まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
さてさて。今回はオリヴィエ様、大暴露~(笑
ま、アンジリェークがその場にいないので内内の話、ということでv(こらこら
まあ、多少自覚を促しとかないと決意するにしても戸惑いどころはあるでしょうしね~。
というわけで今回は馬車内での会話のみ、ですv
ではではv
#####################################銀花の園 ~馬車の中で~
ガラガラガラ。
二台の馬車が街道をすすんでゆく。
リースから首都ヴォードンまでは馬車でほんの数刻。
一台はニクスが頼んでいた馬車でもう一台はオリヴィエが乗ってきた馬車。
「そういえば、ニクス様。今日は祖父もくるんですよ?」
「…え?」
アンジェリークとニクス、そしてハンナとヒュウガ、この四人で一台にのっている彼等達。
もう一台のほうにはサリーとレイン、そしてジェイドとオリヴィエが乗っているのだが。
「え?でもたしかハンナのお爺様って医者から絶対安静といわれてなかった?」
幾度かハンナから相談をうけて自宅でもできる簡単な応急処置砲。
そしてまた携帯式の鎮静剤など調合したことがあるがゆえに驚きながらもハンナの言葉に反応する。
「…オ~…いえ、あなたのお爺様が?」
つい名前を呼びそうになりあわてて言い直すニクス。
かつての親友には会いたくない。
それこそ年月に取り残された自分をいやでも自覚してしまうから。
そしてまた、もし本当のことに気付かれてかつての親友に怖がられるのが怖い。
「ええ。ニクス様。いつも舞踏会とかああいう場所には忙しくておでになられないでしょう?
このたびはニクス様もやってくる、ときいてどうしても、と祖父がいっていて。
ニクス様って若いころのニクス様のお爺様と瓜二つなんでしょう?だからどうしても、と」
そんなニクスににっこりと微笑みながらも話しかけているハンナ。
?
ニクスさん、どことなくさみしそう?
ハンナに話しかけられながらもその瞳がどこか寂しさを漂わせていることに気付いて首をかしげるアンジェリーク。
「あ。そうだ。ニクスさん。少し杖をかしてもらえませんか?」
ふと馬車に乗り込む前にオリヴィエから言われたことを思い出し、はっとしてニクスに話しかける。
「?アンジリェーク?それはかまいませんけど。どうかしたのですか?」
「いえ。さっき馬車に乗り込む前にあのオリヴィエさんからアンジェちゃんからの伝言、といって。
ニクスさんの発作の緩和になるかもしれない、ということを教えてもらったので」
それがどのようなことになるのかなんてわからない。
だけども何となくだがたしかにその方法は有効のような気がする。
多少首をかしげながらもアンジリェークにと杖を手渡すニクス。
それをうけて、ごそごそと小さな手提げ袋の中から一つの石を取り出す。
紫色に輝くそれ。
やっぱり日に日にそれぞれの石って輝きを増してきてるわよね。
なぜかしら?
その理由はアンジリェークにはわからない。
「アンジェ。それ何?ものすっごく綺麗な宝石じゃない」
まるで、そう希少価値が高いといわれているダイヤモンドのごとくに。
しかも大きさ的にかなりのもの。
おそらく市販で購入すれば数億以上の値がつくような品。
輝き具合からして人工的なものとは到底おもえない。
「えっとね。これは闇の護り石、と呼ばれるものらしいの。えっと……」
杖を片手に、そして闇の護り石を片手に。
祈りをささげればおのずと判る、とはいわれたが。
とにかく杖と石を一体に。
そう願えば答えはでるはず。
アンジェちゃんの伝言はよく意味がわからないけど、だけどもやってみる価値はある。
この闇の護り石から感じるのは闇夜がもたらす静寂と安らぎ。
確かに病気などになったときには一番大切なもの。
「闇の護り石よ。ニクスさんの助けとなりてその力にて護りつつんでくれますように――」
ぽうっ。
アンジェリークが瞳をつむり、祈りをささげると同時。
闇の護り石と、そしてニクスの杖の先端がほのかに光る。
ニクスの杖の先端にある丸い宝石のような部分。
淡い光とともに、その先端の宝石部分にゆっくりと護り石はふわりと浮き上がり、
そしてゆっくりとその宝石部分と融合し、次の瞬間には杖と石は一体となってゆく。
「こ、これは…」
かつてこの杖がつくられたときにすでにこの先端には護り石を据え置くことができるように。
そういう目的でも作られていた。
だからこそ一体化は可能。
それをみて思わず目を丸くするニクス。
それとともに、自身の中の聖なる闇の力が満ちてくるように感じられる。
そしてその闇の力を優しく包み込むようにして導く力を強く今まで以上にかんじとる。
「すご~い。アンジェ。今何したの?」
目の前で起こった不思議な現象。
それゆえに驚くと同時に純粋に感心せざるを得ないハンナ。
手を触れずに杖と石を一体と化した。
それはあるいみ技術的にはかなり高度な技術であろう。
それをアンジェリークは祈りだけで成し遂げた。
もっとも、彼女の力はその気になればそれだけでなく様々なものを創造し、
また星星や生命すら創造りだすことが可能な力。
当人にその自覚がないのとその力に完全に目覚めていないのでそれらの力は発揮されたことはないが。
ゆっくりとハンナにいわれて目を開けば、そこには杖と一体となっている護り石の姿が目にはいる。
そっと杖に触れると杖そのものにも闇の力が満ちているのが感じ取られる。
「はい。ニクスさん。ありがとうございました」
おそらくこの力があればニクスを癒し、護るであろう。
そう漠然と理解してニクスにと杖を手渡すアンジリェーク。
「…確かに、うけたまわります」
にっこりと微笑み両手で杖を差し出すアンジェリークとうやうやしくお辞儀をしながら受け取るニクス。
もしこれが馬車に乗っている状態、つまり座っている状態でなければあるいみおごそかな雰囲気であろう。
アンジェリークから杖を受け取ると同時に体に満ちてくる力。
それとともに体の中でくすぶっていた負の力の波動が一気に弱まりをみせやがて掻き消える。
いまだに負の力は完全ではない。
ゆえに完全なる聖なる力をも制して表にでてくることは不可能。
そんなとりとめのない会話をしつつも、馬車はヴォードン市内にと入ってゆく。
「…え?おまえ、神鳥の宇宙の女王にあったのか?」
あるいみ驚愕せざるを得ない。
伝説上ともいわれているこの地を慈しんだ女王たち。
「ええ。いきなり学園を尋ねてこられたときにはびっくりしましたけど。
でもアンジェのことに関してでしたから」
「まあ、彼女たちの気持ちもわからなくもないけどねぇ。うちの陛下はどうしても単独行動昔から多いからね~。
それで補佐官のロザリアがかなりやきもきしてるのも事実だけど♡」
さらっと何やらそんなサリーの言葉を肯定するかのように爆弾発言をしているオリヴィエ。
「しかし、あんたたちが住んでいる聖地、とはさっき時間が異なる、とかいってたけど。
それって事実なのか?あと聞きたいのは時空移動に関してのことなんだが……」
あの古文書の解読をしてゆく中で幾度かでてくる時空移動。
何かその言葉はおもいっきり不吉なもののように感じている。
だからこそ理由を知っているであろう彼…オリヴィエにと質問をぶつける。
「え?ああ。もしかしてめずらしくエルンストがこの地でなくしたとかいう機械でも発見された?
あれにはこの地の情報がいろいろとはいってたからねぇ。陛下は未来において必要となるから。
探す必要はない、とかいってたけど。なるほどね~。
ま、今この場にアルカディアの女王候補はいないわけだし。いくつかの質問になら答えられるわよ?」
まだ自分の力を自覚していない彼女に聞かせるわけにはいかない。
自身の力と、そして自分の運命は彼女自身が気付くものなのだから。
第三者からの言葉でその運命を強要するようなことになってはならない。
「?あの?エルンストさん。とは?」
そんなオリヴィエの言葉に首をかしげながらも質問しているサリー。
「え。ああ。今は神獣の宇宙の鋼の守護聖をしてるけどね。
彼は以前から神獣の宇宙誕生にかかわってたからねぇ。ちなみにこの地、アルカディア。
この地ももともとは神獣の宇宙に誕生していた台地なんだよ?
長いときをえて、浮遊大陸となり、そして遥かなる未来の神獣の宇宙から、その時代の女王。
女王ティエン・シーの力によって過去、つまり現代に大陸ごと移動してきた地。
何しろこの地に私たちの地にも伝わっている負の力の一部が大切な存在を封印してくれちゃっててね。
それで、より力に満ちていた女王たちに未来の女王は助けをもとめたんだけど。
ちなみに、この地に封じられていたのは未来における神獣の宇宙意思だけどね」
さらっと何やらとんでもなく爆弾発言をしているような気がするのは気のせいであろうか。
だがそう説明をうけてもサリーはただただ?マークをとばすのみ。
唯一のレインは表情をけわしくし、
「…負の力?」
「私たちの世界ではその力がみちている世界はナド・ラーガ。と呼ばれてたけどね。
以前にも私たちの世界でもそれが現れたこともあったのよ。ソリテア、という意思として。
遥かなる未来ではその残留思念というか思念の一部はラガとか言われてたみたいだけど。
そういえばこの地ではたしかなぜか言葉がまじりまくってエレボスとかいわれてるらしいけどね」
エレミアを負の力にて満たそうとする存在。
それゆえに誰ともなくエレミアを貶める存在。
といいだし、それがいつのまにかエレボス、という短い言葉に定着しているこのアルカディア。
「あのタナトスがただの端末にしか過ぎない、というのは研究の過程でわかってはいたが…」
一箇所。
天空にただ一箇所のみ常に固定されている時空の亀裂。
そこから常に感じるタナトスの負の気配。
そのこともすでに研究の過程でかつて判明していたレインだが、その研究成果は世間に出すことはなかった。
空に輝く星星の中にそんな箇所がある、といってもおそらく誰も信じるはずがない。
それゆえに発表を控えている。
「しかし。未来から…つまりタイムスリップ?」
「ん~。少し違うわね。宇宙をつかさどる女王陛下は常に時間を操る能力ももってるのよ。
だけどそれはかなりの力を必要とする。宇宙の時間を上手に操りながら、
それでいて宇宙空間の発展を促してゆく、それが女王の仕事の一部なわけ。
だけど陛下曰く、自分が納める時間軸の中ならばさほど力は使わないらしいけど、
それが別の時代の女王となればかなり話は違ってくるらしいわよ。
その必要となる力は膨大で、それこそ命にもかかわる。
まあ力が満ちていない存在がそれを行うとしたら、それこそ命の危険が伴うけど。
ちなみに力の使い方がよくわかっていない新米女王も危険らしいけどね」
それゆえに神獣の宇宙の女王の補佐をしながらも彼女を導いていた神鳥の宇宙の女王。
サリーの質問に淡々と答えるオリヴィエであるが。
そんな彼の言葉をきき、しばし黙り込んでしまうレイン。
「まあ、私たちにとってこの地は感慨深い地ではあるからね。
この地が未来からやってきて、私たちもこの地に呼ばれ、そしてこの地アルカディアを育んだ。
その結果、この地は小宇宙として安定し、そして今現在、その小宇宙という卵から新たに孵り、
新たな宇宙として成長を遂げようとしている。
守護聖になって二度も宇宙誕生に立ち会うなんてものすっごく貴重な体験だしね~」
さらっと守護聖、というオリヴィエの言葉にはっとし。
「そういえば。女王陛下にはそれに使える九人の守護聖という存在がいる、とのことですけど。
やはりあなたもその一人なんですか?」
肝心なことを聞いていなかったのを思いだし、オリヴィエにと問いかけるサリー。
「私のつかさどる力は自由と美しさを与える夢の力。夢のサクリア。
真実の夢の力は何事においても道しるべとなるもの。私たち守護聖もまた女王陛下と同じく、
外界のときの流れから置いていかれている存在。だけど、やりがいはあるよ?
自分の力で大切な人たちが暮らしていた世界、その人たちの子孫。
そんな彼等が住む世界を平和に導いてゆけるんだから」
そう。
守護聖の任がおわり、外界に戻れば自分たちを知るものは一人もいない。
数千、数万年以上という年月が外界ではすでに経過していることはざら。
そしてまた守護聖となるべくサクリアに目覚めたものはそれを断ることなどできはしない。
かつてオルヴィエもデザイナーとして世界的に成功する直前であったのにサクリアが目覚めてしまい、
そして守護聖になった、という経緯がある。
また、ゼフィルのようにいきなりある日とつぜんサクリアに目覚め翻弄されてしまう存在も時々いる。
「その女王と守護聖がいなかったらどうなるんだ?」
「まあ、時と場合によるでしょうね。この地は二人の女王陛下の加護もあることだし。
滅多として消滅なんてことにはならないでしょうけど。
普通なら宇宙意思の力がつきたところでまず宇宙空間ごと消滅、かな?
以前神獣の宇宙の女王が自身の力を補佐する守護聖がいないこともあり、
力つきてしまい倒れてしまった、という事例もあることだしね。
神獣の宇宙もまだ宇宙として誕生して間がないからね~。あ、でも今は平気だよ?
きちんと九つの力をつかさどる守護聖は誕生してるから」
消滅。
その言葉に思わず目を見開くレインとサリー。
「アレの願いは、全てを消滅させて無と同化して全てとなること。おそらくあの意思は全ての空間にいるんでしょうよ」
神鳥の宇宙にしろ、神獣の宇宙にしろ。
そして以前アンジリェーク・リモージュがいっていた、アリオスがいた空間にしろ。
その意思は広がっている。
いつ何どきすきがあればその意思は表にでてきて全てを無と化そうとする。
それは何もなければ誰も傷つかない。
そういう一人の少女のかつての思いが今もって続いている証。
「今はここの宇宙意志として目覚めた子が頑張ってるみたいだけどね~」
というか、傍に子猫としているのにはたまげたけどね。
心の中でそのことのみはつぶやき、ひらひらと手をふりつつも説明するオリヴィエ。
つまり、たった一人では宇宙全てを安定させてゆくことはまず難しい。
それくらいのことはレインでもわかる。
そして、日々タナトスが力をつけてきている今現在。
おそらく女王が誕生しないとなれば負の力は力をましてこの地を消滅に追いやろうとするのであろう。
一時、その力を押しのけたとしても、いつ何時また表にでてくるかわからない。
闇を封じるのは光のみ。
そしてまた、闇を生み出すのもまた光のみ。
その原理はレインとて博士とよばれていた存在。
理解はしている。
してはいるが……
「何で、それがあいつ、なんだ?」
「え~?でもこの地はかなり恵まれてるとおもうわよ?神獣の宇宙なんて無の空間からの創生だったしね。
この地はすでにこの地、アルカディアがある。ゆえにサクリアを司る人たちもすでに候補としている。
はじめから全て一人で世界を、宇宙を護ることにならないし。
宇宙の力が満ちたときにその意思とともに導く素質を持った子は必ず生まれるもの。
そううちの陛下はいっていたけどね」
神獣の宇宙のときなどに関しては宇宙意思が目覚めたと同時に女王の資質をもつものは誕生した。
「?すでにいるんですか?彼女がもし即位したときに力となるべき存在が?」
「目の前にもいるじゃない。レインは炎、そしてジェイドは緑、ヒュウガは鋼でニクスは闇。
あとベルナールが地でロシュが風、それでもってセレスティザムにいるルネって子が光。
レイン、あんただって自分の中の力が日に日に強くなってるのを感じているんじゃないの?」
さらっといわれて思わず無言になるしかないレイン。
確かに思い当たることは数多とある。
あるにはあるが……
「…?俺が緑?」
さらっといわれた言葉に驚いて自分を指差しながらもつぶやくジェイド。
鋼の体をもつ自分がなぜに緑?
という思いもある。
「そう。あんたの力は豊かさと命を育む力。あんたにはマルセルとセイランの力も込められてるからねぇ。
ちなみにレイン、あんたのは強さと熱さを伝える何ものにも変えがたい力。
あんたのその情熱もそのサクリアの属性からきているものもあるでしょうけど」
なごやかにさらっと何でもないようにいっているオリヴィエではあるが、ジェイドとしては驚くしかない。
自分が生まれた意味がまさかそのような意味をもっていたなどとは。
今の今まで知らなかった。
だけども、自分の体は鋼のものだ、という事実はかわらない。
「まあ、彼女が即位したときにあんたたちが守護聖として傍にいるかいないか、であの子の負担もかわってくるでしょうけどね。
サクリアを司るべき存在はそう滅多と生まれるものじゃない。
それにふさわしい魂の持ち主じゃなければね。それまで一人で全てを抱え込むことになるでしょうし」
「うっ……」
そういわれればある意味選択肢がない、といっても過言でない。
一時的にアレを蹴散らして安定した世界を取り戻したとしても、その間に宇宙意思が力つきれば世界は消滅する。
そしてまた、彼女が力に目覚め即位した場合は長き時を彼女は生きることになる。
全ての命を見守る、という重い枷をその背に背負い。
ある意味究極の選択、といえるであろう。
「ま、決めるのはあんたたちだけどね。私たちは神鳥の宇宙、そして神獣の宇宙から静かに見守るだけだよ」
そう。
決めるのはこの宇宙に住む彼等なのだから。
二台の馬車の中でそれぞれに異なる会話がなされつつも、
やがて二台の馬車はヴォードンにとある、劇場前にとたどり着いてゆく。
-第47話へー
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あとがきもどき:
薫:さてさて。このたびはあまりすすでいません。というのは自覚大有り。
とりあえず、レインに自覚を促すのを前提として。
あと、ニクスの負担を和らげる目的の会話をば。
まあ、ある程度の事情は一人くらいはしっておくのと知らないのとでは先が違いますからね。
レインとジェイドが真実を知る、というのは、消去法のようなもの。
レインは昔からの研究の過程である程度のこのアルカディアの歴史をしっていますし、
またジェイドからすれば神鳥、神獣の宇宙の女王、守護聖たちによって創造られた存在。
あとサリーが追加で真実を知ることになったのは、彼女たちには補佐官として任についてほしい。
というリモージュの願いもあってこそ(笑
ようやく次回で舞踏会v財団、教団でてきますよv
ではでは~♪
2008年5月27日(火)某日
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