まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

今回、あれだけひっぱったわりに、さくっと舞踏会のシーンは完了しております。
読み手がそれぞれに想像してくださいv(他人任せ
何はともあれ、いっきますv
ではでは~♪

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銀花の園   ~舞踏会にて…~

ざわっ。
「?えっと。もしかして私、浮いてる?」
こそっと横にいるハンナにと耳打ちしているアンジェリーク。
ニクスとアンジェリーク。
そしてレインたちとハンナ達。
彼等八人がほぼ同時に会場に入ると同時に会場内が一瞬静まり返り、次の瞬間ざわめきたつ。
約一名、ものすごく目立ちまくる人物がいるから仕方ないにしても、やはり注目されているのは事実。
「アンジェ。こんなので気後れしてどうするのよ?」
「で、でも……」
ハンナは確かにこういった場には慣れてるかもしれないけど、私は始めてなのよ?
そんなことを思いつつも、こちらに視線をむけてくる人々に軽く笑みを浮かべるしかできないアンジェリーク。
と。
「ヒュウガ?ヒュウガじゃないか。こんなところで会うなんて奇遇だな。
  それに、これはアンジリェーク様、お久しぶりでごさいます」
何やら騎士団の制服に身をつつんだ男性が近づきながらも声をかけてくる。
「って、あ。ディオンさん。お久しぶりです。ディオンさんたちもこの舞踏会にこられてたんですか?」
とりあえず軽くドレスのすそをつかみ軽く頭をさげて目の前にやってきた彼にと話しかける。
ディオンからすればアンジリェークの姿はまさに絵から抜け出したとしか思えない姿にしか見えない。
ゆえに一瞬驚愕したものの、すぐさまに我にと戻りその背後にヒュウガの姿をみて声をかけたに他ならない。
「社債者の意向で。何でもこの舞踏会を無事に執り行うための処置として派遣されたんですけどね」
言外にタナトスが出る占いがでたので護衛をかねて参加してほしい。
そう教団に話があったことを含ませて応えるディオン。
そしてまた、
「しかし。お前のその姿もだが、かなりにあってるな。その服、どうしたんだ?
  お前はそんな堅苦しい服は苦手だったはずだが。借りたにしては似合いすぎてるしな」
ぐるりと全員を見渡せば、それぞれの個性にあわせてものの見事にコーディネイトされている。
ニクスやレイン、そしてヒュウガにジェイド。
そんな彼等が周囲にいることでアンジェリークの姿がよりいっそう引き立っている。
それはまさに姫を護衛するナイトのごとくに。
「ああ。それは私がコーディネイトしたからねぇ。私はオリヴィエ。あんたがディオンだね。
  噂はかねがね。今後ともよろしく♡」
そんなディオンに横からにっこり微笑み話しかけているオリヴィエ。
一瞬彼の周囲にほのかな淡い桃色の光が見えたような気がしなくもないが、しばし目をばちくりし、
「…えっと。男性…のかた…ですか?はじめまして。私はディオン。銀樹騎士団長をしております」
「知ってるよ。まあ直接に会うのは初めてだけどね~♡しかしあんたも磨きがいがありそうだよね♡」
「え?あ、あの?」
そんなオリヴィエの言葉に戸惑うしかない。
そもそもこのような人物は見たことがない。
ここまで美青年でしかも何やら不思議な感覚をうける人物ならば噂にくらいのぼりそうであるが。
「オリヴィエ様。だれかれかまわずにいまだに着飾る癖、そのままなんですか?」
「何いってるのよ。ジェイド。美しさは基本だよ?!
  それは老若男女問わず!おしゃれ心は人を豊かにもするんだよ?」
ジェイドの問いにきっぱりと言い切るオリヴィエ。
彼らしい、といえばそれまでなのであろうが。
この場には彼をよく知るものはジェイドくらいしかいない。
彼とて完全に思い出しているわけではない。
思い出したのは昔、彼に散々おもちゃ…もとい着せ替え人形のごとくに扱われた、ということくらい。
「しかし。なぜこの主催者は危険かもしれないのに無理に強行したんだ?」
レインの疑問は至極もっとも。
「まあ、上の人の考えは私にはわかりかねますけどね」
そんなレインの至極もっともな疑問に首をすくめながらも答えているニクス。
と。
「あ、お爺様!」
ふとハンナがとある方向をみてそちらのほうにと駆け出して行く。
みればそこには男性に支えられている七十代くらいであろう男性が一人。
「おお。ハンナ。お前ももうきていたのだな。…ああ、やはりときが戻ったようだ。
  医者に無理をいってでも来た甲斐があったというのも。
  ニクス君。私の名前はオーギュスト。君の祖父の古い知り合いだよ。
  君をみていると若きころの親友が弾いてくれたピアノの音を思い出す。
  ほんとうに若き日の彼に君は瓜二つ、だね。きてよかった」
そんな彼をみて一瞬寂しそうな表情を浮かべるものの、
「きっと、亡き祖父がきけば喜んだとおもいます。ムッシュ」
いいつつ軽く頭をさげるニクスの姿。
そんな彼をみて一瞬わが身に置き換えてもいえるので一瞬こちらも寂しそうな表情をするオリヴィエ。
彼はニクスの気持ちがよくわかる。
時に置き去りにされているのは何も彼だけではないのだから。
自分たちはまだいい。
聖地、という場所で外界から隔てられてかかわりをほとんど絶っている状態。
だが、彼はたった一人でこの地、アルカディアにおいて……
「こちら、ハンナのお爺様?はじめまして。私はアンジェリークといいます。
  お孫さんにはいつもとてもよくしてもらって大変助かっています」
そんな彼にとぺこりと頭を下げて挨拶をするアンジェリーク。
「あなたは…そうですか。あなたが孫がよくいっていたアンジェリークさん、ですか。しかし…そのお姿は……」
「これですか?やっぱり初めてドレス着たからおかしいですかね?」
オーギュスト、と名乗った人物が驚いたのはそこではない。
だがしかし、アンジリェークからすれば初めてのドレス。
それゆえに何か着こなしがおかしいのではないか、と気が気ではない。
「あ、もし具合とかわるくなったらいってくださいね。
  これでも医者の卵なので応急処置とかならできますから」
ハンナから聞いて彼があまり体調が望ましくないことは知っている。
だからこそ心配して声をかけているアンジリェーク。
「私は今日の目的は達せられましたし。おとなしくみていますよ」
「…それより、ヒュウガ。それとディオン、とかいったな。…何であいつがここにきてるんだ?」
こっそりと何やら話している二人にと耳打ちするかのように視線をとある場所にとむけて言っているレイン。
こういった場所に彼女がくる、などとは思えない。
あるとすれば何か目的があって、としか。
「?どなたのことですか?」
「あいつだ。あそこの女性。あれは…間違いない。財団のガーネット、だ。
  あいつがこんな場所にくるなんてまずありえない、とおもうんだが……」
彼女は主に研究などが主体のはず。
こういった場に率先してでてくるタイプでは絶対にない。
あるとすれば何らかのたくらみがある、とみてまず間違いない。
「財団?もしかしてそれはアーティファクト財団のことですか?
  おかしいてすね。この舞踏会には彼等は一人も招待されてないはずなのですが……」
招待されていなくても入り込むことはいくらでも可能。
そもそも男性の連れを装えば係りのものもまず怪しまない。
何かあったときのために一応招待客の全ては銀樹騎士団にと伝えられている。
一応招待客の中に怪しいような人物は見受けられていない。
「念の為に確認したほうがいいんじゃないのか?ディオン?」
気付けばいつのまにかニクスの周囲、そしてまたアンジェリークの周囲には人だかりができている。
ニクスに対しては人々は賞賛し、また尊敬の念を口にして言葉に出しているのが見て取れる。
アンジェリークのほうにたかっている人々は彼女自身がよくなぜ周囲に人が集まってきたのか理解していない。
人々は初めてみる彼女がどこの貴族のお嬢様なのか興味津々。
ぱっとみため、普通のつい先日まで学生だった女の子だとは格好からしても誰も思わない。
否、まずその可能性に思い当たるものはまずいない。
「はいはい。みなさん、彼女が困ってますから」
そんな人々を上手に裁いているサリー。
あるいみ、彼女は世話焼き気質。
それゆえにこういったときの対処もなれたもの。
そんなアンジリェークたちの様子をちらりと見つつも、
「たしかに。確認はしておいたほうがいいかもな」
ヒュウガの言葉に促され、レインが示した方向にむけて歩いてゆくディオンの姿。
そんなディオンの後に続きレインもまた歩いてゆく。
何かたくらんでいるのならばそれを聞き出さないと悲劇が生まれかねない。
もし、あの占い結果と、彼女が関係している、とすれば、それは……
何やら人目を避けるかのように少しばかり離れた場所にと移動し、ごそごそと懐から取り出すその女性。
そしてこっそりと周囲を確認したのちにテーブルのしたに何かを隠す。
それとほぼ同時。
キュィィィ~……
何か金属音のようなそうでないような、か細い音が会場内に響き渡る。
だがそれは会場内のざわめきによってすかさずかき消される。
だがしかし、その音をききはっとなるヒュウガにレイン、そして銀樹騎士団の面々たち。
彼等はその音というか声には覚えがある。
ありえないはずの声。
「なぜこんなところで!?」
思わずヒュウガが叫ぶのとほぼ同時。
「…来ます!」
ふと天井付近の紋様が一瞬ぐにゃりとゆがんだのを確認し思わず叫ぶニクスの姿。
「な!?どうして!?」
占いどおり、とはいうものの、だがしかし同時に三体も現れるなど。
出入り口付近に一体、そして天井付近に一体。
さらには非常入り口付近に一体。
つまり全てで入り口がふさがれた格好で出現する何かの銃口らしきものが多数についている胴色の物体達。
出入り口にはその胴色の銃口らしきものをもっているタナトスが浮んでおり人々は外にでることは不可能。
そして天井付近に浮ぶのは金色の光の球体のような物体が一つ。
それをみて思わず叫ぶアンジリェークではあるが。
「みなさん、パニックにならずにおちついてください!
  この場には銀樹騎士団の方々もいますから、彼等の指示に従ってください!」
すかさずすぐに自分がすべきことに思い当たり、おもいっきり叫ぶアンジリェーク。
人々がパニックになる前に彼女が叫んだことにより、人々が完全にパニック状態に陥るのは何とか避けられる。
あまりの出来事に直面すると人は一瞬何も考えられなくなる。
そしてその後、パニックに陥り、そのパニックは連鎖をうみさらなる悲劇をもたらすことがある。
それゆえにアンジリェークが叫んだのはかなり効率のよいやり方。
確かにこの場にはタナトスに対抗できる人々が滞在しているのだから。
下手にパニックになり右往左往することによりより被害が拡大する、とも限らない。
だがしかし、次の瞬間。
ドンッ!
出入り口をふさいでいるタナトスからいきなり攻撃が繰り出される。
銃口のような口から触手のようなものが伸び、それらは無数に広がり近くにいた人々を絡めとる。
「なぜアームスがこんなところに!?」
他の銀樹騎士団員がそんなことを何やら叫んでいるが。
だがしかし、この場にいた招待客がタナトスに襲われた、というまぎれもない現実は瞬く間に人々をパニックにと陥らせる。
アームス。
それは今、出入り口付近をふさいでいるタナトスの名称。
「…何かが彼等を呼び寄せてる…あそこだっ!」
人々の悲鳴と叫びにかき消されて確かに聞こえにくいが、いまだにか細い何かは音を出し続けている。
それがタナトスを呼び寄せている。
そう直感し、声がしてくるほうにとだっと駆け出すジェイド。
そしてまた。
「ディオン!タナトスは俺たちにまかせて、貴様たちは人々の誘導を!」
「わかった!」
確かにこのままでは人々が危険極まりない。
「っ!オーギュスト!!」
ふとみれば、いきなりのパニックに心臓が驚いたらしく発作を起こしているオーギュストの姿が目にはいる。
「お爺様!?」
そんな彼の元にかけよるハンナに、そしてまたそんな彼をみて叫んでいるニクスの姿。
いけない、このままじゃぁ、会場にいる全ての人たちが……
「護りの力よ、タナトスの脅威から人々を護って――」
この場にいる全ての人たちを助けたい。
だからこそ自然腕をくみ祈りをささげるアンジリェーク。
そのせつな、アンジリェークの体から淡い光りが発せられ、その光はその場にいる人々全員を包み込んでゆく。
「っと、ちょいまった」
そんな中、騒ぎにまぎれ窓から抜け出ようとしている女性が一人。
そんな彼女の手をしっかりとつかみ、脱出を引き止めるオリヴィエ。
「な、何です…あ、あなたは!?」
一瞬、オリヴィエの容姿に思わず見惚れるものの、すぐさまに自分の役目を思い出しはっとして叫ぶガーネット。
「あんた、自分が何したかわかってるの?」
そう。
全ての発端は彼女が仕込んだあの装置ゆえ。
「何のことかしら?」
「ガーネット!やっぱりお前か、いったい何をした!?」
そんな彼女のもとに駆け寄り思わず叫んでいるレイン。
彼女が抜け出そうとしたのは彼女があるものを仕込んだテーブルのすぐ傍にとある窓。
「レイン!こんなものがテーブルの下に…っ!」
そこには何かの機械らしきものが置かれており、そこから常にある声が流れ出すような仕組みとなっている。
そして、その声は……
「っ!かせっ!」
おそらく素人にはその扱い方はまだ普及していないはず。
財団内部でしかいまだに試作品として出回っていないはずの品。
下手にいじれば音量がさらにおおきくなり被害はより拡大する。
それゆえにすばやく装置を停止させるべく策をとる。
「ガーネット、貴様!」
レインの怒りに満ちた声。
だがしかし。
「ちっ。会場内での作戦は失敗、後は待機しているものたちにまかせるっ!」
そういうと同時、だっと手をふりほどき、窓から飛び降りるガーネット。
確かにこの会場は一階なので飛び降りるのは問題ではない。
ないが…
「みて!」
「おおっ!」
ガーネットが飛び降りるとほぼ同時。
ふとみれば、ニクスとヒュウガ、
そしてまた銀樹騎士団たちがダメージを与えたタナトスが光となりて消えてゆく様子が見て取れる。
それはすなわち、アンジリェークが浄化の力においてタナトスを完全に浄化した、という証。
光につつまれ、白き翼を生やした少女の祈りとともに光と化してゆくタナトス。
この場には貴族等も多々と招待客として出向いてきている。
そんな中での浄化。
貴族の中にはほとんどといっていいほどに、伝説の女王の絵姿を一度は見たことがあるものがほとんど。
そしてその様子はガーネットがあらかじめ仕掛けておいた記憶球にとしっかりと記憶されていたりする。
だが、タナトスの騒動にかかりっきりの人々はその装置の存在に気付かない。
アーティファクト財団に所属するガーネットの役目。
それは会場の中にタナトスを出現させ、それらのデータをとること。
そしてできうれば銀樹騎士団たちの浄化能力のデータを得ること。
彼等にとって人々の犠牲は関係ない。
大事の前の犠牲はつきもの、という考えのもとに行われた危険極まりないデータ採集。
やがてタナトスが完全に消え去るのと同時、きらきらとした金色の光の粒が会場内に降り注ぐ。
その光をうけてタナトスの攻撃をうけて倒れていた人々が一斉に目をさます。
奇跡の瞬間を目の当たりにし、思わずその場にて祈りをささげる存在の姿も垣間見える。
ふとゆっくりと瞳を開き周囲を確認する。
タナトスが完全に消えているのをみてほっとする。
するものの、
「?どうしたの?」
横で思わず呆然としているサリーにと話しかけるアンジリェーク。
彼女の浄化能力を目の当たりにするのは何も初めてではない、とはいうものの。
それでもやはり目の当たりにするとどうしてもぼ~と見惚れてしまうのは仕方ないのかもしれない。
浄化を行っているときのアンジェリークはそれこそ近寄りがたいほどに神聖な姿をしているのだから。
「え。あ。何でもないわ。それより、アンジェ。平気?」
「え、ええ。…?みなさんどうかしたのかしら?」
ふと気付けば会場にいた人々が全員遠巻きにして自分をみているような気がする。
それゆえに首をかしげさるをえないアンジリェーク。
「あ、ありがとうございます!あ、あの、あなたは…?」
恋人がタナトスに襲われ倒れていた。
それなのに今の力で救われた。
それゆえにいまだに呆然としている人々とはうってかわりはっと我にともどり、
アンジリェークに御礼の言葉を述べている一人の男性。
「私はただのオーブハンターです。みなさんがご無事でよかったわ」
ただの、ではないとおもうけど。
アンジリェークの台詞に思わず内心そうつっこむものの、だがしかし。
「そういえば、ハンナのお爺様は?」
「あ、そういえば、すいません。病人が心配なので」
お礼をいってきた相手に丁寧に頭を下げて断りをいれ、ぱたぱたとハンナとオーギュストの元にとむかってゆく。


「…しかし、これは由々しき問題ですっ!」
ばんっ!
思わず机をたたきながらも抗議の声を上げる主催者側。
それはそうであろう。
舞踏会会場にタナトスが現れた、それだけでも由々しき事態なのに。
それが人の手によってもたらされた、と知ればなおさらに。
「しかし、財団の連中は何を……」
そういいかけ、はっとする。
「誰か、すぐに会場の中をてっていてきに調べてくれ。やつらのことだ。
  もしかしたらデータ採取のためだけにこんな手のこんだことをした可能性もある」
レインの情報でその機械がいまだに市販されていない財団内部でしか扱われていない。
というのがわかった。
しかもその中にはタナトスが浄化能力者に倒されたときの断末魔が録音されているらしい。
それゆえにその声をきいて仲間のタナトスが会場内にいきなり出現した、という仕組み。
いまだに人々がごったかえしている会場内ですでにその装置は持ち去られた可能性は少なくない。
それでも、万が一彼等の手にアンジリェークがタナトスを浄化するこうけいが映った品が渡るとなると。
その危険性は計り知れないものかある。
今、この場にいるのはレインとヒュウガ、そしてディオンの三人。
ニクスはオリヴィエとともに会場内にとのこり、ひとびとの混乱を沈めている。
そしてまたアンジリェークはといえば、発作をおこしたハンナの祖父、オーギュストが心配、
というのもあり、ジェイドやハンナとサリーとともに一度オーギュストの家にとむかっている。
今の彼には何よりも安静が必要であるがゆえ。
ジェイドがひょいっとオーギュストを横抱きに抱きかかえ馬車にと運び、
その後からハンナ達もまたその後をついていったのだが。
この会場内にアンジリェークが残らなかったのはあるいみ不幸中の幸い、といえるであろう。
おそらく彼女一人が残ったとしてもひとびとは彼女の姿から確実にあることを連想するのは明白。
つまりそれは…古より伝わる女王の卵がついに降臨した…と。
「レイン?」
「…財団のやりそうなことだ。あいつらは目的のためなら手段を選ばない。
  ……それは昔も今もかわってない……」
レインの指示に首をかしげつつもといかけるヒュウガに対しつぶやくようにこたえるレイン。
そう。
何もかわっていないのだ。
人に害をなす結果をうむ、とわかっている装置を市販しようとしたあのときから。
「しかし、我々としても黙ってみてはいられません。財団に抗議の文書を送るように提言したいとおもいます」
「やつらのことだから、とぽけるにきまってる。その装置は盗まれたものだの何だのいってな」
たしかに、そういわれれば誰も手出しはできないであろう。
市販されていないにしろ、盗まれた、といえば第三者が使った可能性もでてくるのだから。
「アーティファクト財団、か。しかしあのコズの占い師から手紙がとどかなければ、
  このたびはかなりの大惨事になっていたはず。感謝いたします。オーブハンターの皆様。
  そして銀樹騎士団の方々」
あの場に浄化能力を持ち合わせた人々がいなければおそらく招待客は全てタナトスの餌食となっていたであろう。
しかも普通の招待客のみだとすれば銀樹騎士団の面々はごく一、二名。
それゆえに三体ものタナトスを一気に片付けることはまず不可能。
しかしこのたびは事前に手紙、という方法でもしかしたら危険性があるのかもしれない。
という予測のもとに不測の事態に備えた配備をしていたがゆえに被害は食い止められた、といっても過言ではない。
そしてまた、アンジェリーク、という予測外の存在の介入によって被害は完全になくなった、といえるであろう。

レインたちが主催者たちに呼ばれて別の部屋で話をしているそんな中。
「は~い。みなさん。こういうときはおちついて。はいっ♡」
くるくる。
ぱっ。
にこやかに全員を見渡せる位置の舞台にあがり、会場内の全員を見渡しながらも軽く手をたたく。
そしてその手をかるくくるくると回したかとおもうと、次の瞬間。
彼の手に今までもっていなかったはずの花束が出現する。
そんな彼のあまりのみごとな手際と、そして人目をしっかりと引くその容姿。
思わず人々が舞台の上のオリヴィエに注目したのをみてとり、
「みなさんに春が来ますように♡」
ふっ。
手にした花束にむけて軽く息を吹きかける。
それと同時、オリヴィエの手にした花束は一枚、一枚の花びらとなり、
会場いっぱいにと舞うように広がってゆく。
おもわずそんな神秘的な光景に目を奪われる人々の姿がその場にて見受けられてゆくのであった。


                                -第48話へー

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あとがきもどき:
薫:さてさて、さくっとすすんだ舞踏会の騒ぎ(こらこらこらっ!
  まああまりくわしくやっても意味がないような気もしなくも。
  何しろ漫画のほうできちんと表現されてるシーンでもありますしね(苦笑
  ちなみに、オリヴィエ様がやったお花の手品もどき。
  花自体が夢のサクリアで具現化されたものであり、ゆえに人々の不安を取り除く効果ありv
  きちんとエヴィルの許可を得ての行動ですよ(笑
  アンジリェークが知らない間に周囲の人たちが認識を広めて行く、というのがあるいみコンセプトv
  ゆえに証が空にかがやいたときにはほとんどの人々がすぐに誰かわかる、みたいな(まて
  何はともあれ、次回、さくっと時間をすすめてようやく星の船v
  ではでは~♪

2008年5月28日(水)某日

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