まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

さてさて。前回から時間は少しばかり飛んでます(笑
とりあえず場面はすでに村にもどったところからv
あと、ライラの息子のルネのことも多少ふれてきますv
ルネとは当然、あの子のことですよ~♪
ゲームでは幼いながらに仮面に顔を隠した教団長v
何はともあれ、ゆくのですv

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銀花の園   ~聖母ライラ~

「ニクスの様子はどうだ?」
「ああ。だいぶおちついたみたいだ」
昼間、ニクスが雷鳴の丘にとある花畑で倒れてからかなりの時間がすでに経過している。
ジェイドがライラとともにかけつけたとき、花畑の入り口で倒れているニクスと、そして花畑の中心に陣取るタナトスの姿。
そこに金髪の少年の姿が見えたのがきになるが、ライラには見えていなかったことからおそらく人ではないのだろう。
おそらくは魂だけの存在。
実体のない少年。
アンジェリークもどうやらその少年の姿に気付いたようであるが、タナトスを浄化後。
その少年の姿は花畑がよみがえるとともに掻き消えていた。
アンジェリークもジェイドもその少年のことが気にならない、といえば嘘になるが、
だがそれよりも倒れているニクスを介抱するのが先決。
その場ではきちんとした手当てもできない、というのもあり
ジェイドがニクスを抱きかかえここ、オラージュの村にもどったのは夕方近く。
宿屋の一室に横たえたニクスの表情はようやく緩和されてきている。
「しかし。ニクスがあのような発作を起こすとは……レイン、お前はしっていたのか?」
「ああ。最近は発作はおさまってたようだけどな。
  しかし、なぜ?だいたいあいつは海の音をきいたときに発作をおこしていたのに」
おそらく医者は精神的なものもあるのだろう。
といっていた。
ヒュウガの問いに首をすくめてこたえるしかないレイン。
とりあえず今日中に問題の村に寄ろうとおもっていたが今日はどうやらそれどころではないらしい。
発作をおこすほどの何かがあった、ということなのだろうか。
あの付近には近くに川などもないはずなのに。
タナトスがいたにしろタナトス程度でニクスが発作を起こすとは思えない。
もっとも、タナトスが何らかの幻影をみせてそれに伴い発作をおこしたとも考えられるが。
「でも。ライラさんとアンジェリークの看病でニクスもだいぶよくなったみたいだよ」
ジェイドが横抱きに抱きかかえ、オラージュの村にとニクスを連れ帰った。
それからライラとアンジェリークがつきっきりでニクスの看病を行っている。
銀樹騎士団の人々もニクスが倒れたとききかな心配しているのも事実。
「まあ、ライラ殿とアンジェリーク様が看病していれば大丈夫、とはおもうが……」
特にアンジェリークの力は癒しの力をも持ち合わせている。
「でも、ニクス氏が無事で何より、だよ。でも君、ジェイド君っていったっけ?力もちだね~」
ニクスをかるがると抱きかかえて村にもどってきたときには思わず驚いた。
それゆえにジェイドをみてにこやかにいっているベルナール。
「力は自信があるからね。俺は」
もっとも、彼は自分で体重を調整することも可能。
だからこそ、ニクスを抱きかかえたままで不安定なつり橋をも安全に渡りきれたのだから。
だけどもそれは自分からどうしても言い出せない。
陽だまり邸に住んでいる仲間たちがいい人たちであればあるほど、拒絶されるのが怖い。
「とりあえず。だ。ひとまず銀樹騎士たちから詳しい話を先にきいておいたほうがいいだろう」
ニクスがあの状態なのだから、ニクスはここにて滞在してもらい自分たちのみで出向いたほうが得策。
何よりも情報が優先される。
「それは私のほうからも彼等に話をつけてある。とりあえず彼等が拠点としている駐在所にいくぞ」
「わかった」
レインの至極もっともな意見に淡々とヒュウガが答え、こくりとそれにうなづくジェイド。
「それで、ベルナールはどうするんだ?」
「僕は彼女たちを手伝うよ。やっぱり男手も必要だろうしね」
たしかに、女二人での看病をするにしても何かあったときに男手は必要だろう。
「まあ、ベルナール殿なら安心してあの方たちをまかせられるな」
彼がアンジェリークを妹のように大切に思っているというのはよくわかったつもりである。
そしてまた、彼ならばライラを邪険に扱うこともないであろう、というのも人柄を知るがゆえに理解できる。
「じゃぁ、ベルナールにニクス達をお願いして。俺たちは少しばかり今後のことを話しにいくとする?」
ジェイドの言い分はもっとも。
もし危険な場所ならばアンジェリークを伴わずに自分たちのみでいく、ということも視野にいれなければならないはず。
もしくはその村にいるであろうタナトスを村のそとにおびき寄せて、それから浄化する。
という手段も視野にいれなければならないであろう。
だが全ては現状を把握してから。
「そうだな。心苦しいが、ニクス達をたのむ。ベルナール」
「レイン博士に頼みごとをされると何か不思議な気分だね~。まかせといてよ」
そんな会話をしながらも、ベルナールをその場にのこし、
レイン・ヒュウガ・ジェイドの三人は、この村に常に駐留している銀樹騎士団の支部にと足をむけてゆく。

「アンジェリーク、といったわね。あなた手際がいいわね」
「そういうライラさんこそ。さすが薬師、ですね」
医者と薬師はあるいみそれぞれが必要不可欠な存在。
「あら。あなたの指示が的確だからこそ、もっとも有効性のある薬が調合できるのよ?」
発作の原因は不明にしろ、その苦しみかたからどこが苦しいのかくらいは大体想像はつく。
どうやら体全身に激痛が走るかのようなその発作。
さらには呼吸困難なども併発しており、かなりほうっておくと命の危険が生じる可能性は高い。
アンジェリークがニクスの手をとり祈りをささげその症状は治まり今は落ち着きをみせている。
金色の淡い光。
その光をみて一瞬ライラが悲しそうな表情をしたのにアンジェリークは気付いていない。
「でも、ライラさん。ライラさん、何か他に気になることがあるみたいですけど……」
ニクスのことを心配しているのはわかる。
わかるが、ライラにはどうみても他に心配していることがあるような気がしてならない。
金の髪に青い瞳。
誰かに似てるんだけど。
だけどもそれが誰かがどうしても思い出せない。
「心配してくれてありがとう。でも大丈夫よ。……そう、あの子はきっと大丈夫……」
あの花畑は遠くにいく自分の代わりとおもってほしい。
そうまだ三歳の子どもが自分に託してきたもの。
生まれたときからどこか普通の子とは違う。
そうおもっていた。
妊娠中に夫をタナトスの被害でなくし、一人で産み育てた。
その大切な一人息子。
その子どもは今は手の届かない場所にといる。
天の女王の元にと召された。
それでもときどきはこっそりと銀樹騎士の人々にたのんでは子どもの成長を問いかけている。
彼等とて幼い子どもを母親から引き離した、という負い目からも率先してその情報は彼女にと与えている。
それでも、彼女が子どもにあいにいかないのは、大切なお役目に水をさしてはいけない。
という思いから。
「あの子?ライラさん、お子さんがいるんですか?」
「え。ええ。ちょうどあなたくらいの年齢の男の子がね。この十月で十六になるのよ。
  今は遠くにいるからあえないけど、あの子は天の女王様の近くにいるからね」
女王?
「十六ですか。なら私と同じですね。私も今年で十六なんですよ。
  でも、ひょっとしてライラさんのおこさんって、聖都にいかれてるんですか?」
たしか浄化能力をもっている子どもは幼いころに聖都に召される。
そう聞いたことがある。
「ええ。でもあの子には大切なお役目があるから……だから私もあの子に負担をかけたくないから会いにいかないの。
  でもみなさんがときどきあの子の様子を教えてくださるのよ?」
確かに、里心はつくであろう。
浄化能力をもつ子どもはその寂しさにも耐えねば人々の為に行動などはできはしないのかもしれない。
だけども、やはり子どもは両親の元ですこやかに成長するのがやっぱり一番いいこと。
そうおもうのは彼女自身が幼いころに両親を失っているからなのか、一般論なのか。
それはアンジェリークにもわからない。
「聖…あ。そうか。ようやくわかりました!ライラさんってときどき夢にみるルネさんって子によくにてるんですよ。
  これですっきりしまた。金色の髪に青い瞳。ライラさんと夢にでてくるルネさんってよく似てるんですよ?」
聖都だと、あの少年がいる場所はたしか聞いたような気がする。
それがただの夢なのか現実なのかはアンジェリークにはわからない。
だがしかし、アンジリェークのその言葉をきき、おもいっきり目を見開くライラ。
「ルネ…って、私の息子の名前なんだけど……」
「え?そうなんですか?ときどき夢にみるんですよ。何か不思議なんですけど。
  その子がたしか夢の中で聖都セレスティザムにいるようなことをいっていたような気がしたので。
  でもどうりで、ライラさん、どこかであったような気がしたはずです」
もやもやしていた疑問がすっきりし、どこかさっぱりしているアンジェリーク。
そんなアンジェリークとは対照的にただただ目を大きく見開いているライラ。
もし、目の前の少女がルネがかつてよく話していた少女だとすれば、全てはつじつまがあう。
かの存在は全てを見通せる能力を持ち合わせている崇高なる存在なのだから。
生まれながらにして全ての知識を備えていた自分の大切な愛しい息子。
たとえ子どもがどのような存在だとしても愛しく思わない親はいない。
だからこそライラはライラではなれていても子どもを思い、そしてまた少しでも彼の負担を少なくしようと、
自分から率先して薬師という仕事に専念している。
ときどき自分が調合した薬を銀樹騎士団に手渡し、ルネに渡してもらえるように言付けたりもしてはいる。
ときどきことづけられて届く手紙が何よりも彼女にとって心の支え。
ゆえに不安ではある。
あの花畑にタナトスが出現した、ということが。
あの場所はルネが光の結界を張ったといった場所。
だからこそわが子に何かがあったのではないのか。
という不安にかられるのは親であるがゆえ。
もっとも、自身が張った結界が破られたのを心配し精神離脱をしてその場にとルネが着ていた。
という事実はあるにしろ。
ライラは彼の姿を視ることができないのでその事実には気付いていない。
そういえば、あのとき見えた実体のない男の子。
夢にでてきたルネさんによくにてたけど…何か関係あるのかしら?
ライラとの会話の最中、ふと花畑にて出会った男の子の幽霊らしきもの。
その姿を思い出して一人思いにふけるアンジェリーク。
といって、下手に誰にでも離せるような内容でもない。
あのときはニクスに気をとられていたので見間違えた、という可能性もあるのだから。
「そう。夢で……」
あの子ならそういうこともおそらく可能なのでしょうね。
生まれたときから光の恩恵をうけていた子ども。
確かに先祖には光のジェムを神獣の宇宙の女王から譲り受けた男性がいるのは知っているが。
だがしかしまさか自分の子どもにその兆候があらわれるとは夢にもおもっていなかった。
「ライラさん?」
「え?ああ、何でもないのよ。そうだわ。もしあなたが聖都セレスティザムにいくことがあったら、
  あの子の渡してもらいたいものがあるんだけど、いいかしら?」
「?え、ええ。それはかまいませんけど?ですけどライラさんがいかれたほうが息子さんもよろこぶんじゃぁ?」
アンジェリークの言いたいことはわかる。
わかるが、
「あの子の負担になりたくないの。あの子には大切な役目があるから」
悲しい表情でそういわれても、どこか納得ができないアンジェリーク。
彼女は彼女なりに教団に所属することになった子どものことを思っているのはわかる。
わかるが、
「ですけど…」
「さ。この話しはおしまい。それよりニクス様のお水をかえてくるわね」
いいつつもたらいに汲んでいた水桶を手にして部屋から出てゆくライラの姿。
「ライラさん……」
そんなライラを悲しい表情で見送るしかないアンジェリーク。
確かに、彼女のいいたいことはわかるにはわかる。
教団に所属している人たちって皆そうなのかしら?
ヒュウガもたしか海の向こうのサキアという島国の出身だ、と食事のときに聞いたことがある。
彼もまた幼いときに教団に入団した、と。
それも全ては彼等がもつ浄化能力の使い方をきちんと把握し、そして有効に扱うため。
そしてまた、浄化能力をもった子どもはタナトスに狙われやすい。
脅威になるまえにタナトスによって命を奪われることもざら。
だからこそ教団は率先して子どもの保護に乗り出しているのだから。

「しかし…そこまで復活速度が速い、というのが気になるな」
「ええ。我々銀樹騎士団員もかなりの数が被害にあいました。
  とりあえず一時タナトスを退けるのと同時に目をさましますが、ほんの数刻もしないうちによみがえりまして」
ここ、オラージュの村から少し離れた位置にとある小さな村。
近くに夢魂の塔を望む山間の小さな村。
そこが今回、タナトスが出現している場所。
「しかし、眠りにいざなうタナトス、か。夢の属性のタナトスか?」
「おそらく、そうなのではないか、としか……」
タナトスも基本、九つの力を元に構成されている。
それぞれがそれぞれに属性をもちあわせ、それによって攻撃の仕方も異なってくる。
中には属性が特定できないものもいるにはいるが、それはごくまれ。
机の上に地図をひろげ、そこには村の見取り図も描かれている。
今までにタナトスが出現した箇所に印がなされ、タナトスが村からでていないことを物語っている。
「眠ったまま、ゆっくりと生気を吸い取られ死にいたる。これがこのたびのタナトスの特徴です」
そう語る銀樹騎士団員もまたやるせなさをその声にと含ませている。
村人達を救いたいのに、タナトスを退治しても退治してもすぐに復活する。
そしてまた、退治にいくたびに一人、また一人と仲間内からも犠牲者がでる。
遠くに運ぶこともできずに近くにテントを張り、そこに眠りにおちてしまった仲間たちは収容している。
「なら俺がいって、タナトスを村の出入り口付近までおびき出すよ。
  レインたちは村の外でアンジェリークと待機してもらってたら彼女にも負担かからないだろうし」
いとも当然のようにあっさりと提案してくるジェイド。
「いや、しかし、それではジェイド。お前が危険なのでは…一人では……」
「こういうのは俺の専門だとおもうしね。レインやヒュウガは彼女のことを頼む」
自分ならばいくら相手が夢をみせる能力をもっているタナトスだとして絶対に聞くはずがない。
その確信があるからこその提案。
「大丈夫なのか?ジェイド?」
彼が何なのか大まか検討はついている、いるがやはり心配するのは当然。
資料だけではわからないことは多々とある。
彼がその典型なのだろう。
「とりあえず今夜中に何かあったときの連絡用の非常筒をつくっておく。
  何かあったらすぐにそれに空になげれば連絡がつくようにしておく」
いくらジェイドとて不足の事態がおこらない、とは限らない。
だからこそのレインの提案。
「ああ、わかった。じゃぁ、とりあえず明日の作戦を……」
確かにニクス氏が主体となって行っているオーブハンターの活動は無償だ、とはきいている。
しかしそこまでして危険地帯に身をおくなど。
彼等銀樹騎士団とて危険を承知で被災地などに赴くことは多々とある。
しかしかれらはそれなりに訓練もうけている。
仲間の一人というヒュウガは確かに銀樹騎士団員になるために訓練をうけてはいるであろうが、
他の人間はというと決してそうではないだろう。
「我々も全力をもって補佐いたしますっ!」
それゆえに彼等の行動に敬意を抱く。
彼等は一緒にいる少女がライラと共に的確な指示をしていたことから医学の知識がある女性。
そう解釈しているのでさほど気にしてはいない。
この中にいる銀樹騎士団のメンバーはアンジェリークが女性ながら浄化能力をもっている。
そう知っているのもは皆無なのだから。
夜が更けるまで、しばし作戦の概要が銀樹騎士団が所属している建物にて繰り広げられてゆく。


                                -第42話へー

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あとがきもどき:
薫:今回は、ほとんど説明に話数を費やしているようなきが……ま、いっか(こらこら
  自覚はあるにしろ、ようやく次回で浄化バージョンv
  それでようやく銀樹騎士の人々もアンジリェークの能力を知ってゆく~、みたいなきっかけv
  何はともあれ、次回につづきますv
  ではまた~♪

2008年5月24日(土)某日

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