まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
#####################################銀花の園 ~手紙の精霊~
『えっと、こんにちわっ!』
「「・・・・・・・・・・・・・・」」
ロシュを含めて会話をしている最中、突如としてテーブルの真ん中に出現する見たこともない生き物。
否、アンジェリークは昔幾度かみたことがある。
そしてまた、レインもこの屋敷にきてからは幾度かみたことがあるのでさほど驚かない。
だがしかし、はじめてみるヒュウガやロシュはその姿をみて思わず驚愕してしまう。
「おや?これは珍しいですねぇ。あなたがでてくるなんて」
その姿をみて動じることなくそんなことをいっているニクス。
机の真ん中には、なぜか小さな羽根の生えた子どもが一人。
「え?もしかして…あなた、精霊さん?」
同じような生き物を昔みたことがあるのでそれゆえに問いかけているアンジリェーク。
『はいっ!僕は手紙の精霊といいます!あ、あなたが新しいアンジェリーク様、ですね。
えっと、手紙とお荷物お届けにまいりました~!荷物は重いので玄関先においておきましたから』
アンジェリークの言葉にぱっと顔を輝かせてそんなことをいってくる。
「…いやあの。ちょっとまて。…精霊?」
思わず突っ込みたくなってしまうのは仕方ないであろう。
ロシュの唖然としたものいいに、
「ま、この屋敷では何がおこっても俺はあまりもう驚かないぜ?
俺もこの屋敷にくるまでみたことなかったけどな~」
ある意味、どこかなれてしまっているがゆえにあまりおどろかないレイン。
「…タナトスの脅威より前にはよく精霊がこのアルカディアにいた、とは聞いていたが……」
サキアに伝わる星の船の伝承とともに伝わっている昔話。
かつてこのアルカディアには女王の加護のもと、かなりの数の精霊がいた、とのこと。
だが、今ではその姿ははっきりいって見受けられず、おそらく精霊はいなくなった。
もしくは、人々の目に精霊が触れなくなったのであろう、といわれているある意味伝説上の生き物。
『僕は昔からこの宮殿にすんでますから!あ、みなさん、お手紙があったら遠慮なくいってくださいね。
許可がでたので今後は僕がお手紙の配達しますからっ!』
「……いやあの。かなりまて。というか、ものすごくまて。
その許可とか、手紙だとか、どういう意味だ?」
ロシュの戸惑いは至極もっとも。
『僕は基本的に手紙を配達する精霊なんです!アルカディア中ならどこでも配達しますっ!
ず~~とお仕事なくて暇だったんですよ~?最近は負の力も増してきてましたし』
その言いたいことはわかる。
わかるが、突っ込みどころは山とある。
そもそも、どうしていきなり現れたのか、ということ事態も。
「あ、あの?それはそうと、えっと、精霊さん?…お手紙?私に?」
『あ!はい!そうです!えっと、神鳥…でなかった、
アンジリェーク・リモージュ様からのお手紙と、あとお荷物あづかってきてますっ!』
神鳥?
…まさかな。
古文の中にとあった、神鳥の宇宙…のことか?
ふとそんなことをおもうレイン。
研究の過程で神鳥の宇宙、神獣の宇宙、その言葉が古代の書物によくでてきている。
そしてまた、その二つの宇宙の女王がこの地を育んだ、ともとある地方の伝説では語り継がれている。
「え?それって……」
『あと、伝言ですけど、時がきたらセレスティザムで会いましょう、とのことです!
あ、お返事があるときにはお部屋の中にあるオルゴールで僕を呼び出してくださいね!
あと、必要な皆さんのところの私室にもオルゴールはおいておきましたから!それじゃっ!』
ふっ。
いきなり出現したときと同様に、いいたいことだけいっていきなりその場からかききえる。
後には、テーブルの上にちょこん、とおかれている手紙が一枚。
「……ニクス……今のは?」
「ああ、何かこの屋敷に昔から住み着いているという精霊ですよ。
私がこの屋敷を受け継いだときからいますから、かなり昔からいるのではないのですか?」
ヒュウガの問いにさらっと何でもないように答えているニクス。
「ああっ!しまった!写真とっときゃよかった!」
「やめとけ。ロシュ。どうせ合成写真とかいわれるのがオチだ。
俺も以前アレのことを他のやつにいったことがあるけど一笑に付されたしな」
手紙の精霊、と名乗った小さな羽根の生えた生き物の姿を写真にとりそびれ悔しがるロシュ。
どこか驚く場所がかなり違うような気もするが、この場にはつっこむようなものはだれもいない。
「ところで?アンジェリークに手紙、ということでしたよね。ではこれはあなた宛ですね」
「あ。そういえば、玄関に何かおいてる、とかいってたよね。とってくるよ」
テーブルの上におかれているそれをひょい、とつかんでアンジェリークにと手渡すニクスに、
ふと思いついて玄関のほうにと歩いていっているジェイド。
手紙にはいつも必ず『アンジェリーク』から送られてくるときについているかわった形の封がなされている。
まるで鳥が羽を広げたような、何かの紋章のようなもの。
それが神鳥の宇宙の女王の刻印であることは当然知る由もない。
「アンジェちゃんからのだわ。…何かしら?」
もしかして、今までアンジェちゃんからの手紙がいつのまにか部屋の扉に挟まれてたりしたのも、
精霊さんの仕事だったのかしら?
ふとそんなことをおもうアンジェリークであるが、ひとまず手紙を開けてみる。
「で、何がかかれてるんだ?」
そもそも、精霊に手紙を託すようなそんな人物、聞いたこともない。
そもそも、精霊、と呼ばれる存在が実在していたことすら驚愕に値する事実。
「えっと……
『アルカディアのアンジェリークへ。この間のコンパクトは受け取ってもらえたようで何よりだわ。
これからもいろいろと大変なことがあるでしょうけど、がんばってね♡
あと、公の場にもいくこともあるでしょうけど、そのときのために服を送るわね。
少しでも役にたててもらえればうれしいわ♡
あなたと、そしてアルカディアの未来に愛をこめて。リモージュ』
……って、役に…って?」
かなり突っ込みどころ満載の手紙ではある。
そもそも、こう連続して手紙や品物を送ってきたのは今までにあまりなかった、というのに。
「アンジェリーク。玄関にこんなものがおいてあったよ?」
ひょいっと何やらちょっとした大きさの箱のようなものをもって戻ってくるジェイド。
確かにあの手紙の精霊、と名乗った生き物がいったとおり玄関先にプレゼントらしき箱がおいてあった。
大きさ的に確かに服か何かなのであろう。
「……というか、お前の幼友達…って、精霊にことづけるような人物っていったい誰なんだ?」
普通、わざわざ精霊に頼むなどとぜったいにおもわない。
普通ならばアルカディアの郵便制度を利用する。
もしくは新聞に載せてもらい遠くの人とコンタクトをとるか、のどちらか。
デンワはまだあまり全体に普及していないので何とも言いがたいが。
「私にそういわれても……」
レインの突っ込みに答えようにも答えようがないアンジリェーク。
「まあまあ、いずれセレスティザムでそれははっきりするのでは?
先ほどもセレスティザムで会いましょう、といった伝言があったようですし?」
神鳥の宇宙の女王陛下…ですか。
ニクスはその事実を知ってはいるが口には出さない。
それは今いうことでもないし、また自身の秘密にも直結する事柄。
「その紋様……まさか、な」
アンジリェークが手にしている手紙の紋様をみて思わずつぶやくヒュウガ。
さすがに目の前にいきなり精霊となのる生物が現れたときには驚いたが。
それでも表情に出さないのはいかにもヒュウガらしい。
聖都の上層部にのみ伝わる、この地アルカディアを導いたとされる二人の女王。
そして二つの宇宙。
その紋章の一つにアンジェリークの持つ手紙の紋章はものすごく酷似している。
実際には同一のものなのだが、そんなことをヒュウガが知る由もない。
「って、やば!話し込んでたらいつのまにか遅くなっちまった!」
ぼ~ん、ぼ~ん。
サルーンにと据え置かれている巨大な置時計。
その時計が時を刻む。
いまだに時計はアルカディア中に普及してはいないが、それでもその原理と応用はすでに解読済み。
それゆえに人々の生活において時間、というものがけっこう便利に使われるようになってきているここ最近。
「じゃ、俺はこれでもどるわ!じゃ、またな!」
「え?あ、お、おい、ロシュ!」
レインが止めるまもなく、いきなり立ち上がり、そのままダッシュで玄関のほうにと向かってゆく。
そのまま、
「それじゃ、おじゃましました~!」
元気よくそれだけいい、バタン、と玄関から外にとでてゆくロシュの姿。
それはまるである意味風のよう。
「あいかわらず、あのロシュ君も神出鬼没ですねぇ」
以前ほどではないが、以前はよくこの屋敷にこっそりと忍び込んでいたりしたロシュ。
それゆえにそんなことをいっているニクス。
「でも、残念だね。彼が仲間になってくれたらこれで六人目になるのに」
「ふふ。そうですね。でもきっと一緒にお仕事するときはありますよ」
ジェイドの台詞ににこやかに笑みを浮かべながら返事をしているアンジェリーク。
でも、浄化能力者って私がしらなかっただけでけっこう身近にいたのね。
そんなことをおもっているアンジリェークであるが、事実は異なる、というのを彼女は知らない。
そもそも、ロシュの力というか本来内にと秘めていた能力、それが引き出されたのはほかならない彼女の能力ゆえ。
「さて。騒がしい客人もかえったようですし。それでは夕ご飯にするとしますか?」
「あ、はい」
「今日はヒュウガが腕によりをかけてつくってくれましたよ?」
「たのしみです」
でも、ほんっと皆さん料理お上手だし。
私もまだまだ頑張らないと。
そんな会話をしつつも、ひとまず外ももう暗い、ということもありひとまず夕食を食べることに。
「……?編集長、このオルゴールは?」
ふと、様々な仕事を終えて日も暮れかけたころにようやく自分の席にとついた。
そこに見慣れない小さなオルゴールをみつけて、首をかしげて問いかける。
「うん?ベルナールのじゃないのか?今日はとにかく人の出入りがはげしかったからなぁ。
まあ、誰かの忘れ物かもしれないし。それはそうとその机の上は綺麗にいい加減にしとけ」
彼…ベルナールの机の上は様々な資料が山と積まれている。
それでも、一応は資料別に仕分けられているのだからあるいみすごい。
「そうはいいましても。なら編集長、新しい棚、購入してくださいよ」
資料は捨てるわけにはいかない。
「まあ、そのあたりはともかくとして」
またはぐらかす。
経費での話しになるといつも何だかはぐらかされてしまう。
「今日の発表会はまずまずだったな。ベルナール、この記事もよくかけてるぞ?」
「どうも」
本日の発表会の様子を記した記事。
それをようやく先ほど書き上げた。
他の取材を夜にするわけにはいかないので、一度家に戻りがてらに書いてきた。
会社で作業しようものならぜったいに他の仕事がまわってくる。
それは長年の経験からよくわかっている。
「しかし…まあ、ひとまずおいておくか」
もしかしたら誰かの忘れ物を自分の机の上に誰かがおいたのかもしれない。
そんなことをおもいつつ、猫と大樹らしき模様が刻まれたオルゴールをそのままにしておくベルナール。
もう少し余裕があれば、おそらく模様に刻まれている文字にも気付いたであろうが。
今の彼にはその余裕はない。
「さて。と。…君も今頃がんばってるんだろうね」
小さなアンジェ。
机の上に飾っている昔の写真。
以前、彼の実家に預けられていた遠縁の女の子。
ついこの間、最年少で医者の第一次試験を突破した、そう聞いたばかり。
寄宿舎にいれられてしまった彼女にできることといえば限られている。
だから、自身の給料の一部を毎月学院に寄付しているベルナール。
「よし。もう少しがんばるとするか」
いいつつ、さらなる仕事にとりかかってゆく。
彼はまだ知らない。
アンジェリークが今現在、学園を休学しオーブハンターとして活動を始めた、ということを。
「しかし…どうするかな?」
現像してみれば、たしかにそこに映っているのは白き翼。
アンジェリークがユーイの父親に対して祈りをささげているところをとった写真。
彼女の体からはあきらかに淡い金色の光が発生しているのすら写真には収められている。
「……財団より、教団のほうが高くかってくれるかな?」
そもそも、財団にその情報を流せば彼女の身が危険になることは明白。
しかしだからといってせっかく手にいれた特ダネを反故にすることは自身のポリシーが許さない。
しかし、あのジャスパー・ドールがあそこにいるとは。
それもあるいみ収穫ではあるが。
「とりあえず、今から戻るのも何だし、今日はここリースでとまるか」
情報屋という家業がら、様々なところにツテはある。
それゆえに、夜のリースの街を一人あるいてゆくロシュの姿。
「何か今日はいろいろなことがあったわね。エルヴィン」
「にゅ」
ヴォードンでのアーティファクト発表会。
そしてまた、新たな浄化能力者との出会い。
「でも、あの新聞記者のベルナールさん、どこかであったような気がするのよね……」
思い出せないのが何とももどかしい。
ついそこまででかかっているのに、どうしても思い出せない。
そしてまた、ロシュからきいたレインの身の上。
「…何かいろいろなことがありすぎて、頭が混乱してるわ。今日はもうねましょ」
レイン、いつか話してくれるかしら……
だけど、機械がタナトスを呼び寄せるって…そんなことあるのかしら?
いろいろ考えることがあるときは、いつもは眠れない。
だけども、ベットにもぐりこんできたエルヴィンのぬくもりに誘われて、アンジェリークは眠りに落ちてゆく。
……く。
…リーク……。
アンジェリーク。
ふと、名前を呼ばれて振り向く。
いつもときどきみる周囲が淡いピンク色に染まっている夢。
「アンジェリーク」
はっきりと名前を呼ばれたのに間違いはない。
いつもはこんなにはっきりとはしていないのに。
「…誰?誰かいるの?」
「……アンジェリーク。あなたは知る必要があるわ」
この声……
「アンジェちゃん?ねえ、アンジェちゃんなの!?」
忘れたことは一度もない。
昔よく遊んでもらっていた子どもの声。
だけども姿はみえない。
周囲にあるのは、ただただピンク色に染まる空間。
その中に一つ、淡く金色に輝いている部分がある。
「…アンジェちゃん?」
「――あなたの力は全てを慈しみ、そして育てる力……そして、アルカディアそのもの……」
「って……きゃっ!?」
ざあっ。
それと同時にアンジェリーク自身に突如として強い風のようなものが吹き付ける。
一瞬、目を開くことすらもできないほどの。
「――あなたが望めば全てが見通せるの」
その声をききながら、ゆっくりと目をあける。
先ほどまでの空間ではなく、どうやらどこかの建物の中らしい。
……ここは?
ふと気付くと自分自身の姿が透けている。
そこにまるで幻のごとくに存在している自分自身の姿。
そして、何よりも。
「扱う力がないものが力を手にしたら間違いをおこすよ?」
この声……
夢の中でいつか聞いたことがある声に何となくだが雰囲気が似ている。
そちらのほうにと意識を飛ばす。
そこには、七歳前後の男の子と、そしてまた十歳くらいの男の子が一人。
十歳くらいであろう少年のほうの髪はどこか見覚えのある赤い髪。
そして、もう一人の少年の髪の色は金色。
「なっ!そんなこといわれなくてもわかってる!だからこその研究なんだからっ!」
どうやら何やら言い合いをしているらしい。
「――覚えておいたほうがいいよ。サクリアの力は強大なもの。間違った扱いは悲劇を生む。
…炎のサクリアをもつ君はそのことを知らなければいけない」
「なっ!何をいって…っ!そもそも、お前はっ!?」
「僕?僕は……」
「ルネ!こんなところにいたのですか?…おや、君はたしか、財団のレイン君、だったね?
…ルネが何か失礼なことでも?」
赤い髪の少年が小さいほうの少年にくってかかろうとしたそのとき、
薄い黄緑色の髪をしたやさしげな二十歳前後の男性がやってくる。
「げっ。マティアス……」
「ルネ。また相手を困らしていたのですか?こまったものですね」
そういうその顔は本当に困っている、というよりは仕方がないですね。
とおもっているようなそんな感じをうける。
「別に困らしてないよ。ただ、忠告していただけだよ」
「あなたのその物言いは普通の人にはわかりにくいものがあるのですよ?」
「そうはいうけど、マティアス。炎の力を秘めている彼には自覚は必要だよ?」
そんなルネと呼ばれた少年の言葉に思わず目を見開く。
「ルネ。それは……」
「すでにもう布石は敷かれてる。運命は変えられない」
「とにかく!お前にいわれるまでもなく俺はわかってるつもりだっ!」
アーティファクトの研究もいいが、力を見誤ってはダメだ。
そういきなり初対面の、しかも年下の子どもにいわれればムキになるのは仕方がない。
これは……?
自分はそこにいないのに、それでも流れ込んでくる彼の…いや、レインの感情。
これは…もしかして、レインの昔?
「しかし、ここ聖都セレスティザムの神殿であまりいざこざはいけませんよ?」
「は~い」
セレスティザムの神殿。
ということは、ここは聖都セレスティザムにあるセレスティア教団の神殿?
アンジェリークがそんなことをおもっている間に、レインらしき子どもの姿が遠のいてゆく。
「……サクリアは宇宙を司どる力そのもの。……扱い方を間違えたら悲劇をうむ…」
小さくつぶやくルネ、と呼ばれた少年の言葉がやけに耳につく。
サクリア…宇宙を司どる…ちから?
――あなたの中に宿りし力は全ての力。
ふと、聞こえてくる声。
「って…きゃっ!?」
それと同時、再び突風にも近い風がアンジェリークの体を吹き抜けてゆく。
-第26話へー
Home Top Back Next
#####################################
あとがきもどき:
薫:さてさて、手紙の精霊はさくっと終わり(まて!)次回は女王試験恒例の夢のお話v(笑
とりあえず、過去夢、にゆくのですv今回の後ろのほうですでにはいってますが(笑
さて、ベルナールはさくっとはじめから知ってるほうと、後から知るほう…どちらにするかなぁ?
彼のことだから手紙だとぜったいに書類の山にうもれさせてみてなさそうだ(爆
ともあれ、次回でレインの研究さんですv
ではでは~♪
2008年5月15日(木)某日
Home Top Back Next