まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。



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銀花の園   ~光る蝶~

何かいろいろなことが一気にありすぎて考える暇すらもない。
一昨日、昨日、そして今日。
初めての村、ということもあり食後の散歩をしているアンジェリーク。
まあ、タナトスは浄化したわけで、おそらく心配もないであろうというのが理由の一つ。
ニクスとレインは何やら話しがあるらしく、
アンジェリークはエルヴィンとともに風の気持ちいいモンタントの村の中を歩いている今現在。
ヒラッ。
「……あら?」
「うにゃ!」
「って、あ、こら、まって!エルヴィン!」
ふと、見たこともない白い何かを目にしたような気がした。
よくよくみれば、蝶の形をした光りを放つものが飛んでいる。
光る蝶など聞いたことはないが、もしかしたらこういう蝶もいるのかもしれない。
ひらひらと、村の横にと広がる森の中にと飛んでゆく蝶。
その蝶にじゃれ付くようにたっと走り出しているエルヴィン。
そんなエルヴィンをあわてて追いかけるアンジェリーク。
「もう、だめじゃない。エルヴィン」
「にゅ、にゅ、にゅ」
じたばたとするエルヴィンを抱えあげる。
どうやら、蝶に興味があるらしく、手を伸ばしてそちらのほうにいこうとしているのが見て取れる。
「もう。あの蝶が気になるの?たしかに珍しいわね」
蝶はまるで、アンジェリークが立ち止まるとその周辺の木々にとまり、歩き出すと導くように再び飛び立つ。
まるで、そう、おびいてるかのように。
「何?あの蝶をおいかけて、そういうの?」
「にゅうんっ」
アンジェリークの問いに見間違いではなく、たしかに首を縦にふりながら一声鳴くエルヴィン。
「たしかに、気になるわね。少しおいかけてみましょうか」
ひらひらと、アンジェリークの元にきては、まるでおびくかのように奥のほうにととんでゆく光る蝶。
そんな蝶に導かれるように、森の中にと足を踏み入れてゆくアンジェリーク。
この森は背後にある山とつながっており、山を越えればリース郊外にとたどり着く。
もっとも、このご時勢、山などにはいろう、とする人もまずいないが。
森や山、といった場所でタナトスに出くわした場合、逃れるすべもなくまた助かるみこみもない。
しばらく、蝶を追いかけてすすむことしばし。
どこからか森の中だというのに金属音のような音が聞こえてくる。
蝶はその音がしている方向に確実に向かっているのが見て取れる。
しばらくすすむと、ぽっかりと森が開けている場所にたどり着く。
その中心にて、一人の銀髪の男性がナニかと戦っている様子が目に飛び込んでくる。
光る蝶はまるでその男性を心配するかのように周囲をひたすらに飛びまくっている。
が、彼がその蝶に気付いている気配はない。
馬のような姿に羽を生やしている異形の存在。
それがタナトスであるのは明白。
よくよくみれば、その背後の木々はことごとく枯れている。
銀髪、といっても表現するならば銀灰色、というべきか。
まるで舞を踊るかのようにタナトスを切りつけてはいるが、タナトスのほうも負けてはいない。
タナトスがうなり声のようなものを上げると同時、周囲の木々が一気に枯れはてる。
弱ってゆくタナトスが自身の体を保つために周囲の生気を吸い取っている。
そう直感的に理解するアンジェリーク。
と、とにかく、助けないと!
このままではおそらくラチがあかない。
ここには、タナトスの糧となる自然はたくさんある。
ましてや少し戻るとそこはモンタントの村がある。
絶対に村への侵入は許してはいけない。
タナトスが再び遠吠えのような叫びとも何ともいえないものをあげる。
「――浄化の光よ。世界をやさしさで満たして……」
相手から離れている。
離れている場所での発動はいまだかつてしたことない。
だけど近づくにしてもおそらく彼の戦いの邪魔をしてしまうであろう。
だからこそ、その場で祈りをささげるアンジェリーク。
アンジェリークの祈りをうけ、彼女自身の体から淡い金色の光が発生し周囲を満たしてゆく。
金色の光はタナトスを光の中に溶け込ませ、枯れ果てていた緑の木々を一気に元通りへと再生させてゆく。

一瞬、何が起こったのかわからなかった。
タナトスはしつこく周囲の木々の生気を吸い取りなかなか退く気配はない。
ここ最近、タナトスが異様に強くなっているような気がするのはおそらく気のせいではないだろう。
だが、突如として周囲を淡い金色の光が多いつくし、タナトスがその光の中で掻き消えてゆく。
周囲をみれば光につつまれ、タナトスが生気を吸い尽くしていた木々もまた命を取り戻している様が見て取れる。
確か光りは背後から届いてきたはず。
そう思い、振り向いた彼の目に飛び込んだのは、光に包まれている一人の少女の姿。
その背に紛れもない白き翼が目に焼きついてくる。
光に包まれているその姿は、まさに……
ふと気付けばいつのまにか光は収まっており、そこにはただ一人の少女がいるのみ。
青い髪に緑の瞳。
何よりも、その顔に一瞬驚きを隠しきれない。
「今のは…タナトスを完全に浄化した…?」
まちがいなく、あの少女がタナトスを浄化したのことは明白。
女性の、しかも完全にタナトスを浄化できる能力者など聞いたことがない。
「……何ものだ?それに、今の力は……」
先ほどの雰囲気とはまったく違う少女の姿がそこにある。
光の中で視えた翼は今はない。
目の錯覚だったのかもしれない、だがしかし、そうだ、ともいいきれない。
「え?あ…あの……」
男性にいきなり問われて、言葉につまる。
そもそも、何もの、というのは彼女、アンジェリーク自身が知りたいこと。
自分の力が何なのか彼女自身わかっていないのだから。
だけども、返事をしないわけにはいかない。
「あ、あの、蝶が……」
男性の周囲を確かに光る蝶が飛んでいる。
「蝶?」
だがしかし、男性の目からはその姿は見えていない。
「…えっと、あ、あの?もしかしてあなたは今朝の新聞にのっていた謎の英雄、ですか?」
見えていない、というのに驚きつつも、さらに驚くことにその蝶は男性の中に吸い込まれるように消えてゆく。
銀色の髪に浄化能力。
おそらく、新聞にのっていた人物なのであろう。
だからこそ、逆に問いかけているアンジェリーク。
「新聞?」
「えっと、ウォードン・タイムズに、街道でタナトスから少女を助けた銀色の青年の話が……
  少女をたすけたあと、何もいわずに立ち去ったって、もしかしなくてもあなたのことですよね?
  あなたも浄化能力者なんですか?」
服装が多少変わった服をしていることから、この付近の人ではないのであろう。
といってもアンジェリークにしては、服の違い、というものはまったくもってわからない。
ある意味、箱入り娘として成長しているがゆえに、世情のことにはかなり疎い。
「たしかにそういうこともあったが。そういうお前も浄化能力をもっているのか?
  しかもタナトスを完全に浄化する能力…女性の浄化能力者など今までに聞いたこともないが?」
それに、あの光と光に包まれた少女の背に視えた白き翼。
以前、よくこっそりとみていたとある絵姿によくにているその姿。
それゆえに確認をこめて再度といかける。
「え。ええ。私もつい最近までしらなかったんですけど。今は仲間とともにオーブハンターをしています」
つい最近、というか一昨日までまったくもってしらなかったが。
「オーブハンター?…たしか、民間でタナトス退治を請け負う輩がいるのは聞いていたが……
  しかし、それらのほとんどは浄化能力をもたない役にたたない輩、ときいていたのだがな?」
「え、そうなんですか?私は、今ニクスさん、という人とレインさん、という人と一緒に……」
アンジェリークがそう説明しかけているその最中。
「アンジェリーク!」
バタバタと人が走ってくる足音と、そして聞き覚えのある声がアンジェリークにと投げかけられる。
「…アンジェリーク?…その名前は……」
聖なる名前。
それゆえに思わず驚愕の表情を浮かべる銀色の髪の青年。
「あ、レイン」
「大丈夫か!?光が見えたから、タナトスがでたのか?…うん?こいつは誰だ?」
アンジェリークの無事な姿をみてほっとする。
そしてふと、アンジェリークの目の前に見知らぬ男性がいるのに気付いて怪訝そうな声をだす。
「えっと。レイン。この人も浄化能力者、なんですって。えっと…お名前は…あ、まだ聞いてないわ。
  私はアンジェリークといいます。それで、こっちが仲間のレインです」
ふと、まだ名前を聞いていなかったことを思い出し、多少申し訳なさそうな顔を浮かべるアンジェリーク。
そしてまた、自分も名乗っていなかったことを思い出し、あわてて自己紹介。
「そういえば……。失礼した。私はヒュウガという。
  教団に属していたことがあるゆえ世界については一通りの知識を備えている」
あまりの出来事にいつもかかさず行う礼をとっていなかったことを思い出し、かるく片手を胸にあてて礼をとる。
「教団?」
アンジェリークが多少首をかしげるが、
「なるほど。な。教団関係者で浄化能力者、か。
  しかも浄化能力があるのなら騎士の中でもエリート中のエリート、そのはずだ。そんなあんたがなぜ?」
浄化能力を認められた子どもは大概が聖都に連れて行かれ、そしてその力を養う。
騎士団ならば一人で行動することはまずない。
だからといっておいそれと、教団がそんな貴重な人材を手放すともあまり思えないが、
だかしかし、おそらそのあたりは教団の思想からいい、当人の意思を尊重するのであろう。
「確かに、昔は騎士団に属していたが、今は違う。一人でタナトスを退治してアルカディア中をめぐっている」
「なるほど。わけあり、か。まあ、とりあえず彼女を助けてくれたみたいで礼をいわせてもらう。
  おまえは~!何で一人でこんな森の中にはいりこんだんだ!?
  森の中はタナトスが出やすいんだ!まったく、何かあってからじゃおそいんだぞ!?
  お前の力は俺たちとは違う、きちんと説明したよな?!」
淡々と堪えるヒュウガの台詞をそれ以上突っ込むことなく、アンジェリークのほうにむきなおり、
いきなり怒鳴りだすレイン。
「ご、ごめんなさい。光る蝶がいて…それで…」
「蝶?光る蝶なんているのか?まさか新種のタナトス…!?」
「いえ、違うとおもうわ。邪悪さが感じなかったし」
「先ほどもあなたはいっていたが、光る蝶など私はみていない」
聖なる名前に先ほどの力。
おそらく間違いはないのであろうが確証はない。
だが、無礼な口を利いていい相手だともおもわない。
それゆえに、呼び方を改めていっているヒュウガ。
「まあ、いいさ。お前が無事で」
「ご、ごめんなさい。あ、そうだ。ヒュウガさん、でしたよね?もしよければ私たちの仲間になってくださいませんか?」
「お、おい!?アンジェリーク!?」
素直に心からレインに謝り、そしてふとヒュウガのほうを振り向き、にっこりとお願いする。
そんなアンジェリークに驚きの声をあげるレインであるが。
「というか、いきなりそんなこといわれたら面食らうだろうが!?」
そもそも、おそらく初対面の相手にそんなことをいわれて驚かない、というほうが無理である。
「え、あ。ごめんなさい。だけど今朝方みた新聞の浄化能力者にこうしてお会いできるなんておもわなくて。
  こんな偶然、あるはずもない、とおもっていたのに。まるで奇跡のようで」
「奇跡……か」
必然という名の偶然、という名前の奇跡。
それを起こせるのは……
そんなアンジェリークの言葉に小さくつぶやくヒュウガ。
「あの、ヒュウガさん、改めておねがいできませんか?今私たちは三人で活動してるんですけど。
  やはり一人より仲間と一緒に活動したほうが効率も上がるとおもうんです。
  一人ではできないことも仲間とならばそれを成し遂げられる。
  きっと人々をより助けられるとおもうんです。ヒュウガさんが仲間になってくださったらとても心強いとおもいます。
  ヒュウガさんも人々を守るために旅をなさっているのなら、目的は私たちと同じなのでしょう?」
確かに、一人ならばできなくても仲間と一緒ならばそれを成し遂げられる。
それはヒュウガとて身に染みてわかっている。
そして、かつて、その仲間を……
ちりっとヒュウガの胸のうちが痛む。
「俺は別にかまわないが。おそらくそれはニクスも同じだとおもうぜ?
  それに教団関係者が仲間にいれば何かと助かるだろうしな」
「そういえば。レイン。ニクスさんは?」
「あ~。あいつは体力ないからな~。光をみてから俺が全速力で走ってきたから。
  たぶん、まだ村だとおもうぜ?あいつああみえてものすっごくひ弱だし」
ふと、この場にニクスがいないのを不思議に思い問いかけるアンジェリークにさらっというレイン。
そんな彼らの会話から、どうやらアンジェリークを含む三人でタナトスを退治している。
というのは嘘ではないらしい。
それに、ニクス。
その名前はヒュウガとて聞いたことがある。
かなりの資産家で、私財をもなげうってタナトスに襲われた人々に対して慈善活動を行っている。
と。
彼もまた浄化能力者でタナトスから回収したオーブをそんな人々のために役立てている、と。
教団に属していたころからその噂はきいたことがあった。
話の内容からしてこの二人はそのニクス氏の仲間なのであろう。
ニクス氏の仲間、というのならば人柄はおそらく保障されるはず。
「悪いが…であったばかりのお前たちをいきなり信用するわけにはいかない。
  それに教団をぬけた身で今さら何かに加わるのもおかしな話だ」
「…そう…ですか」
ヒュウガの言葉にしゅんとなる。
アンジェリークの表情はとてもわかりやすい。
そう、思っていることがすぐにそのまま表情に表れる。
今にも泣き出しそうな表情にと一瞬のうちの変化する。
「だが……ニクス氏の活動は私も聞いたことがある。
  それに…あなたのような存在が無防備な状態に置かれている、というのも気にかかる。
  本来ならば教団が保護する立場なのであろうが……」
「??」
ヒュウガの言葉に、アンジェリークはきょとん、とした表情をうかべて首をかしげるのみ。
ヒュウガの言葉に、レインは目を見開く。
言外にヒュウガが言いたいことを彼もまたすぐさまに察知する。
当の当人がまったくもってわかっていない様子もまた何ともほほえましく感じるが。
それは仕方のないこと。
アンジェリークはあまり詳しくこの地の伝説を知らない。
幼いころに両親と死に別れ、すぐさまに学園に入れられた彼女にそういう類の話をしてくれる人などいなかった。
彼女が興味をもったのは勉強、という医者になる、という夢のみ。
だからこそ、そのような伝承にはあまり関わっていない、という現状がある。
ヒュウガのいいたいことがわからずに、首をかしげているアンジェリークの様子から、
おそらくこの目の前の少女は自分が何ものの素質をもっているのか気付いていないのであろう。
そして、目の前の赤い髪の男性の様子をみればこの男性は気付いている。
それでも彼女に言わないのは、確証がないためか、もしくは彼女を混乱させぬためか。
おそらくはその両方なのであろう。
「…奇跡…というなの必然、か」
かつて教団に三歳のときにつれてこられた少年の言葉。
ならば、おそらくこの出会いも偶然ではなく必然。
「…教団にかわり、私が見守る必要があるのかもしれないな」
小さくつぶやき、
「このような私でよければあなたを見守らせてもらおう」
「え?え?それって?」
「おまえ、ほんっと鈍いなぁ。こいつは俺たちの仲間になってくれる、そういってるんだよ」
遠まわしの言い方にすぐさまに理解できずに首をかしげまくるアンジリェークに助け舟をだす。
「ええ!?本当ですか!?ありがとうございますっ!」
ぱっ!
その言葉におもいっきり満面の笑顔を浮かべて、おもいっきり心からお礼をいっているアンジェリーク。
その笑顔はおそらく、見ているものを心穏やかにする、そんな笑顔。
彼女のもつ独特の雰囲気もそういった効果をもたらすのであろう。
そんな会話をしていると。
「おやおや。何やら楽しそうですね。…ようやくおいつきました。というか、レイン君。相変わらず体力馬鹿ですねぇ」
ゆっくりと、森の中からでてくる一人の男性。
「って、ニクス!お前が体力なさすぎなんだよ」
「アンジェリーク。無事で何よりです。一人で森の中にはいってはいけませんよ?
  おや?そちらのかたは?」
アンジェリークの無事な姿をみて安心するものの、そこに見慣れない銀灰髪の男性がいるのをみて問いかける。
「あ、ニクスさん。今この人にお願いしていたところなんです。
  この人も浄化能力者なんです。ですから仲間になっていただけませんか、って」
「おやおや。これはこれは。浄化能力者はその数自体も少ないですのに、こうして会えるなど。
  あなたの人柄がこうして私たちをめぐり合わせてくれているのかもしれませんね」
アンジェリークの言葉に穏やかな笑みを浮かべてにこやかに語りかけるニクス。
「そ、そんな。きっとニクスさんのおかげですよ」
ニクスのアンジェリークがめぐり合わせている。
たしかにその可能性はかなりある。
彼女がかの素質をもっている可能性があるのならばなおさらに。
いや、可能性、というよりはおそらく確定。
何しろ彼女はあの姿身にそっくりなのだから。
「改めて自己紹介をさせてもらう。私はヒュウガ、という。
  ニクス殿、貴殿の活動は以前より知っている。人々のために尽力を尽くしている篤志家だ、と」
丁寧に礼をとり、現れたニクスに挨拶をするヒュウガ。
「おや。これはご丁寧に。しかし、私は何もしていませんよ?
  私なんかの手助けでは人々をなかなか完全に助けることができませんしね」
噂とは所詮噂、そう捉えるものもいるであろう。
だが、このご時勢に、人のために尽力を尽くす存在などあまりいない。
教団にとっても彼の活動はとても望ましいこと。
彼は教団にも莫大な寄付を施しているのだから。
「しかし。大歓迎ですよ。その立ち振る舞いからしてどうやら元騎士団のかたのようですね。
  私はニクスといいます。陽だまり邸の主です。それであなたも私たちの仲間になってくれるんですか?」
「ああ。そうしてもらえれば、とおもっている」
「でしたら大歓迎ですよ。ここ数日に二人もあらたな浄化能力者を迎えられるとはとても喜ばしいことです。
  こちらこそお願いいたしますね。ヒュウガ」
「こちらこそよろしくたのむ」
にこやかに手を差し出すニクスの手をつかむヒュウガ。
この穏やかな雰囲気をたたえた若い男性がどうしてそこまで人々のために尽くそうとするのか、
その気持ちが知りたいが、それはおそらく個人の思いに触れること。
そもそも、彼の一族は昔から教団にとってはなくてはならぬ存在。
かの一族は遥かな昔から教団に多大な寄付を行ってきている、そう聞いている。
おそらく、血筋というか家訓か何かなのであろう。
人々の為に尽力をつくす、というのは。
そう自身の中で判断するヒュウガ。
「そういえば。たしかにニクスのいうとおりだよな。
  ここ数年、ニクスと活動を共にしてきたが、こう次々と新たな浄化能力者を見つけたなんて初めてだ」
「?他にもいるのか?」
「いえ。今はヒュウガさんが仲間に加わってくれたことで私を含めて四人です。
  私もつい一昨日から仲間に加わっているんですよ?」
ヒュウガの疑問に答えるアンジェリーク。
一昨日。
それは確か、天使の庭リースで聞いたあの現象がおこった日とぴたりと重なる。
そもそも、彼がここにきたのも、その噂を旅人からきいたがゆえ。
リースの庭において空が光り輝く現象がおきた…と。
それは一瞬のことであったがとても綺麗なものだった。
と。
「私もそれまで自分に浄化能力がある、なんてしらなくて。とにかく、これからよろしくおねがいします。ヒュウガさん」
「こちらこそ、よろしくたのむ」
にこにこと笑みを浮かべているアンジェリークに深く頭を下げる。
おそらく、間違いはないのであろう。
空が光かがやく現象。
そして、先ほどの力。
姿身に生き写しなその姿。
「にゃう」
「あ、エルヴィン。お前も挨拶したいの?この子も仲間です。エルヴィンっていいます」
「…子猫?」
珍しい銀色の毛並み。
まるで聖なる大樹を連想させるかのような。
【ルネ殿は猫がお好きなんですか?】
【猫は神聖なるものだしね】
ふと、かつての少年の台詞が頭をよぎる。
その意味は彼には判らなかったが。
「では、ヒュウガ殿も一緒にもどられますか?陽だまり邸に?」
にこやかにいってくるニクスの台詞に。
「いや、私にもいろいろと用事がある。全てがおわったらその陽だまり邸にいくとしよう」
「ああ、それなら。リースで聞けば屋敷の場所はすぐにわかるぜ。
  こいつ、大きな屋敷に一人で住んでた変わり者、というのでも有名だしな」
「ひどいですねぇ。レイン君。変わり者、といえばレイン君もにたりよったりではないですか?」
「あんたほどじゃないとおもうぜ?」
「もう!レインもニクスさんも!…じゃあ、ヒュウガさん、陽だまり邸でおまちしてますね」
「ああ。では、今日のところはこれで失礼する」
礼をとり、そのままその場から立ち去るヒュウガであるが。
「…あ」
「?どうかしたのか?アンジリェーク?」
「?アンジリェーク?」
ふと、そのヒュウガの背中から再び光る蝶が出現し、ひらひらと周辺を舞っている。
「蝶が…」
「蝶?」
「そんなものはどこにもいないぜ?」
アンジェリークの言葉に、首をかしげるニクスとレイン。
やっぱり、あの蝶って、私とエルヴィンにしかみえていないの?
でも…なぜ?
そんなアンジェリークの疑問は、ただただ風にと溶け消えてゆく。


                                -第11話へー

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あとがきもどき:
薫:ん~と、まさかアニメでは水浴びシーンをもってくるとはおもってなかった(笑
  さすがネオロマンスv(まてこら)
  ですけどいちおう、こちらはゲーム&小説に忠実に~。
  免疫まったくない彼女に男性の裸はきついとおもう、絶対に(笑
  なので小説版の出会いを採用ですv(こらまてや
  次回でようやくジェイド登場のファリアン編v
  やっぱりお約束のアニメで爆笑したエプロンはいれる予定v(まてこら
  何はともあれ、ヒュウガ登場、でしたv
  ではまた次回にて~♪

2008年5月9日(金)某日

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