エル様漫遊記  ~白銀の魔獣編~


セイルーンからカルマートを抜け。
ディルス王国にと続く、古く寂れた裏街道。
マインの村の二つと前のとある村。
今日はとりあえずこの村に止まって情報を仕入れようと、
一軒しかない食堂でマインのことを聞いているアメリア。
「ぬぁぁんですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
アメリアのあげた大声に店中が一瞬静まり返る。
店にいたたびの商人の一人がぽそり、とつぶやいたのがそのそもの発端。
「あそこにはいかんほうがいい……と。」
そこでアメリアがその商人に話しを聞いていたのであるけども。
「ちょっと!?ちょっと!まて!そんな大声を!」
あわてて、辺りを見渡し小声で話している人間。
「大声も小声もありません!
  すぐ側の村でそんな悪事が行われていることをしってて、届けすらもださずに!
  知らぬ、存ぜぬを決め込むなんて!あなたには正義を愛する心はないの!?」
そんなアメリアの言葉に。
「せ…正義を愛する心も何も!だから!噂だっていってるだろう!?う・わ・さ!!
  証拠は全然ないんだぜ!?役人になぞいえるか!」
まあ、人間、見てみぬふりをする輩が多いのも事実だしねぇ。
情けないことに。
「いいえ!私にはわかるのよ!巨大な悪が!陰謀が!どこかで渦を巻いているのが!!」
いいながら。
だむっ!
片足を椅子にとのっけて、ガッツポーズをとっているアメリアの姿が。

「…何かまぁたやってるぞ?」
「みたいね。」
そんなアメリアをみて呆然といっているガウリイにさらり、と答えておくあたし。
そんなこんなをしているうち、やがてアメリアがあたしたちの席にと戻ってくる。
「お帰り♡で?どうだったの?」
そんなあたしの尋ねる声に、珍しく深刻な顔をし。
「今はちょっと…部屋にもどってから話します。」
いってもくもくと食事の続きを始めているアメリアだし。
「ま、それもそうね。」
とりあえず、この場は。
食事に専念するとしますかね♡


食事のその後。
アメリア、あたし、ガウリイ、と三つ続きで部屋をとり。
その中心であるあたしの部屋にと集まってとりあえず話し合いを始めるあたし達。
まあ、話し合い、というか簡単なミーティングみたいなもの。
「これはあくまでも噂だっていうことなんですけど…
  マインの村、っていうのはある組織の……
  ……宗教団体の拠点みたいになっているって話なんです。」
アメリアにしては珍しく歯切れの悪い言い方。
「宗教団体?」
首をかしげるガウリイに。
アメリアは小さくうなづくと。
「……はぃ…食堂にいた人の話では、シャブラニグドゥ崇拝の……」
「あら♡シャブラニグドゥを崇拝?あ~んな中間管理職の使いっぱしりの、
  お仕事さぼりまくってたり、能率のわるいあんなやつを?なってないわねぇ♡」
そんなあたしの至極もっともな言葉に。
「…いやあの…使いっぱしり…って…」
何やら突っ込んできているガウリイはひとまず無視。
事実だし。
「??何ですか?その中間管理職って?」
首をかしげて問いかけてきているアメリア。
「ああ、気にしないで。それで?」
さらりと受け流し、話の先を進めるあたしに対し。
「…いやあの…気にしないでって…リナさん…と、ともかくそれだけです。」
かなり気になるんですけど…などと思いつつ、あっさりといっているアメリア。
そして。
「あの人達が知っていたのは、マインはシャブラニグドゥ崇拝の拠点になっているらしい。
  ということ。裏ではいろいろといかがわしいこともやっているらしい。
  っていう噂がある、てことだけ。
  それ以上のことは知らないし、知りたいとも思わなかったって言ってました。」
少しうつむき加減でそんなことを言っているアメリアだし。
「そう…」
噂というか事実なんだけどねぇ。
ちなみに、マゼンダも何を考えてるのかあいつらの組織に入り込んでるし。
まあ、ガーヴの指示だからそれはそれで彼らにとっては当たり前だとはいえ……
まったく、ガーヴもガーヴよねぇ。
あ~んな中途半端の術であんなことになってるなんて。
しかも、Sのやつから離反してるし。
今は♡
「…なあ?リナ?」
そんなあたし達の会話の合間に。
今まで黙っていたガウリイが何やらいってくる。
「さっきから気になってたんだが…その、シャブラグラビラって…何だ?」
…べしゃっ!
あ、面白い。
アメリアが思わず前のめりになって倒れてるし♡
そして。
「シ…シャブラニグドゥですよ。ガウリイさん。」
起き上がりつつ、ガウリイに訂正を入れていたりする。
そんなアメリアの言葉に、ガウリイは頭をぽりぽりとかきながら。
「いやぁ。どっかで聞いたような名前のような気もするんだが…
  …どうも文字数の多い名前ってのは覚えにくくて……」
のほほんというガウリイ。
「あのねぇ♡ガウリイ♡一度、対戦してるでしょ?
  復活したて(といって過言でない)分身である、7/1のやつと♡
  ゼルガディスと一緒に♪
  まさか、あれだけやられておいて、忘れたっていうんじゃないでしょうね♡」
にっこりと。
「ほら♪赤眼の魔王ルビーアイシャブラニグドゥ♪のことよ♪あたしと出会ったときの事件ね♪」
あたしがいうと。
「おお、そうか!」
ぽんっ!
手を打っていたりするガウリイ。
「り…リナさん…その…戦った…って……え?」
何やら、アメリア、呆然としていたりするが。
「あれ?でも、あれはリナが倒したんじゃなかったか?」
本当は、封印したんだけどね♪
レゾの体内と、鳥の姿に♪
ガウリイがいまだに首をかしげ疑問がっていたりするけど。
「あのねぇ。本人じゃないのよ。ただ、あいつを崇拝してるっだけの話♡」
あたしの説明に。
「リナさん!本当に、あのダークロード、シャブラニグドゥを倒したんですか!?」
かなり驚いていたりするアメリアだし。
「あら♪何いってるの?ルナでもできるわよ♪そんなこと♪誰でもできるって♪」
さらりというあたしの言葉に。
絶対無理です。
と、なぜか、内心アメリアが思っていたりするが。
ま、ルナは出来ないと嘘だけどねぇ♡
何しろ、まがりなりにも、あいつと表裏一体でもある赤の竜神なんだし♪
赤の竜神騎士スィーフィードナイトはともかくとしても…。リナさんってすごいんですねぇ。」
何やら尊敬の眼差しであたしを見てくるアメリア。
「あら♪アメリアにも出来るって♪」
「そうでしょうか?」
「そうそう♪簡単よ♪」
「だったら、今度試してみます!」
一人、気合を入れているアメリアだし。
「…けど。シャブ何とかって魔王を崇拝って…一体どんなことをやっるてんだ?
  まさか本物の魔王をゲストに呼んで、座談会とか開いてるわけでもないだろうに?」
本物というかあいつとの戦いを思い出して、しみじみとそんなことをいっているガウリイ。
そんなガウリイの言葉に。
「そういうのがあるって聞いたことはありますよ?
  何でも魔王を信仰することによって、物欲を満たそう。
  というシロモノで、生贄から実力行使まで。何でもありの邪教だって。」
そう言い、アメリアはやおらぐぐっとコブシを握り締め。
「闇にその身と心をゆだね、道理を忘れた邪教の輩など!
  何百、何千集まろうとも恐れることはありません!
  正義の文字がある限り、勝利は必ず私たちにと訪れます!」
などと何やら自分の世界に浸り始めているアメリアはとりあえずおいとくとして。
「ま、それはともかく…一応調査してみましょ♡」
何やら自分の世界に浸っているアメリアに。
いまだに少し前の出来事を思い出しているガウリイにむかって、にこりと微笑むあたし。
ま、そのほうが面白いしね♡


そして……
闇に揺らめくちょっとした数のたいまつ。
かがり火の照らすホールに集う、ちょっとした百人程度の覆面姿。
正確には、132人v
「……思ってたより大規模…ですね……」
それをみて小声で、ぽつりといっているアメリア。
マインから少し離れた山の中。
森の木立に囲まれて、遺跡はひっそりと静まり佇んでいる。
時の流れのますがまま、今は朽ち果ててはいるものの、
かつて、ちょっと前までは闘技場であった名残ゆえ。
円い建物の中心に向かってすり鉢状にと客席がしつらえてあったりする。
もっとも、その客席も半ば以上が崩れ去り、覆面姿の人間達が座っているのももっぱら下の席。
崩れ具合がちょっとした面白い具合になっているがゆえに、
普通に歩いて上のほうに上ることは、なぜか不可能。
…浮べば早いけど。
この程度の崩れ加減で、なぜか浮遊レビテーションなどを使わないと移動ができなくなっていたりする人間達。
今あたしたち三人がいるのは、上のほう。
闘技場の一番外側。
この元闘技場の中では崩れ方が一番激しい場所であるがゆえに、
空に浮ぶか、または瞬間的に移動するか。
もしくは、浮遊レビテーションの術でも使いこの位置に来ない限りは人間達にとっては不可能。
そんな不可能、であるがゆえに、面白いまでにここには見張りの監視役の姿すらない。
「それほど大規模にもみえないけどなぁ……」
そんなアメリアの言葉に、あたしの隣でつぶやいているガウリイ。
くすっ。
「単純に人数だけで考えたらね。たかが132人程度は少ないでしょうけど。
  だけど、こんな場所に人間が集まっている、
  というのはこの辺りの人口比率からいけば結構なものよ♡」
ま、この辺り、全部を含めても、百人いるかいないか、という人口比率だからねぇ。
そんなあたしの言葉に。
「それにしても…許せませんね!」
などといっているアメリア。
そして。
「邪教を信じるものたちがこんなにいるなんて!この世に正義の文字はないの!!?」
面白いまでにエキサイトしていたりするし、このアメリアは♡
やがて。
あたしたちが見ている中。
集会場にと変化が訪れる。
ざわざわざわ。
沸き起こる覆面姿の人間たちの歓声の声。
「…?誰かでてきたぞ?」
そういい、とある一点を指し示しているガウリイ。
そんなガウリイの言葉に視線を移動させているアメリア。
ふとみれば、現れたのは五人の人物。
真っ赤な色のローブにマント……
…誰かさんのよりかなりお粗末だけど。
刃を紅く塗っている儀礼用の長剣を五人が五人とももってたり。
ちなみに、一人は覆面をかぶらずに素顔で出てきていたりするけども。
素顔の人物が闘技場の中央にと歩み出ると。
残る四人は男の四方。
つまりは、東西南北の位置にとひとりづつ、かっきりと寸分違わずに立ってゆく。
そんな彼らをみて。
「……なるほど。五人の腹心ですね。」
苦々しい口調でつぶやきつつも感心した声を上げているアメリア。
そんなアメリアの言葉に。
「??なんだ?そりゃ?」
などと首をかしげつつあたしに聞いてきているガウリイ。
「Sのやつ、というかシャブラニグドゥのやつが創り出した五人の部下。
  つまりは腹心ってことよ。そうね。わかりやすくいえば、高位魔族というところかしら♡」
そんなあたしの言葉に続き。
「えっとですね。あの五人はそれぞれ。
  魔竜王ガーヴ。覇王グラウシェラー。海王ダルフィン。獣王ゼラス=メタリオム。
  そして…おそらくは、中央の男が冥王フィブリゾを。
  彼らがそれぞれに対応しているはずですけど。」
やたらと親切な解説と説明をしているアメリア。
「でも、どうせだったら、人間バージョンの彼らをそのままに再現して、
  男女と子供に分ければいいのにねぇ♡」
くすっ。
全員役をやってるのって男性だし。
苦笑するあたしに対し。
「??どういう意味ですか?リナさん?」
首をかしげ、聞いてきているアメリア。
そんなアメリアが問いかけてくるのとほぼ同時。
中央にと佇む男性が声をあげる。
「諸君!実は今日よい知らせがあった!クロツ様がもうすぐお戻りになられる!」
「「「どぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおお!」」」
そんな彼の言葉に歓喜のどよめきが会場内を満たしてゆく。
「そのクロツっていうのがボスですね!」
などといっているアメリア。
そんなあたしたちの視界の先では。
「しかも!目的のものを見事に手にいれられた!という知らせだ!」
その言葉に、またもや会場がざわめいてゆく。
そして。
そんな彼らに対して軽く手を掲げ。
「これでもう、我々に敵はいない!
  赤の竜神スィーフィードなどを信じる偽善者どもに知らしめてやるのだ!
  真の力が、人々の望むのもが我らのほうにあることを!!」
などといってるし。
ま、こいつら、
ルナ…赤の竜神スィーフィードが覚醒、復活してる…ということ知らないようだけど。
まったく。
情けないったら……
まあ、ルナもその情報を公開していない、というのもあるけど。
赤の竜神騎士スィーフィードナイトなんて名乗ってるし。
ルナは……
と。
そんな彼らの言葉を聞きつつも。
すくっ。
その場にと立ち上がるアメリア。
そして。
爆煙舞バースト・ロンド!!!」
アメリアの周りにと忌まれた数十発の光球が、一斉に集会場にとふりそそぐ。
ドドドドドゥッ!
ゴグワッ!!

「どえろわぁぁぁぁあ!?」
「めひぃぃぃぃぃいい!?」
まきおこる、火の手と悲鳴。
あら♡
「あ~らら♡」
「やったな……」
にこやかに言い放つあたしと。
ため息まじりに何やらつぶやくようにいっているガウリイ。
そして。
「あ…あそこだ!」
「誰かいるぞ!見張りは何をしていた!?」
ようやくこちら…つまりは、あたし達に気づいている彼らだし。
そして。
彼らがあたし達にと気づいた次の瞬間。
明かりライティングよ!!」
アメリアは自らの頭上に照明を創りだす。
そして。
「聞くがいい!闇をあがめるものたちよ!
  いくら欺瞞を並べたところでまことの真理はただ一つ!
  たとえほんの一握りでも心に光があるならば、自らの選んだ道が正しいか!
  今一度考え、そして選びなさい!自分自身のその意思で!
  さすれば天の慈悲も得られましょう!」
詠うように朗々と言い放つ。
スポットライトのような状態になっている明かりライティングの明かりの下でそう言い放っているアメリアをみて。
「……いってもムダだとおもうなぁ……オレ……」
何やらしみじみといっているガウリイ。
「あら♡ガウリイにしてはまともな意見じゃない♡」
「…あ、あのなぁ……」
あたし達がそんな会話をしていると。
「始末しろ!!」
中心にいる男性の掛け声とともに。
わらわらとこちらにとむかってくる人間達。
「まったく♡仕方ないわねぇ♡烈閃槍エルメキア・ランス♡」
にっこり。
微笑みつつもこの会場。
…つまりは、この遺跡のど真ん中の上空にとちょっとした術を解き放つ。
そして。
それをぴったし上空……つまりは、会場の中心の真上でとどめ。
くすっ。
「ブレイク♡」
パチンv
軽く指を鳴らす。
と。
ざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
「うぐっ!?」
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「ぎぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
何やら叫びつつ、青白い光の槍。
…といっても、ほとんど雨状態になっているそれが、彼らの上空より降り注いでゆく。
なぜか、この程度で会場内部はかなり、先ほどよりもパニックになっていたりするけど。
バタバタと倒れてゆく、信者たち。
「……な゛!?魔道だと!?」
面白いまでに驚いてるし。
…誰でも使えるってば♡
「ま、とりあえずこの場は一度ひくわよ♡
  アメリア、ガウリイ。ってことで、翔封界レイ・ウィング♡」
まあ、別に何も言わなくてもできるけど。
とりあえず、ここはまあ、お遊びで♡
本当は瞬間的に移動してもよかったけど。
それだと、彼らと出くわさないしね♡
そのまま、あたしはガウリイとアメリアの二人をつれて飛んでゆく。
当然、彼らから思いっきり目立つように♡
「おのれ!逃がすな!外だ!」
「ええい!誰か!マゼンダ様をおよびしろ!!」
「確か神殿のほうに!!」
なぜかそんなあたしたちをみて叫んでいる彼らの姿が。

さってと。
ある程度飛んでから降りますか…ね♡


                                     -続くー


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あとがき:
薫:さてさて、次回で気の毒(笑)なゼロス登場ですv
  それでは、またvv
  2005年1月28日某日



  
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