まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
そういや、ヒュウガは鋼のサクリアの恩恵を強く受けてる…といわれたことがあるそうだが(汗
まあ、不器用ながらもやさしい、というのはゼフィルやエルンストと似通ってはいますけど。
はてさて、鋼の守護聖にするべきか?
でもそうしたらジェイドがなぁ……みゅぅ。
そういや、ニクスって二百年前だったっけ!?五百年かとおもってた(こらまてまて
ともあれ、いっきますv
#####################################銀花の園 ~浄化能力~
ふわっ。
光が収まるとほぼ同時、光の中に水色の球体の光のようなものが出現し、
それはアンジェリークの中にまるで吸い込まれるがごとくに消えてゆく。
そのあまりの神秘的な光景に思わず目を丸くするジェイド。
この光景は…似通った光景をいつかどこかでみたことがある。
それがいつだったのかは思い出せない。
あのときから、記憶は混乱したまま。
過去のことが思い出せない。
それでも、ふっと脳裏に浮ぶのは、茶色とそして金髪の白き翼を有した少女の姿。
「大丈夫か?アンジェリーク?」
「え。ええ。平気。それより、タナトスは…それに……」
ふと力を感じた。
不思議に思い手をみてみれば、またブレスレットの石に光が宿っている。
まただわ。
いったいなぜ?
疑問におもうものの、それに対する答えは明確に出ないであろう、というのもわかる。
アンジェリークの疑問に満ちたその顔をみつつ、
「大丈夫だ。無事にタナトスは浄化された」
安心させるようにと説明するレイン。
アンジェリークの心配は確かにタナトスのこともあるが、それ以前にブレスレットのこともある。
しかも、昨日送られてきたコンパクト。
あの子から送られてきた品ってそういえば全部ほとんど不思議な品が多いわよね。
そんなことをふとおもいつつ、
「よかった。あ、そうだ、えっとジェイドさんは……」
レインの言葉にほっと笑顔をみせ、ふと気付いたようにとつぶやくアンジェリーク。
タナトスが浄化された、ということはもう危険はないはずである。
しかし、こんな街中にあんなタナトスが出現するなど。
いきなり出現する、という話は多々ときいてはいたが、ここまで目の当たりにするのは滅多とない。
もっとも、リースの庭にてタナトスが出現するその瞬間に一度立ち会ったアンジェリークではあるが。
それでも、やはり信じられない、という思いはある。
ふとみれば、アンジェリークとレインのほうにゆっくりと歩いてくるジェイド、と名乗った男性。
先ほどテーブルの下で体を覆い隠すようにしていたマントはどこかにいってしまったらしく今は身に着けていない。
腰に巻いているよくわからないスカートのような布の用途が多少なりともかなり気になってしまう。
暖かいので上着をスカートのようにしてベルトでとめている…という風でもないようである。
かわった服……
それとも、これがファリアンの流行なのかしら?
とことんそんな勘違いをしているアンジェリークではあるが。
「大丈夫かい?アンジェリーク。こんなかわいい浄化能力者とであったのは初めてだ。
君たちは二人でタナトスと戦っているのかい?」
アンジェリークのそんな勘違いを知る由もなく、にこやかに二人に話しかけてくるジェイド。
「いや。もう一人いる。お前は一人なのか?」
一瞬、その姿をどこがみたような気がするものの、深く考えずにひとまず問いかけるレイン。
深く考えない理由の一つに、財団、の二文字が頭をよぎる。
しかも、ふとみれば隠れるように建物の影においてこちらを伺っている財団員らしき姿も目にとまる。
アンジェリークのほうを見ているのではない。
目の前の変わった服装の風変わりな男性を確かに見て…否、監視しているようにもみえる。
どうやらアンジェリークの今の力を見られたわけではないらしいので多少ほっとしながらも問いかけるレイン。
「ああ、アルカディア中を旅しているんだ。人々に笑顔を届けるためにね」
そういってレインの問いかけににっこりと微笑み邪気のない笑顔でこたえるジェイド。
彼の言葉には裏がない。
「笑顔は人々を幸せにする種だからね」
種はいずれ芽吹き大輪を咲かせる。
そのためのあてのない旅路。
「ニクスさんがいたら、きっとひだまり邸にきてほしい。そういうでしょうね」
そんなジェイドの台詞にくすりと微笑みながらも横にいるレインにと話しかけているアンジェリーク。
「?陽だまり邸?」
そんなアンジェリークのことばにきょとん、とした声をだすジェイドに対し、
「俺たちが住んでいるリースにある屋敷の名前だ。依頼をうけてタナトスを退治している」
とりあえず簡単に説明するレイン。
「ふぅん。君たち、一緒にすんでいるんだ」
そんなレインの台詞ににこやかに、それでいてさらっとある意味爆弾発言ともとれる言葉をいってくるジェイド。
「なっ!も、もう一人いるっていってるだろうっ!?」
おもいっきりジェイドの言葉にあわてるレインであるが。
つまり、男女が一つ屋根の下に住んでいる、というのはそのそういう意味だ、と捉えられた。
そう思ってしまったがゆえにあわてざるを得ない。
そもそも、レインはまだアンジェリークに対して一目ぼれした、と認めたくないという事情がある。
当人もよくわからないその感情をまるで先を見越されたかのようなその言葉にあわてざるをえない。
もし、それでアンジェリークがやはり一緒に住むのは…
とでもいいだしたらそれこそ取り返しがつかないような気がする。
だからこそのあわてぶり。
「あの。ジェイドさん。私たちと一緒にいらっしゃいませんか?
ニクスさんっていうもう一人の浄化能力者に紹介したいんです」
だが当のアンジェリークはまったくそういう意味には捉えておらず、逆にジェイドを仲間に勧誘していたりする。
昨日に続いて今日も新しい浄化能力者に出会えるなんて。
こんな素敵な偶然を偶然で済ましてしまうのはもったいない。
そういう思いもまたアンジェリークの中にはある。
ジェイドがいった、一緒に住んでいる云々は、仲間だから一緒にすんでいる。
そんな捕らえ方をしているのが何ともそういう類には疎いアンジェリークらしい。
「君にそんなことをいわれたらすぐにでも一緒にいきたいくらいだよ?だけど、今はお別れだよ。アンジェリーク」
確かにそれは魅力的な提案ではある。
だけど今、ここでそのままついていっては彼女たちに迷惑がかかる。
顔を隠していたマントがタナトスによってどこかにいってしまった以上、今はこの場を早く離れなければならない。
ここ、ファリアンは財団があることからもあまり寄りたくない街ではあったが、
だけどもタナトスが出た、と聞けばほうっておけない。
その結果、財団の一員に見つかり隠れていたところばったりとアンジェリークと出くわしたジェイド。
そこまで詳しく彼女たちに説明するわけにも、ましてや巻き込むわけにもいかない。
それはジェイド自身の問題なのだから。
「え?」
「じゃぁ」
にこやかにそういわれ、きょとん、とした声をだすアンジェリークではあるが。
そのまま、その場からだっと駆け出してゆくジェイド。
「あ……」
「いつかたずねるよ。陽だまり邸を。それじゃぁ!」
まるで風、といってもいいのかもしれない。
あっという間にその姿はみえなくなってゆく。
「せっかく新しい能力者の人と出会えたのに…」
しゅん、となるアンジェリークであるが。
「…まずいな」
ざわざわざわ。
いつのまにか周囲に人が集まりだしている。
先ほどの光の正体と、そしてタナトスを倒したのが誰か、という好奇心から集まっている人々。
「とにかく。一度この場を離れるぞ」
「え。あ、はい」
「にゅう♡」
「って、エルヴィン!いつのまに?」
ふと気付けばいつのまにかテーブルの下からアンジェリークの足とにやってきていたらしく、
アンジェリークの足元にちょこん、とすわりアンジェリークを見上げる形で鳴いているエルヴィンの姿。
そのまま、ひょいっとエルヴィンを抱き上げる。
「人ごみにまぎれて、いくぞ」
「は、はい」
とりあえず、ここから離れればまず問題はないはずである。
あのオープンカフェの周囲にはあまり人はいなかった。
おそらく目撃していたのはあの母子くらいであろう。
それ以外の人々は逃げることに必死のはず。
だからこそ、その場でぐずぐずはしてはいられない。
噂、というものはよいものにしても、悪いものにしてもすぐさまに広まるのだから。
「こんなところに村があったんですね」
「ってお前、ここのこともしらなかったのか?」
「はい」
「・・・・・・・・・・」
即答してくるアンジェリークの言葉に思わず無言になってしまう。
とりあえず、人ごみに紛れ、タナトスを倒したあとそのままファリアンの街を後にしたレインとアンジェリーク。
とりあえず、昼も近い、というので立ち寄ったのが街道の村クウリィール。
ここのお勧めは何といっても特製パスタにつきる。
ファリアンの街を離れたはいいものの、朝から何も食べていない。
アイスを買うにしても人が並んでおり、ようやく順番がきたかとおもえばタナトス騒ぎ。
それゆえにアイスそのものも買いそびれているので朝から本当に何も口にはいれていない。
ゆえに、もう昼は過ぎているもののファリアンからリースへ帰りがてらクウリィールに立ち寄り昼食を食べているこの二人。
「結局ファリアンではゆっくりできなかったですね」
「まあ、騒ぎが大きくなるのは、な」
というよりは、騒ぎが大きくなり財団に気付かれる。
それがレインが一番危惧していること。
彼らのこと。
アンジェリークのことをしれば、その命がどうなろうとひどい扱いをしでかすであろうことは容易に予測ができる。
いずれは知ることになるかもしれないが、それでも危険とおもわしきものからは遠ざけていたほうがいい。
いくらレインだとて大人数でもし仕掛けられたらアンジェリークをたった一人では守りきれない。
そう自覚があるからなおさらに。
タナトスを完全に浄化し、そしてさらに街中に降り注いだ金色の光。
さらにありえないのにタナトスに襲われて倒れていた人々がそれと同時によみがえった。
本来、タナトスに襲われて動けなくなった人々には死がまつのみ、である、というのに。
草花の生気は多少はもどる。
だが、人はそう都合よく生気は戻ることはない。
「さて。おまたせ。クウリィール村名物、スペシャルパスタだ。存分に味わってくれ」
大きなお皿に山盛りのパスタ。
そしてそれぞれのお皿に振り分けつつもテーブルについている二人にと話しかけてくる店の従業員。
ここ、クウリィール村は長旅をする人々にとっては骨休めの地。
「おい。きいたか?今日ファリアンでタナトスが現れたって」
「最近多いよな。タナトスも昔はここまででなかった、とうちのかみさんの母親がいってたし」
そんな二人の後ろでそんな会話をしている旅人らしき男性たち。
見たところ、どうやら旅の商人か何からしい。
「いや、それが、だ。何でも目撃した子どもが天使がタナトスを消し去ったとかいってるらしいぜ?」
……ぴた。
その会話に思わず食事の手を止めるレイン。
騒ぎになるまえにすでにもう旅の商人の噂に上っているなどとは。
「天使?そりゃまた、きっと夢でもみたんじゃないのか?」
「それがそう、ともいえない現象がおこったらしいぞ?」
「そういえば、数日前にリースの庭で同じような現象が起こったと聞いたことがあったけど」
どうやら様々な場所からたまたまこの場でであったたびの商人たちが一緒に食事をしているらしい。
「?レイン?どうかしたの?」
「いや、何でもない」
ここで反応してしまえば、彼らに気付かれる恐れがある。
「でも、ここのパスタ、ほんとうにおいしいわ。…材料を覚えたら作れないかしら?」
「まあ、いくら何でも隠し味までは教えてくれないとおもうぜ?」
味付けなどはお店の命といっていいもの。
中には自由にその味付けや作り方を公開している場所もあるにはあるが。
やがて、背後で食べていたたびの商人の一団が席を立ち上がり店を後にする。
こちらのことに気付かれなかったことにほっと息をつくレインをみつつ、
「?レイン?ほんとうにどうかしたの?やっぱりファリアンでゆっくりしたほうがよかったんじゃぁ?」
おそらく、故郷でゆっくりできなかったから落ち込んでいる。
そう勘違いして心配して声をかけているアンジェリーク。
「いや。そうじゃない。とりあえず食事を済ませたら物資を調達して陽だまり邸にもどろうぜ」
「ええ。そうね」
あまりここでゆっくりするわけにもいかない。
ゆっくりしすぎれば間違いなく真夜中になってしまう。
そんな会話をしながらも、とてもおいしいパスタを味わいながらクウリィールの村でひと時の安らぎの時間をもつ二人の姿がしばし見受けられてゆく。
ガラガラガラ。
「しかし。こう立て続けに浄化能力者に出会うとは、な」
物資を調達し、陽だまり邸にむかって馬車を走らせる。
といっても馬車を操る従者は別にいるので馬車の中にて座って会話をしているアンジェリークとレイン。
「みゅ~」
「あら?エルヴィン。まさか自分のおかげ、といってるの?」
「にゅうっ」
「って、こいつ、うなづいてるぜ。ほんっと変わった猫だよなぁ~」
アンジェリークの膝の上で完全に返事をしているように見受けられるエルヴィンをみて思わず笑うレイン。
「とりあえず、ニクスさんがまっているでしょうね。
きっと驚きますね。また新たな浄化能力者に出会った。っていったら」
すっかり買い物などをしていたら遅くなってしまった。
それゆえにそんなことをいっているアンジリェーク。
「そうだな。あいつがくればかなり効率がよくなるんだが、な」
まあ、無理強いはできないしな。
そんなことを思いつつもやはりとある資料が頭から離れないレイン。
財団が彼を…自分やアンジェリークでなくて彼をみていた、ということからも容易に推測はつく。
だが確証はもてない。
「いつか、陽だまり邸に立ち寄ってくれる日が楽しみです」
いつか立ち寄る、そういっていた彼の言葉に嘘はないとおもえる。
そんな会話をしている最中にも、やがて空はだんだんと薄暗くなってくる。
ファリアンからリース。
馬車で半日と少しかかる距離にあるがゆえに、どうしても遅くなってしまうのは仕方がない。
今、普及し始めているオートモービルという自動で動く鉄の乗り物はいまだに一般的ではない。
歩きだとさらに時間がかかるが、それでもこの世界の基本は自身の足で歩くこと。
「しかし。この調子だと陽だまり邸につくのは夜だな。完全に」
「でも、夜の道も何だかとても素敵です」
アンジェリークは基本、夜に出歩いたことがない。
ゆえに夜道を馬車で走ることにすら新鮮さを感じてしまう。
「まあな。夜の散歩もいいもんだぜ」
まあ、それはタナトスに対して処置がとれるがゆえにいえる台詞。
普通の人は夜の散歩などしたくてもタナトスの脅威がある以上、そう簡単にできないのが現状。
ガタゴトゴト。
すでに日も暮れた街道には他に一台の荷馬車すらも見当たらない。
静かな夜の街道を、ただひたすらにアンジェリークたちを乗せた馬車はすすんでゆく。
「おかえりなさ~い♡」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
「にゅ~にゅ~」
ごろごろごろ。
思わず屋敷の中に入ると同時に目が点になってしまうレインとアンジェリーク。
なぜか目の前にはフリフリのレースのついたエブロンをつけているジェイドの姿。
片手にもっているオタマが何ともいえない。
そもそも、どうして彼がここにいるのかすら謎。
そんな彼の足元にすりよるようにして鳴きながらのどをごろごろと鳴らしているエルヴィン。
「ジ、ジェイドさん!?」
しばらくその光景に目を点にしていたものの、はっと我にと戻り声をだすアンジェリーク。
「ど、どうしてここに?!」
レインもまた目を点にしていたものの、どうにか我を取り戻し頭を振りつつ声を絞り出す。
「え?だってアンジェークが誘ってくれただろう?」
そんな二人の台詞に逆にきょとん、としながらも答えてくるのは目の前にいるジェイド。
昼間、今は無理、といってその場を立ち去ったはずなのに。
いったい何がどうなっているのか理解不能。
「そうですけど、それにその格好は……」
確かに自分が誘ったのは事実てはあるが、それにしては突っ込みどころがおおすぎる。
そもそも、どうして服の上にフリル付のしかもピンクのエプロンをしているのか、というのも。
「ああ、これかい?エプロンが来てほしそうにしていたんだ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
にっこりさも当たり前のように言い放つそんなジェイドの台詞に思わず言葉を失うアンジェリークとレイン。
「つ、突っ込みどころが多すぎてどこからつっこんで何からいえばいいのかわからないな……」
そんなアンジェリークの気持ちを代弁してか、ぽそっとつぶやくレインの姿。
確かに、この状況では何をどこからつっこめばいいのか確かに理解不能であろう。
「お帰りなさい。今晩の食事はこの特別な旅人が全て用意してくれました」
しばし、二人が玄関先で固まっていると奥からニクスが出てきてそんな二人にと語りかける。
アンジリェークたちより先に彼が陽だまり邸に訪ねてきて、その結果このようなことになっているのだが。
「シーザーサラダに野菜のパイ、だよ。さあ、早くみんなでたべよう」
「…くすっ」
一方のジェイドはそんな二人の態度にまったく気に留めることなくにこやかにそんなことをいってくる。
そんな彼の笑みをみていれば思わずくすり、と笑みが漏れ出すアンジリェーク。
「……こりゃ、まさしく、アメイジング、だな」
あっけにとられつつもそんなことをつぶやいているレイン。
どうやら陽だまり邸は今日からまたにぎやかになりそうである。
『座標246、ボイントX。』
『全体の引き上げ準備できました。』
配管より聞こえてくる船内の声。
自分たちの捜索が間違っていなければ、例の品はここにある。
「よし。引き上げろ」
「はい」
「引き上げ、開始」
「……あぁっ……」
「ふっ。星の…船」
サキアの村にまで出向いた甲斐がある、というもの。
海から引き空けられたのは、まさしく伝承にある船に違いがない。
この世界でこのような大きさの船などいまだに製造不可能なのだから――
-第15話へー
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あとがきもどき:
薫:…あれ?てっきり朝のヒュウガ登場までいけるかな?とおもったのに…
ファリアンイベントと、その後だけで終わってしまった(汗
まあ、基本同じ長さで区切ったほうがいいから仕方がない、としておこう(無理やり言い聞かせ
次回の依頼はカールさん捜索、かな?
何はともあれ、ではまた次回にてv
2008年5月10日(土)某日
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