まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

さてさて、夢の中(正確にいえば精神体のみとばされてる)で、
リモージュだけでなくコレットもだすかなぁ?(笑
いあ、そういう話もあるけど打ち込みに入れるかどうか未定なもので(笑
とりあえず、普通に女王試験定番の(こらこら!)過去夢のみにしとくかな?
何はともあれ、いっきますv

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銀花の園   ~夢と現実~

――アンジェリーク、アンジェリーク。
あ、いつのも夢だわ。
意識している夢はここ最近、特に十五の誕生日以後頻繁にと見ている。
ここまで毎日のようにみているのは十六になって以後であるが。
何やらとても暖かなピンク色の空間。
意識はしっかりとあるのに、何だかふわふわとした感覚。
ふと気付けば、なぜか見覚えのある廊下の前にと立っている自分。
「ここは…陽だまり邸?」
たしかに、どうやら陽だまり邸に間違いがないようである。
しかし、やはり自分の周囲以外はピンク色の淡い光で覆われており完全には確認ができないが。
――アンジェリーク。
ふと気付けば、目の前のやさしい雰囲気をもっている女性の肖像画から光が発生している。
もしかして、この肖像画の女の人は……
先ほど聞いたこの世界の伝承。
――アンジェリーク、あなたは知らなくては……
「え?知る?…って、きゃっ!?」
その声を聞くと同時に、足元といわず周囲全体の雰囲気が一気にとかわる。
ふとみれば、真っ暗な空間にふわふわと浮んでいる自身に気付く。
――あれが、あなたたちのすんでいる大陸。アルカディア。
どこからともなく聞こえてくる声。
「…うわぁ。綺麗……」
目の前には、ぽっかりと暗闇の中に浮んでいる青く、それでいて緑に輝く大陸の姿が。
その神秘的ともいえる光景に思わず目を丸くする。
「でも、ここは?」
目の前にある暗闇に浮んでいる大陸のようなものが本当にアルカディアなのかはわからない。
だけども、それは紛れもなく真実なのだろう、そう直感が告げている。
周囲を見渡しても他に何も見えない。
あるのはまるで夜空のような星の輝き。
――ここは、まだ孵化する前の宇宙の卵の中。
「?卵?うちゅう?」
――あなたの生まれてきた意味はこの卵を孵化させ、そして慈しむこと。
   忘れないで。あなたの力は世界を…この宇宙を平和に導くもの。
卵だの、うちゅう、だの聞きなれない言葉を聞かされても意味がわからない。
「いったい、どういう…きゃっ!?」
ざあっ。
アンジェリークが質問を投げかけると同時に、周囲に銀色の風らしきものが吹き抜ける。
ふと気付けば、また異なる場所にたっていることに驚きを隠せない。
目の前にあるのは、青々と緑豊かに広がる自然と、そしてみたこともない銀色の大樹。
「これは……」
何かとても懐かしく、そして暖かな感覚。
そう、しいていえばときどき聞こえるもう人の声の主に近いもの。
それは生まれてこのかたよく夢の中で聞いている声。
迷ったときには必ず後押ししてくれるその声の主の感覚に何となくだがよく似ている。
「あれ?君は……」
ふと、誰かに呼ばれたような気がした。
ここはアンジェリークの夢の中なので誰もいるはずもないのに。
夢の中で誰かに話しかけられたなどと今まで一度たりとてなかったこと。
「…え?」
ふと振り向けば、そこには何か十四、五歳程度の金髪の男の子の姿が見て取れる。
その吸い込まれるような青い瞳はままるで何か全てを見通すかのような雰囲気をもっている。
「……そうか。おかえりなさい」
「…え?」
――アンジェリーク。さあ、あなたのいるべき場所に戻りなさい。そして、これを……
「って、あ、まって!!」
声を掛けられたのなんて初めて。
それゆえに聞こえてきた声に思わず抗議の声をあげるものの。
「まってるよ。君がまたここにくるのを」
そういう少年の姿が光の中に掻き消えてゆく。

「…って、まってっ!」
「にゅぅ」
がばっと思わず飛び起きる。
視界に入ってくるのはテントらしき天井。
「って、どうかなさいましたか?アンジェリーク様?!」
なぜか様づけで呼ばれてかなり首を傾げざるを得ない。
ふとみれば、テントの外から銀樹騎士団の一人であろう人物の声が聞こえてくる。
確か、その声の主の名前はカイとかいったはずである。
ちなみに、彼らの隊長の名前はライというらしいが。
「え、あ。すいません。何でも……」
ごろ。
いいかけて、ふと気付く。
寝る前までなかったはずなのに、何やらとても綺麗な宝石のようなものが一つ。
よくみる宝珠とはまた異なる形をした宝石のようなもの。
本来、タナトスが落としたり発掘されるオーブの基本は球体をしているが、これはそうではなく。
どちらかといえば、普通に加工される宝石類のような形をしているのが見て取れる。
さらには、きらきらと銀色に輝いているのが不思議な感覚をうける。
「?いったい……」
ふと、それに触れると体の中に感じるのは暖かなやさしい心をもっている少女の声。
「あ、あの。すいません。誰かテントの中にはいってきましたか?」
とりあえず、確認をこめて外にいるであろうカイにと問いかける。
「いえ。猫の子一匹あなたのテントの中にははいっていませんが?何か?」
ということは、エルヴィンもずっと彼女と一緒にいたことになる。
なら、これは誰が?
首を傾げざるを得ないが、とりあえず。
「後で騎士団の人たちにきいてみましょ」
彼女がもっていていいものかすらもわからない。
だからこそ、ひとまず袋の中にとしまいこむ。
そして、おおきく伸びをする。
「にゅうっ」
「ふふ。おはよう。エルヴィン。でも今朝の夢のあの意味は?」
印象深かった少年もさることながら、光り輝くようにして浮んでいた大陸。
それが自分たちが住んでいるここアルカディアだ、そう夢は告げていた。
「卵とかうちゅうとか、意味がわからないことばかり、ねえ?」
「にゃ」
かといってあくまでも夢の話。
いつもならば親友の二人に聞いてもらって多少すっきりしていたのだが。
だがしかし、初対面に近いニクスたちにそんなことをいうわけにもいかない。
だからこそ、子猫のエルヴィンにと語りかけているアンジェリーク。
猫が返事をするとは思えないが、不思議におもったことは口にだせば多少は気分的にもすっきりする。
それは誰にでもいえること。
「とにかく、きちんとおきないと、ね」
そのまま寝ることになるとは思わなかったので、とりあえず服だけ脱いで下着姿のアンジェリーク。
ある意味、無防備すぎる、といえなくもないが。
きちんと見張っていますのでご安心を。
その言葉を信用して眠りについていた彼女。
しかし、それでも服を脱いで寝るのはどうか?とおそらくこの場にその姿をみているものがいるのら、
間違いなく突っ込みをいれるであろう。
危機感がなさ過ぎる、と。
詳しく説明されなければ間違いなく彼女、アンジェリークはその意味がわからないのも確実。
常に小さなころから女学校、という中で育っているアンジェリークの感性はそのあたりのことが鈍く成長しているのだから。
おおきく伸びをして、少し肌寒さを感じながらも昨日、寝る前に脱いでたたんでおいた服にと着替える。
そして持ってきていたコンパクトの中の小さな櫛で身だしなみを整える。
「まさかこんなところで役にたつとはおもわなかったわね」
思わず本音がもれてくすりと笑うアンジェリーク。
鏡に櫛に、さらにははさみ。
これで歯ブラシなどもあれば完璧なのであろうが。
「こちらに水をおいておきますね」
「あ、はい。すいません」
すっとテントが開かれることもなく、中に入れられてくる小さな水桶。
騎士団は常にそういった桶を持ち歩くのではなく、近くの村から借りて野営を組む。
そうでなくては大量の荷物をかかえて旅から旅へとアルカディア中をめぐることなどできはしない。
そこまで詳しく考えることもなく、差し入れられた水桶の水で顔を洗い身だしなみを整える。

「我々が昨日までいたのは、こちらです。そして……」
「なるほど。我々はここからこう捜索したから、ではこのあたり、か?」
アンジェリークが目覚めるよりも早くにすでにしたくをととのえて、今日の行動を確認しているヒュウガたち。
「さすがヒュウガ殿ですね。指示が的確です」
自分ではそこまで的確な指示はできないであろうほどにものすごく的確な行動。
それゆえに感心せざるを得ない。
今をもってしても彼、ヒュウガに教団に戻ってほしいとおもっているものがほとんどなのもうなづける。
一度村にと向かったときに、カールが何を目的に森の中にはいったのか家族から情報は得た。
ならば行動範囲も限られる、というもの。
彼が目指していたとおもわれる水晶の花が群生している地域は森の中の一部のみ。
その周辺にはたしかにタナトスの目撃情報が数知れず起こっているが、
それでも妻のために、と入った男の根性はあるいみ無謀といえるのか、はたまた勇気ある行動、といえるのか。
「あ、あの。おはようございます」
ぺこっ。
そんな会議をしている彼らの元にテントからでて歩いてゆくアンジェリーク。
その腕の中にはおとなしいエルヴィンがちょこん、と抱かれている。
「おはようございます。よく眠れましたか?」
「え、ええ。…あの?それは?」
宝石らしきもののことを聞こうとするが、ふと広げられたものに気付いて首をかしげ問いかける。
「ええ。この辺りの地図です」
「昨日、村で聞いた情報によれば、カールという人物は森のこのあたりにむかったらしい。
  我々が昨日探した場所と、そして銀樹騎士団が探した場所を考慮してもこのあたりが怪しいとおもう」
アンジェリークの素朴な疑問にこの隊の隊長が答え、さらに淡々と説明してくるヒュゥガの姿。
ヒュウガが指し示したのは森をさらに奥深くにいった場所。
三日、という否、すでに四日目になるが。
無事ならばすでに自力でもどれているはずである。
それができない、ということは動けない状況にある、というのが考えられる。
まあ、この森には水もそして果物も一応は存在しているので飢え死ぬ、ということはまずないであろう。
もっとも、タナトスに生気を奪われて動けない状況になっているとすれば生死は定かではないが。
「それじゃ、今日はこのあたりを重点的に捜索、ですね」
「我々はこちら側を重点的に捜索してみます。くれぐれもお気をつけて」
アンジェリークがヒュウガが指し示した場所を指差しながらいうと、ライがそんなことをいってくる。
「では、見つかったら騎士団のいつもの連絡方法で」
「了解いたしました」
何やらアンジェリークにはさっぱりヒュウガとライの会話の意味はつかめない。
おそらく、銀樹騎士の内部にのみわかる会話なのであろう。
ヒュウガとてかつては騎士団に所属していた身。
彼ら特有の連絡方法を知っていても不思議ではない。
「今日こそカールさんを見つけ出さないと、ですね」
そういえば。
夢から目覚める前に聞いた声。
心を澄ませば必ず声が聞こえるはず、といったような内容。
ゆえに自然と祈りをささげるように祈りだす。
「どうか、カールさんが無事に見つかりますように……」
ふわり。
その祈りとともに、周囲にあるはずもない白き羽が舞い落ちる。
それは幻なのか、はたまた幻想なのかわからないが。
それはほんの一瞬の出来事。
「では、いくか」
「はい!」
とりあえず、簡単な朝食を騎士団とともに済ませ、ヒュウガが指摘した地点へと向かってゆく彼らたち。
騎士団の勤めは、人々を安全に守ること。
ましてや、もしかしてもしかしなくても目の前の少女は――

「?アンジェリーク殿?」
ふと、何か声が聞こえたような気がした。
探索をしている最中、わずかに聞こえてか細い声。
「今、こっちのほうから声が……」
「あなたがそういうのなら、いってみよう」
勘違いかもしれないが、それでも自分のいったことを信じてくれた。
それだけでとてもうれしく感じる。
こういうとき、錯覚だ、と片付けられて悲しい思いをかつてしたことがある身とすればなおさらに。
「?そこに誰かいるのか?!」
ふと、しばらく進み、茂みの一角を見据えてヒュウガが槍を構える。
「え?…あ、あの?」
「た…助けて…くれ…」
アンジェリークが戸惑いの声を発すると同時に、か弱い男性の声が茂みの中から聞こえてくる。
「もしかして、もしかしなくてもカールさん、ですか?」
「助けて……う…うわぁっ!」
「アンジェリーク殿!あなたはそこの人を!」
「あ、はいっ!」
カールと思わしき男性の叫びと同時、その背後に出現する嫌な感じのする霧。
アンジェリークがヒュウガに言われ、男性に駆け寄るとほぼ同時。
「やはりいたか。タナトス!」
きっと身構えるヒュウガの姿。
みれば紫色の霧はやがて形をなし、その中心にあるのはどくろのような顔。
何?
あのタナトス。
何かものすごい力を感じるのは…気のせい?
「お願い。オーブよ。私たちを守って……」
ヒュウガが怪我を負うのも、そしてまた捜索していたカールが怪我を負うのも見たくない。
だからこそ心から願う。
彼らを守る力を貸してほしい、と。
その瞬間、暖かな力が体の中に満ちてくるのを感じるアンジェリーク。
彼女自身は気付いてはいないが、彼女自身の体が黄緑色の淡い光にと包まれ。
その光はやがてその場にいるカールとヒュウガの体をも包み込む。
「これは…っ!?」
護りの力。
確かに感じるのは、何か不思議な力で自身の体が護られている、ということ。
幼いころから浄化能力に目覚め、そして人一倍、力…つまはサクリアを感じることができた。
そんなヒュウガだからこそ判る。
この力は護りの力、地のサクリアの力によるものだ、と。

「ふにゃぁ!」
「って、うわっ。びっくりした。って、たしかアンジェリーク様の……」
いきなり子猫の声がして思わず振り向く。
そこには確かアンジェリークに抱かれて移動したはずの猫の姿が。
どうしてこんな場所に?
彼女たちは別の場所を捜索しているはずである。
「にゃ、にゅ、にゅっ」
何かおびいているようなその姿。
立ち止まってはふり向き、彼ら三人を必死に呼んでいるようにも受け止められる。
「…もしかしたら、ヒュウガ殿たちに何かあったのかもしれん。ゆくぞ!」
「はっ!」
自然に考えれば猫が案内しようとしている。
そうは思わないであろう。
だが、直感的にこの子猫のエルヴィンが彼らを呼んでいる。
そう確信するライ。
彼らがついてくるのを確認し、だっとその小さな体で走り出すエルヴィン。

「…あら?エルヴィン、エルヴィン!?」
ふと気付いたらそばにいたはずの子猫の姿がない。
だけど、今猫を探しにいくわけにはいかない。
目の前には、苦戦している様子のヒュウガと、そして弱っているカールが彼女の横にはいる。
オーブの力を解放し、ヒュウガの手助けをしたいのは山々なれど、
そうしてしまうと、どうもカールや自分、そしてヒュウガを護っていると思われる力のコントロールがおろそかになってしまう。
だからこそ、護りの力のみに集中するしかないアンジェリーク。
多少のダメージはタナトスも受けているようではあるが、どうもあまりきいていないらしい。
タナトスってこんなに強いものなの?
ファリアンのときといい、何か話しにきくタナトスと何かが違うような気がしているアンジェリーク。
事実、このような強いタナトスに出くわしたのはヒュウガとて初めて。
だけど、負けるわけにはいかない。
ここで自分が負ければこの世界の未来まで失われてしまうことは確実なのだから。
「にゃっ!」
「って、エルヴィン!?おまえ、どこに……」
ふと、子猫の声をきき、思わず振り向く。
それと同時。
がさっ。
なぜかその後ろから現れてくる朝方分かれたはずの銀樹騎士団の三人の姿が続いてくる。
彼らはすぐさま、ヒュウガがタナトスと対峙しているのをみてとり、
「助太刀いたすっ!」
「ゆくぞ!」
「お前はアンジェリーク殿たちを!」
「はっ!」
ライとカイの二人でヒュウガに加勢すべきむかってゆく騎士団の二人。
そしてまた。
「大丈夫ですか?」
「え。ええ。でも、どうして?」
アンジェリークと、そしてカールを助け起こすように近づいてきた団員にと問いかけるアンジェリーク。
彼らは確か別の場所を捜索しているはずである。
ここにいること事態が不思議でたまらない。
まあ、たしかに叫べば駆けつけられる距離にいたのかもしれないが、叫び声も何もあげていない。
にもかかわらず、このタイミングで現れるなど不思議でたまらない。
「ああ。それでしたら。そこの子猫が案内してくれたんだですよ」
「にゅ」
すりすりすり。
ごろごろごろ。
その疑問に答えるかのごとにく、すりすりとアンジェリークの体にその小さな体をすりよせてごろごろとのどを鳴らすエルヴィン。
「え?エルヴィンが?」
「ええ。何か訴えるようにいきなりあらわれましてね。それでおいかけてきたら……」
「おまえ、彼らを呼んできてくれたの?」
「にゅんっ」
ひょいっとエルヴィンを抱き上げると、小さく一声鳴く子猫。
ふとみれば、さすがに三人対一体ということもあってかタナトスがだいぶ弱ってきているのが見て取れる。
「すいません。ちょっとエルヴィンとこの人のことをお願いします!」
だいぶ弱ってきているタナトスをみて、今らなば浄化できるかも。
そう思い立ち上がる。
カール一人をおいて浄化に向かうのは確かに心配ではあった。
だがしかし、銀樹騎士団がいればその問題はない。
万が一別のタナトスが現れても対処ができるであろうから。
「浄化の力よ。世界をやさしさで満たして――」
アンジェリークの祈りに答えるかのように、刹那周囲を淡い金色の光が多い尽くし光の中にタナトスは掻き消える。
「おお!」
「何と神々しい……」
そんな彼女の姿に自然祈りをささげている騎士団の面々の姿もあったりするが。
そのようなことをアンジェリークが気付くはずもない。
やがて、完全にタナトスがきえさり、アンジェリークも祈りをやめる。
気付けば、周囲にタナトスの気配らしきものはない。
みれば、カールもまた完全に力を取り戻したのか目を丸くして自身と、そしてアンジェリークを見比べていたりする。
カールからすれば不思議でたまらない。
たしかに、あのタナトスにかなりの生気を奪われ死をも覚悟していた、というのに。
それなのに体の中に暖かな光が満ち溢れてくる。
目の前においては光に包まれた翼を生やした少女の姿も。
何が起こっているのかわからない。
ただ、理解できるのは、自分の横にいる男性が銀樹騎士団員である、ということ。
「タナトスは浄化された…んですか?」
自分の力にいまいち自信がないゆえに、ほっと息をつきながらもヒュウガたちにと確認する。
「ええ。あなたの力で綺麗に浄化されました」
「とてもすばらしかったです」
昨日に続き、奇跡に近しいその力を目の当たりにした。
その現実に感極まるのを抑えきれない。
だけども、おそらくどうも確かに目の前の少女は自分の力がいまいちよくわかっていないらしい。
自分たちに確認してくる、というのが何よりの証拠。
いまだ力に不安定のままに強い力を使えばどうなるのか。
彼らとて浄化能力を持ち合わせているがゆえにその危険性は理解しているつもりである。
強い力はときとして、自身をも飲み込むことになりかねない、ということも。
ましてや全てを慈しむそのような強大な力ならどのようなことが起こるのかわからない。
「よかった!それにカールさんも無事のようですし」
そんな二人の説明に、ぱっと顔を輝かせて笑みを浮かべるアンジェリーク。
と。
キラキラキラ……
「にゃんっ」
「あら?これって……」
タナトスからおそらく回収したのであろう。
とても大きなオーブらしきもの。
それを加えてちょこん、とアンジェリークにと運んでいるエルヴィン。
そのオーブらしきものと色違いながらも違う品をアンジェリークはもっている。
今朝方、おきたらなぜか手元にあった品。
紫色、と色は違えどたしかに形や大きさからいえばまったく同じ。
「それは……」
「まさか……」
「やはり、あなたは……」
??
それをみて、目を見開いているライやカイ、そしてヒュウガ。
「あの?あ、これもオーブなんでしょうか?こんな大きな、それにこんな形のものなんて始めて知りました」
もっとも、アンジェリークが知らないだけでこのような大きなオーブはたくさんあるのかもしれない。
それを手にするとどこか安らぎを感じる。
まるで、そう、夜の闇に包み込まれているかのような安らぎ。
闇は本来恐怖ではなく安らぎを運ぶもの。
この石からはそのような当たり前のことを改めて感じさせられる。
「とにかく。話は村に戻ってからにしよう。その男も村に届けなければならないしな」
「そうですね。では我々もご一緒いたします」
ヒュウガの言葉に続いてライが答える。
真実をこの場に居合わせたものとしてきちんと把握する必要がある。
「そうですね。きっとナタリーさんたちがまってますしね」
そんな彼らの会話をきき、素直にうなづくアンジェリーク。
なぜか騎士団たちにその石を渡そうとするものの遠慮されてしまい、アンジェリークが手にしたまま、
カールを含め彼ら六人はひとまずモンタントの村に向かうことに。


                                -第18話へー

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あとがきもどき:
薫:さてさて。前書きでも触れましたけど、基本的にアンジェリークが見ている夢。
  あれは精神体のみでいろいろと経験している、という形にしておりますv
  まあ、アンジェシリーズの基本といえば基本ですしね(笑
  ちなみに、出てきた金髪の少年?ええ、とうぜんルナにきまってるじゃないですかv(まて
  では、次回、護り石&モンタントの村の襲撃、をお送りいたしますv
  ではでは~♪

2008年5月11日(日)某日

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