まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
さくさくっとベルナールの真実(?)を暴露です(笑
はじめから知っていたほうが何かと面白いので(こらこらこら
お兄ちゃん、としたかったけど、あえてお兄さん、それは叔父の教育の関係です(笑
何はともあれ、ゆくのですv
#####################################銀花の園 ~ベルお兄さん~
御車台にて二人が並びつつ石畳の街道をすすんで行く。
リースの広場にとある食堂で簡単に昼食を済まし、目指すはモンタントの村。
つい先日モンタントの村に出向いたばかりのアンジリェークにとっては二度目の来訪、ともいえる。
とりあえず、馬車を村の決まった場所にとおき、外にとでる。
このアルカディアでは移動手段はほとんど馬車か徒歩。
それゆえに各主要な街や村には馬車を預かる施設のようなものが存在している。
そして、その施設とどうやらニクスは話をつけているらしく、オーブハンターの活動ならば無料で停泊することが可能。
それほどニクスの活動は人々に認められている。
それに対してニクスは複雑な思いを抱いていたりするのだが、そんなことはアンジェリークは知る由もない。
「えっと、お花やさん、お花やさん……どこかしら?」
高原の村、というだけあって家々は点々としており、どのあたりに店があるのかすらもわからない。
おそらく村の中心部に近い位置あたりであろうと検討をつけて、きょろきょろと周囲を見渡すアンジェリーク。
ここにくる道中、たしかに街道沿いにタナトスが三体ほどでてきたのも事実だが、
ここ最近は、レイン曰く、本当にタナトスの出現が異様に増えているらしい。
「とりあえず、そのあたりにいる人にきいてみればいいんじゃないのか?」
レインもこのモンタントの村に詳しいわけではない。
そもそも、彼が詳しいのは文学関係のお店のみ。
花屋などはあまり興味がない。
それゆえに書籍関係を扱っているお店などではかなりマニアックなお店なども把握していたりする。
「それもそうね。すいませ~ん」
レインの言葉をうけ、ちょうど歩いてきた男性にと声をかける。
「うん?何かね?」
「すいません。私たち、お花屋さんを探しているんですけど。フルールの村のライザさんより花の苗を預かってまして」
立ち止まった男性に理由を説明し、花屋の場所を問いかけるアンジリェーク。
「ああ。それなら知ってるよ?」
「本当ですか!?」
ばあっ。
そんな男性の言葉にぱあっと顔を輝かす。
「しかし。そうだな。ただ教えるのは何だから、これから私がだす質問に答えられたら教えてあげよう」
「え?え?あ、あの!?」
「なぁに、簡単だよ。全部花に関することだからね。じゃぁ、だい一問」
戸惑いの声をあげるアンジェリークをさくっと無視し、いきなり問題を提示してくるその男性。
いきなりそんなことをいわれても、戸惑う以外の何ものでもないが。
とりあえず、相手に質問されたことはきちんと答えないと。
そう思い、相手の質問に素直に答えるアンジェリーク。
「おいおい。わざわざまじめに答えなくてもいいんじゃないのか?」
思わず素直に相手の質問に答えているアンジェリークをみてあきれた声をだすレイン。
「え?で、でも……」
「そもそも、俺たちは依頼をうけて花屋の主人をさがしているわけだし。
それで?あんた、何でそんな質問してるんだ?」
あきれながらも、それでいて相手にどうやら悪意があってのことではないのは何となくわかる。
判るがゆえに逆に問いかける。
「あはは。すまんすまん。ついね。若い人に話しかけられるのなんて滅多とないことだしね。
それにこちらの青い髪のお嬢さんは先日お見かけしてたからね。つい人柄が知りたくなって」
遠めにみただけだが、一瞬、本当に天使が降臨したのかとおもってしまった。
光につつまれた少女。
そしてそれはこのアルカディアに伝わる伝承といやおうなしに結び付けて考えてしまう。
だから、どんな人柄なのか確かめてみたかったのもある。
だが、目の前の少女は純粋そのもの。
いきなりの自分の質問に怪訝な表情一つすることなく真剣にと答えてくれた。
「あ、あの?それで、すいません。そのお花屋さんの位置は……」
何やら話しが摩り替わっているようなきがしなくもない。
それゆえに戸惑いながらも問いかけるアンジリェーク。
「ああ。それ?それなら君たちの目の前にいるよ?」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
一瞬、男性がいったことが理解できずに思わず無言となるレインとアンジェリーク。
そして。
「は!?」
一瞬だまりこんだものの、すぐさまに短い声を発するレインに対し、
「僕が君たちの探している花屋の店主さ。フルールのライザさんのところの苗はとてもできがよくてね。
しかし、お嬢さん、あなた花に関する知識はぱっちりだね」
にこやかに笑いながらもアンジェリークとレインをみながらさらっと答えてくるその男性。
オーブハンターに苗を運んでもらうのを依頼した、というデンワでの連絡をうけてうろうろと探していたこの彼。
当然その事実をアンジェークたちは知らない。
「え。ええ。一応薬草学などは全て頭にいれてますし」
「そういや、お前、医者の卵だもんな」
医者に何よりも必要なのは、的確な薬草などの知識。
花によっても毒になるものもあれば、薬になる成分を含んでいるものもある。
全てを把握し、うまくつかいこなすのもまたよい医者の特徴。
「ええ。薬草学に関してはもうばっちりのつもりよ?だけどなかなか毒系統の実験するわけにもいかないから、
それらはどうしても机上での理論によってでしかないけどね」
「まあ、毒は使い方によっては薬になるしなぁ」
「ええ。その加減具合がなかなか難しいし。たとえば……」
何やら専門的な話に移行してしまっているのは、おそらく気のせいではないであろう。
二人して医学の専門的な用語を並べながらそんな会話をしているレインとアンジェリーク。
「なるほど。お医者さんの卵、さんか。なら納得だな」
医者の卵、と自分でいうのだからおそらく、それなりの勉学は積んでいるのであろう。
たしかに、先ほど質問した中のすずらんにしろその根に毒があり、医学に通じるものがある。
「あ。すいません。つい話し込んでしまいまして。えっと、これが依頼された花の苗です。
花屋までもっていきましょうか?」
ふと、レインと二人で話し込んでいる自分に気付き、あわててお詫びをいい頭をさげて相手に問いかける。
「いや。いいよ。ここまですまなかったね。君たちも忙しい身だろうに。
そういえば、この村にくるまで街道沿いでタナトスをみかけなかったかい?
最近の旅人がよくリースからモンタントの間の街道で見かけた、といっていたんだけど」
見かけただけではなく実際に被害もでているのが現状。
「ああ。それなら確かに街道沿いにいたやつは浄化しといたぜ?」
あえて三体もいた、とはいわずにこたえるレイン。
それほどまでに見かけた、といえばおそらく逆に不安をあおることになってしまう。
だからこそあえて数は言わない。
「そうかい。それは助かるよ。しかし最近、本当にタナトスが増えたよねぇ。
ここ十数年、昔とくらべて倍以上の被害もでているようだしね」
彼らが子どものころも確かに被害はあったにしろ、ここまで頻繁ではなかった。
「タナトスも力をつけてきてる、という話も噂にのぼってるしね」
「まあ、たしかに。タナトスが出現以降、タナトスの活動は時に応じて変化してるし。
今の時期がまたタナトスの変化の兆候が現れてるのかもしれないし。
だが、所詮は推測。できることをしていくしかない、それが事実でもあるし」
レインのいうことももっとも。
昔の記録から文献などに残っているタナトスの被害も全て研究しているレインだからこそいえること。
「この間リースの広場に遊びにいっていた近所の人がいっていたアレが真実ならいいんだけどねぇ」
ぎくっ。
その言葉に一瞬ぎくりとなってしまう。
「?あれって何ですか?」
意味がわからずにきょとん、となっているアンジェリーク。
「ああ、それは、リースの広場の上空に昼間、不思議な現象が一時おこったっていう……」
不思議な?
もしかして、あの光る空のことかしら?
「確信がもちたいものだよ」
「あ、あの、それって……」
アンジェリークがもしかして空に広がった七色に光を放つカーテンのようなもののことですか?
そう問いかけようとするのをさえぎり、
「と、とにかく。きちんと依頼内容はこれで果たし終えたわけだし。アンジェリーク、花の苗をこの人に」
「あ、は。はい。これが花の苗です」
レインに促され、手にもっていた苗を男性にと手渡すアンジェリーク。
レインからすれば下手にアンジェリークに『オーロラ』のことを話してほしくない。
そもそも、あの場に彼女がいたことがわかれば、彼女の能力を目の当たりにしている存在ならば、
確実に結びつけて考えるのは明白。
そしてその噂は下手をすれば財団の耳にも届きかねない。
そんなことになったらあの男は何をしてくるかわからない。
「そうか。ありがとね。また何かあったらよろしくたのむよ。オーブハンターのお嬢さんたち」
「はい。こちらこそ、何かありましたらいつでもいってくださいね」
そんな彼の言葉ににっこりと笑みを浮かべて返事を返す。
「さて。依頼もおわったことだし。じゃぁ、もどるとするか。アンジェリーク」
「ええ。それでは、どうも失礼いたします」
レインに促され、ぺこりと挨拶し、ぱたぱたとレインを追いかけるようにその場をたちさるアンジェリーク。
アンジェリークは気付いていない。
レインがあえて空に発生した光のカーテン、オーロラについて触れさそうとしなかった、ということに。
「…あら?」
「ん?お~い、ベルナールじゃないか!」
御車台にて馬を操りながら陽だまり邸にと向かい街道筋。
リースへと続く街道の合流口付近で見覚えのある男性の姿をみつけて声をかけるレイン。
どうやら相手は歩きらしいが、その声に気付いてその男性もまた立ち止まる。
「やあ。レイン博士。…?今日はもしかしてデートかい?」
「なっ!ち、ちがうっ!」
「こんにちわ。ベルナールさん。私たち今依頼を終えてもどるところなんですよ?
ベルナールさんは今からどちらに?」
御車台の上よりベルナールににこやかに語りかけるアンジェーク。
数日前は気のせい、そう自分に言い聞かせていた。
だけども今彼は知っている。
そもそも、もっと早くにあのとき、医者の試験云々の話をしていたときに気付くべきではあったが。
「いや。今から陽だまり邸にいこうとおもってね。ニクス氏に用事があって」
確かに、昔の面影を強くのこしている目の前の少女。
かつてのような小さな女の子ではもうないが。
「なんだ。陽だまり邸に用事なのか?ならのってかないか?どうせついでだし」
ベルナールの言葉をうけ、馬車の上から話しかけているレイン。
「いいのかい?」
「旅は道ずれ。というかいうだろ?たってるものは親でもつかえ、って」
「この場合、その格言は正しいのかしら?」
レインの言葉にきょん、と首をかしげるアンジェーク。
だがあまり深く追求しないことにし、
「どうぞ。目的地が同じなら同じことですし」
いいつつも、すこしばかり横にとよる。
そもそも、馬車の中にはいればいいものの、二人して景色を眺めつつ御車台にといるアンジェリークとレイン。
つまり、今現在は後ろにある馬車の中は無人、ということになる。
一応、モンタントの村においてリースにいく予定がある人がいればつれていく、とはいったものの。
利用者は今回はいなかった。
それゆえに二人して戻っている最中、ばったりとベルナールにと出くわした。
「なら、お言葉にあまえるとするよ。お邪魔するね」
よいしょ。
止められている馬車の御車台にと小さく掛け声をかけてよじのぼる。
「よっし。ならいくか!はいっ!」
ベルナールがのぼったのを確認し、再び馬を操りだすレイン。
レインが馬を操りながら馬車を進めてゆくそんな中。
「そういえば、アンジェリーク。だったよね。…そのペンダントは?」
ふとアンジェリークがつけている見覚えのあるペンダントに気付き問いかける。
「え?これですか?これ昔、よく遊んでくれた親戚のお兄さんがくれたものなんです」
「悪いけど、見せてもらってもいい?」
昔、自分が送った品ならば、中にある文字がかかれているはず。
どうしても確認せずにはいられない。
そもそもどうして自分から危険に身を投じるのか、それすら彼としては気が気でない。
「ええ。どうぞ」
アンジェリークがペンダントをはずし、ベルナールにと受け渡す。
いったい、ベルナールのやつ、何がしたいんだ?
その様子をみながら不審におもうものの、だけども下手に口をだせばからかわれそうで何もいえない。
そんなレインの思いは知る由もなく、手にとったペンダントのトップについているロケット部分をぱかりとあける。
そこには、小さく文字で、『小さなアンジェへ』そう書かれている文字が。
「……ありがとう。これの中にはまだ何もいれてないんだね」
「今度、エルヴィンの写真をいれようとおもってます」
もはや、その文字からしても確定的。
どうりでどこかであったことがあるような気がしたはずである。
だからこそ、彼女が危険に身をさらしているのはどうしてもほうっておけない。
「おまえ、ネコ馬鹿になってないか?」
すかさずにこやかにいうアンジェリークに突っ込みをいれているレインであるが。
「でも、エルヴィン、とてもかしこいの、レインだってしってるでしょ?」
「そいつはぜったいにネコじゃない。断言できる」
ネコらしからぬ賢さ。
そしてまた神出鬼没。
そもそも、鍵を全てかけていたはずなのにどうやって自分の部屋の中に入り込んできているのかすらも不明。
朝方や夜、鍵を全てかけているはずなのにエルヴィンが部屋の中に入り込んでくることはざら。
「それってほめてるの?」
「さあな」
ある意味、ほめ言葉とも捉えられるがレインの本心はアンジェークにはよくわからない。
「そういえば、ベルナール。ニクスに何のようなんだ?」
そんな会話をしている最中、ふとベルナールにと問いかけるレイン。
「え?ああ。ニクス氏に頼まれていた資料を、ね」
それだけで何の資料か理解するレイン。
「資料?何の資料なんですか?」
アンジェリークはだが意味がわからず、きょとん、としながらも問いかける。
「それは…そうだね。しっておいたほうがいいのかもしれないね。
……小さなアンジェに見せるのは気にかかるけど」
?
小さなアンジェ?
その呼び方に一瞬首をかしげるアンジェリーク。
そう呼ばれたことも昔たしかにあった。
あったが、どうして彼が同じような呼び方をしてくるのかがわからない。
それにそもそも、彼女は十六。
小さな、をつけられる年齢でもないような気がひしひしとする。
「?ベルナール?」
レインもまたベルナールの呼び方に多少の疑問を擁き、首をかしげるものの、
「これだよ。…タナトスに襲われた村や被害の様子を写したものさ」
封筒の中から数枚の写真を取り出し、アンジェリークにとみせるベルナール。
「僕の仕事は、新聞を通して真実を人々に教えること。
アルカディア教団の手がいきとどかない小さな村の現状などを新聞で伝える。
その結果にて彼らの役に立ちたい、そうおもって日々取材をしているのさ」
ベルナールが手渡した資料には、タナトスに襲われた村の様子や、被害にあった人々の様子が映し出されている。
「こいつは、自ら危険な場所にいっては正しい情報を提供しているんだ。
こいつの取材による記事のおかげで救われた村もけっこうあるんだぜ?」
レインの言い分ももっとも。
そもそも、オーブハンターや銀樹騎士団だけではタナトスの被害はつかみきれない。
日々、足を武器にして情報収集をしている人々の新鮮な情報は逆に人々の助けともなりえる。
「そうなんですか。新聞記者ってすごいんですね」
いつも、社会面はあまりみなかったものね。
そもそも、寄宿舎の中において新聞などあまり滅多と目にすることはない。
その中には、タナトスに襲われて目を覚ますことなく死んでいった人々のことも映し出されている。
写真だけではなく、彼らにといかけたインタビューの様子など。
みていただけで思わず目をそらしたくなってしまう。
だけども目をそらしてはいけない。
それが今、このアルカディアがおかれている現実なのだから。
「まあまあ。そんな悲しい表情をしないで。そうだ。クッキーたべる?」
「あ、はい。ありがとうございます」
写真や記事をみて今にも泣きそうになっているアンジェリークにと小さなサシュを取り出してアンジェリークにと手渡す。
サシュの中にはクッキーが数枚。
ぱくっ。
いわれるままに、クッキーを一口。
口の中にとても甘い、それでいてなつかしい味がひろがってゆく。
「…え?これって……」
あむあむあむ。
思わずその懐かしさもあり、もくもくとクッキーを食べ始める。
とてもとても懐かしい味。
滅多と口にすることがなかったがゆえに、とても懐かしい。
「…ぷっ。やっぱり君は小さいときのままだね。必死にクッキーを食べている様子は昔のままだよ。
ね?小さなアンジェ」
「……え?」
一心不乱にクッキーを食べる様子は幼き日の彼女の姿と重なる。
それゆえに多少小さく噴出しながらもにこやかにアンジェリークにと話しかけるベルナール。
「昔…って…まさか…」
「?ベルナール?こいつのことを知ってるのか?昔って?」
何となく頭の中でもやもやしていたのが形になりそう。
それゆえに戸惑いの声をだすアンジェリークとは対照的に怪訝そうな声をだすレイン。
「まだわからないかな?小さなアンジェ。昔はあれだけ僕の後をおいかけてきてたのにね」
「!?」
ベルナールの言葉に、もやもやしていた頭の中の霧がさっと晴れる。
そう。
道理でどこかでであったことがあるはず。
そもそも、この彼…ベルナールさん…いや、この人は……
「嘘…ベル…お兄さん?」
「あはは。正解。ほんと、綺麗になったね」
「ほんと!?ほんとうにあのベルお兄さんなの!?」
あまりの偶然といえば偶然にびっくりせざるを得ないアンジェリーク。
「?ベル…お兄さん?」
レインは意味がわからずにきょとんとし、思わず馬を操る手を止めている。
それでも馬は自然に街道を止まることなくすすんでいるが。
「この子、アンジェリークは僕の遠い親戚なんだよ。レイン博士。
てってり小さなアンジェはメルローズ女学院の中で護られてる、そうおもってたんだけどね。
まさかレイン博士たちとともにオーブハンターの仕事を手伝っている、なんて夢にもおもわなかったよ」
気に掛けてはいたが、あいにいくことはできなかった。
結局、彼女を寄宿舎にいれる、という父親を説得するだけの十分な理由が見当たらずに、
彼女を見捨てたも同然の形になってしまったがゆえに負い目を感じていた。
「…私も。びっくりしたわ。ほんとうにベルお兄さんなの?ほんとうに?」
思わず懐かしさで涙がこみ上げてくる。
一緒に暮らしたのはほんのわずかの期間。
それでも、彼はアンジェリークに惜しみない愛情を注いでくれ、そいていつも相手にしてくれていた。
「僕もびっくりしたよ。まさかレイン博士のお相手が小さなアンジェ、だとはね。
しかし、そうとわかれば僕もまあ身内として厳しくいかないといけないかなぁ?ね?レイン博士?」
「なっ!?ど、どういう意味だよ!?ベルナール!?」
レインがアンジェリークに好意をもっているのは傍目にも明らか。
どうやら彼自身は自分の思いをまだ自覚していないようだが。
アンジェリークはそのあたりの免疫は当然ないはず。
ずっと小さなころから女ばかり寄宿舎にいればなおさらに。
「?お相手?ああ、レインが仲間、ということ?
今日はレインとパートナーを組んで依頼をうけてたんですよ?ベルお兄さん?どうかしたの?」
にっこりと、邪気のない笑顔でいってくるアンジェリークの言葉に思わず肩を震わせる。
アンジェークはベルナールがいった言葉の意味を違う意味で捉えている、というのは明白。
「と、とにかく。…今後のこともあるし、しっかりとニクス氏と話しておかないとね……」
それでなくてもアンジリェークはうら若き少女。
好意を抱いている男性と一つ屋根の下で暮らして下手な間違いがおこってもいけない。
かといって彼女を引き取り自分と生活しようにも、彼とて不規則な生活。
ならばおそらく、彼女の身を護るのには確かに陽だまり邸はかっこうの場所ではあるだろう。
寄宿舎だけではすでにもう、おそらくは彼女を守りきれる状態ではなくなってきているのだから。
「?へんなベルお兄さん。それより、お兄さん、いろいろお話きかせてくれる?私もね。
いろいろとベルお兄さんに話したいことがいっぱいあるのっ!…あ、ベルお兄さん、というのはダメかしら?」
小さなころ、実の妹のようにかわいがってくれていた遠縁の男性。
ベルナール、という名前が言いにくくて、短くベル、と呼んでいた。
「いや。いいよ。昔の呼び方で。小さなアンジェ?」
「もう!ベルお兄さん!私もう、小さな子どもじゃありませんっ!」
「あはは!むくれる顔は昔のままだね」
「ベルお兄さん!」
何だかむかむかするのは気のせいだろうか?
和やかに、それでいて会話をしている二人の姿に何だかこう、胸がむかむかしてくるレイン。
そのもやもやの原因は彼にもよく判らない。
アンジェリークのとても今までに見たことがないようなうれしそうな顔もまたどきりとしてしまう。
しばし、あまりの懐かしさに昔話に花を咲かせるアンジェリークの姿が。
馬車の御車台の上にて見受けられてゆく。
-第30話へー
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あとがきもどき:
薫:本当は、アンジェリークにベルお兄ちゃん!と呼ばせてみたかったりするという(笑
でも、小さな当時四歳のアンジェリークに対し厳しい叔父は相手に対してはかならず敬称をつけろ。
そう教育したこともあり、さん、づけが主流となっていたりします(汗
ち~さな子どもにそれはないのでは?甘えることすら認めない父。
そんな父にベルナールが反発していたのは事実です(まて
ではでは、次回で陽だまり邸~
これでベルナールもアンジェークのある意味仲間(爆v
ではでは、また次回にてv
2008年5月17日(土)某日
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