まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

さてさて、カルディナの依頼の中で無難なのは、やはり強風のタナトスでしょう。
オリジナルのタナトスというか依頼でもいいですけど、ここはあえて大学さんでv
今回はあまり話がすすんでおりません。次回から依頼内容に突入ですv
何はともあれ、ゆくのですv

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銀花の園   ~カルディナ大学~

「しかし。いいことしたな。アンジェリーク」
「ええ」
思わず顔がほころんでしまうのは当然といえるのかもしれない。
アンジェリークの祈りによって目をさましたユーイの父親。
ユーイのあの喜びにみちた泣き顔が忘れられない。
笑顔の中にひたすらに涙が流れる様子は、とても喜んでいた証。
ユーイとその父親、そしてユーイを心配していた子ども達。
そんな彼らと別れて学びの園カルディナに向かっているアンジリェーク・レイン、そしてロシュの三人。
「というか、何でお前までついてきてるんだ?ロシュ?」
思わず憮然として問いかけてしまう。
「そういえば。ロシュさん。ベルナールさんに用事があったんじゃぁ?」
ベルナール。
その名前もどこかで覚えがある。
だけどもどうしても思い出せないアンジェリーク。
「まあ、そうだけどさ。だけどあんたたち、今からオーブハンターの仕事にいくんだろ?
  それこそネタになるしっ!」
ぐっと力をこめて言い放つ。
ある意味プロ根性、といえるのかもしれない。
彼ら無償で活動をする、特にニクスたちのオーブハンターのグループの活動は世間の関心も高い。
「そういえば、レイン。カルディナの依頼って何なの?」
ニクスさんはあまり急ぎではない、とかいっていたけど。
ふとまだ依頼内容を聞いていないことを思い出し、きょとん、と首をかしげて問いかける。
首都ヴォードンから学びの園カルディナまでは徒歩でも十分にいける距離。
だがちょうど時間的に乗合馬車の時間と重なったことから時間節約をかねて馬車を利用している三人。
さすがに昼間だということもあり、他にも幾人かの客が一緒に乗り合わせていたりする。
中にはどうみても先ほどの新聞社に用事があって出かけていたであろう人の姿も垣間見える。
必死に渡されたとおもわれる資料に目を通している人の姿も目に入る。
「何でもカルディナ大学の生徒からの依頼らしい。ま、依頼者にあって詳しい話を聞けばわかるさ」
「大学、ね。そういえば、私の叔父様も大学に勤めてらっしゃるから、挨拶しておかないと」
「というか。お前を幼いときにとっとと寄宿舎にいれたヤツなんて気にしなくていいとおもうが……」
それはレインの本音。
そもそも、両親を失った子どもをいともあっさりと誰も知らない寄宿舎にいれるなど。
相手は小さな子ども。
まだ甘えたい盛りであろうに。
「叔父様には叔父様の考えがあったのよ。叔父様は昔から子どもでもきちんと規律を正さなくてはいけない。
  そうおっしゃってましたし」
「というか、どうも俺のしってるいつも喧嘩なってた教授にその頭でっかちのやつ似てるな……」
アンジェリークの言葉に大学に通っていたときのことを思い出し多少ばかり顔をしかめるレイン。
いまだに子どもであったレインが大学に通い、しかも瞬く間に単位を修得し。
さらには大人顔負けの論文などを発表した。
だが、子どもは大人をたてるものだの何だの理不尽なことを言われた覚えはいまだに強烈。
「大学、かぁ。ま、俺には関係ない場所だけどね。そういえば、ある大学教授の裏金問題。
  あれもまだ裏をとれてないんだよなぁ」
ロシュにとって大学とはある意味ネタの宝庫。
「お前、そういう裏の情報集めるのもいいが、気をつけないとやばいぞ?」
思わずあきれてロシュをみながら一応忠告するレイン。
中には情報の隠蔽を図ろうとして何をしてくる輩がいるかわかったものではない。
そう、自身がかつて所属していた財団のように。
「そのあたりは、逃げるのも得意だぜっ!何といっても俺の逃げ足の早さはアルカディア一だからなっ!」
「もう。ロシュさんったら。でも本当に気をつけてくださいね?」
きっぱりと言い切るロシュに苦笑するしかないアンジェリーク。
だけども彼を心配しているのは本音。
彼に何かあって悲しむのはあの子ども達なのだから。
「お。カルディナがみえてきたぜ」
「本当だわ」
馬車の窓からカルディナの街の姿が見えてくる。
「さ~て。それじゃ、俺が依頼をきいとくから、お前はその叔父さんのころに挨拶にいくか?」
「え?レインはいかないの?」
てっきりレインのことだから一緒にいくとか何とか言い出すかとおもっていたのでその提案には多少びっくり。
「何となく顔を合わせないほうがいいような気がものすっごくするしな。
  俺の勘はけっこうあたるからな。まあ、どうせ同じ大学内部だ。問題はないだろ?」
確かにレインのいうことにも一理ある。
大学の中にタナトスが出た…とかいうのならば一刻を争うはずであるが、そうでもなさそうである。
「それじゃぁ、俺はレイン博士と行動をともにするといたしますか。
  どうも話をきくかぎり、そのあんたの親戚だという教授とは顔を合わせていい印象はなさそうだしな」
どちらかといえば言い合いになってしまう確率は高い。
何となくだが、いつも大学に忍び込んでは情報を得ようとするロシュをものすっごく叱る教授の姿が目に浮ぶ。
事実、ロシュ、そしてレインの想像通りだったりするのだから世間というものはあるいみ狭い。
「それじゃ、あとで大学の表門のところで待ち合わせ。それでいいな?アンジェリーク」
「ええ。わかったわ」
そんな会話をしていると、やがて乗り合い馬車は学びの園、カルディナの街にとたどり着く。

学びの園、カルディナ。
この地にはアルカディアの中で唯一といっていいほどの大学が存在している。
知識を学ぶものはこのカルディナに必ずくる、といっても過言ではない。
それゆえにこの街においては大体が文学系に関することが発展を遂げている。
店先にあるのも、古文などそういった類の品が主。
カルディナ大学は、磐石の台地、と呼ばれる陸の下にと位置しており、ときどき台地から吹き降りてくる風がここちよい。
「…って、きゃっ」
「何だ?すごい突風だな」
いつもならここちよい風のはずが、今日にかぎってとても風がつよい。
「こんな強い風なんて珍しいな」
どうやらレインとロシュの意見は同じらしい。
思わず大学の門のところで足をとめ台地のほうを見上げる三人。
風はどうやら磐石の台地のほうから吹き降りてきているらしい。
別に今日は風が強い日だとか、そういうものでもない、というのに。
「あ。もしかして、オーブハンターさん、ですか?」
赤い髪のオーブハンター。
しかも、それがかの有名なレイン博士、というのだからその噂はけっこうアルカディア中に広まってはいる。
そんな会話をしている三人の姿に気付き、声をかけてくる女生徒が一人。
「うん?もしかしてあんたが依頼者、か?」
「ええ。そうです。エレナ、といいます。お目にかかれて光栄です。レイン博士。
  博士の論文はとても楽しくて、楽しくて!私ファンですっ!」
ぐっと何やらこぶしを握り締めてものすごくきっぱりといいきるエレナ、と自己紹介した女性。
「特に頭でっかちの大人を多少皮肉をこめてこけおろしつつも、きちんと論文をまとめているのが素敵ですわっ!」
「…は、はぁ。どうも。それより、依頼の内容は?」
「…え、ええと。とりあえず私は先に叔父様に挨拶にいってきますね」
どうやら、話が論文のほうに向かっていきそうな気配である。
それゆえに、先に叔父に挨拶すべく、エレナに簡単に挨拶をしてそのまま大学構内にと入ってゆくアンジェリーク。

「アンジェリーク!?」
大学構内の教授室。
「お久しぶりです。叔父様。今日はきちんと挨拶にきていなかったのでご挨拶にまいりました」
きちんと礼儀正しく挨拶をする。
彼の人柄を示しているのであろう。
部屋の中はぴっちりと整理整頓が行き届き、塵一つどこにも見当たらない。
「…なるほど、まあ、かけなさい」
「あ、はい。失礼します」
つまりは突っ立ったまま話をするのは礼儀作法にのっとっていない。
そうこの叔父は言外にいいたいのである。
進められ、そこにある椅子にと腰かける。
「それで?私のところにはニクス殿から連絡がきたが。学園はどうする気なんだ?
  そもそも、子どもの本分は勉学であろあに、人助けは確かにいいことだが。
  だがしかし、それは大人になってからでもできることではないのか?」
叔父のいいたいことはわかる。
判るが、
「ですけど、叔父様。私、決めたんです。私に今できることをしよう。って。
  とうぜん、勉強をおろそかにする気はありません。ですけど困っている人をたすける力がある。
  その力が今だけなのかもしれないし、そうでないのかもしれない。
  なら、できるときにできることを。それは私の両親も同じだったとおもうから」
ふう。
アンジェリークの瞳の輝きに嘘偽りはない。
「まったく。そこまで亡きあいつらに似なくても…血は争えないな。
  しかし、アンジェリーク。まあニクス殿はかなりの篤志家としても有名なので私もしぶしぶ許したが。
  それでも危険なことだけは十分に気をつけるんだぞ?
  お前にまで何かあったら死んだあの二人に申し訳がたたないからな」
そういいつつ、今まで険しかった表情にふっと笑みを浮かべる。
たしかに、この気質は死んだ彼女の両親譲りといっても過言ではない。
遠縁、とはいえあの二人のことは彼もまたよく知っている。
そもそも、彼らたちは彼の教え子でもあったのだから。
「はい。叔父様」
この叔父は確かに厳しいが、それも全ては人のことを思ってのこと。
それが判っているからこそアンジェリークは彼を尊敬している。
両親とはまた違う尊敬の仕方だが。
「それはそうと、今日はどうしたんだ?」
「あ。ええ。今日は依頼をかねてここカルディナにきたので、叔父様にご挨拶を、とおもいまして」
「…依頼?ああ、どうせ大方エレナだろう。まったく、たかが風くらい……」
「?風?確かに、依頼者はエレナさん、とおっしゃったようですけど?」
アンジェリークの言葉にぶすっとする叔父の姿をみてきょとん、と首を傾げざるをえない。
「最近、磐石の台地からものすごい突風がふくことがときたまあるんだよ。
  エレナはそんなことは自然現象的にいくら何でもありえなすぎる、といって。
  タナトスの仕業ではないか、と言い出す始末で。まあ、本当にタナトスなら騒ぎになっているはずだし。
  かといって別に被害もないわけだから銀樹騎士団に頼むわけにもいかないしな。
  ただ、風が強い、それだけの理由で忙しい人々の手を煩わすなど……」
何やらぶつぶつと文句らしきものを言い始める。
つまりは、あやふやな状況で人を振り回すな。
そうこの叔父は言外にいっているのである。
「でも、叔父様。もしタナトスだったら危険ですよ。そのエレナさんの心配も道理とおもいますけど?」
「まあもしそうだとしたら、だがな。しかし違っていたたらそれこそ時間の無駄だ。
  それより、アンジェリーク。最近のことを聞かせてくれないか?
  ニクス殿のもとでお前がどのような生活をしているのか。それも多少きになるしな」
「はい。叔父様」
そんな彼の言葉ににこりと笑みを浮かべて返事をする。
この叔父は彼女が子どものころから彼女を一人の一人前の女性として扱っていた。
そもそも、彼は相手が子どもだろうと大人だろうと、とにかく妥協を許さない。
かといえば、子どもが大人より秀でるようなことをすれば、大人をたてるのが常識云々。
とかなり変なこだわりをもっているところもある。
しばし、彼にと陽だまり邸の様子を説明するアンジェリークの姿が、
ここ、カルディナ大学の教授室の一角において見受けられてゆく。

「なるほど。説明はわかった。確かにもし万が一タナトスだったらほうっておけないな」
確かに常識的に考えてもよく晴れた風のない日に突風が吹き荒れる。
というのは絶対におかしい。
頭の固い大人たちはどうもそれは偶然であり、たまたまだ、といって聞き入れない。
そもそも、風を起こすだけのタナトスなど、今まで聞いたことすらない。
「ええ。教授たちはどうしても信じてもらえなくて。かといってこんなこと銀樹騎士団に頼むわけにも。
  お願いできますか?レイン博士の手をわずらわせて申し訳ないですけど」
エレナが一通り、自分の考えと、そしてタナトスとの関連性。
それらを結びつけた経緯を説明しおわり、レインたちをみて懇願してくる。
「わかった。たしかにもしそうだとしたら、ここも危ないしな。
  いつ街の中にはいってくるかわからないしな。それに何か突風の原因になるモノがあるのかもしれない」
それこそ何か偶然が重なり、そのような現象が起こる、ということもときたまある。
自然現象の仕組みの解明もまたレインにとっては興味深いところ。
「そういえば、ロシュ。お前もやっぱりついてくる気か?」
「へへ。当然」
万が一タナトスだった場合危険性は遥かに高い。
それでもあたりまえのようにいってくるロシュの言葉に思わず苦笑してしまうレイン。
「いっとくが。自分の身は自分でまもれよ?俺はあいつを護るので精一杯だからな」
「でも、あの子は護られてるだけのお嬢ちゃんじゃないとおもうぜ?」
まだそんなにアンジェリークのことを知っているわけでもないのにそれはなぜだか断言できる。
「たしかに。だから危なっかしいんだよ。あいつは自分のことをほうっておいてでも無理をしそうだからな」
「あ~。それはわかる。ものすごく。たぶん、両親の性格を思いっきり譲り受けてるんだろうな~」
彼女の両親のその慈善に満ちた医者としての活動は、あるいみアルカディア中に広まっていた。
二人を迎え入れたいとおもう病院は多々とあったものの、それでも人々の役にたつ一介の医者でいたいから。
そういって彼らが住んだのがフルールの村。
アンジェリークの両親のような医者になりたい、とおもった人々は数知れず。
ある意味、人々にかなりの好影響を与えた人物、といえるであろう。
エレンが一通り説明しおわり、そして授業があるから、といって学校の中にと戻ってゆく。
「さて。と。俺はここであいつをまってるけど。お前はどうする?」
「あ、俺はちょっと買い物にいってくるわ」
いって、ひらひらと手を振りながらその場を後にしようとする。
と、ぴたり、と立ち止まり。
「レイン博士。とにかく財団の動きにはきをつけておいたほうがいいぜ?
  あいつら、この前も報告したとおもうけど、何をしでかすかわかったものじゃない」
真剣な表情でレインにと忠告する。
レインとて彼の情報がなければ、あの研究をヨルゴが続けていた、と信じられなかった。
彼にその研究の真意を調査するように依頼しているのは他ならないレイン自身。
「ああ。わかってる」
もし、あの研究か真実その危険性を無視されたまま実用化されたとしたら。
彼が提案したあの研究そのものは、人々をタナトスの脅威から助けるためのものだった、というのに。
「ま、あんたなら十分にやつらのやり方はわかってるとおもうけどな。じゃ、また後でな!」
いいつつひらひら手を振りながらも街の中にと消えてゆくロシュ。
そんな彼の後姿をみおくりつつ、
「わかってるさ。…ヨルゴのやり方は…な」
下手なプライドばかりがたかくて、その先にあるてあろう被害は無視してでも始めたことは遣り通す。
それは昔からいえること。
それで失敗しても、失敗ではなく成功の元だ、と言い張る始末。
そんな歳の離れた兄への対抗心もあってレインは子どものころからとにかく研究に勉学に没頭した。
少しでも兄の行動による暴挙の被害を減らせることができたならば…と。
しかし、それが人の命にかかわってくるようなモノを認めるようでは話が別。
あのまま、あの財団にとどまっていてもいいような結果にならなかったであろう。
逆に命令、と称しておそらく研究を続行させられていたのは明白。
だからこそ、全ての資料を破棄して飛び出したのだから。

磐石の台地。
何でも伝説にちなんでつけられた名前というがその真意のほどは定かではない。
それでも、この台地からはカルディナ、そしてヴォードンの街が一瞥できる。
それはとても見晴らしのいい台地。
平和なときならばここはまさしく、観光名所になるであろう。
事実、タナトスが出現している今現在においてもここから眺める景色を好む人は数知れず。
タナトスの興味をそがす方法は一般人でも一応はある。
それはオーブを持っていること。
なぜかオーブを投げればいっとき、タナトスはそちらのほうに気をとられる。
その隙に人々は逃げるしかない。
それでも、オーブは高価なもの。
そんなに出回っているものではない。
だからこそ、普通の一般人にはそんな行動はまず取れない。
よくてお金持ち、または上流階級の一部の存在のみが取れる唯一の手段。
「しかし、本当に風がつよいな。大丈夫か?アンジェリーク」
「ええ。平気。でもこの風…確かにおかしいわ」
他ではまったく風などふいていないのに。
だがしかし特定の方向からものすごい風が吹き抜けてくる。
「こりゃ、特殊…かな?」
「ロシュ~。お前は足手まといになるなよ?」
「へいへい」
そんな会話をしながら磐石の台地に吹き荒れる風の中を突き進んでゆく三人の姿がしばし見受けられてゆく。


                                -第24話へー

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あとがきもどき:
薫:さてさて、次回でロシュの活躍(笑)驚愕レイン(爆)をお送りしますv
   ついでにそのあと、ロシュとともに陽だまり邸に~。
   それからおいおいと話をすすめてゆくのですv
   星の船の回はまだ当分先…はてさて、何話になるのかな?これ?
   何はともあれ、ではまた次回にてv

2008年5月13日(火)某日

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