほうにはうけとっておらず、
ただ役目を果たすためにそういう物言いをしているんでしょうね。
そう解釈していたりするのが何とも彼女らしい。
「ああ。そうそう。レイン博士。先にいっておきますけど消すのはタナトスだけにしてくださいね。
  前みたいなことをされても困りますからね。レイン博士」
何やら含んだ言い方をする少年ではあるが、その物言いがどこか嫌な感じをうける。
「まだ若いながら責任者、というのは認めよう。だが年上に対する礼儀はおまえのほうはどうなのだ?
  我々は財団の依頼をうけてタナトスを退治にきたもの。用件を聞こう」
完全にレインに対してどこかとげとげしくもけんか腰のような口調の彼。
そんな彼をたしなめるようにエレンフリートにと問いかけるヒュウガ。
むすっ。
ヒュウガの言葉にあからさまにむすっとしつつも、
「そういえば用件を言い忘れていましたね。今回の依頼はそこの星の船の中にいるタナトスの浄化です。
  我々財団の力をもってしても消すことは可能なのですが、多少思うところがありましてね」
そもそも、彼等の浄化の仕方ならば星の船ごと壊しかねない。
そして何よりも珍しい女性の浄化能力者のデータとレインが手にいれた浄化能力の数値のデータが測れない。
「財団はたしか浄化能力をもたないものでもタナトスを浄化する能力を得ることに成功した。
  といぜん風の噂できいたことがあるが?お前たち財団ではタナトスを浄化できないのか?」
ヒュウガの疑問は至極もっとも。
「なっ!我々の力をもってすればタナトスくらい!と、とにかくあなたたちは依頼をこなしてくれればいいのですっ!」
何やらこのままほうっておけば言い争いになりそうな気配がひしひしとする。
「でも、これが星の船、なんですか?ずいぶん長い間海底にあったんですね」
それゆえに、さりげなく話題を変えるアンジェリーク。
「サキアの沖合いから発掘した、のか。財団が」
「ええ。我々が海底から発掘いたしました。古代のアーティファクト、星の船、です」
でも、この船のへさきの紋様とか…どこかでみたことあるような?
その船をみつつもそんなことをおもうアンジェリーク。
「星の船はその昔。天空、つまり星星の世界を航行するために創造られた、といわれています」
「それは我が故郷のサキアでも言い伝えられている。それで、問題のタナトスはこの船のどこに?」
「さあ。我々としてはタナトスがいる、とわかった時点でこの船を封鎖してましたから」
中にはいっていた調査員もろとも入り口を閉じた。
財団員の生死など彼、エレンフリートにとってはどうでもいいこと。
変えのきく手ごま。
そういう認識しか彼の中にはない。
「とにかく、中にはいってみましょう。いつ外にタナトスがでてくるかもわかりませんし」
アンジリェークの心配は至極もっとも。
タナトスには物理的な壁などまったく無意味なのだから。
それゆえに、エレンフリートとの会話をそこそこに、星の船にと立ち入る三人の姿が、
ここ、ファリアンの港の一角にてみうけられてゆく。


                                -第49話へー

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あとがきもどき:
薫:さてさて。ようやく星の船だ~~!!
  これから話が一気に展開・・・していけばいいなぁ(笑
  まあ、このイベントは短編でそれとなく触れてますけどね(苦笑
  あと短編で言葉を濁していた未来の彼女からのメッセージをもv(こらこら
  何はともあれ、次回、船の内部、ですv
  ではまた~♪

2008年5月29日(木)某日

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