まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

さてさて。今回はちと短め~、の予定(笑
基本、アンジェリークがみている夢の内容なので詳しくは表記しておりませんv(こらこら!
そういえば、ネオアンジェシリーズでは定番の夢での映像。
あれは彼女自身が行う奇跡(?)しかなかったですねぇ。
守護聖たちの日常とかの夢、おもしろかったのに。
できたら仲間たちの夢とかもみてたらおもしろかったなぁ(笑
ともあれ、いっきますv

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銀花の園   ~レイン、その過去~

「レイン、よくやったな」
「へへ。どんなもんだっ!」
手元にあるのは小さな板のような何かの装置。
「理論上は問題ないはずだぜ。ヨルゴ!」
「おまえ、いい加減に兄、とよべ」
「だって。ヨルゴはヨルゴだし」
歳の離れた兄。
それでも人々の為に役に立つ機械をつくる。
たとえ母親が違えどもその思想は尊敬していた。
だからこそ、兄の役にたちたくて、小さなころから勉学に励んだ。
そして、聖都で得た知識を元に作り出したとある装置。
「本来、理論上からいっても人々の中にはもともと浄化能力に近いものがあるはず。
  だからその装置でそれをひきだせれば、誰でもタナトスに対抗できる力がつく、ってわけさ」
十四程度の赤い髪の少年。
自身の体で幾度なりとも実験を重ね、そして理論上は確実に浄化能力が備わるはず、である。
「ふむ。これの実用化はいつごろだ?レイン?いつごろ形になる?」
「あとはいくつかの実験を得れば問題ないはずだぜ?」
まだ、不安定な気にかかる数値がある。
それさえ解決すれば実用化は可能のはず。
「なら、お前にまかせたぞ。レイン。さすが我が弟だ」
「…ヨルゴ理事長、こんな大掛かりな研究をレイン一人に任せていいのですか?」
その横で何やら不満げな少年がつぶやいている。
「エレンフリート。お前よりレインのほうが遥かにこの件に関しては増している。
  お前はお前でもう一つのほうの研究にとりくむがいい」
「…わ、わかりました……」
もう一つの研究。
それは一人、一人に浄化能力を持たせるのではなく、機械による浄化能力。
レインがかつて発見した異空間論理を反映しての開発。
いつも努力してもレインにかてない。
自分のほうがぜったいに遥かに能力も、そして知恵もあるのに。
そんなことをおもう感情がアンジェリークにと流れ込んでくる。
ヨルゴと、エレンフリート、と呼ばれた二人がその場から立ち退き、その場に一人残されるレインの姿。
「さて…と。とにかくあとは…これで、これで皆が幸せになれるんだ!」
この装置さえきちんと出来上がれば、誰でもタナトスに脅威することのない世界がやってくる。
アーティファクトは人々を幸せにするための装置。
それが今まさに実現しようとしている。
「まずは、動物実験してみて……」

動物にも能力はもともとそなわっているはず。
動物ですらタナトスを蹴散らせる能力が備われば、それは人にもいえること。
でも、そんな装置は今は存在していないはず。
…まさか…?
ロシュから聞いたレインのとある研究のこと。
タナトスを引き寄せる効果があったといわれる装置の開発。
まさか、アレがそうなの?
だけど…どうして?
視ているかぎり、レインの目的はあくまでも人々の幸せのため。
誰もが幸せに脅威のない世界で暮らせる世の中のため。

「……そんなっ!!」
最後の最後でこんな落とし穴があったとは。
だけども、申し出た職員の一人はあきらかに人格を壊されそのままタナトスに憑依されてしまった。
それが装置の影響である、というのはすぐさまに予測がついた。
だからこそ、埋め込んだ装置がある肩を狙って拳銃で打ち抜いた。
それとともにタナトスもまた掻き消えた。
だが……一度壊れた人格は元にはなかなか戻らない。
かろうじて、意識を取り戻したその代償は記憶喪失、というもの。
データを元に、幾度シュミレーションをしてみても、たどり着く結論。
それは、たしかに人の中に本来眠っている潜在能力を引き出す。
引きだすが、人はその力に耐えられずにまず自分自身を壊してしまう。
そして、あろうことかその力はタナトスをもおびき寄せてしまう。
「…だけど、ヨルゴ!この研究は!!それよりも、違う方法でっ!」
「何をいう。レイン。ここまで研究はすすんでいるのだぞ。あとはもう実用化のみ。
  装置をつかってタナトスに取り付かれるのはそれをつかうものがわの責任。
  我々の責任ではない。ゆえにこのまま開発をつづけて販売へこぎつけろ」
タナトスに憑依され、さらには自我を失う可能性がある装置ではあるが、
それでも一瞬にしろタナトスに対抗しうる力を得ることが可能。
ならば、その一瞬でもいいからその力を人々は求めている。
だからこそ、危険性を承知でそのまま開発しろ。
そう財団の最高責任者でもあるヨルゴは言い放つ。
「…っ!!」
アーティファクトの研究は、人々を幸せにするためのもの。
決して人々を悪夢の中に叩き込むためのものではない。
「そうそう。レイン。すこしばかり頭をひやしてこい。虹華の森の中にある研究施設にいってこい。
  少しはお前の考えもあらたまるだろう」

虹華の森の研究施設?
ヨルゴの言葉に思わず視ているアンジェリークは首をかしげる。
そんなところにアーティファクト財団の研究施設なんてあったかしら?
アンジェリークの記憶ではそのあたりに研究施設があるなどと聞いたことはない。
もっとも、彼女とてアルカディアの全てをしっているわけではないのであるのかもしれないが。

「……わかった」
いっても無駄。
あれだけ尊敬していた兄なのに、まさかそんなことをいうなどとは。
だけどもヨルゴも時間をおけばきっとわかってくれるはず。
あの装置はあきらかに世の中に出回らせてはいけないものなのだ、と。
そう期待をこめて、ヨルゴにいわれるまま、虹華の森の中の研究施設へとレインは足をむけてゆく。

「……え?内部の?」
かつて新たにみつかったとある古い屋敷の中からみつかった古代の装置。
否、装置といっていいものか、おそらく機械仕掛けで動くとおもわしき人型のアーティファクト。
ジャスパー・ドールといわれている品。
この研究施設ではそのジャスパー・ドールを研究している。
「ええ。レイン博士!あのアーティファクトの内部からとてつもない強い力が確認されました!
  それもオープの力どころではありません!数値からしておそらくオーブの完全なる力。
  いや、それ以上かもしれません。我々はその力を引き出すためにただいま努力している次第です」
誤った力の使い方は悲劇をうむ。
ふと、ルネ、と呼ばれた少年の言葉を思い出すレイン。
いまだに起動したことは一度もないといわれている古の遺産。
しかし、その研究データを元に彼の復元ともいえる新たな機械仕掛けの人形はすでに作成されている。
あとは、その内部に眠る力とおもわしきソレと同じもの。
それさえ復元できれば過去の遺産と同じものを現代の科学力で作り上げたことになる。
それぞまさに画期的な出来事として後世に伝えられる快挙。

――サクリアは、使い方によっては悲劇も、そして幸福をも生み出すことができるの。
ふと、アンジェリークの心に響いてくる声。
サクリア?
――万物に宿りし力の源。サクリア。そして全てをつかさどる力は、アンジェリーク。あなたの中にも……
その声に気をとられていると、またまたふいっと周囲の景色が一気にとかわる。

「……おや、君がレイン君、ですか」
ふと気付けばどうやらレインは一人らしい。
しかも、目の前には今と変わらぬニクスの姿が。
レインの姿は十五かそこら。
「…あんたは、たしか篤志家のニクス…氏?だったな?何のようだ?」
彼が自分を訪ねてくるなどまずありえないはず。
もしくは。
「…ヨルゴ、または財団にいわれてきたのか?」
「いえいえ。別に私はあなたを攻めませんよ?あなたが財団を出奔した。そうききましてね。
  こうして探していたわけです。いかがでしょう?いくところがないのなら私と一緒に仕事をしてみませんか?」

出奔?
ロシュさんのいってた?

ヨルゴのやつ、まさか危険性を承知でそれを隠してそのまま市販をかねて人体実験をするなどといいだすなんてっ!
だから、レインは全ての資料を破棄し、そしてデータもすべて初期化した。
現物すらも全て破棄処分し、そしてそのまま財団を飛び出した。
今のアーティファクト財団が求めているのは人々の為の研究、ではない。
あくまでも自分たちの利益のためのものと成り果てている。
そのためには犠牲も何も問わない集団にと。
発明した装置によってどのような被害がでようと、それは使い手の問題。
そう捕らえ何の手をもうたずに危険性をだまって世の中に発表する。
そんなのはレインの中の人としての心が許せない。
レインのそんな思いがアンジェリークの中にと伝わってくる。

――それが真実。レインが財団を出た本当の理由。あなたはしりたがった。だからあなたは視れた。

「あんた、何をいって……」
レインが言いかけると同時、レインとニクスの周囲の草木が瞬く間にとかれてゆく。
「おや。これはこれは」
「…なっ!?タナトスか!?」
「レイン君。これを!」
ぱしっ。
ニクスに何やら投げ渡されてみてみれば、何やら銃のようなもの。

……あれは……
その銃に見覚えがあるアンジェリーク。
そう、それはまさに、レインがいつもタナトスとの対決で使っている銃そのもの。

「あなたならそれをつかいこなせるはずです!…きますよっ!」
「って、おいっ!ちょっ…!」
いきなりいわれても、意味がわからない。
そもそも、手にした瞬間に理解したのは、この拳銃がアーティファクトである、ということ。
精神エネルギーともいえる何かの力を特殊な弾として打ち出す効果。
昔、彼も研究したが、実用性というかそれを作り出す技術力がなくてあきらめた品。
君の中に眠っているのは炎の力。
銃を手にしたレインの脳裏に、ふとルネと名乗った少年の言葉がよみがえる。
「…きますよっ!」
「…く、くそ~!!!」
バッン!!
意味もわからず、だけどもそのままやられるのも癪。
だから、力をこめて何も考えずに出現した球体のようなタナトスにむけて一発。
まさかそれがタナトスに通用するなどとは、レインは夢にもおもっていない。
だがしかし、
「…嘘…だろ…」
レインの攻撃はあきらかにタナトスにダメージをあたえている。
「やはり。私の見込んだとおり。レイン君にも浄化能力がありましたか。…きますよっ!」
タナトスに憑依される可能性が確実といわれていた装置。
だが、それにもかかわらずレインが開発をしていて無事だったのは、他ならない。
レイン自身に浄化能力が備わっていたから――

――アンジェリーク。真実は常にあなたのもとに……

「……今のは……」
ぼ~……
レインとニクスのタナトスとの戦い。
それを視ている最中、体がふわりと浮き上がるような感覚になり、気付けばアンジェリーク自身はベットの中。
今のは…夢?
夢にしてはあまりにリアルで、それでいてはっきりしていた。
そもそも、レインの子どものころの姿や、今とまったくかわらないニクスの姿。
「…それに、あの子……」
以前夢の中で銀色の大樹の前でであった金色の髪の男の子。
「ルネさん、っていうんだ」
「にゅ~」
ちいさくつぶやくアンジェリークの胸の上でまるでおはよう、といわんばかりにエルヴィンが鳴く。
「あ、おはよう。エルヴィン。何か不思議な夢をみちゃった」
いいつつも、ベットから起き上がり、しゃっとテラスの窓のカーテンをあける。
カーテンをあけるとまぶしい太陽の光が差し込んでくる。
「うん。今日もいいお天気!」
そういえばここ最近、雨がふっていないわね。
そんなことをふとおもう。
雨が少ない時期は何よりもタナトスも脅威だが火事も脅威である。
草木が乾燥しており、燃え広がり方が早い。
「とにかく、今日も一日、がんばりましょ」
今までみていた夢の真意が気にはかかるが、だがしかし。
もしも真実だとしたら、レインには聞かれないわ。
人々の為に役だつためにと開発したそれが、よもや逆に人々を苦しめる結果になろうとは。
おそらくレインすら夢にもおもっていなかったであろう結果。
「でも、あんな装置が出回ってる。なんてきかないし。…きっとレインのおかげ…なのよね」
服をきがえながらも一人でつぶやく。
そう、一般にそんな装置が出回っている、とはきいたことがない。
もっとも、学園からほとんどでなかったアンジェリークが知らないだけ、という可能性はかなりある。
でも、あれが真実の夢なのかどうかはわからない。
それとなくきいてみようかしら?
その夢の内容というよりは、確実に聞いても無難なものが最後にでてきた。
服を着替えて身だしなみを整える。
「うん。よしっ!」
いつも制服に着替えていたのが朝おきたら私服に着替える。
その違和感はいまだにあるが、それでも自分にできることをしてゆくしかない。
そんなことをおもいつつ、アンジェリークは部屋からでて一階のサルーンへと向かってゆく。

                                -第27話へー

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あとがきもどき:
薫:さてさて。基本的に子どものころに飛び級で大学を卒業したレイン。
  その記憶力のこともあり、聖都への出入りが許可されて一度出向いたことがあり、です。
  そのときにルネとマティアスと出会ってたり(笑
  しかしレインは彼らが何ものなのか、というのをまったくもって知りませんです。はいv
  あと、レインは古い遺跡とおもわれる場所から発掘した様々な古代の文献。
  それをもとに研究を重ねて、人の中には常に潜在能力がある、というのを確信していました。
  ゆえに、まだ十のころから研究をかさね、ついにはそれの増幅機ともいえる品物までこぎつけました。
  が。問題は、その力の源。
  潜在能力が別のものならばよかったのですが、レインが目をつけてたのは万物を司どるサクリア。
  つまり、生き物の中にも微弱ながらのサクリアは存在しているわけで……
  サクリアは宇宙をつかさどるいわばあるいみ取り扱い注意、的なもの。
  当然、扱い方をまちがえればいともあっさりと星一つくらいはかるく消滅です。
  いわば、ジェムのときの一件の事故のようなものですね~。
  しかし、ジェムのときとは違い、自身のサクリアを無理やりに引きだすわけで。
  当然普通のその力を受け止められるほどの力がない人は精神を破壊します。
  それでもって、サクリアに引き寄せられるように当然タナトスも寄ってきます。
  レインはその後、陽だまり邸にて研究を重ね、自身に備わった浄化能力のそれが炎のサクリアのそれ。
  ということを今現在は理解しておりますv
  何しろ陽だまり邸には地の守護聖ルヴァが残していった文献さんがてんこもりv(爆v
  ちなみに、陽だまり邸には謁見室や他の守護聖様がたのお部屋もそのままのこってたりv
  しかし、その意味がわからずにそのまま放置されてるという。
  それゆえにレインは陽だまり邸にとどまりまくってますけどね(笑
  女王試験には定番ともいえる夢vv
  とりあえず、仲間過去夢、そしてまたアルカディアそのものの過去夢。
  さらには女王としての自覚を促すための夢~を交互に取り入れていきたいとおもっておりますv
  ではでは、次回から本編再開vそろそろハンナ&サリーの出番も間近v
  ではまた次回にて~♪

2008年5月15日(木)某日

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