まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

さってと。今回は夢のお告げ(?)より先にアンジェリークがオーブ使用v(まて
ちなみに、癒しの力を秘めている緑のオーブですv
当人はそんなことまだ知りませんけどねv
何はともあれ、いっきますv

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銀花の園   ~癒しの力~

「ママ!ママ!」
「アンヌ……」
心配から、まだ少し生みつきより早いというのに産気づいた。
それゆえに母体においてもその体力の消耗が著しい。
「お花、お花とってきたから、だからがんばって!」
よくアルカディアで聞かれるのは、結婚式、または葬式、そしてまた出産どき。
そういったときを狙ってよくタナトスは出現するということ。
それは人々が集まるその気に引かれてなのかはわからないが。
だから、花をとりにいっていた。
自分の行動が母を逆に追い詰めるなどとは小さな子どもは思わない。
「しかし…大丈夫なのか?」
「仕方ないですよ。レイン君。我々男性は入るのは問題あるでしょう?」
女性の出産に立ち会うのは基本女性、もしくはその家族のみ。
家の中からはものすごくどたばたしている様子が嫌でもわかる。
「あなたはとにかくもっと布をもってきて!」
出血が激しすぎる。
しかも、子どもは逆子。
医者の卵であるアンジェリークもまた、率先して手伝い、的確な指示を飛ばしている。
それでも、出血を止めるすべなどはない。
子どもが生まれるのが早いか、それとも母体がまいるのが先か。
時間との勝負。
「…お願い。がんばって」
ただ、祈ることしかできない。
せめて血だけでも止めることができたなら。
それでも、医者の知識をもっている彼女がいるのといないのとでは格段に産婆の対応も異なる。
常に赤ん坊を無事に生ますことだけを考えて、あとのことは任せることができるのだから。
その身にかかる負担はかなり削減する。
「あ…ああああっ…!!」
「あと少し!がんばって!」
「お湯の用意は!?」
「ここに!」
「とにかく、ありったけの清潔な布を!!」
その布の数にも限りがある、というのは十分に理解している。
ゆっくりとではあるが赤ん坊の姿が見えてきている。
だがしかし、赤ん坊の様子がどことなくおかしい。
それは直感。
産婆として呼ばれた女性の顔色も遥かに悪い。
ゆっくりと出てくる赤ん坊の首にまきついているへその緒の姿が垣間見える。
下手をすれば出産時にそのヘソのおが赤ん坊の首をへし折る可能性もある。
お願い、お父様、お母様、私にこの母子を護る力をかして!

「にゃぁん」
「って、あ、おいっ!」
アンジェリークとともに家の中にいたはずなのに、ひょいっといきなり窓から飛び出してくるエルヴィン。
そして、ぴょいっとレインの肩にのったかとおもうと、ちょいちょいと手を動かし、
胸ポケットの中にいれていたとある品を起用に取り出し、ひょいっと加える。
「って、こらっ!」
それは大事なものなんだぞ!?
そうおもい、エルヴィンを捕まえようとするが、そのままするっと再び家の中にと入ってゆく。
「ああっ!あの子猫にオーブをとられたっ!」
「ああ。先ほどのタナトスから回収したものですか?まあ、一つくらいはかまいませんけど?」
胸ポケットにいれているのは、先ほどアンヌを助けたときに回収したオーブ。
小さな緑色の宝石。
どうして猫がオーブをもっていったのかはわからない。
だけども、もしかするともしかしなくても…
「あの猫はわかっているのかもしれませんね……」
小さくぽつりとつぶやくニクス。
ニクスはあのオーブが実は何なのかを知っている数少ない人物、といっても過言ではない。
今ではただの宝石として扱われているそれの真実を。

「にゅ」
「って、エルヴィン。いい子だからおとなしく…って、何?」
汗をぬぐっていたアンジェリークの手にぽとっと何かが落とされる。
緑色の小さな球体。
ぽうっ。
アンジェリークがその緑の球体に触れると同時、球体から淡い緑色の光が発生する。
暖かな、自分の中に眠っているとおもわれる力によくにた力の波動。
――それは、癒しの力。
ふと、脳裏に誰かの声が聞こえたような気がするが、きょろきょろとみても誰も彼女に話しかけられる状態ではない。
それでも、ほとんど直感。
「お願い。癒しの力よ…マリーさんと子どもを…助けて……」
自然とぎゅっとその宝石を握り締め、祈るようにつぶやくアンジェリーク。
刹那。
アンジェリークの体から緑色の暖かな光が発生する。
それはやがてアンジェリークの手の平の中からふわり、と緑色の光を描くかのように広がってゆく。
きらきらと、緑と金の光の粉が部屋の中に降り注ぐ。
人々は一瞬、何が起こったのか理解できない。
だがしかし。
「血がとまったぞ!」
あれほど激しかったマリーの出血が気付けばぴたり、ととまっている。
そして。
「ふぎゃぁ~~、ふぎゃぁ~~!!」
「産まれた、産まれたぞ!!」
不思議な光のことも気になるが、今はともかく無事に産まれたことが何よりの感動。
赤ん坊を取り上げていた産婆もまた驚くようにして、一息ついた後にアンジェリークのほうに視線をむける。
確かに、赤ん坊は取り出したその直後、心臓が動いていなかった。
それなのに、奇跡的に生き返った。
体の色からして確実にほぼ絶望的だった、というのに。
考えられるのはただ一つ。
アンジェリークの体より発生した不思議な暖かな光。
それしか思いつかない。
「マリーさん!?」
赤ん坊の産声にはっと我にともどり、マリーの手を握り締めるアンジェリーク。
その手にはいまだに緑色の宝玉が握られているまま。
それでも、あれだけの出血をしたのである。
事後の処理は必ず必要となる。
だがしかし。
アンジェリークがマリーの手を握ると同時、マリーの体が淡い光にと包まれる。
血の気を失いかけていたその顔に血の気が戻り、顔にも赤みがさしてゆく。
「ママ!!」
「……アンヌ……」
ゆっくりと目をあけたマリーに飛びつくようにしてすがりつく娘の姿をみて笑みを浮かべるマリー。
「よかった。…?みなさん?何か?」
「あ、い、いや。今のは……」
とりあえず、赤ん坊を無事に取り上げ産湯にとつけて清潔な布でくるんだ。
そこまでして一息ついて、ようやく人々は我にと戻る。
先ほどの光はありえない光。
「そういえば……って、あら?」
握っていたはずの緑の宝石の姿がかげも形も見当たらない。
どこにいったのかしら?
とはおもうが、この状態で探し出そう、ともおもわない。
とにかく、母子が無事に出産を終えたのだから。
「きっと、皆さんの思いが天につたわったんですよ」
それだけで済まされるようなものではないような気がするのだが。
だが、目の前の青い髪の少女がそういうと何となくそれで納得してしまう人々。
その緑色の光は家の中から外にも漏れ出しており、その光を目撃したのは村人だけではない。
「おつかれさま。お嬢ちゃん。ありがとね。おかげでたすかったよ」
「アンジェちゃん。ずいぶんと頼りがいのあるお医者さんの卵になってるものだね。おばちゃんびっくりしたよ」
アンジェリークが放った光は確かにびっくりはしたが。
だがしかし、リリーはさほど驚かない。
なぜならば、彼女は昔、彼女のその力を目の当たりにした当本人でもあるのだから。
幾人かも、アンジェリークの名前をきき、当時のことを思い出しそれで納得している女性たちもいる。
あのとき、明らかに倒れた人々の前で叫んだ小さな彼女の体から光が発生し、
それと同時に倒れていた人々が一斉に目を覚ました、という過去の事例があるのだから。
当のアンジェリークはそのようなことをまったくもって覚えてもいなければ自覚もしていない。
それから彼女は数日、しばらくのあいだ寝込んだのだから仕方がないにしても。
両親を失った子どもがさらに過酷な運命をたどるかもしれないのに、
好き好んでそのことを口外するものなどはまずいない。
それでなくても半信半疑の奇跡、だったのだから。
だからこそ、人々はまったく彼女をしらない遠縁の親戚に預けることにした。
万が一にもその奇跡の力を知られて危険な目にあわないように。
あの当時、まだ彼女は四歳の誕生日を迎えたばかりだったのだから。
命を捨てて、村の人たちのために尽くしていた彼女の両親のコトは村の人々は忘れていない。
あのときの小さな女の子が奇跡の力を成長させてこの場にいることに疑問を擁くものはまずいない。
あのとき、おそらくこの子は女王の加護をうけて誕生した子なのだろう。
そう村の会議で結論がでているのだから。
「いいえ。私はまだまだです。みなさんのおかげで無事に赤ちゃんも生まれましたし。
  少しでもお役にたてたのでしたら何よりです」
リリーの言葉に笑みを浮かべてそういうアンジェリークであるが。
「うまれたのか!?」
バタン!
みたこともない緑色の光。
おそらくアンジリェークが何かをしたのだろう、というのは容易に想像がつく。
そして、そのすぐあとに聞こえた赤ん坊の産声。
多少なりともあわてた様子で部屋の中にとはいってくるレイン。
「ええ。みんなの協力のおかげで。みて」
すでに母親の横に赤ん坊は横たえられている。
アンヌもとてもうれしいらしく、きゅっとその赤ん坊のもみじの手をにぎってははなし、握ってははなし、
として母親の笑いを誘っている。
「そうだわ。あなたがこの子になまえをつけてくれない?」
「え?わ…私がですか!?」
唐突にいきなりいわれ、思わず目を丸くする。
「ああ。それはいいよ。ぜひともつけてやっておくれ」
「え?え?ええっ!?で、でもそんな大切なこと…っ」
いきなりそんなことをいわれても、パニックになるしかない。
名前、というものは一生その子がもつもの。
そもそも、名前は親が子どもに始めて与えるプレゼントのようなもの。
産まれてくれた感謝と、そして希望をたくし。
「いいじゃないか。つけてやれよ。アンジェリーク。かわいい男の子じゃないか」
「…レイン、この子、女の子よ?」
「え!?あ、う…えっと、まあ、その、何だ。赤ん坊は見分けにくい、というし」
どっ。
レインのその言葉にその場にいた全員から笑いがおこる。
まあ確かに、生まれたての赤ん坊はどちらかわかりずらいのもあるかもしれない。
特にこの赤ん坊はぱっと見た目、父親によく似ているのだから。
ここしばらくは失われていた心からの笑い声。
ここには今現在、タナトスの脅威、というのもはない。
ただ、新たな命が誕生した喜びに満ち溢れている。
「でも、いいんですか?」
「うん。翼のおね~ちゃん、つけて!」
子どもの目にはアンジェリークの背に白き翼が視えていた。
だからこそのアンヌの言葉。
翼、という意味はアンジェリークには判らないが、自分のことをいっているのはその視線でわかる。
「それじゃぁ…えっと……」
いきなりいわれても、ぴん、と思いつかない。
――って、やっぱりここにきていらっしゃいますし。
――あら。エンジュ。どうしたの?
――どうしたの。ではありません。ロザリア様が心配されてますよ?
ふと、思い出す過去の光景。
自分と同じ名前をもつ子を迎えに来たどこかやさしい感じをもった薄茶色の髪の女の子。
――よくこれたわね。
――アウローラ号です!ちょうど連絡がはいりまして。しかしここもかわりましたね…
――すぐにここも平和になるわよ。さてと、聖天使が迎えにきたから戻るわね。
聖天使?
当時は意味がわからなかったが。
だけど、何か響きがとてもいい。
ふと今思い出したのも何かの縁。
「なら…エンジュ。意味は…聖なる天使、です」
名前に意味を込めてその子の未来に祝福を与える。
それは遥かな昔から親が子に、そして子からさらにその子どもに受け継がれている行為。
親がむりならば、その子の親代わりになっている大人が大体つける。
中には子ども自らが自身の名前を決めることも多少なりとてあったりもするが。
「素敵。今日からあなたはエンジュよ。よろしくね」
「エンジュ。かぁ。わたしはあなたのおね~ちゃんよ。えんじゅ、えんじゅ~」
どうやら気に入ってもらえたみたい。
その母子の様子にほっとした表情を浮かべる。
ふとみれば周りにいる人々も満足そうな笑みを浮かべている。
この場でその名前がもっている真なる意味を理解しているものは一人足りとていない。
「にゃっ」
そうきたか。
思わずそのアンジェリークの名前の由来を聞いて、短く鳴いているエルヴィンを除けば。
「そうだ!せっかく久しぶりだし。アンジェちゃん。今日はここでとまっていかないかい?」
「え?で、でも……」
ニクスさんやレインもいるし。
それに村の人に迷惑かけたらいけないし。
そうアンジェリークが思うものの。
「それはいいかもしれないな。赤ん坊がうまれた直後の村は今までの統計的にも襲われやすい」
「たしかに。レイン君のいうとおりですね。私たちは宿をとりますから。
  アンジェリークは久しぶりに羽を伸ばすといいですよ。ここはあなたの産まれ故郷なのですから」
そんな統計があることなどアンジェリークは知らなかった。
それもそのはず。
彼女はずっと学園からでたことすらなかったのだから。
外にでるとしても学園の用事のときくらい。
他はほとんど勉学にその時間を費やしていた。
そんなアンジェリークを見かねて無理やりに連れ出していた親友二人がいなければ、
間違いなくアンジェリークは学園の中しか知らない女の子に育っていたであろう。
「いいん…ですか?」
たしかにここは悲しい思い出もある地ではあるが、それでも短かったが大切な家族との思い出がつまった地。
ぱっとアンジェリークの顔が輝きを増す。
「じゃ、きまりだね!アンジェちゃんは今日はうちにとまっていきなね。きっと主人もよろこぶよ」
「え?え、おば様…ちょっと…」
「おばちゃん、だってば。さ、そうときまれば、買い物にいくよっ!」
「あ、あの!ちょっと、お…おばちゃん!?」
ずるずるずる。
有無を言わさない。
というのはまさにこういうのをいうのかもしれない。
話がまとまると同時に、ずるずるとアンジェリークの手をひき、買い物に連れ出しているリリー。
「リリーさんったら。相変わらず世話好きよね」
そんな光景をみてそれで済ませている村人達。
どこかのんびりとした光景ではあるが、だからこそどこか心が落ち着く風景なのかもしれない。
「それでは。すいませんが。私たち二人の宿を用意していただけますか?」
「了解いたしました。ニクス殿にはいつもお世話になっていますしね」
幾度も村が襲われても、ニクスは莫大な援助をどの村にも施している。
だからこそ、ここまで被害が広がっているアルカディアにおいても人々がすぐさまに復興できている。
それゆえにニクスに感謝している人々の数は数知れない。

結局のところ、アンジェリークはリリーの家へ。
そしてレインとニクスは宿にと今日のところは泊まることに。

月明かりがとても綺麗。
夜空を見上げてそんなことを思う。
「にゅ?」
「うん。大丈夫よ。エルヴィン」
ふと無意識のうちに涙を流していたらしく心配そうに鳴いてくるエルヴィンの声。
わがまま、だとはわかってはいる。
いるけどやはりみておきたい。
自分が生まれ育ったあの家を。
そこにはすでに家はない。
あのとき、綺麗に燃えてしまった。
そこにあるのは小さな墓石。
アンジェリークの両親を村人達がその場に葬り墓石を立てている場所。
年に一度は学園の許可をもらい、この場にやってきていた。
だけど夜にこの場にくるのは初めて。
「お父様、お母様、わたし、人々の役にたててるのかしら?」
自分の力に自身がない。
だからこそ不安になる。
両親に近づきたい。
人々に信頼され、そして人々のために全てつくした両親に。
幼いながらにアンジェリークにとって両親はとても尊敬するにあたいする人物だった。
小さなころの思い、というのはおおきくなっても消えるものではない。
それがましてや強く心に思ったことならばなおさらに。
「にゅ~」
「って、…あれ?あなたはたしか……」
「よっ!」
エルヴィンが鳴いて木の陰に誰かがいるのに気がついた。
この木は彼女が生まれたときにはすでにあった木。
年月を経過して多少おおきくなってはいても、その木自体にかわりはない。
がさり、と音をたててその木の上から飛び降りてくる一人の男性。
たしか、名前をロシュさん、とかいったっけ?
そう思い。
「えっ、ロシュさん…でしたよね。こんばんわ」
「あんたは、たしかアンジェリーク。だったよな。こんな夜更けにしかも墓しかないここで何してたんだ?」
ここには墓が一つしかない。
夜更けに女の子一人が来るような場所、とも思えない。
「ここ、私の両親が眠っているんです。だから…」
「…悪い。何かつらいことをきいたみたいだな」
てっきり良家のお嬢様か何かかとおもっていた。
その立ち振る舞いとその雰囲気で。
「いえ。それより、ロシュさんこそここで何をしているんですか?」
「うん?俺は仕事さ」

「仕事?そういえば、情報屋とかいってましたけど、それって何をするお仕事なんですか?」
仕事でこんな夜に出歩いているなどとても大変な仕事なんですね。
そんなことを思いながら問いかける。
「あんた、知らないのか?情報屋のこと?」
普通に過ごしていれば、情報屋は嫌でも知っているはずである。
このご時勢、情報が命。
何よりもタナトスに関する情報は人々が望むものなのだから。
だが、目の前の少女はまったく知らない、という。
よほどのお嬢さまか何かでなければそんなことはありえない。
だからこそ怪訝に思い逆にといかけるロシュ。
「ええ、まったく。私は六歳のときからずっと寄宿舎で生活していましたから」
「…そっか。なら仕方ないな」
親を亡くした子どもが厄介払いをかねてそういう場所に送られるのはよくあること。
それでも、まだそれはましなのかもしれない。
少なくとも、学校にいれる資金があった、ということなのだから。
確かこの墓はこの村を守るために、人々の為に死んでいった村の医者夫婦のものだ。
そう聞いている。
その医者の忘れ形見が目の前のこの少女なのだろう。
ならば、十二年前にここであった正確なことを知っているのかもしれない。
もっとも、彼女の見た目は十六かそこら。
小さな子どもが覚えているなどとは思えないが。
逆にその両親を失ったショックから前後の記憶をなくしている可能性もある。
そういう子どもはこのアルカディアを探せばどこにでも見受けられるのだから。
「でも、こんな夜までおしごとなんて大変ですね」
「え、いや。ただ夜の散歩をしていただけだぜ?」
「え?あ、ご、ごめんなさい。私はてっきり夜までお仕事してるのかとおもいました」
相手の言葉に思わずあわてて謝るアンジェリーク。
まあ、仕事といえば仕事なのかもしれない。
質問してみたかった少女が今、目の前にいるのだから。
「なあ、あんだか今日つかってたあの力はいったい?」
「さあ?私にもわかりません。ですけど、人々のお役にたてる力なのならば、私はその力を人々の為につかうのみです」
アンジェリークにも自身の力が何なのかはまったくもって判らない。
ロシュとて、リースの庭でおこった光景の情報をつかんでいなければ結び付けて考えるはずもない。
リースの庭において一時、空が虹色に輝いた。
その真意は定かではないが、だがしかし。
あのとき近くにいた自分もたしかに見ている。
きちんと証拠の写真も収めた。
だが、それは一瞬のことで、気付けば光のカーテンは消え去っていた。
それを調べていると、十二年前にも同じようなことが起こっていたことを発見した。
だからこそ、この村、フルールにきた。
何の新たなこれ、いう情報は得られなかったがだがしかし、収穫、といえば収穫なのであろう。
何しろ不思議な力をもつ少女を目の当たりにしたのだから。
「そっか。あんたは死んだ両親のようにひとびとの役に立ちたい、そうおもってるんだな」
自分が情報屋になったのも似たようなもの。
彼の両親もまたタナトスの情報を集めては人々に教えていた。
その結果、タナトスに殺されたのだが。
この世の中は綺麗ごとだけでは生きていかれない。
だからこそ、裏も表も扱う情報屋になった。
金に汚い、といわれることもあるが、それはそれで仕方のないこと。
彼はこっそりと親をなくした孤児などに支援しているのだから。
「ま、何だ。女の子一人での夜の一人歩きは危険だぜ。おくってくぜ。
  たしか、リリーさんのところにとまってるんだったっけ?」
噂、というのもはあっという間にひろまる。
特に小さな情報者を確保している彼にとって情報は集まりやすい。
「え。ええ。でもご迷惑じゃぁ…」
「なあに。あんたに何かあって一人で出歩いていたのに何もしなかった。
  そう知られたらニクス殿やレイン博士に何をいわれるかわかったもんじゃないしな」
いってかるくウィンク一つ。
ニクスの説教じみたその説得はさすがのロシュも遠慮したい。
幾度かそれをうけたことがあるがゆえにしみじみとおもうロシュ。
「えっと…ならお願いしますね」
一人でも平気ではあるが、今は一人よりも誰かにそばにいてもらったほうがいいとおもう。
きっと、両親のことを思い出して泣いてしまうだろうから――

そのまま、ロシュとアンジェリーク、そして子猫のエルヴィン。
しばしとりとめのない会話をしながらもリリーの家にと向かってゆく光景が、
フルールの村の一角においてしばしみうけられてゆく――


                                -第10話へー

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あとがきもどき:
薫:さてさて。リモージュを迎えにきたのは誰でしょう(笑
  って、バレバレですね。はい、聖天使となっているエンジュです(笑
  いくら別の宇宙空間、として存在していても、許可さえとれば自在に入れるわけで。
  当然、いりびたっている(笑)リモージュ女王陛下を連れ戻しにいく、というのではエヴィリールも反対しません(笑
  さてさて、次回はジェイド登場v
  さて、女性を助けて追われてる、にしようか、財団に追われてる、にしようか(笑
  やはり財団のほうが無難かな?
  ではではvまた次回にてvv

2008年5月8日(木)某日

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