まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
さてさて。前回では今回陽だまり邸にいける、とかきましたけど。
どうも学園の攻撃(?)だけでおわりそう?
まあ、おいおいと設定とか織り交ぜてますしね。
何はともあれ、いっきますv
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「わぁ。かわい~」
「ほんと。アンジェリークにぴったりね」
中等部から高等部へと進学した。
といっても、この学園はエスカレーター式。
ゆえに、かわったことといえばクラス替えがあり顔ぶれが変わる程度。
校長室にと呼ばれ、そして手渡された小さな包みと手紙。
そこには、アンジェリークの進学のお祝いと、そしてそのお祝いの品が同封されていた。
きらきらと輝くいくつかの色をまとっている二重にかさなる銀のブレスレット。
ぱっと見た目だけでもかなりの高級品のような気がしてくるのはおそらく気のせいではないだろう。
「でも、こんなのぱっとおくってくる、アンジェと同じ名前のこっていったいどんなこ?」
送り主の名前は、目の前の少女、アンジェリークと同じ『アンジェリーク』。
ミドルネームも何もなく、送り先の住所はセレスティザムとなっている。
「ん~と。すごくかわいいこ?」
そうとしか言いようがない。
何しろ最後にあったのは学園に入るまえ。
まだ幼い日のことなのだから。
「でもきっと、アンジェリークのことを大切におもっている子なのね」
品物からみても、わかる。
こんな高価なものをぽん、っとおくってくるなどと。
書かれている言葉には、彼女の護りになるように、との言葉と。
そしてお祝いの言葉。
あれ以後、会うことはないがそれでも気にかけてくれているのがとてもうれしい。
住所を頼りに会いにいきたいが、それも遠すぎて不可能。
彼女は知らない。
その住所はひとまず仮に『アンジェリーク』が使用しているだけ、ということを。
銀花の園 ~襲来~
『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
会話の最中、突如として聞こえてくる悲鳴と叫び。
「な、何ごとです?」
さすがにただごとではない。
それゆえに思わず席から立ち上がる校長。
と。
「校長先生!大変です!中庭にタナトスが出現しましたっ!!」
バタバタと開いたままの扉の向こうからかけてきた生徒が息せき切って報告してくる。
ざあっ。
その言葉に即座に顔色を悪くするハンナとサリー。
そしてまた、
「ちっ。ニスク。話はあとだ!」
「そうみたいですね。とにかくまずは平和な学園を乱すタナトスをどうにかいたしませんとね」
どうやら言い争いはひとまず押しとどめ、二人してタナトスを退治することを優先するらしきレインとニクス。
「あ、あの?」
「あんたたちはとにかくにげろっ!タナトスは俺たちがひきつけるっ!」
ひょいっ。
「あ、こら。レイン君!」
そういうと同時に校長室の窓からひょいっと飛び降りているレインの姿。
「まったく。お行儀がわるいですねぇ。とにかく、校長先生はみんなを安全な場所へ誘導おねがいしますね」
「は、はい」
学園内部にタナトスが入ってくるなど初めてのこと。
裏の森にはよくタナトスが出現するので生徒達には絶対に入りこまないように注意をしているが。
大切な子ども達を預かっている身としてはこれはかなりのこと。
それでも、この場に浄化能力者であるニクスがいることは、不幸中の幸いか。
少なくとも、どうにかすぐに対処できる人がいるのだから。
ニクスの台詞に顔色もわるく立ち上がる。
「アンジェリーク。それにあなたたちも、はやく逃げなさい!」
それだけいい、他の生徒、そしてまた学園放送をするために配管施設がある場所にと向かってゆく。
この地には電波にての放送、といったものは普及していない。
よくてあるとすれば、古の技術を開発した、という電話、と呼ばれる離れていても話せる機械のみ。
タナトスの情報は、一刻を争う。
それゆえに、他の生徒達などに伝えるためにと駆け出してゆく校長の姿。
「中庭…?たいへんっ!」
中庭、という言葉をきき、すっと顔色を変えているハンナ。
「ハンナ?どうかしたの?」
そんなハンナの様子にものすごく嫌な予感がして問いかけるアンジェリーク。
「今日、ローズたち、天気がいいから中庭で休憩するって……」
すうっ。
その言葉に全身から血の気がひく思いに一瞬かられるアンジェリーク。
ローズ、とはアンジェリーク、ハンナ、サリーの三人組ととても仲良くしているもう一つのグループのメンバー。
女の子、というのもはなぜか中のよい人たちで固まって行動する習性がある。
それはアンジェリークたちとて同じコト。
「と、とにかく!私たちもいきましょ!!」
バタバタバタ。
とりあえず、緊急事態とはいえ、その場にいまだにいるニクスに軽くぺこり、とお辞儀をし。
ハンナとサリーとともに、中庭のほうにと向かってゆくアンジェリーク。
そんな彼女の後姿を見送りつつ、
「さて。どうなりますか…ね」
彼女がここにいるから、という襲撃ではないはずである。
それならば直接に狙ってくる可能性は大。
何しろ彼の視線を通して『アレ』は情報を得ることすらできるのだから。
それでも、抵抗しているので全てを得させるようなことにはなっていないが。
おそらく、聖なる力を発揮したのが学生らしい、という情報を消滅した分身から得て、
そして直後の行動をしてきているのであろう、ということは容易に推測が成り立つ。
が、そんなことをアンジェリーク、または学園の人々が知っているはずもない。
そもそも、それを知ることが可能なのは、今のところニクス唯一人のみ、なのだから。
「きゃぁぁぁぁぁ!」
周囲に悲鳴が響き渡る。
逃げ惑う生徒達。
だがしかし、そんな生徒を片っ端から伸びた蔦のような触手で捕らえ、
その生気全てを吸い取ってゆく異形の存在。
タナトス。
その姿は全てきまっているものではないが、確認されているだけでかなりの数の種類に上る。
そしてまた、今この場に現れたのは赤いくらげのような形態をしているといわれている種類の中の一つ。
厄介なのはその両脇に生えているかのような鋭い羽のような両腕から幾重にも無数に伸びている触手のようなもの。
長い年月を得て、それぞれの形態によりタナトスにも名称がつけられている。
今、この場に現れたのは、属にいう『レギオン』と呼ばれているタナトスであることは明白。
とにかく危険を回避するために、といっても出会ってしまえばそれはもう運しかないのだが。
とにかく、この地、アルカディアに生きる人々は、タナトスの情報をまず生きる情報として伝えている。
それは、ここメルローズ女学院だとて例外ではない。
授業の一つに、タナトスに関する講義もあるのだから。
「ちっ。よりによってレギオンが二体、だと!?」
窓から飛び降り、とにかく悲鳴の基となっている場所にと走ってむかった。
そこに見えたのは、巨大な赤い物体が二つ。
見ただけですぐさまに何のタナトスか理解する。
飛行能力すらをももっている、けっこう厄介な相手。
しかも、その無数にある触手が攻撃を妨げることもしばしば。
バンバンバン!!
「早くにげろっ!」
いまだに逃げ遅れている生徒達にと叫びをあげるレイン。
見れば、すでに中庭の中には幾人もの生徒が転がっている様子が目にとびこんでくる。
完全に生気を失われ、ぴくり、ともうごかない、骨と皮だけ、といっても過言でない状態となっている生徒達の姿。
その状態になったものは、助かるすべはなくやがてゆっくりと生気全体を失われていき死に至る。
そしてそうして殺された人々の魂は、次なるタナトスの糧となる。
いわば、魂の牢獄、ともいえるのだが。
その事実ははっきりいって知られていない。
よく同じ場所にタナトスが出現したりするのは、それは元となった人の思いが強いゆえ。
その思いを利用され、心のないままに相手の生気と命を奪う。
その無限、ともいえる繰り返し。
触手に今にもつかまりそうになっている生徒。
その生徒を今にも捕らえようとしている触手にむかい発砲する。
レインの銃の弾は本当にある弾ではない。
彼自身の能力を弾にと変化させてそれを叩き込んでいるのに他ならない。
レインが使用している銃はレインの手により改造されたもの。
浄化能力を持ち合わす人々は、自身にあう武器をさがしそれに能力を上乗せすることでタナトスを退治することが可能。
だからこそ、一般の人々では普通の武器では対抗できないのに、
浄化能力をもつ人々が扱う武器ではタナトスにダメージを与えることが可能なのだから。
確かに、逃げろ、といわれて、本来ならば逃げ出すのが当たり前だろう。
しかし、先ほどまで仲良く遊んでいた、または一緒にいた友達が襲われその場に倒れていれば話は別。
それでなくとも、下手をすればタナトスにその肉体ごと取り込まれ消滅させられる可能性もあるのだから。
そんなことは絶対に誰もが認めたくない現実。
だからこそ、倒れた友達をどうにかおこし、一緒に逃げようとする心理が働く。
それは、友達でも家族でも、そして仲間だとしても同じこと。
「面倒なのが二体、ですか。レイン君。こちらは私にまかせて!」
バシッ。
レインが片方をあいてにしている間、逃げてゆく生徒達にむかってゆくもう一体のタナトス・レギオン。
生徒達に伸ばした触手はどこからともなく伸びてきた鞭によって寸断される。
寸断された触手は大地に触れて掻き消える。
「わかった!」
レインの武器が銃であるならば、ニクスの武器は鞭。
常に彼がもっている杖から伸びる光の鞭でタナトスを翻弄する。
二体のタナトスに対して、一人ひとりの浄化能力者。
まず、通常、タナトスが出現した場所に浄化能力者がたまたま居合わせるなどありえない。
ある意味で、二人もこの場にいた、というのは不幸中の幸いなのであろう。
だがしかし。
「……ユーリ!?」
逃げる生徒達から情報をえて、とにかく中庭にようやくたどり着いた。
ほとんどの生徒は逃げ出してはいるものの、被害にあっている生徒の友達などは逃げ出してはいない。
そもそも、見捨てて逃げる、ということは一生後悔することになる。
というのは、ほとんどの生徒達が経験している現実。
それほどまでにここ最近のこの地、アルカディアの現状は悪いのだから。
サリーの悲鳴に近い声が一瞬何をいっているのかわからなかった。
だがしかし、ふとみれば。
見覚えのある服装をしている女の子と、そしてその女の子を抱きかかえている二人の生徒の姿が目に入る。
そしてまた、中庭や、そしてまた、転々と転がる大切な友達であり学友たちの姿。
被害にあったのは、やはりローズ達仲良し三人組の一人であるユーリであるらしい。
誕生日にアンジェリークが手作りで贈ったブレスレットが痛々しいほどに骨と皮と化して干からびたその手に目立つ。
――ノープレス、オブリージュ。力があのにその力を行使しないのは罪。
先ほどのニクスの言葉が脳裏をよぎる。
そしてまた、自身に浄化能力がある、という言葉も。
私にそんな能力があるの?
みんなを助ける能力が?
いつも仲よく会話し、遊び学んでいた学友たち。
そしてまた、苦戦しつつも、怪我を負いながらタナトスに単身挑んでいる二人の男性。
「「「「あぶないっ!!」」」
そう叫んだ声は誰のものなのか。
数名の声が思わず重なる。
ふとみれば、必死に動かなくなったユーリを両脇で抱えるようにしていたローズ達のほうに伸びる触手。
それをレインが銃で撃ち落したその刹那。
その反対側から触手がレインを攻撃し、レインが手にしていた武器が地面にと落ちる。
「レイン君っ!」
レインのことは気にはなるニクスではあるが、ニクスとて今ここで彼のほうにいくわけにはいかない。
いけば、彼の後ろにいるたくさんの生徒が犠牲になってしまうのは明白。
……助けたい。
彼らも、そして大切な友達たちも。
そして、この地に住まう全ての人たちを。
「お願い。もし…もし私にニクスさんのいうような力があるのなら…っ!」
意識したことなどは一度たりとてない。
今までのことは全て偶然、そうおもっていたから。
だけど、もしそんな不思議な浄化の能力があるのなら。
全ての存在を癒し、慈しみ、護る能力があるのなら。
「にゅうんっ」
いつのまにやってきていたのかアンジェリークの足元に子猫がやってきておりちょこんと座り彼女を見上げる。
両手を合わせたアンジェリークの手の平が淡く光りを帯びる。
それはやがてまばゆいばかりの光の球となり、自然目を閉じていたアンジェリークはその球を空にと掲げる。
光の球はアンジェリークの両手からまばゆいばかりの金色の光を発し、
よくはれた青空であったその空を金色の光の雲が多い尽くす。
それとともに、空から降り注ぐ金色の光。
祈るような格好ではない。
ただ、両手を交差させて心から願う。
それと同時、アンジェリークの体全体が淡い金色の光に包まれる。
「「…こ、これって……」」
先ほどみたアンジェリークが放った光。
それと同じ光景が今まさに、この場で再現されようとしている。
アンジェリークの体が光り輝くと同時、
「タナトスが……消滅してゆく……」
先ほどまで苦戦していたタナトス二体がその光にかき消されるように光と化してゆく。
「ああ、やはり。この…光」
暖かな、それでいて全てを癒すその光。
ふとみれば、倒れていた生徒達もそれぞれ光に包まれ、全員が生気を取り戻し意識を取り戻している様が見て取れる。
光に包まれたアンジェリークの背には天使のような白き翼がみてとれる。
まるで、その場に天使が降臨したかのごとくに。
「…あ……」
こんな現象などは見たことがない。
倒れた友達が光につつまれ、生気を取り戻してゆく様子などは。
否、アンジェリークと共に看護活動をしていた生徒達は見たことがある。
といっても、それはこんなものではなく、ただアンジェリークが患者の手を握ると、
淡い金色の光が発生したかとおもうと患者が目をさます、といった光景。
それと同時。
タナトスにその生気を吸い取られ、枯れ果てていた中庭の木々もまたそのみずみずしさを取り戻してゆく。
光につつまれ、消滅してゆくタナトスであるが、その光はやがて融合するかのごとくに輝きをまし、
ころん、とその場にゆっくりと落ちてくる金色の輝きをもつ二つの球。
そしてまた、別の球はゆっくりとアンジェリークの上空にと光輝き、
やがてそれはアンジェリークが手にしているブレスレットにまるで吸い込まれるように掻き消える。
学園を中心とし、淡い金色の光がさんさんと空より地上にむけて舞い降りる。
「アンジェ!」
ふと。
何かの力が自身の中に芽生えたような感じがした。
それが何かはわからないが。
そう感じると同時、ふと何か力がぬけてがくりとなる。
そんなアンジェリークをあわてて支えるハンナ。
これがアンジェリークの、浄化能力、なのであろうことは明白。
だがしかし、昼間に続き、その発動は二度目。
聞いたことがある。
浄化能力者はそう日に幾度も力を使えない。
ということを。
それは能力を使うのと体にかかる負担が比例するから、らしい。
そのこともあり、能力をもつものは、大概その能力が目覚める、または素質が認められると同時。
聖都であるセレスティザムにつれてゆかれるのだから。
その肉体の負担を少しでも減少するために。
アンジェリークがふらり、とよろけるのと同時。
まるでそれにあわせたかのように金色の光を帯びた雲も光とともに刹那、はじけ飛ぶ。
「アンジェ。大丈夫?」
どこか顔色が悪いアンジェリークを心配して声をかけるサリー。
アンジェリークが使った力がどうだから、というのではない。
無理をしかねない彼女のことがとても心配だからこそ。
おそらく、彼女は自身の能力を使いこなせる、と知ればその身の命を落としてでも人々の為に尽くすだろう。
それは親友だからこそよくわかっている。
さすがに能力を二度も目の当たりにすれば信じざるを得ない。
そしてまた、とある可能性をも――
「サリー。ハンナ…。そうだ、みんなは?レインさんは?ニクスさんは?!タナトスは!?」
昼間と同じような感覚に陥ったまでは覚えている。
だけど昼間と違うのは、その感覚がいまだに体の中に根付いている、ということ。
「傷が……」
ふと気づけば、追っていた傷までもが完全に治りきっている。
それに気づいて驚愕の声を漏らすレイン。
「…?…みんな?」
ふとみんなのことが気にかかり、周囲を見渡せば驚愕したような学友たちの姿が目にはいる。
そしてまた、その中には先ほどまで倒れていた学友たちの姿も見て取れる。
全ての生徒がアンジェリーク自身に注目の視線を送っている。
だが、それは好奇の視線、というよりはむしろ……
「アンジェリーク。あなたの力でタナトスは浄化され。タナトスに襲われていた人々も元通りにもどりましたよ。
ここにいる皆さんが証言者です。それでもまだあなたは自身に力などない、とおもいますか?」
光の鞭はすでにしまっている。
ゆっくりと髪を片手でかきあげながらもにこやかにアンジェリークに近寄りながら話しかけるニクスの姿。
「浄化?それに元通り…って?あの?ハンナ?サリー?何があったの?私は……」
アンジェリーク自身はただ、願い、そして心から祈ったのみ。
光に包まれ、白き翼を宿したアンジェリークの姿。
それはまさしく、永遠と語り継がれていた伝説の存在の姿と重なりを見せる。
この地に住んでいる人々は誰もが知っている、古からの伝説と。
-第5話へー
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あとがきもどき:
薫:やっぱり、初期から護り石、というのも何なので、初期は復活のお守りのオーブをば(こらまて
というわけで、アンジェリークのブレスレットに吸い込まれたのは、「復活のお守り」のオーブですv
ちなみに、アンジェリークがしているブレスレットは進学祝いに贈られてきたものですv
さて、送り主は誰でしょうv(ってバレバレvv
今回で陽だまり邸までいけるかな?とおもったけど次回に回しますねv
ではまた次回にて~♪
2008年5月5日(月)某日
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