まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
さてさて。ちらっとしか出してないので忘れてる、というか覚えていない人のために(おひ
アンジェリークの故郷、フルールの村が襲われたのは彼女が四歳の誕生日を迎えた直後。
そのような設定にしておりますv
そして、学園の寄宿舎に入れられたのは六歳から、といってもなれさせるため、とかいって。
実は六歳になる前、つまりは五歳になってから少ししてとっとといれられている。
という実情があることを述べておきます(こらこら
何はともあれ、今回は夕食会vいくのですv
#####################################銀花の園 ~夕食会~
ぱたっ。
思ったよりだいぶ疲れてたのね。私。
部屋に戻り、ひとまず昨夜はお風呂に入れなかったのでシャワーを浴びる。
それから服も着替えていないので別のワンピースにと着替えてそのままぱたっとベットにうつぶせになる。
いろいろなことがここ数日で一気にありすぎている。
自分でも何が何だかわわからないままに。
昨日からあまりまともに食べていないのもありおなかはすいてはいるが、それ以上に眠い。
ただひたすらに。
まるで、体の力が全て抜け切ってしまったかのようにものすごく眠い。
少しだけなら大丈夫…よね。
そうおもい、ゆっくりと目を閉じるアンジェリーク。
そのまま、気付かぬままに彼女は眠りの中にと落ちてゆく。
――銀の大樹よ。やがて芽をだしその根を大地に広げ空に葉を伸ばし。
遠い未来のあのヒトを…エルダを護ってください。邪悪な力に打ち勝つように。
?
いつもと違う?
どこかの森の中、祈りをささげている茶色い髪の少女。
少女が祈りをささげると同時に少女の背中に白き翼が見て取れる。
雰囲気が…どこかアンジェちゃんに似ている?
ふとその少女の姿をみて思わず思う。
だが、特質すべきはその少女の周りにいる男性たち。
何か特有の雰囲気をまとい、何というか、懐かしいような、それでいて神秘的な感じをうける。
――サクリアの力を秘めたジェムよ、銀の大樹を護って。
ざあっ。
そう少女が祈りをささげると同時に見ている風景が一変する。
そして、目の前にあるのは銀色の大樹が一つ。
みたこともないようなその輝きをもつ大樹。
近くにいるだけで何か体の中から力が湧き出してくるような、そんな感覚。
「きたね。まっていたよ。君を」
ふと、声をかけられた。
振り向けばそこにこの間の夢の中の少年が一人、たたずんでいる。
「…あなたは……」
「僕?今はまだ名乗るときではないよ。君が手にいれた護りの力は君の手助けとなり、
そしてまた未来を導くもの、その力が満ちたとき、道は新たに開かれるよ」
「え?それって……」
「ほら。もう体におもどり。あまり永く離れていたらからだがもたないよ?」
「え?あ、あの…」
ゆらっ。
体に戻れ、とはどういう意味なの?
そんなことを思うが、そういわれると同時に意識がさらに奥深くにと沈みこんでゆく。
「……あれ?何だか疲れがとれているわ」
寝る前にあれほど疲れていたはずなのにそれがない。
それほどまでに眠っていたのだろうか?
そうおもい、ベットから起き上がり、カーテンを開けてテラスから外をみる。
もうすぐどうやら日が沈みかけているらしい。
「って、いけない!」
あわててぱたぱたと一階にとおりる。
時間的にそろそろ夕食の準備をしなければ絶対に間に合わない。
と。
「だぁぁ!まただっ!くそっ!」
何やら一階のサルーンのほうが騒がしい。
レインの叫び声が二階まで聞こえてくる。
?
何かあったのかしら?
そうおもい、とにかく一階にと部屋からでて降りてゆく。
みれば、何やらレイン、ニクス、ヒュウガ、ジェイドが四人でテーブルを囲み何かをしている。
よくよくみればその手にはトランプが握られている、ということから何かのゲームをしているのであろう。
「だぁぁ!納得いかねぇ!どうしていつもにクスの圧勝なんだよっ!」
何やらニクスに対してレインが突っかかっている様子が見て取れる。
「それはレイン君がよわすぎるのですよ」
「あ、あの?みなさん?いったい何をなさってるんですか?」
そんな彼らにと階段の上から問いかける。
「いえね。僕たちの誰が夕食を順番に作るかきめてたんだよ」
「我々全員、どうやら話たところそれぞれ料理の自身がある、とわかったもので」
そんなアンジェリークににこやかに説明してくるジェイドと、淡々と答えているヒュウガ。
どうやらやはり淡々とした表情をあまり崩さないのも彼の性格の一部らしい。
「まあ。それはすばらしいですね。ぜひとも私にも参加させてください」
誰かのために料理を作る。
それはとても喜ばしいこと。
「皆さんのお口にあうようなものが作れるかはわかりませんけど」
基本、アンジェリークが自身で個人的につくるものといえばもっぱらデザート類。
ときどきほとんどの寄宿舎にいる学生が里帰りしたときなどに厨房の人に頼んで自身でつくったりもするが。
それはその程度。
あとは授業の一環としていろいろ作ったことがあるのみ。
そういいつつ、階段を降りきるそんなアンジェリークに対し、
「おや。あなたはいいのですよ」
「実は夕食会を開こう。ということになってね。それそれの親睦を深めるためと。
そして何よりも君をもてなそう、という話になってね。それで今こうしてカードゲームで順番を決めてたんだ」
にこやかに笑みを浮かべたままでいうニクスに、丁寧に説明してくるジェイド。
「え?それって?」
「つまり。だ。新しい仲間も増えたことでもあるし。それに…何だ。
俺たちよりお前のほうがよほど大変だ、と思うしな」
何しろタナトスを完全に浄化する能力である。
さらにはオーブの力までをも引き出して。
普通に怪我をも問わず戦っているだけの自分たちとは彼女の力は根本的に違う。
彼女のこと。
自分たちが怪我をすれば自分のせい、とかなり自身を攻めるであろうことは明白。
オープの力を引き出す、それは多少なりとも引き出せる彼らだからこそ、その負担の大きさは判るつもり。
「と、いうわけです。それで?どうします?レイン君?また挑戦しますか?」
「ああもう!いくらやってもニクスにかてやしねぇぇ!!」
負けず嫌いの性格であるがゆえに、おもわず気が高ぶるのは仕方がない。
「あ、あの?」
「ああ。見てのとおり。幾度やってもニクスの圧勝でね。それでレインが幾度も再戦を申し込んでいるだけど」
「というか、貴様は顔にですぎるとおもうぞ?」
常に表情を変えることがないヒュウガに、いつもにこやかに、それでいて表情がわかり安すぎるジェイド。
レインもまたジェイドほどではないが確かにかなり判りやすい表情をしているのであるが、
当の当人にはまったくもってその自覚がない。
「皆さん、お料理が得意、なんですか?」
夕食会、という響きは何とも素敵なものがある。
男性の人が料理をするなんて、ちょっと意外。
ニクスさんやレインが料理をたしなむ、というのはここに着た日に知ったけど。
そんなことを思いつつも問いかける。
「騎士団のころより、料理はそれぞれ必須科目となるがゆえ。騎士団の基本的な行動は常に旅の空。
ゆえに体力確保のための料理はどうしても必要となる」
「僕はおいしいものを食べるときみんなが笑顔になるから、それでいろいろ覚えたよ?」
「まあ、と、いうわけで。ニクス!今度こそ!今度こそかってみせるっ!」
「おやおや。レイン君。幾度やっても無駄とおもいますけどねぇ?」
淡々と答えるヒュウガに、にこやかに答えてくるジェイド。
そんな二人とは対象的にさらにニクスに再戦を申し込んでいるレイン。
「あ、それでしたら。皆さんで料理を作る、というのはどうでしょうか?
皆さんもいろいろ好みがあるでしょうから、それぞれ一品づつつくっていただいて。
そして、後で私を含めてデザートを作る、それでいきませんか?一人だけ何もしない、というのは気がひけます」
料理、というのもはそれぞれにどうしてもこだわりがあるもの。
だがしかし、一品づつならば、様々な料理も食べれてそしてまた喧嘩にもならない。
くすっ。
「なるほど。確かにそれは明暗ですね?皆さん、いかがですか?」
そんなアンジェリークの言葉をきき、くすっと微笑み全員を見渡していうニクス。
「なるほど。確かにそれだといろいろ食べられるし、それに喧嘩にもならないよね。
さすがアンジェリークだね。皆の笑顔を守る選択をすぐさまに導き出すなんて」
にこやかにそういうジェイドの台詞に、
「まあ、それもいいかもな。…あまりのおいしさに目を丸くするなよ!?」
「ふっ。それはこちらの台詞だ」
「僕も皆のために頑張るからね!」
何やら意気投合、もしくは相手に負けまい、とする気持ちが先立つのかそんなことを言い始める四人。
ふふ。
そんな彼らをみつつ、
「じゃぁ、決まりですね」
にっこりと微笑むアンジェリークの姿が、陽だまり邸のサルーンにて見受けられてゆく。
夕食会。
いつも食事をとるときには学食で寄宿舎の生徒達と共にたべていた。
だけども、今は違うんだわ。
どこか家族を思わせる暖かな食卓。
ずっと心のどこかで望んでいた光景。
「おいしい!皆さん、ほんと料理がお上手なんですね!」
一口食べて本当に感心してしまう。
ヒュウガのつくったサシミ、というものは初めてたべるが、素材の新鮮さがとても生きている。
レインは素材の味を生かすため、といって野菜のサラダをつくっている。
「皆さん、それぞれにですけど料理のレパートリーがかぶってないんですね。
こんど皆さん、コツを教えてくださいね?」
料理のレバートリーが多いに越したことはない。
一度食べれば大体の味付けなどはわかるが、やはり料理にはコツ、というものがある。
そう、それぞれの家庭に家庭の味があるように。
「ふっ。あなたにそう喜んでもらえれば腕のふるいがいがあった、というものだ」
満面の笑みで食べているアンジェリークの姿をみるとどこかとても心が温かくなってくる。
アンジェリーク。
不思議な子だよね。
彼女がいるだけで周りの空気、それに人々の気持ちが優しい気持ちになれる。
こんな俺でも……
そんなことをおもいつつ、
「うん。素敵な笑顔だ。おいしい料理は人々を幸せにするんだよ?」
「ですね!きっとおいしい料理で世界平和にも貢献できますねっ!」
ぐっ。
ジェイドの台詞におもいっきりこぶしを握り締めてきっぱりはっきりと断言する。
「…ぷっ」
そんなアンジリェークの様子に思わず小さく噴出してしまうニクス。
あのときからこうして心から笑ったことなど、数えるしかない。
だけどもいま、永き苦しみから解放される時が一刻一刻と近づいているのを感じる。
まだ始まりに過ぎない、ということは判っている。
自身の永い経験は無駄にはならない、ということも。
永い時を生きる、それは自分だけではない。
そう、この場にいるジェイドとて……
「まあ、素直なお前らしい感想、といえば感想だな。
あ、そうだ。ニクス。俺明日ちょっとヴォードンにまで出かけるけど、問題ないか?」
「おや。ヴォードン、ですか?ああ、そういえば何かレイン君に手紙がきていましたねぇ」
食事の最中、そんな会話をしているレインとニクス。
?
「ヴォードン?首都ヴォードンですか?」
「アンジェリークはヴォードンにいったことがあるのかい?」
きょとん、としながら問いかけるアンジェリークににこやかに質問しているジェイド。
「昔、ヴォードンの郊外の親戚に預けられていて、一時住んでいたことがあるんです。
あと時々親友のハンナの実家があるのでお邪魔したりもしてました」
あの場所に住んでいたのは一年と少し。
六歳の誕生日を迎える前に彼女はメルローズ女学院の寄宿舎にと入った。
いつも遊んでくれていたその家のお兄さんは彼女が五歳になってしばらくして家を出て行った。
いつも叔父様とは喧嘩ばかりしてた。
それが幼いながらもアンジェリークには悲しかった。
言葉は少ないものの、それでも厳格で、曲がったことは絶対にガン、として聞き入れない。
それは小さな子どもがすることでも容赦はなく小さな子どもであったアンジェリークにすら厳格を重んじた。
甘えることは許されることなく、唯一子ども扱いしてくれていたのはその親戚の優しいお兄さんのみ。
ときどき出会うあの女の子がアンジェリークにとって心の救いだった、ともいえる。
成長した今ではその叔父も尊敬している。
してはいるがどこか近寄りがたい、と思ってしまうのは幼い日の経験があるがゆえに仕方のないこと。
「確かアンジェリークは六歳になる前に寄宿舎に入った、そう学園長からお聞きしましたけど。
ではそれより前のことですね」
アンジェリークを陽だまり邸に迎えるにあたり、一応きちんと学園長には話しをつけている。
そしてまた、彼女の後見人にも。
そちらのほうは彼女を学校から出すのに何やらいろいろといってきたのでちょこっと細工をしたニクス。
当然そんなことはアンジェリークは知る由もないが。
「ええ。四歳の誕生日を迎えた直後に故郷の町がタナトスに襲われてしまって……
それで遠縁にあたる親戚に預けられたんです。でもそこの叔父様がとても厳格な方で、
あ、尊敬はしていますよ?とてもすばらしい人ですもの。
それで子どもには躾けと教育が大事だ、といってすぐに寄宿舎に入れられたんです」
いきなり誰も知らないところに預けられ、さらには誰も知る人がいない場所に放り込まれた。
小さな彼女にとって救いとなったのは、親戚のお兄さんからもらったペンダント。
いつも両親が見守ってくれている、その言葉。
「そう。アンジェリークも苦労したんだね」
「あなたもずいぶんと苦労をしたのだな」
今でこそ笑顔でいえることであろうが、少し考えれば幼い子どものこと。
どんな思いだったか用意に想像がつく。
ヒュウガとて故郷を離れ教団本部に向かうときは寂しかったものである。
だが、それでも彼には両親や家族がきちんといた。
だが、アンジェリークはその家族を失った。
その違いは大きい。
「あ、みなさん、しんみりならないでください。それより、レイン。
ヴォードンにいくの?なら私もいっていい?久しぶりに叔父様にきちんと挨拶しておきたいし」
そもそも、学校を休学する、というのも校長たちに任せて自分から言いに言っていない。
あの厳格な叔父のこと、きちんと話しておいたほうが絶対にいい。
叔父が勤めているカルディナ大学があるカルディナの街はヴォードンと目と鼻の先。
「ん~。俺は別にかまわないけど、ニクス。依頼の状況はどうなってる?」
「ああ。それでしたらついでにカルディナから一件依頼が入ってますから。それを片付けてきてください」
「…げっ。相変わらず人使いがあらいな」
くすっ。
この二人、かなり息がぴったりあってるのね。
そりゃそうよね。
私が参加するより前からニクスさんとレインは二人でタナトスを退治してまわっていたんだから。
「しかし。ニクス。その依頼、というのは急ぎではないのか?」
「いえ。急ぎではないですよ。時間があるときでいい、と依頼主からのお言葉ですから。
今はいつタナトスが出てくるかわかりませんからね。
それでときどき配達や、移動、そういったときの護衛についてくれ、という依頼もあるんですよ」
ついで、というニクスの言葉に多少なりとも不思議に思いといかけるヒュウガであるが、
そんなヒュウガの言葉をにこやかに返すニクス。
「なるほど。ソレは確かに一理あるな」
「たしかに。コトが起こってからでは遅いものね。さすがだね」
事前にできることはしておく。
それがこのニクスが人々から信頼され、そしてまた尊敬され篤志家、と言わしめるゆえんの一つなのであろう。
「じゃ、決まりね」
「まあ、ついてきてもいいけど、お前には退屈だけかもしれないぞ?」
「そういえば。レイン、何の用事なんだい?」
「さあ?何でも新聞社が古代の文献を発見したらしくて。それに関するお披露目ときいている。
古代の文献は様々なアーティファクトの研究につながる。だから絶対にいっておきたいんだ」
「アーティ、ファクト。か」
レインの言葉に何か含むところがあるらしく、短くつぶやくヒュウガ。
アンジェリークとて、確かに人々の為になるモノもいくつか発明されているのは知っている。
そして古代においては今の技術からは信じられないようなものも存在していた、ということも。
「そういえば、私が以前、夏季休暇の宿題の一環でつくった品も一緒のアーティファクトに似ている。
って担任の先生から言われたことがありましたけど」
あまりに暇なので、ちょこっと便利性を考えてつくっただけだというのに。
オーブの力でモノが動く、というのは一応文献を読んでゆく中で知っていたからためしにつくった品。
そのことをふと思い出して何となく話題に出す。
「へえ。どんなものをつくったんだい?アンジェリーク?」
「花壇への水遣り器、です。たまたまそのとき読んでいた文献にオーブのことがかかれてまして。
それで一人でずっと寄宿舎にいる、というのも暇なのでつくってみたらけっこう評判がよくて」
「…って、ちょっとまて!そんなのさらっとおま、つくったのか!?」
さらっというアンジェリークの台詞に思わずガタン、とテーブルに手をつき叫ぶレイン。
「?そうだけど?今でもたぶん学園内の花壇で使われてるはずよ?」
それがどれほどすごいことかアンジェリークはまったくもって理解していない。
そしてまた、学園、という中だからこそ生徒達も理解していない。
古代のアーティファクトの文献の中に、自動で花壇に水遣りをする機械、というもののことが乗っている。
だが、今の技術では到底そこまで自動で…とまではいかないのが現状。
「……おまえ、科学者の素質あるんじゃないのか?」
「まっさか。私にでもできたんだもの。誰にでもできるわ。きっと」
アンジェリークはそういうが、それは絶対に無理ざらかること。
その装置は彼女の力によって稼動し、そしてその原理もその理によって動いている。
当のアンジェリークはそんなことを知る由もないが。
「こんど、その装置、見せてもらえないか?」
「かまわないけど。だけど私が子どものころにつくった品だからとても簡単なものよ?」
簡単なもの、とアンジェリークはいうが、きちんと毎日。
しかも雨の日や土がいまだに湿っているときには稼動しない。
そこまで正確な装置はこの世界、否この時代にはいまだに存在していない。
学校関係者たちも子どもが作った品物なのでさほどそれがすごいことだ、とはおもっていない。
だからこそ騒ぎにならずに今の今までそのことは一部のもにしか知られていないのだから。
「そういえぱ。この庭園の中にもそういったものが多数にあるよね。
あれってニクス、どうしたの?」
少しばかり庭園を散策していたら、ところかしこに自動に水を噴き上げている装置らしきものを見かけた。
「そういうものがあるのか?」
そんなものが存在している、などとは初耳。
ゆえに多少驚きながらも問いかけているヒュウガ。
「あれは私がここに住み始めたころからありますからね。原理は私にもわかりません」
「この屋敷そのものがまるごとアーティファクト、みたいなものだからな。
以前この屋敷をちょこっと調べてみたことがあるが、この屋敷はわからないことだらけだ」
「でも、ここって何だか懐かしい雰囲気だよね。陽だまり邸。いい言葉だよね。
まるで全てのものを包み込む、暖かな陽だまり。そんな響きだし」
この屋敷にきたときから、何かとても懐かしいものを感じているジェイド。
まるで、そう。
以前ここで生活していたことがあるような、そんな懐かしさ。
ヒュウガの問いに困ったように答えるニクスに、瞳をきらきらとさせていっているレイン。
「にゅぅん」
「あら?エルヴィン?おかわりなの?でもあまりたべすぎたらだめよ?」
ふと泣き声がして下をみればどうやらお皿が空っぽになっているらしく催促するかのように鳴いているエルヴィンの姿。
「きっとエルヴィンもおいしくて、もっとたべたいんだよ」
「もう。しょうがないわね」
ジェイドの言葉も至極もっとも。
今日だけよ。
そう小さくいいつつも、少しばかり料理をよそいお皿に移す。
「というか。野菜を好んで食べる猫なんて珍しいよな」
なぜかおいしそうにしゃくしゃくと野菜を食べているエルヴィン。
お刺身も野菜もどうやらこの子猫にとってはどちらも好き、の部類に入るらしい。
「とりあえず。それじゃ、明日レイン、楽しみにしてるわね」
「あ、ああ」
「レイン君。暴走してはだめですよ?」
「なっ!?ど、どういう意味だよっ!ニクス!」
「さぁて、どういう意味でしょうかねぇ?狼にならないように気をつけてください、といってるだけですが?」
「なっ?!」
「?狼?レインって実は狼男なの!?」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
ニクスのその言葉に目を丸くして、それでもきらきらとどこか期待をこめてレインをみているアンジェリーク。
そんなアンジェリークの台詞に思わずし~ん、となるニクス・ヒュウガ、レインの三人。
「アンジェリーク。今のは言葉のあやですよ」
「そうなんですか?もしそうならぜひともみてみたかったのに。
昔、お母様に読んでもらったお話のなかにとても素敵な狼男に変身する人のお話があったんです」
くすくすと笑いながらそういうニクスの言葉に心底残念そうにいっているアンジェリーク。
狼、の意味を完全に捉え間違えている彼女のそのあるいみ純朴さに微笑まずにはいられない。
「とりあえず、そろそろデザートにしないかい?」
和気藹々と話していると確かにいつのまにか食事の残りが少なくなっている。
ジェイドの言葉をうけ、
「たしかに。そうですね。じゃ、キッチンからもってきますね」
パタパタと席から立ち上がりキッチンへと向かって行くアンジェリーク。
そんな彼女の後姿を見送りつつ、
「さて。レイン君。冗談は抜きにして、狼にならないようにね」
「あ、あのなっ!ニクス!てめえ!たのしんでるだろっ!」
「……不安だ。このものとあのお方を一緒にいかせていいものか?」
「あ!ヒュウガ!お前までそういうことをいうかっ!?」
しばし、そんな会話を繰り広げる彼らの姿が、見受けられてゆく。
アンジェリークはそのような会話が繰り広げられている、などとは夢にも思っていない……
-第21話へー
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あとがきもどき:
薫:さてさて。アンジェが創造ったという装置。実はさくっと女王のサクリアつかって作成してたり(笑
知らない、ということはある意味最強なのですvv
とにかくひたすらに面白半分にいろいろと組み合わせてたら気付いたら出来上がってた。
みたいな感じなので当人も詳しい創造り方とかわかってなかったり(まて
ちなみに、地と水と光のサクリアで稼動するタイプの品となっております(笑
2008年5月12日(月)某日
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