まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
さてさて、今回は碑文の森のカールさんの行方不明事件ですv
そういや、あれどうやってもヒュウガが仲間の状態で発生しない…
無理なのかな?
まあ、時間とかもあるしねぇ。依頼発生さん。
というわけで、ヒュウガを無理やりに同行者にv
何はともあれ、いっきますv
#####################################銀花の園 ~碑文の森~
――アンジェリーク、アンジェリーク。
どこかで聞いたことのあるような、とても懐かしく、それでいて暖かな声。
これは、夢?
ふと気付けば夢の中で陽だまり邸の中を歩いている自分に気付く。
夢、と自覚している夢はここ数日にわたってよく見ている。
何かここ数日でいろいろなことがありすぎて、それでも必死になっているので周りを気にかける余裕もない。
「…あなたは……」
ふと気付けば、サルーンの階段の真上にとある絵姿が光っている。
とても何か懐かしさを感じるような女性の姿。
その背に翼を生やし、まるで祈るような形をしている絵姿。
――アンジェリーク。心を済ませて。些細なことも見逃してはだめよ
「って、あ、あの!?」
「にゃ~」
光の向こうに垣間見えた二つの人影。
もっと目を凝らしてみようとしたところ、耳元でいきなり鳴き声がする。
「…って、夢?もう、エルヴィン、どうしたの?…あら?何かしたのほうがにぎやかだけど…」
何かしら?
何やら一階のほうが騒がしい。
何か数名の話し声が聞こえてくる。
とにかく、身だしなみを整えてから私も降りてみましょ。
寝巻きのまま下に降りるわけにもいかない。
それゆえに、服を着替えて身だしなみを整える。
「うん。よしっ」
姿見にて自分の姿がおかしくないのを確認し、ひょいっとエルヴィンを抱きかかえてから部屋の外へ。
やはり何か一階のほうがにぎやかのような気がする。
ふと、階段を降りかけて夢にでてきた絵姿にと視線をとめる。
そういえば、この絵姿…誰のものなのかしら?
何だかとても懐かしく感じるけど?
どこかであったような感覚をうけるがまったくもって思い出せない。
そもそも、この絵が何の絵なのかもアンジェリークは知らない。
「あら?…もしかして、ヒュウガさん?」
ふとしたのほうに視線を向ければそこには先日、用意が住んだら陽だまり邸に向かう、といっていたヒュウガの姿。
「おや。アンジェリーク。ちょうどいいところへ」
「だね。新しい仲間が今やってきたんだよ」
「というか、ここ数日で一気に何名も増えるなんて驚き、だがな」
そんなアンジェリークの姿をみとめて、そんなことをいっているニクスにジェイド。
そして、こちらはこちらで素直な感想を漏らしているレイン。
本来、浄化能力をもっている存在は限りなく少ない。
そもそも、持っている、と認められればすぐさまに彼らは教団に入団することになる。
人々を守るために。
「ヒュウガさん!」
そんなヒュウガの姿をみとめて、ぱっと顔を輝かせるアンジェリーク。
「これで仲間が五人になりましたね。
それでは簡単な自己紹介をかねて今後の活動について話し合いましょうか?ちょうど朝ごはんてもありますしね」
ふとみれば、すでに一階のサルーンのテーブルの上にはパンがいくつか籠の上に積上げられている。
五人で食べるにのは狭いような気がしなくもないが、確かに話をするのにはいいかもしれない。
ニクスに促され、それぞれソファーにと腰掛ける。
「さて。それでは改めまして。私がこの陽だまり邸の主のニクスです。
こうしてこんなに浄化能力者のみなさんが見つかってとてもうれしいことかぎりがないです」
「たしかに。仲間が増えるのはいいことだよね」
「しかし、今まで数年以上もこのニクスと活動を一緒にしていたが。
俺たち以外の浄化能力者の噂なんてまったく聞いたことがなかったのに」
にこやかにいうジェイドとは対照的に至極もっともな疑問をいっているレイン。
「まあまあ。レイン君。このアルカディアも広いですからね。それにおそらく天使が引き合わせてくれたんですよ」
いってにこりとアンジェリークのほうをみていっているニクス。
「?天使?」
そんなニクスの台詞に意味がわからずに首をかしげているアンジリェーク。
「ああ。なるほど。確かに彼女は天使のように素敵だね」
心から本気でそういってくるジェイドに悪気があるわけでもなく、本心からいっている、
というのは何となくだがわかる。
「そ、そんな。恥ずかしいです。やめてください。天使だなんて、そんな…」
「だが。あながち間違った表現ではないとおもうぜ?」
うつむき恥ずかしがるアンジェリークにとどめとばかりにいっているレイン。
天使…というよりは、むしろ彼女の力はおそらく…
「天使…か。ふっ。ところでニクス殿」
「おや、ニクス、と呼び捨てでいいですよ?堅苦しいことはなしにしましょう。
今日から私たちは仲間なのですから、ね?ヒュウガ?」
堅苦しくいってくるヒュウガににこやかな笑みをたたえたままで答えるニクス。
「仲間…か」
その言葉に絶対に忘れてはいなけいともの姿を思い浮かべる。
「しかし、屋敷の主の言葉には従うのが道理であろう。わかった。ではお言葉に甘えてニクス。
貴殿はどうしてそこまで人々の為につくす篤志家などを?」
ずっと噂を聞いたときから聞いてみたかった。
「それは、私の役目、だからですよ。人はそれぞれに果たすべき役割がある。違いますか?」
「何かニクスさん、それってはぐらかしてないですか?」
ヒュウガの問いかけににっこりと微笑み問い返すニクスに対して首をかしげながらも聞いているアンジェリーク。
「まあまあ。…それより、どうやらお客さんがくるみたいだよ?」
「「「お客?」」」
玄関口のほうをみながら、そんなことをいってくるジェイド。
そういっても誰もやってきた気配などはない。
「こっちにむかって足音が近づいてる。それもすごくあわててる様子みたいだけど」
「おや?それはもしかすると緊急の依頼、かもしれませんね」
ジェイドの言葉にそのまますくっと立ち上がり、玄関先にと出向いてゆくニクスであるが。
「?私には何もきこえません。ジェイドさん、耳がいいんですね」
「まあ、誰にでも得意なことはあるものさ」
おそらく、レインの考えが間違っていなければこの問いかけには彼は困るのは明白。
もっとも、レインとて『そのこと』を詳しくしっているわけではないので一概にはいえないが。
それでもやはりもしそうだとしても当人の口から話すべきであり、自分からいうべきことではない。
人には誰もが言えない過去、というものはあるのだから。
アンジェリークが素直に驚きつぶやくのをうけて、さらっとそれで流しているレイン。
ニクスが玄関先にたつのとほぼ同時。
ドンドンドン!
けたたましく陽だまり邸の玄関の扉がノックされる。
「ちょうど、でしたね。どうぞ」
がちゃ。
ニクスがたどり着くのと玄関の扉がノックされるのはまったく同時。
それゆえにすぐさま扉を開いているニクス。
扉の先には急いできたらしい息を切らせている村人が数名。
「あ、あの!ニクス様!お願いです!助けてくださいっ!」
「お願いです!どうか、どうかっ!」
口々にいきなりそんなことをいってくる。
「みなさん、落ち着いてください。いったいどうした、というのですか?」
そんな彼らに落ち着くように促し、笑みをたたえたまま問い返すニクス。
「どうやらただ事ではなさそうだな」
「みたいだね」
「…彼は人々から信頼が厚いのだな」
その様子をみてぶやくレインとジェイド。
そしてまた、タナトスが出るかもしれない、というのにここまでやってきた村人の姿。
その姿一つみただけでもニクスがどれだけ村人達に頼りにされているのか見て取れる。
以前、そういえば彼らのことを聖都で聞いたことが……
代々、基本的に浄化能力を持ち合わせている、という彼らのことを。
そのことを教えた少年はまだ他にも何かしっているような気配ではあったが。
それは仕方がないともいえる。
彼は生まれながらに『必要な知識』全てを兼ね備えて生まれてきているのだから。
「それで?いったいどうなさったのです?」
混乱しかけている村人をなだめながらもやさしく問いかけるニクスの台詞に、
「実は、近所に住んでいるカールさんが碑文の森にでかけたっきり三日ももどってきてないんです!」
「奥さんのナタリーさんはすでに産み月にはいっている妊婦さんだというのに探しに行く、ときかなくて!」
「お願いです!ニクス様!どうか彼を助けてやってください!」
子ども、というものはある意味希望。
この先が見えない未来において子どもは宝。
どうにか妻であるナタリーのことは彼女の両親に頼んで何が何でも止めるように、といってきた。
近所のよしみで代表して彼ら三人がニクスの屋敷にまで連絡をいれにきたに他ならない。
「それはいけませんね。わかりました。すぐに準備をいたします。
場所は高原の村モンタントでよろしいんですね?」
相手の服装などからわかる。
しかも、そのうちの一人はモンタントの村長てもありニクスとは顔なじみ。
つい最近、前の村長がタナトスに襲われ死亡し、その息子が村長の役目を継いでいる。
「おねがいします!馬車はもう門の前にまたせてありますから!」
モンタントからリースまでは多少の距離がある。
それでも、危険を承知でモンタントの村からまだ空が暗いうちにと出発した彼ら。
三日ももどってこない、というのは一刻を争う。
かといって村人が助けにいったとしても万が一タナトスだったとしたらそれこそ二次被害がおこる。
切羽つまっている村人達の声。
「さて。お聞きになったとおりです。どうやら急ぎの仕事がはいったようですよ?
アンジェリーク。今回はヒュウガと一緒にいってくれますか?」
「え?あ、はい。私はかまいませんけど。ニクスさんたちは?」
「俺たちは俺たちでやることもあるしな」
「ええ。それでは、ヒュウガ、たずねてきたばかりのあなたに頼むのも心苦しいですが、お願いしてもいいですか?」
「心得た。無論人助けに依存はない」
「私たちは後からいきます。とりあえず屋敷にも誰かのこっていないと、何かあったときに困りますからね」
確かに、全員ではらっていれば緊急事態に対処の仕様がない。
「じゃあ、俺が残るよ。おいしい料理を用意してまってるからね。ヒュウガの歓迎会の用意もしなくちゃいけないし」
くすっ。
そんなジェイドの台詞にふと笑みが漏れる。
どうやらこのジェイドさん、とても楽しいこと好きの人みたいだわ。
初めてあったときの出会いもかなりびっくりさせられたが。
「それでは、ヒュウガ、おねがいしますね」
「心得た。…あなたの用意はいいのか?」
「え、あ。はい。大丈夫です」
用意、といっても別に何かもっていく……
「あ、少しまってください。いざというときのために救急箱をもっていきます!」
ここ数日はいろいろありすぎていつもは持ち歩いていたそれをすっかり忘れていたが。
「アンジェリーク。それは必要ないとおもうぜ?必要なものは村にもあるだろうしな。
それより、こいつをもっていけ」
ぽいっ。
何やら小さな小瓶のようなものを投げ渡される。
「?これは…オーブが?」
みれば、ちょっとした小瓶の中に色とりどりのオーブが敷き詰められているのが見て取れる。
「おそらくそいつのほうが役にたつ」
アンジェリークがオーブの力を完全に引き出せるのはもはや確信をもっていえる。
当の当人はよくわかっていないようだが。
それゆえに持ち運びやすく瓶に入る程度のオーブを選び瓶につめておいたレイン。
いざとなったときにすぐに利用可能にしておくために。
「…役に?」
一瞬、レインのいっていることがわからずにきょとん、と首をかしげるアンジェリークであるが。
「ともかく、それではアンジェリーク。ヒュウガ。急いでください。どうやら一刻を争うようですし」
「はい、わかりました」
「では、いってくる」
「お、おねがいします!おねがいしますっ!こ、こちらですっ!」
バタバタバタ。
何ともあわただしい朝の風景。
それほど彼らが必死である、ということに他ならないが。
「さて。…どうやらこの辺り周辺にタナトスが連続して出没しているようですね。
念の為に私は探索にいってきます。レイン君は準備ができしだい、村のほうにむかってください」
「わかった」
たしかに、ニクスの言うとおり。
リースといい、天使の花束といい。
ここ数日、いくら何でもタナトスの出現が多すぎる。
しかも、街中にいきなり出現する、というのは滅多となかったのに、それが二度続けて。
だが、その可能性も何となくなら理解ができる。
タナトスは何も意思がない生命体ではない。
長年の研究により、タナトスには意思があり、そして独自の進化を遂げているのもわかっている。
ならば、もしも自分たちに害なるるであろう存在のことを探知したとすれば?
生物が生きるために行うこと、それは必然と決まってくる。
一時にしろ昼間の空に輝いた虹色の光のオーロラが指し示すように。
「モンタント…か」
ある意味運命を感じてしまう。
アンジェリークと初めてしりあったのもモンタントの村。
そして初めての依頼で出向くのも同じ村。
といってもタナトスが現れた、もしくは現れかねない、といわれている場所は異なるにしろ。
「そういえば、ヒュウガさんと初めてあったのもモンタントの村でしたね」
あれからまだ日は経過していない。
というかむしろアンジェリークが自身の力を知ってから七日もまだ経過していないのが実情。
めまぐるしく、何かが動いているようなきがするが、それか何かはわからない。
「そうだな」
「そういえば、どうしてヒュウガさんはあそこにいたんですか?」
「タナトスを退治していた」
リースに向かう途中、たまたまタナトスが出現した、ときいた。
「まあ、それはそうかもしれませんけど……」
見たままの事実をいうヒュウガの言葉に会話が続かなくなってしまう。
せっかく今から仲間になるのだから相手ともっと仲良くなりたい、とおもうのは誰にしろ同じこと。
もともとは碑文の森のほうに向かったが、そこで駐留部隊をみつけたので村にともどっていた。
だがしかし、碑文の森にて男性が三日も行方不明、というのは彼らとてその事実をつかんでいないか、
もしくは別の場所に移動したのかそれはわからない。
碑文の森、といっても広いので情報がきちんと伝わっていない可能性すらある。
事実、駐留部隊がいるのを知っていた村人が森にはいったはいいものの、タナトスに襲われた。
そういった事実もあり村人達がたよったのがオーブハンターのニクス。
かなり急いでいるのであろう、馬車のゆれが普通よりもかなり激しい。
「ここでいい。お前たちは村にもどって我々が行方不明の男性を連れて戻る、そう伝えてくれ」
しばらくきまづいというかしんとした馬車内の空気が一変する。
ふとみれば、馬車の少し前には青々と広がる森の姿が見えている。
おそらくアレが碑文の森、と呼ばれている場所なのであろう。
「わ、わかりました」
「奥さんに安心するように、と伝えてください」
三日もたっていれば生死すらもかなり不安。
それでも、生きている、と信じたい。
いまだに生まれてきていない、という子どものためにも。
「じゃ、いきましょう!」
馬車に乗っていた村人達にと話しかけ、そのまま馬車から降りて森にと向かってゆくアンジェリーク。
そんなアンジェリークの背後からついてゆくヒュウガ。
念のために周囲を警戒するものの、今のところタナトスの気配という気配は見当たらない。
碑文の森。
そこは古の遺跡があることからそういわれている場所。
何かの碑らしきものがあるのだが、その文面は今だに解読されていない。
かつてそこはとある屋敷があったのだが、そのことは忘れられてすでに久しい。
それほどまでに長き時間がこの地、アルカディアにおいては流れている。
普段ならばその森は確かに憩いの場なのであろう。
だが、今現在においてはいつ何どきタナトスが現れるかもしれない、という脅威を兼ね備えている。
そんな中、なぜカールという男性が森にむかったのかといえば、
妻であるナタリーが碑文の森でしか取れない水晶の花をみてみたい。
そういったがゆえ。
かつて玻璃の森、と呼ばれていた場所に生息していた花がひっそりと碑文の森には咲いている。
その森は今は静寂の湿原、と呼ばれる台地にかわってはいるが。
もっとも、その事実を知るものはもはや一部の存在のみ。
「とにかく、早くカールさんをみつけないと」
「アンジェリーク、はぐれないように気をつけるように」
「は、はいっ!」
こういった森に入るのははっきりいって初めてといっても過言ではない。
自然の豊かさを本来ならばじっくりと味わいたいところなのだが、今はそれどころではない。
お願い、どこにいるの?カールさん。
祈りをささげるように彼の無事を祈る。
森の中をすすんでゆくことしばらく、
がさっ。
「?カールさん?」
「いや、違う。…お前たちは……」
がさり、と茂みが揺れる音がして出てくるひとりの男性。
緑色の帽子をかぶり、何だか高級そうな服を着こなしているこの人は?
そんなことをふと思うアンジェリーク。
「おや?このような場所に人が?ここはタナトスが現れた、という情報があります。危険ですよ?
…ん?もしかしてあなたはヒュウガ殿ではないですか!?」
どうやらヒュウガの知り合いなのか、ヒュウガをみてそんなことをいってくる。
「銀樹騎士、か。ここで駐在しているのか?」
「はっ!この付近ではたびたびタナトスの出現が目撃されておりまして。
我々は念のためにこの森の中で野営をしております。
しかし、ヒュウガ殿。いったいどうしてこのようなところに…?」
びしっと何やら敬礼のような礼をとりながらもこたえてくるその男性。
銀樹騎士?
噂には聞いたことがあるが、みるのは初めてのアンジェリーク。
おもわずまじまじと男性と、そしてヒュウガを見比べてしまうのは仕方がないであろう。
「我々はこの森で行方不明になっている、という男性を探している。みかけなかったか?」
「えっと、カールさんっていうモンタントの人なんですけど。もう三日もこの森で行方不明になっているらしいんです」
ヒュウガに続き、銀樹騎士だ、というその彼にと説明するアンジェリーク。
「何ですって!?それはいけない。我々も捜索いたします。
とりあえずここから西はそういう人物を見かけた、という情報ははいっておりません。
人々を助けるのも我々銀樹騎士の役目、私たちも捜索に加わります。それでは!」
一刻を争うがゆえに確かに別々の場所を捜索したほうがいいのはわかる。
わかるが、
「いいのかしら?」
「彼ら銀樹騎士は人々を守るために存在している集団だ。我々もとにかく探すとしよう」
「はい」
そういえば、私銀樹騎士のことほとんど知らないわ。
こんどヒョウガさんに聞いてみようかしら?
ヒュウガさんはたしか元騎士団にいたことがある、といってたし。
学園からほとんどでたことがなかったけど、私本当に世界のことあまりしらないのね。
いまさらながらに思ってしまうがこればかりは仕方がない。
「カールさ~ん、どこですか~?」
しばし、アンジェリークの声が森の中をこだましてゆく。
「…日が暮れてきだしたな」
「そんな……カールさん…いったいどこに……」
「にゃうっ」
「って、エルヴィン!?あなた、どうして!?」
いきなり子猫の声がして思わずびっくりして振り向くと、そこにちょこん、と座っているエルヴィンの姿。
確かに陽だまり邸においてきていたはずなのに。
「…どうやらあなたをおいかけてきたようだな。このようなところにまで追いかけてくるとは…
もしやその猫はあなたを守っているつもりなのかもしれん」
「もう。いったいお前、またどうやってついてきたの?…あら?」
ひょいっと抱き上げてエルヴィンに注意を促していると、ふと人の気配を感じる。
がさがさ。
「おや?ヒュウガ殿ではないですか!…いまだに行方不明のひとはみつかりませんか?」
「ああ、どうやらその様子ではそちらもまだみたいだな」
みれば、どうやら捜索を手伝ってくれていた先ほどの銀樹騎士団の人のようである。
そんな彼の表情でいまだに彼らもカールを発見していないのを悟りそう淡々といっているヒュゥガ。
「ええ。あ、どうでしょう?我々はこの先でキャンプを張っています。
夜の森は危険です。ご一緒なさいませんか?そちらのお嬢さんもおられることですし」
「そうだな。ではお言葉にあまえるとしよう。アンジェリーク。私は一度村に戻ってこのことを伝えてくる」
「え?あ、私もいきます」
「いや、あなたはここにのこってくれ。銀樹騎士団と一緒のほうが心強い。
夜の森は危険だ。すまんがこの方をたのむ」
アンジェリークを夜の森の中を連れ歩くわけにはいかない。
彼女はこの世界にとってとても大切な存在であろうから。
当人はそのことをまったくもって自覚してないようであるが。
「わかりました!ヒュウガ殿のおつれさまです!責任をもってお預かりいたします!
我々のキャンプの位置はわかりますでしょうか?」
「騎士団がどういった場所に野営を張るかは心得ている」
「心得ました。それでは、お嬢さん、まいりましょうか?」
「え?あ、でも……」
かるく礼をとり、その場を立ち去るヒュウガをみつつも、ついていったほうがいいんじゃぁ?
という思いに駆られるアンジェリークはどうこたえていいのかわからない。
「ヒュウガ殿が心配ですか?彼はとても強いですから大丈夫ですよ。
何しろヒュウガ殿は本来ならば聖騎士になるはずだったのですから」
「…聖???何ですか?それは?」
そんな彼の言葉にきょとん、と首をかしげるしかないアンジェリーク。
まったく知らない言葉である。
「おや。お嬢さんは彼のことをご存知ないのですか?」
「あまり。今日から同じ仲間として行動することになりましたので。オーブハンターとして」
「オーブ…ハンター…ですか?あのヒュウガ殿が?」
アンジェリークの言葉に一瞬信じられない、という表情をする。
さもあらん。
彼がそういった組織に加わる、などとは思えない。
てっきりヒュウガ殿の依頼者か何かかとこのお嬢さんのことは思っていのだ。
もしくはその関係者。
「と、とにかく。キャンプの位置までいきましょう」
「にゅっ」
「おやおや。子猫が返事をしてくれましたね。しかしかわった子猫ですね。あなたの飼い猫ですか?」
彼の言葉に、元気よくアンジェークではなくてエルヴィンが返事をするかのように一声鳴く。
そんな様子に思わず笑みが漏れてしまうのは仕方がない。
そもそも、教団長が大の猫好き、というのもあり騎士団の人々は猫に嫌でもなれている。
見たこともない銀色の毛並みをもった猫。
それは聖なる大樹を連想させる。
そんな会話をしながらも、とりあえず彼らがキャンプを張っている開けた場所にと移動してゆく二人と一匹。
夜は更けてゆく、というのにカールの情報は何も得られないままに――
-第16話へー
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あとがきもどき:
薫:次回で、教団員から女王のことを知らされる主人公(笑
学校ではそのようなことはまずおしえませんしねぇ。
巷ではかなり有名ではありますけど、大体は伝承で伝わるものですし。
アンジェは小さなころに絵本を読んでもらってたりはしますけど。
その記憶は綺麗さっぱりと忘れてたり(とある反動の設定ですv
何はともあれ、ではまた次回にてv
2008年5月10日(土)某日
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