まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
さてさて、今回は依頼にいくまえの振り分けと。
あとはルネ&ベルナール側の心情をちょこっとをばvv
次回でアンジェリークの依頼内容に移行しますvあしからずv
何はともあれ、ゆくのですv
#####################################銀花の園 ~それぞれの思い~
「おはようございます。みなさん、はやいんですね」
アンジェリークが一階におりるとすでに全員がその場にそろっていたりする。
「俺は今降りてきたところだけどな。おはよう。アンジェリーク」
「ヒュウガは今外からもどってきたところだよ?アンジェリーク。おはよう」
アンジェリークの言葉をうけて、その場にいた四人がふとアンジリェークのほうを振り向く。
どうやらテーブルにいくつかの手紙がおいてあるのをみれば今日の依頼の振り分けでも話し合っていた。
そういうところであろうか。
「?ヒュウガさんは朝早くから依頼にいかれてたのですか?」
それなら起こしてくれたら私も一緒にいったのに。
そうおもいつつ問いかけながらも席にとつくアンジェリークの問いに、
「いや。朝の鍛錬をしていただけだ」
「ヒュウガは日夜問わずに時間があれば自分自身に対して鍛錬を忘れないようなのですよ。
それも銀樹騎士としての誇りなのでしょうね。彼らは常にそうして己を磨いている、といいますから」
淡々と答えるヒュウガに変わるようににこやかに説明してくるニクス。
「そうなんですか。すごいですね。私にもできる鍛錬法ってあるかしら?
少しはいざというときのために護身術とかならっといたほうがいいかもしれないし」
「そういや、お前はずっとメルローズ女学院育ちだったな。女学校ではそういうのを教えられないのか?」
女ばかりの学園である。
そういうことは多少なりとも教えそうなきもするが。
「簡単なモノならならったけど。相手をかるく投げ飛ばす方法とか、あと一撃で相手を伸す方法とか。
あとはいきなり背後から抱きつかれたときのための対処法とか……」
レインの問いかけににこやかに答えているアンジェリーク。
たしかに、そういう習い事も授業の一環としてあった。
小柄な女性でも大の男を投げ飛ばす技はいくらでもある。
特に良家の女性ばかりが通う学園ならではそれなりの資産をもつものも多々といる。
ゆえに犯罪に巻き込まれないとも限らない。
それゆえの学園の対応。
「いや。いい、聞いた俺がわるかった」
それ以上頼むから強くならないでほしい。
それがレインの本音。
「それはそうと、今日もいくつかの依頼がはいってきていますよ。
とりあえず、アンジェリークは必ず誰かと共に行動してくださいね。
あと緊急性がない場合はひとまずの脅威を取り除くためにそれぞれ一時でむいていき、
仮初めではありますが脅威を取り除いておくという形になりますね」
アンジェリーク以外では完全にタナトスを浄化することは不可能。
それでも街の近くなどに出現している場合はひとまず先にいっとき蹴散らしておく必要性がある。
いつ何どき街や村の中にはいるかわからない距離ならばなおさらに。
「そういえば、ヒュウガは馬車を操れますよね。ジェイドはどうですか?」
「俺も平気だよ?」
「なら、問題ありませんね。ひとまずこの屋敷には常に二台ほど馬車を待機させています。
緊急性や必要性があるときには好きなように使ってくださいね」
この屋敷には一応、通いのお手伝いさんというものがいるらしい。
それらもすべてはニクスの人柄に感謝して無償で手伝いにきている人々らしいが。
馬などの面倒もそんな彼らが率先しておこなってくれているらしい。
また、常に各町などにはニクスに共感する協力者もいるらしく、
それゆえにニクスの活動は幅広く、アルカディア中に広まっている現状。
とはいえ、いくらニクスとてアルカディア全ての依頼をこなすことは不可能。
それゆえに緊急性の高いものから行動している。
「とりあえず、今日はアンジェリークには少しばかり負担がかかるかもしれませんけど。
どうも配送の護衛のお仕事と、あとは風舞の峰にあるミツバチの巣箱の回収のお手伝い。
両方とも依頼は花畑の村フルールです。お願いできますか?」
同じ村からの依頼ならば一度にすましたほうが遥かに効果的。
「はい。大丈夫です。頑張ります!」
自分の力が人々の役にたつ。
これほどすばらしいことはない。
少しでも人々の笑顔を守りたいから。
「あとは、天使の花畑で子どもがタナトスをみた。という情報と、碑文の森の様子がおかしいので調べてください。
というのがありますから、それぞれ手分けしていきましょう」
いいつつ、用意してある紅茶を一口。
「私が碑文の森に向かいますので、ヒュウガとジェイドは天使の花畑のほうをお願いできますか?」
「了解した。しかし、ニクス。一人で平気なのか?」
ヒュウガの問いにかるく笑みを浮かべ、
「レイン君やあなたたちが仲間になるまでは私は一人でやっていましたよ?
さ、それじゃあ、今日の行動がきまったところで朝ごはんにするとしますかね?」
そう、一人で行動していた。
下手に人と関わることはさけながら。
それでも、やはり人恋しくなるときはある。
親友、と呼べる友達ができても、それは悲しい別れを意味しなくてはならない。
いつもおいていかれるのは彼自身。
レイン君とアンジェリークを二人きりにさせるのは多少問題あるかもしれませんけど。
しかし、この依頼は二人のほうが遥かに能率的、でしょうし。
それに何より、レイン君も自分の気持ちをきちんと自覚していないようですし。
彼女も故郷の村のことですからきにかかるでしょうしね。
あの村にはニクスからすればあまり近づきたくない。
いつ何どき自身の中のアレが力を求めて表にでてくるかわからない。
そうなればあの美しい村の花全てを枯らしてしまいかねない。
それは天使の花畑においてもいえること。
森ならばそう広いので一角程度枯れてもあまり騒がれない。
いや、騒がれてもおそらくそれはタナトスの仕業、そう捉えられるであろう。
とりあえず今日の段取りを簡単にすませつつ、用意してあった朝ごはんをテーブルにと運ぶ。
朝は基本的にはパンを主体とした簡単な食事。
それゆえに少し広いいつもの夕飯を食べる部屋でなくてもここサルーンだけで十分に間に合う。
「そういえば、みなさん、タナトスと戦うときにそれぞれ武器をつかいますよね?
それってやっぱり扱いやすいから、とかですか?私も何かあったほうがいいかしら?」
アンジェリーク自身は何もつかっていない。
ただ、祈りをささげるのみ。
「俺はとにかく体が丈夫だから、それにあわせて武器をえらんだけど」
というか、気がついたらすでにそれは装備されていた、というほうが正確だが。
「私は騎士団にいたころより槍を扱っていた。それゆえにこのほうが使いやすい」
剣や槍、騎士団においてはそれぞれ自分自身にあった武器を選びそれを扱う。
もっとも、一つの武器だけではなく様々なもので応用がきくようにしっかりと訓練を受けるのも事実だが。
ヒュウガは長槍が自分にあっているとおもい、それを愛用しているのに過ぎない。
「私はたまたまこの屋敷の中にあった品物の中で使いやすいものを選びましたけどね。
ちなみに、レイン君がつかっている拳銃ももともとはこの屋敷の中にあったものですよ?」
にこやかに、それでいてさらっと爆弾発言をしているニクス。
「?この屋敷に?ニクス、それはどういう意味だ?」
「ああ。そういえば話してませんでしたっけ?
この屋敷には私も知らない古代の遺産とおもわれる品物が多々とあるのですよ。
まあ、扱い方もわかりませんし、害があるものでもない。なのでほうっているのですけど。
何かいろいろとありましたよ?もっとも、扱い方がわからなければそれはただの置物、ですけどね」
自動で屋敷全体を掃除するような小さな丸い円盤上の何かや、はたまた自身の声を録音するもの。
あげくは映像を保管し、そのまま立体映像として映し出すもの、様々な品がたしかに眠っている。
「まあ、ニクスのいうとおりではあるな。この屋敷そのものが主同様、不思議すぎるしな」
「おや、レイン君。その主同様、というのはどういう意味でしょうかねぇ?」
「そのまんま、だ。あんたはとにかく謎がおおいからな。まあ、ともかく。
俺のこの銃は精神派を弾丸にして相手に叩き込める品なんだが。
一応実弾も併用できるようになっている。もっとも、多少手を加えて使いやすいようにはしたが。
さすがの俺でもこれと同じものを量産、というのは難しいな」
そもそも、自身の中にある力をこめなければ発動しない品物。
何だかおもいっきり物騒そうな砲撃用の装置らしきものまであったのにはたまげたが。
ふと、
『よっしゃ!完成!』
『もう、ゼフィルったら。そんなもの作ってどうする気?』
『へへ~ん。サクリアを弾丸としてぶっぱなす!周囲に害がでないから便利だぜ!
応用によっては精神派のみでの稼動もできるしな!』
『だから!どうしてそんな物騒なものをつくるんだよっ!おまえはっ!』
『こけおどしにはいいじゃないか。それともランディ。おおっぴらに力つかう気か?』
『そ…それは……だけど、陛下の許可は……』
『ああ。陛下の許可はうけてあるぜ?というかどんどんつくってみて♡とかいわれたぞ?』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
『どうもこのジェイドが本当の意味で稼動するときに必要になるとか何とかいわれたけど』
『そういえば、それ、いつ完成するんだ?』
『とりあえず、基本データは全てそろってるからな。あとは……これには人の魂を入れるとかあいついってたし』
『…陛下、何かんがえてるんだろう?』
『そういえば、僕とセイランさんの力もこれにこめたよね?その意味しってる?ランディ?』
『さあ?マルセルも聞いてないのか?』
『うん。ゼフィルもきいてないって』
そんな会話の最中、ふと思考に浮ぶ見たこともない人たちの姿と、その会話。
たしかあのとき、自分はどこかにいて、その光景を眺めていた。
あのときはまだ自身は動けなかったはず。
だが、それはいつのことだろう?
思い出そうとしてもどうしても思い出せない。
「?ジェイドさん?どうかしたんですか?」
何か考え込んでいるらしいジェイドを気遣い、心配して声をかけるアンジェリーク。
その声にはっと我にともどり、
「ああ。いや、何でもないよ。ただちょっと思い出してたことがあってね。
さ、とにかく、早いところ食べてみんなの笑顔を守りにいこう!」
「ええ。そうですね」
「確かに。早いにこしたことはないな。…それともパンをもってそのまま出かけるか…」
「レイン君。おねがいですから、いつものようにパンを口にくわえたままでかける、それはしないでください。
私の品格まで疑われてしまいますよ。いやはや」
そんなレインとニクスの会話から、何となくこの二人の日常がふと浮び、思わずくすっと笑みが漏れるアンジリェーク。
まだ知り合って間もない彼らだが、そばにいてとても安心できる。
そう、まるで昔からの知り合いのように。
ともあれ、そんな会話をかわしながらも、なごやかな朝食光景がしばしその場にて繰り広げられてゆく。
「よ!ベルナール!今日もまた徹夜か?」
朝も早いが、おそらくいるであろう。
それは勘。
彼が家に戻ってねているところなど今だかつてあまりみたことすらない。
「ロシュ。めずらしいな。お前がここにくるなんて」
しかもわざわざ部屋の中にまではいってくるなど珍しい。
周囲にはおそらく徹夜で原稿を仕上げたであろう人々が屍のように眠りについている。
しかし、ようやく今日の作業がおわっても、また明日の作業がまっている。
新聞、というものは毎日その作業の繰り返し。
「まあな。……ん?それ……」
どうりでどこかであの女の子はあったことがあるような気がしたはずだ。
新聞社ではじめてであったときにどこかでであったような気がしていた。
「あ。納得。それでどうりであの子をみた覚えがあったんだ」
ベルナールの机の上にと飾られている一枚の写真。
そこには小さな青い髪の女の子と、そしてまだ若いころのベルナールの姿が写っている。
「?ロシュ?まさか女学院に忍び込んだのか?」
思わずそんなロシュの言葉に表情をゆがませるベルナール。
いくら何でも女の園に単独潜入するのはあまりいただけない。
「え?いや、違う違う。その子の名前って、確か…」
「ああ。遠縁の子でアンジェリークっていうんだ。今はメルローズ女学院にかよっているんだ。
ずっとあってないけどきっととても綺麗になってるだろうな」
ロシュに言われて、写真立てを手にもちそんなことをつぶやくベルナール。
平和な人生を送ってほしい。
それがベルナールの願い。
「あ。やっぱしか。その子、この間の発表会にきてたみたいだぜ?」
ロシュの言葉に思わず目を丸くし、
「いや。それはないよ。だってこの子は学園に……」
「あ~。そっか。まだベルナールは知らないんだ。当人から聞いたから間違いないけどさ。
今、その子女学院を休学してニクス氏の活動に参加してるぞ?」
ぴたっ。
そんなロシュの言葉に思わず動きをとめる。
「…ロシュ?今…何て……」
ニクス氏の活動、といえば篤志家としての活動以外にはオーブハンターとしての活動がある。
しかし、いやでも、まさか……
「しかし、ベルナールの親戚がまさか女王……」
「ロシュ!ここでは何だから、とにかくこっちへっ!」
いいかけるロシュの口元をあわてて押さえ、ずるずると奥の部屋にとひっぱってゆく。
「むぐ~!!??」
じたばたすれども、二十代と十代の背と力の強さはどうにもならない。
そのままひこずられるようにしてベルナールに連れて行かれるロシュの姿。
バタン、と奥の部屋にはいり、鍵をしっかりとしめる。
「ぷはっ!いきなり何するんだよっ!ベルナールっ!」
「……まさか、ロシュ…みた…のか?」
あの単語がでてきたとなれば、見た可能性は高い。
だからこそ、表情を険しくして問いかける。
「見た?何を?」
「あ、いや、知らないのなら……」
ロシュの返事にほっと胸をなでおろしそうになるが。
「彼女が完全にタナトスを浄化した瞬間、そしてまたタナトスに襲われた人をよみがえらせた瞬間なら出くわしたぜ?」
こきん。
ロシュのさらっとしたものいいにその場に思わず固まってしまうベルナール。
「おまっ!?まさか…まさかどこかにそのことをいったのか?!」
「なるほど~。その反応、ってことは、ベルナール殿はどうやら彼女の能力を知っていたようだな~」
うっ。
ロシュの鋭い指摘に思わず声を詰まらせる。
「いいから!質問にこたえろっ!…どこかにもらしたのか!?」
「いや。まだ。そもそも俺自身もびっくりしててさ~」
事実、その情報はまだどこにも売っていない。
「…たのむ!ロシュ!どれだけ金額をふっかけてもいい!その情報は俺がかう!
だから他には売らないでくれっ!」
もし、そのことが外部に知られれば、あの子はおそらく普通に生活ができなくなってしまう。
幼いときだけの能力ではなかったとすれば、それが指し示す可能性はおそらく一つしかないのだから。
「ん~。話による。な。ベルナールが隠してること全部はなしてくれたら考えてやってもいいぜ?」
ここまでうろたえている彼をみるのは初めて。
それゆえに多少からかいたくなってしまうのはロシュだけではないであろう。
「しかし。おそかれはやかれ、皆に知られるとおもうぜ?あのアンジェリークって子。
ニクス氏の元でおもいっきりオーブハンターの仕事やりはじめてたし」
「……小さなアンジェ……どうして君は……」
おそらくロシュの情報に間違いはないのであろう。
彼の情報の正確さはベルナールがよく知っている。
だからこそがくっと力がぬけてしまう。
そもそも、そういった様々な危険性をも考えての寄宿舎へベルナールの父親は入れたのだから。
彼はその意見に反対だったが、だが確かに彼女を外部から護るのにはその方法は的確だったのであろう。
それでも『両親を失ったばかりのまだ幼い少女をそのまま放り出す。』
というその考えが当時のベルナールには許せなかった。
ベルナールはアンジェリークの能力を知っている。
それは彼女が預けられていた幼い日。
彼女の能力を目の当たりにしているからに他ならない。
だからこそ、小さな幼いアンジェリークが誰にも利用されることもなく、そしてまた、普通に生活できるように。
そう誰よりも望んでいたのは、他ならないベルナール自身。
真実を人々に伝える新聞記者。
それでも真実を隠し通してでも護りたいものは誰にでも一つはある。
そしてまた、あのときの彼女の能力は小さい子どもに備わった特殊な力。
おおきくなれば自然と消えてゆく。
そう自身に言い聞かせていたのもまた事実。
「…炎、鋼、緑、そして闇。それから風…地はすでに用意されてるし。
夢は当分形にならないとしても、あとは水。だね」
すでに力を秘めた存在は存在している。
あとは、彼女が護り石を全てあつめ、その力を満ちさせるのみ。
おのずと護り石は方向性を指し示し、自分たちにその印を解き放つ。
望んだのはたしかに自分自身。
あのときから。
そう、光のジェムがこの地、アルカディアに託されたときからおそらくそれは決まっていた運命。
伊達に光のサクリアを秘めたモノとして存在していたわけではない。
そして、あるのはあるべき正しき歴史の姿。
「僕自身の役目はあるべき歴史に正しく導き、そして新たな歴史を刻むこと……」
だからこそこの地…セレスティザムを離れることはできない。
この地で全てを見守りつづけなければいけないから。
「ルネ?どこにいるのですか?ルネ?」
そんなことをおもいつつも、空を見上げていた少年を呼ぶ声がしたのほうから聞こえてくる。
「あ、僕はここだよ!マティアス!」
だけども、そのことを知っていることは他人には悟られてはいけない。
あくまでも自分は時期教団長になるべくここにいる、そう思わせないといけないのだから。
-第28話へー
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あとがきもどき:
薫:ジェイドの記憶がフラッシュバック(まて)。
ちなみに、この記憶、この陽だまり邸(元宮殿)の中でのことなので思い出しましたv
彼は基本、目覚めたときに過去の記憶はある意味封印されているので真実をあまり知りません。
サクリアが満ちてゆくごとにおもいだしていきますけどね。
しかし、いつジェッドの登場になるんだろうか(笑
何はともあれ、ではまた次回にて~♪
やはりあのハチミチの回では歌うアンジリェークがつぼでしょうv
ではでは~♪
2008年5月16日(金)某日
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