まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

さてさて。今回でおそらく「タナトスの潜む森」のイベントさんは完了ですv
次回からはのんびりまったり…にいけるかな?
次回はたぶん、新聞社…かな?
好感度とかまったくもって関係なく進める予定なので、あしからず~
ゲームでは好感度がすすまないとイベント発生しなかったりするからね……
ともあれ、何かひっぱりまくりましたけど、ゆくのですvv

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銀花の園   ~三つ目の護り石~

「村の中に?!」
ざわざわと人がざわめいている様子から村の中に現れたのであろう。
「って、こっちにもでたぞ~!!」
どうやら何箇所に同時に現れたらしい。
「これは、同時に何箇所にも、ですか。珍しいですね。とにかく、一箇所におびき寄せて固めましょう。
  アンジェリークは一箇所に固まったところを浄化してください。いいですね?」
「あなたはおそらくタナトスの狙いとおもわれる妊婦のところにいくといい。
  やつらは生まれたての赤ん坊を何よりも好むともいわれている」
そこまで数箇所にでていればどこから手をつけていいのかわからない。
そんなアンジェリークに的確にいっているニクスに、どうしようか迷っているらしいアンジェリークに意見しているヒュウガ。
「あ。はい。わかりました」
赤ん坊がよく狙われる、というのはアンジェリークとて聞いたことがある。
そして狙われた赤ん坊は確実に命を落とす、ということも。
「私とレイン君はあらちにいきます。ヒュウガとジェイドはあちらのほうをおねがいしますね。では、またあとで!」
ニクスの的確な指示により、ばっと二手に分かれて走り出す彼らたち。

ヒュウガとレインを一緒にしなかったのは、アンジェリークに特殊な感情を抱いているらしいレインを刺激しないため。
それでなくても、彼は昨晩のことでかなり騒いでいた実績をもっている。
当のアンジェリークはその事情を知る由もないが。
ヒュウガが村に戻り報告したときにはレインはまだこの村に来ていなかったがゆえにヒュウガも知らない。
それはニクスなりの配慮、ともいえる組み分け。

よくよくみれば、さきほどの銀樹騎士団の人たちが村人の避難誘導を行っているのが見て取れる。
「私もいそがなくちゃ」
出産を控えている女性がタナトスから逃げられるはずもない。
しかも、今まさに出産を迎えようとしているならばそれに付き添う人々もまた然り。
つい先日も赤ん坊の出産に立ち会ったばかりのアンジェリークである。
そのあたりの大変さは身に染みてわかっているつもり。
どうやら村人の騒ぎ方からすると、四方、つまり四箇所からタナトスが出現したらしい。
同時に何体も出現するなど滅多にないことではあるが、だがしかしその滅多とないことが起こっている。
かつてアンジェリークが両親とまだフルールの村に住んでいたときも数体のタナトスに襲われた。
しかし何よりもこの村にとって不幸中の幸いなのは、この場には浄化能力者が四人もいて、
さらには銀樹騎士団員が三人もいる、ということ。
普通、このような村に浄化能力者がいることなど滅多とない。
それゆえか、被害者がでないうちにどうにか食い止められているらしい。
「カールさん、ナタリーさん!」
カールたちの家の場所を聞きそびれたものの、だがしかしその玄関先に銀樹騎士の姿をみつけ、
それゆえにすぐさまに理解する。
そのまま、玄関から家の中にはいってみると、今まさにお産が始まっているばかり。
そこにちょうどタナトスの騒ぎが…というわけらしい。
「あなたは、さきほどの…」
ただひたすらに妻の手を握るしかできないカールがアンジェリークの姿をみて驚愕の声をだす。
「アンジェリーク様!タナトスは私にまかせてください!」
玄関先のほうでは何やら銀樹騎士団員がそんなことをいっている。
「もう。カイさん。何で様づけなんてするんですか?普通に呼んでください」
なぜか昨夜からアンジリェークは敬称をつけて呼ばれている。
それが不思議でたまらないアンジェリーク。
一瞬、他の人を呼んでいるのかと錯覚してしまうほどに。
「とりあえず。ナタリーさん。大丈夫です。落ち着いて。大丈夫。
  あなたたちのことは絶対に私たちの仲間、それに銀樹騎士団の人が護ります。
  ですから落ち着いて安心して集中してください」
タナトスが出た、そうきき、母体にもかなり負担がかかっているであろうことは必死。
だからこそ安心させるために話しかける。
そして安心させるためにナタリーの手をそっと握る。
アンジェリークがその手を握ると暖かな力が体の中に流れ込んでくるかのような感覚。
苦しい息の下から視線をむければ、そこにうっすらと見える青い髪の……
「じょぉ……さ……」
その姿はかつて巡礼の旅で垣間見た絵姿の姿とかさなり、
苦しい息遣いのもとで見たその姿は紛れもなくその絵姿そのもの。
意識も多少朦朧としている、というのもあるのであろう。
「大丈夫。何も心配しなくてもいいですから。頑張ってください」
ぎゅっと握った手を握り返してくるナタリーの手をさらに強く握ることしかできないアンジェリーク。
「よし!あと少しだ!がんばって!」
産婆として常に待機していた女性もまた、一瞬手を握り締めたアンジェリークのその背に白き翼の姿を認めるものの、
すぐさまにブロ根性というべきか。
意識を切り替えお産にと集中する。
ナタリー、そして産婆の目に映ったアンジェリークの姿は、
やさしい慈愛の笑みを浮かべている白き翼を要する女性の姿。
実際にはアンジェリークはただ、その場にしゃがみ、ナタリーの手を握り締めているだけ、なのであるが。

「しかし。何なんだ?こいつらは!?ニクス!?」
「可能性としてまさかとおもいますけど、彼女を狙っている、そうとも捉えられますね。
  あの屋敷にいる限りはこいつらも手出しはしてこれないでしょうけど…」
バンバン!
バシッ!
鋼色をした何か無機物のような形をしているタナトス。
一般にゴーレム、と呼び証されているタナトスであることは間違いない。
「まあ、たしかに。あの屋敷は理解不能な数値に護られているのは確か、だけどなっ!」
ばんっ!
ニクスの言葉にさらに相手のタナトスに一撃をたたきこむ。
レインとて科学者のはしくれというか博士の称号までもっている人物。
何の気なしにあの屋敷の数値を図ったことがあるが、それは数値では言い表せなかった。
彼が独断開発していたとある装置によれば、あの屋敷はサクリア、と呼ばれる力に満ち溢れている。
ということも。
屋敷の中にある不可解な多々とある部屋にごろごろと無造作に使用すらされていない用途のわからない古代の品物。
あの屋敷はある意味、研究材料、としてはそれこそ宝の宝庫。
「ナイスです。どうやらタナトスが進路を変えましたよ?」
そんな会話をしつつもタナトスに攻撃を繰り出しているレインとニクス。
やがて二人の攻撃に反応してかタナトスがその移動方向を変えて動き出す。
そのまま、灰色の霧を出現させその中に掻き消えるようにその場から消え去るものの。
「これは、移動する気か!?」
「とにかく、いきましょう」
撤退したとかではなさそうである。
何よりも周囲の草花の生気がいまだに戻っていない。
それはタナトス本体を撃退している、ということにはならない。
しかも、一定方向に向かって一直線にものすごい勢いで草木が枯れていっている。
つまりは、タナトスは姿を見せていないだけでそちらに向かってすすんでいる、という証拠。

「ほう。しかし貴様のような存在を教団が見逃していた、とは驚きだな」
歳をきけば二十歳だという。
二十歳でその浄化能力を持ち合わせている、ということは、しかもどうみても戦いなれている。
だからこそ不思議におもう。
これほどまでの力の持ち主ならば必ず教団の目にとまったであろうに。
「俺は気ままな旅人、だからね。人々の笑顔のために、幸せの種のためにずっと旅をしていたからね」
ヒュウガの問いに、タナトスの一撃をなんなく交わしながらも答えるジェイド。
「気ままな旅人…か」
そういわれれば自分も似たようなものなのかもしれない。
失われた真実を追い求め…そして、彼女にめぐり合った。
おそらくは、このアルカディアの人々誰もが待ち望んでいたであろう、その少女に。
「!ヒュウガ!」
「わかってる」
二人の攻撃に耐えかねたのか、タナトスはゆっくりとその姿をかきけしてゆく。
だがそれは、決して撃退したのではなく、とある方向にむかって姿を隠しながらすすんでいる。
それが大地に刻まれる反応で姿は見えずとも理解はできる。
「ゆくぞ!」
「うん!」
そのまま、タナトスを放置するわけにはいかない。
それゆえに、タナトスを追いかけてゆくヒュウガとジェイドのこの二人。

一体、このタナトスの目的は?
攻撃力は確かに今までのタナトスよりも遥かに強い。
先ほどのタナトスと似通った強さに近いものがあるかもしれない。
だが、どちらかというとこのタナトスは目の前の自分たちに目もくれていないように感じられる。
何か目的が別にとあるような……
どうやら村のとある方向にむかってすすんでゆこうとしているのは見て取れる。
そして、その進行方向にあるのはまさに今、出産を迎えようとしているナタリー夫婦の家。
「タナトス。人々を脅かすものよ。この銀樹騎士団、ライがお相手いたすっ!」
きっとそういいつつも、二刀流のその剣を構えるライ。
彼の獲物は二つの刀。
その短剣にと力をこめてあいてに一撃を加える、というもの。

おぎゃぁ~、おぎゃぁ、おぎゃぁ、ほんぎゃぁ~~~!!!

それぞれがタナトスに苦戦している最中。
村の中に赤ん坊の元気な泣き声が響き渡る。

「よくやったぞ!ナタリー!男の子だ!」
「よくがんばったね」
無事に生まれたことにほっとする。
だがしかし、ここでゆっくりもしていられない。
「カイさん!後をおねがいします!」
ふと、感じた。
タナトスが一点に集まってきている、ということを。
それはどう説明していいのかわからないが、とにかく『感じた』。
だからこそあわててナタリーたちの家から外にと飛び出るアンジェリーク。
それは直感のようなものなのかもしれない。
ただ、このままここにいてはいけない。
そんな感覚に捕らわれたのもまた事実。
ナタリーたちの家から飛び出し、少し先にいくと開けた場所があり、そこでぴたりと足をとめる。
ふとみれば、四方から走ってきているレインや、ヒュウガとジェイド。
さらにはライたちの姿が見て取れる。
彼らは皆アンジェリークが今いる場所のほうにむかって走ってきているようである。
すでに周辺の村人の避難誘導は終わっている。
残っているのはナタリーたちのみ。
「アンジェリーク!?」
「って、レイン?それにヒュウガさんたちも、どうして?」
「そんなことをいっている場合ではありません。きますよっ!」
みれば、なにやらかなり巨大な灰色の霧が周囲に立ち込めてきているのが見て取れる。
その霧の中より四体の何やら無機質らしきような姿をしている鋼色のタナトスが出現し。
それらはやがてゆっくりと一つに融合してゆく。
ライの叫びとほぼ同時、目の前に融合した巨大ともいえるタナトスが立ちふさがる。
常に彼らが対峙してきたタナトスと比べて遥かにふた周り以上は大きい。
「だあっ!何でここ数日こう強そうなやつばかりでてくるんだ!?」
思わず本音が漏れ出すレイン。
ここ数日、今までに見たこともないタナトスが連続して出てきているのは明白。
いつもなら簡単に始末できていたというのに。
だがしかし、所詮は一体に対して多勢に無勢。
こちら側に有利なのは間違いない。
連続して繰り出される攻撃にいくら何でもタナトスがひるまないはずもない。
「アンジェリーク!」
レインの言葉をうけ、静かに祈りをささげるアンジェリーク。
刹那。
アンジェリークの体が淡く光、その光はタナトスを包み込み、
周囲が金色の光の中に包み込まれる。
キラキラと金色の光の中に白く輝く羽が幻のように舞い落ちる。

キラッ。
「…?今度は…鋼色の?」
きらきらとまるで自身の手の中に降りてくるようにして振ってきた一つの石。
同時にいくつかの普通のオーブも地面に転がっているのが見て取れる。
タナトスの浄化もおわり、一息ついたアンジェリークの手の平の中にゆっくりと落ちてきた石が一つ。
「どうやら。力は力に引き寄せられて、というところですかね?」
アンジェリークが手にしているそれをみて苦笑するしかないニクス。
このたびのタナトスには襲撃する、といった特有の気配があまり感じられなかった。
つまりは、アレとはまた異なる性質をもつタナトスであることは明白。
だがそれはニクスだから判ることであり、人に説明することもできない。
アンジェリークが手にしているのは鋼色をした異なる形をしている特殊な石。
「よくやったな。アンジェリーク」
「ええ。あ、この石は……」
自分の手の平の中に舞い降りてきたものの、やはり持つべきは銀樹騎士がもつのがふさわしい。
そう思い、その場にいるライたちにと話しかけるアンジェリーク。
「いえ。それはあなたがもっていてください」
オーブの力を自在に引き出せるアンジェリークが手にしてこそ、否、彼女が手にしてこそ本来の力が発揮されるはず。
そんなアンジェリークの問いかけにきっぱりと言い切っているライ。
みれば仲間であるレイン達までもがうんうんとうなづいているのが見て取れる。
「いいのかなぁ?私なんかがこんなものもってて?」
「なくすなよ?」
手の平の中にあるそれを眺めつつ、首をかしげながら疑問を声にだすアンジェリークに対し、
冗談半分で突っ込みをいれるレイン。
「ひど~い。なくしそうだからこまってるのにっ!」
「「「なくさないでください!!」」」
そんなレインに素直な感想をいったその直後、ものの見事にライ、ヒュウガ、ニクスの声が重なる。
先ほどまでの神聖なまでの雰囲気はどこにやら。
村の人々が感じた感想はあまりの雰囲気の違いに思わずあっけにとられるしかない。
確かに、人々は光につつまれ、まるでそう、天使のごとくの少女の姿を目の当たりにしたのに。
そのギャップのすごさに何といっていいのか言葉を失ってしまう。
今彼らの目の前にいる少女はどこにでもいる少女で、やりとりもまた何ともほほえましいやり取りといえる。
だけど、たしかに先ほど光の中で感じた雰囲気はそれとはまったく異なるもの。
声をかけることすらはばかられる神聖なまでのその姿。
「だって。こんな高価なもの、もったことなんて一度もないもの」
「……エルヴィン。こいつがなくさないようにしっかり見張っといてくれ」
「にゅっ!」
ぷうっと頬を膨らまして素直な感想を述べるアンジェリークに対し、
思わず真剣な表情をして少しばかりしゃがみこみその場にいるエルヴィンにと話しかけているレイン。
そんなレインに答えるかのように、きゅっと何かりりしい顔立ちで立てに首を振っているエルヴィンの姿。
猫に本気で物事を頼む人、というのも珍しいが、それに答えるかのような態度をとる猫もまた珍しい光景。
「と、とにかく。我々はもうタナトスが周囲にいないか見回ってきます。
  ヒュウガ殿たちはどうなさいますか?」
「そうだな。我々も用事はすんだことだし引き上げるのが無難とおもうが、どうだろう?ニクス?」
そんな光景を思わず唖然としてみていたがはっと我にと戻りヒュウガにと問いかけるライ。
「そうですね。たしかに。このたびのタナトスの襲撃においては被害はなさそうでしたし。
  あとはここモンタントの人たちでどうにかできるでしょうしね。
  また何かあれば連絡してくるように伝えておく。それで十分だとおもいますが?」
確かにニクスの言うとおり。
あまりここに長居をするとなれば間違いなく人々は騒ぎ始めるであろう。
アンジェリークの力をその場で目の当たりにした村人達が数名いたのは事実なのだから。
今はまだ、タナトスが浄化されたばかりで村全体もざわめきたっている。
だが、いずれはアンジェリークの放った力のことは話題に上るであろう。
少なくとも、それまでのんびりしていたい、とはレインとて思わない。
「ま、たしかに。陽だまり邸に誰もいない、というのはまずいかもな」
「なら俺が残るよ。せっかく料理もってきてるし。それの片付けもあるしね」
確かに、ピザなのでいくら食べかけ、といっても他人に配るくらいはできそうである。
「あ、あの?」
そんな彼らの会話をききつつ、きょとん、と首をかしげるアンジェリーク。
「と、いうわけだ。アンジェリーク。とりあえず依頼はおわったわけだし。屋敷にもどるぞ?」
「え?ええ。それはかまわないけど…だけど……」
いいのかしら?
そういう思いがかなり残るアンジェリークであるが。
「後は我々にお任せください」
そうきっぱりと銀樹騎士団に言われれば断るのも悪いような気がする。
「じゃぁ、お言葉にあまえさせていただきますね」
さすがに連続して浄化の力を使ったせいか異様に疲れているのが判る。
それでも気を使わせたくないから気力でどうにか彼女は今の状況を保っている状態。
彼女は基本的に、自身の疲れなどを他人に見せない。
それは逆に他人に心配をかけて悲しませてしまうかもしれない、というのがあるから。
どんなつらいときでも、どのような状況のときでも、笑顔を忘れずにいよう。
そう彼女は思い成長してきている。
無理は時として彼女の体力をことごとく奪い、倒れるまでに酷使する。
それでも彼女は人々の力になろうと日々努力を重ねてきていた。
たとえその日々に行うことが変わろうとも、彼女の基本的な信念は変わらない。
だからこそ、周囲のサポートが何よりも必要なのであろう。

結局のところ、後始末を銀樹騎士団にと任せ、アンジェリークたちは陽だまり邸にと戻ってゆく。
新たに手に入れた護り石とともに。


                                -第20話へー

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あとがきもどき:
薫:うし。再生の力のための鋼の護り石もゲットv(こらまてや
   連続三つの護り石、だけど当分物語がすすまないとでてこない護り石(笑
   アンジェだけの再生能力だとかなり負担がかかりそうなので鋼の護り石をとりあえず先にv
   次回でちょっぴり過去夢~。それから定番夕食会vvv
   んでもって翻訳競争にゆくのですvではまた~♪

2008年5月11日(日)某日

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