まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
さてさて、今回はさくっと依頼を済ませてたり(こらまてや
まあ、あの風の脅威はさほどネタ的にはいろいろできるけど、ひとまずさくっと完了をば。
ともあれ、いっきますv
#####################################銀花の園 ~風の恩恵~
「ち。どうやらビンゴ、だな」
明らかに周囲の草木が枯れ朽ちている。
それもこの付近のみ。
「レイン!そこにっ!」
ふと、草木が朽ちている一箇所から感じる違和感。
「ナイス!アンジェリーク!そこかっ!」
パシュ!
アンジェリークが指摘した場所に確かに濃厚な影の気配を感じる。
それゆえに銃の一撃を叩き込む。
それと同時に緑色のもやが周囲にと立ちこめる。
そして、たっているのがやっとというほどの強烈な風。
「…バジリスク、か?」
その姿をみてそんなことをいっているロシュ。
確かに見た目は蛇のような緑色のタナトスではあるが。
「そんなに簡単な相手ならいいんだが…な」
それはレインの本音。
バジリスク、と呼ばれているタナトスならばいともあっさりと決着がつく。
バシュ!バシュ!
幾度か攻撃を叩き込んでもどうやらあまりダメージは受けていないらしい。
それでなくても風が強すぎてどうも狙いが外れてしまう。
そういえば、護り石があったんだわ。
さきほどのタナトスを倒したときのオーブはあの父子にと渡した。
生活費にあててください、と。
あの子の勇気が父親を目覚めさせたも同然なのだから。
夜の闇のように包み込むような優しさ。
「…護り石よ……」
不思議といえば、不思議なのだが、闇属性の力をもっていると思われるオーブのことごとくは、
この護り石の中にと吸い込まれていっている。
レインやヒュウガ曰く、それが護り石の特性だとか。
何でもヒュウガがいうには教団に伝わる伝承によれば護り石はオーブの源とも言える物質らしい。
アンジェリークの祈りに伴い、淡い紫色の光がアンジェリークのもつ小さな巾着袋の中より発生する。
それと同時。
「…こ、これは……」
「さっきと…同じ?」
ふとタナトスと向かい合っていたレインの体内より湧き上がる暖かな力。
そしてまた同じようなことがロシュの身にもおこり、思わず自身の手を眺めるロシュ。
レインの体からは赤い光のようなものが湧き上がり、ロシュの体からは青い光が。
そして体に満ち溢れてくるいつもより多くの力。
そしてまた、その力の使い方すら感覚で理解ができる。
「……よし。いくぜっ!全てを焼き尽くす炎よ、浄化の炎で邪悪なる影をやきつくせっ!」
体の中に感じるのは炎の力。
それゆえに銃に力をこめて、つぶやきとともにタナトスに砲撃を加えるレイン。
「確かめてみるのにいい機会、だな。勇気と変化をもたらす風よ!影をけちらせっ!」
先ほど感じた力はどうやら気のせいではないらしい。
それゆえに先ほど試しで購入してきたブーメランに力をこめておもいっきり投げるロシュ。
バシッ!
バンッ!
ロシュが投げたブーメランはタナトスに直撃し、タナトスがその身をよじると同時、レインの砲撃が炸裂する。
ロシュがタナトスにダメージを与えたことは明白。
それゆえに思わず驚きの表情を浮かべてロシュのほうを振り返るレイン。
「今だわ。浄化の光よ、世界をやさしさで満たして――」
二人の攻撃をうけ、タナトスが弱っているのが見て取れる。
弱っている今がチャンスとばかりに浄化の力を発動させるアンジェリーク。
アンジェリークの祈りに伴い、タナトスは光の粒子となってかききえてゆく。
「って、おまっ!?ロシュ!?いつのまに浄化能力を!?」
レインが知っている限り、このロシュには浄化能力などなかったはずである。
だからこそ驚きを隠しきれないレイン。
「ついさっきさ。実はこの俺自身もびっくりしてるところだけど。さっき感じた力は気のせいじゃなかったんだな~って」
いいつつも、ちらっとアンジェリークのほうをみる。
どう考えても彼女がきっかけ、としか思えない。
「ついさっき。って」
「え?レイン。このロシュさんも浄化能力者なんでしょう?
さっきも彼がタナトスを攻撃してくれたおかげで浄化できたもの」
驚きで目を見開くレインとは対象的に、きょとん、としながらもいっているアンジェリーク。
アンジェリークからすればロシュはもともと浄化能力の持ち主なのだろう。
そういった解釈をしていたりするのだが。
「って、ちょっとまて!さっきも、ってまさかこれより前にもタナトスと遭遇したのか!?」
きょとん、としながらいってくるアンジェリークの台詞に驚愕せざるを得ない。
いくらオーブの力を引き出して攻撃できる能力があるとはいえ、一人では危険すぎる。
アンジェリークがいないときに四人でなされた会話の中に、タナトスが彼女を狙っている可能性がある。
そういう話題もでているのだからなおさらに。
「ええ。さっき子どもを捜しに言ったときに。
だけどレインもこのロシュさんが浄化能力者だ、ってしてたんでしょう?」
アンジェリークからすれば、どうやら知り合いらしいこの二人がそういうことを知っていてもおかしくない。
というか知っていて当然、という思いがある。
「いや。俺は知らなかったけど…というか、おまえ、いつのまに……」
「だから。ついさっき、だって。たぶん俺よりそこのアンジェリークのほうが詳しいとおもうぜ?」
「え?」
レインの驚愕にみちた言葉に、ひらひらと手を振りながら答えるロシュ。
ロシュからすれば自分に起こったこの不思議な現象はどう考えてもアンジェリークがらみ、
としか思えない。
当のアンジェリークはそんなことは微塵もおもってはいないが。
「…とにかく、詳しいことは後で皆の前で教えてもらえるか?ロシュ?」
「お。情報料はたかいぜ~」
自分の身に起こっていることでも情報、としてそれに見合う金額を請求する。
そのあたりはさすが商魂たくましい、といえるのであろう。
「とにかく。よくわからないけど。依頼はこれで完了ね。依頼人のところに戻って安心させてあげましょう」
そんな二人のやり取りの意味はアンジェリークにはよくわからない。
どうも話の内容をきいていれば、ロシュは以前から浄化能力をもっていたわけではなさそうである。
私と同じようにいきなり浄化能力に目覚めたのかしら?
そんなことをふとおもうアンジェリーク。
アンジェリークとてつい数日前までは自分にそんな特殊ともいえる能力があるなど夢にもおもっていなかったのだから。
陽だまり邸。
とりあえず、大学生エレナにやはり突風の原因はタナトスだったようだ、そう説明し。
そしてロシュを伴い陽だまり邸にと戻っているアンジェリークとレイン。
そしてなぜかロシュを伴い三人での帰宅。
レインの提案によって急いだほうがいいから、というので馬車を借りての帰路ではあったが。
カルディナやヴォードンといった特殊機関があるような場所においては馬車のレンタル。
という事業は当たり前のように普及している。
そしてまた、同じ場所に向かう人がいれば便乗して載せてゆく。
もっとも、その場合は馬車の使用料が乗り込んだ人々の人数で割られての計算になるが。
「おかえりなさい。…おや?あなたまでご一緒でしたか。ロシュ君?」
そこによく以前しつこくこの陽だまり邸にきていた人物の姿をみてそんなことをいっているニクス。
彼からすれば、この陽だまり邸に隠された秘密が必ずあるはず!
といってしつこく調査しようとしていた彼はあまり歓迎できる相手ではない。
「おかえりなさい。二人とも。あ、お客さんもいるんだね。
ちょうど馬車の音がきこえてきたからお茶を用意してまっていたんだよ?」
いいつつ。
「もう一人分用意してこないとね」
にこにこしながら奥に引っ込んでゆくジェイドの姿。
「無事にもどったようだな。…何よりだ。どうやら客人のようだが。
レインの表情から察するに、何かあったのか?」
レインの顔が何やら考え込むような表情になっていることから推測して話しかけてきているヒュウガ。
「ああ。こいつをつれてきたのもそのことがあって、なんだ。今皆、時間いいか?」
「まあ、私はかまいませんけどね~。どうやら深刻そうな話のようですし?」
「あ、じゃぁ、私、ジェイドさんを手伝ってきますね」
馬車の中でもロシュとレインはサクリアだの何だのとよく判らない話をしていた。
その力の高まりや調和性、などといわれても、アンジェリークにはまったくもってわからない。
ロシュは様々な情報を人に売って生計を立てている、ということからもそのあたりのことは博識。
ゆえにこそ専門用語をだしてもある程度はレインと話が成り立つ要素をもっている。
しかし、アンジェリークからすれば二人の会話はまったくもって理解不能。
さらにはレインが依頼をうけた解読競争の文面などにでもなればそれこそ完全な蚊帳の外。
パタパタとそのままジェイドを追いかけるようにキッチンのほうにと向かってゆくアンジェリーク。
でも、お帰りなさい…か。
ふふ。
寄宿舎でもそういわれることはあったが、それらは友達や先生からのもの。
灯りがついている家にたどり着いたときにほっとする。
暗くなるまで遊んでは灯りのついた家にもどり、両親が出迎えてくれる。
そんな過去の懐かしい思い出を思い出し、思わず顔がほころんでしまう。
ここに両親はいないけれど、だけども彼女を待っていてくれる仲間がいる。
それだけで気分的にもかなり違う。
「ジェイドさん。私もお手伝いしますっ!」
「アンジェリーク。でも君もつかれてるんじゃないの?大丈夫?」
「平気です!二人で運んだほうが能率もいいですしね」
和やかなそんな会話をしながらも、二人してお茶とそのお茶うけ用のお菓子を運んでゆく。
「……それは興味深い話、ですねぇ。そのロシュ君が浄化能力に目覚めた…ですか。いやはや」
レインの話は、今まで浄化能力を持ち合わせていなかったロシュが何でもいきなり浄化能力に目覚めた。
というもの。
「そういう例はあまり聞いたことがないが。まれにある、とはいわれている」
さすがに教団関係者だけのことはあり、様々な知識はある程度浄化能力系に関しては人より豊富。
そんなヒュウガの言葉に、
「ああ。俺もそういう話もある、ということは知ってはいる、が。どうやらこいつが関係してるらしくてな」
いいつつ、目線でアンジェリークを指し示すレイン。
「え?私?」
レインのいいたいことがわからない。
それゆえにきょとん、と首をかしげるアンジェリーク。
テーブルを囲んでのちょっとした話し合い。
六人と一匹、といったほうがいいのであろう。
綺麗に円卓の形になりテーブルを挟んでの話し合い。
「俺にもともとそんな力はなかった。というのはそこのニクス氏もレイン博士もよく知ってるとおもうが。
とにかく、俺が力を感じたのはそこのアンジェリークから光をうけて、からなんだ」
「?何それ?」
いわれてもアンジェリークには意味がわからない。
そもそも、彼女にその自覚はまったくない。
「もしかしたら、アンジェリークの力がロシュの中に眠っていた能力を引き出したのかもしれないな」
「え?レインったら、私にそんな力があるわけないじゃないの」
レインの言葉をころころと笑いながらいともあっさりと否定する。
「……あんた、自分の力にずいぶんと自身ないんだなぁ~……」
そんなアンジェークの言葉に思わずあきれた声をだしているロシュ。
「なるほど。その可能性はありえる、な。彼女の能力は清く、それでいて穢れがない。
全てを慈しむその慈愛の能力ならばそういうこともありえるのかもしれない」
アンジェリークが彼、ヒュウガがおもっている存在ならばその可能性はなくもない。
奇跡すらおこしえる存在なのだから。
「でも、素敵だね。じゃあまた仲間が一人ふえるんだね。あ、俺はジェイド。よろしくロシュ」
「って、ちょっとまて!俺はあんたたちの仲間になる、なんていってないぞ!?」
にこやかにいってくるジェイドの言葉にすかさず抗議の声をあげる。
「え?違うの?」
「え?違うんですか?」
ジェイドとアンジェリークの声はほぼ同時。
「あたりまえだろっ!せっかくこんなどこにでも遠慮なく危険地帯でも入れる力!
これで俺の情報屋としての活動もひろがるってもんだぜっ!」
ぐっと握り締めたこぶしに力をこめて言い放つ。
以前はタナトスの脅威があろうとも、それでも逃げ足だけの速さでどうにかこなしていた。
が、今は違う。
対抗しえる力を得た。
ならば逃げることなく活動がどうどうとできるというもの。
「やれやれ。ロシュ君も相変わらず、ですねぇ。まああなたはそういうとおもいましたよ」
やれやれ、といった表情でそんなことをいうニクスであるが。
「せっかく得た力を人々の為につかわないのか?きさまは?」
その言葉に多少顔をしかめて問いかけるヒュウガ。
ヒュウガからすれば浄化能力は天からさずがったとても神聖なもの。
ゆえに人々の為にその力を使うことこそが正しい。
そもそも、銀樹騎士団の教えもそのように説かれている。
「まあまあ。ヒュウガ。こいつは仕事で得た資金でタナトスに襲われて孤児なったやつらの面倒をみてるしな。
人にはそれぞれ役割がある。こいつが仕事をやめたら困るのはその子たちもだしな」
「って!レイン博士!それをここでいう必要はないだろう!?」
そもそも、孤児たちの面倒をみているのは彼自身も孤児だったから。
自分と同じ境遇の子ども達を少しでも助けたい、という思いからこっそりと支援している。
「…なるほど。そういう事情か。理解した」
情報屋ロシュの噂は聖都でも聞いたことがある。
かなり高額な依頼料さえ払えばどんな危険な情報でも必ず手にいれてくるという。
その情報は裏の情報にしろ表の情報にしろ、まず確実。
しかし、その依頼の難易度の高さに応じてその依頼料は格段に跳ね上がる。
あるものは、彼はお金さえだせばどんなことでもやる、と揶揄しているものもいるのも事実。
だが、全ては孤児となった子ども達に少しでもよい暮らしをさせてやりたい。
そうおもう彼の心から生じている行動。
人の噂、というのもはとにもかくにもあてにならないもの。
ましてや人は見ただけでは内心何を考えているのかつかめない。
そう、かつて親友であったカーライルの心情をヒュウガがつかみ損ねていたように……
レインの言葉に納得し、静かにうなづくヒュウガ。
「人にはそれぞれ役割がある…か」
かつて聖都に連れてこられたあの方がいっていたとおりだな。
思わずそのことを思い出し小さくつぶやくヒュウガ。
おそらく、彼はまだあの聖なる都の中に閉じ込められているのであろう。
時がくるまではかの地から出ることもおそらくできない。
彼はそう幼いながらに悟っていた。
「そういや、タナトスと戦ってるとき、俺の体からは赤い光が、こいつからは青い光が発生したけど。
それは何だかわかるか?ヒュウガ?」
レインとしても推測はしている。
そもそも、彼自身がもっている力とあの光。
おそらく関連性がある、ということもわかっている。
わかっていての確認の言葉。
「おそらく、俺のに関しては想像はつく。俺の浄化能力は基本、炎のサクリア、だしな。
そして、おそらくこいつ、ロシュの能力は……」
「なるほど。私は以前、鋼のサクリアの恩恵を強くうけている、といわれたことがあるが。
しかし、青い光…それはおそらく風のサクリアであろう。ロシュ殿はおそらく風の恩恵をうけられた、とみた」
「ロシュ、でいいぜ?何か敬称つけられたらこそばゆいしな。
しかし…風…か。ある意味納得、だな」
目の前にいる男性が元聖騎士に選ばれるはずであったヒュウガ、という銀樹騎士団員であることは知っている。
だがそれを口にだす必要はない。
彼が知っていればそれはそれで問題ないのだから。
まあ、その情報を求められたら依頼料をもらい依頼主に話すまでだが。
風は勇気を、そして変化をもたらしてくれる。
あるいみ、この俺にぴったりの力、ではあるな。
そう納得するものの、
「しかし、一概にそう、とはいえん。一度聖都に赴いて自身の力を確認するのもよいだろう」
かの方ならば、おそらく彼に宿った力が何なのかすぐに言い当てるはずである。
そう、ヒュウガにかつてそういったように。
『あれ?君。君、鋼のサクリアを秘めてるんだね。僕は光。これからよろしくヒュウガ』
小さな子どもとはおもえない、そのはっきりした言葉に、瞳に宿る光。
本来の教団長になるべき存在がどんなものなのか、あのときはっきりと示された瞬間。
しかし、そうはいっても相手はまだ五歳にもみたない子ども。
その知識の豊富さと、そして記憶力のよさ。
きちんと周囲が導いていかなければおそらく子どもの心は壊れてしまうであろう、ということも。
聖都を離れるにあたり、きにかかったのはあの少年のこと。
おそらく、あの中で彼にとってヒュウガは気安くはなせることができる数すくない存在だったはず。
それでも、どうしても譲れなかった。
親友の消息、そしてその真実を確かめるまでは。
それはどうも彼とてわかっていたらしく、
『それは君にとっては必要な試練。がんばってね』
そういって悲しい瞳で微笑みつつも彼は笑顔で送り出してくれた。
「げえ。あそこ、堅苦しいからなぁ」
幾度こっそりと進入してこってりと絞られたことか。
それでも懲りずに進入するのがロシュらしい、といえばロシュらしいのだが。
「でも、残念。せっかく仲間が増えるとおもったんだけど」
「そうですね。ですけどロシュさんはロシュさんなりに自分のできることをしている。
それはそれですばらしいことだとおもいます。私も私にできる限りがんばらないと」
人々の幸せのために。
それぞれやっていることは異なるが、目指しているものはおそらく同じ。
全ての人々の幸せのための行為。
「……力はあるべき場所に集まりをみせる…ですか」
そうちいさくつぶやき、
「まあまあ、とりあえず話しもまとまったところで?そういえば、レイン君?
君にきていた招待状の内容について話してもらえますか?それと依頼の内容も」
話のころあいを見計らい、レインに別の話をふるニクス。
「あ、それか。それだがな……」
しばし、レインによる意味不明ともいえる専門用語の飛び交う説明が、
サルーンの一角において見受けられてゆく。
-第25話へー
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あとがきもどき:
薫:えっと。手紙の精霊(笑)定番なのでやっぱり登場させることにv
というわけで次回は手紙の精霊さんv(こらこらv
全員そろっているときに姿見せ~(爆
リモージュの映像もかなり入れようかどうしようか悩み中~
ともあれ、次回につづきますv
ではまた~♪
2008年5月14日(水)某日
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