エル様漫遊記 ~バトル・オブ・セイルーン編~
「おお。そうだったの。では、今度はこちらが説明するとしよう。」
ルナの言葉にもっともだ、という表情を浮べ
…フィルが簡単にあたし達にと説明を開始してゆく……
暗殺者にお曽和れ、それを何とか説得して逃げたこと。
しかし今度は彼に味方する重臣たちが暗殺され始めたこと。
それを憂慮したフィルは刺客たちの目を自分にひきつけるために、
王宮を一人抜け出して、グレイにかまくってもらったこと。
そして狙い通り、刺客たちはフィルを見つけ出すのに躍起になって、
他の重臣たちの暗殺はなくなったこと。
…どうでもいいけど、まがりなりにも魔族なんだから…
人間の波動を探すくらいしなさいよね…あいつは…
まったく。
お母さん、悲しいわ♡
「なるほど…だからグレイさんは警戒していたのですわね。」
などとつぶやいているルナ。
ナーガをみてすぐにあたし達も含めて家の中に入れたのは、
ナーガの姿を知っている人がいたら、まずいと思ったからに他ならない。
普通に考えて、フィルが見つからず、
しかも、二女であるアメリアのほうは、厳重な警戒を一応ひいている。
そんな中で、無防備ともいえるナーガがもどってきたとなると、
間違いなく刺客たちの目はナーガに向くのは明白。
ナーガを人質にして、フィルに迫ってくること間違いなし。
…というか、このナーガが簡単に敵の手に落ちるわけもないけど…
本人が気づいた…とすればだけど。
捕まえたとしても、扱いに困るでしょうしね♡
「グレイにはメイワクをかけてすまん、と思っておる…」
いいつつうなだれるフィル。
「殿下…そのようなもったいないお言葉を…」
そんなフィルに恐縮しているグレイ。
「まさか、グレイシアがもどってくる、とは思ってもみなかったがな。
…マリアからグレイシアが帰ってきた。
と聞いたときにはさすがに少々驚いたがな。がはははっ!」
いいつつ、ちょっとした笑い声を上げていたりするこのフィル。
そんなフィルの様子にさらに顔を真っ青にしているシルフィール。
「…?あの?大丈夫ですか?シルフィールさん?」
なおも顔色が悪いシルフィールにとねぎらいの声をかけているルナ。
「え……ええ……何とか……」
とはいうものの、面白いまでに、
やはりシルフィールは現実と理想の間にかなり戸惑っていたりする。
「それで…だ。リナ殿。ええと…そちらの男性は……」
ガウリイをみて問いかけるフィルに。
「ガウリイです。」
「おお、そうか。ガウリイ殿。そしてルナ殿。」
改まり、あたし達に対してフィルは向き直り。
「もしできるなら儂のたのみを聞いてはくれんか?」
「…とりあえず、話だけでもお伺いしますけど?」
そんなあたしの言葉に。
「うむ。儂が一人で王宮を抜け出したことは先ほども説明したが。
儂に味方をしてくれているもの達はひょっとして儂がすでに殺されているのではないか?
などと思っているものもおり。どうも落ち着かぬ様子らしい。
それで、それ者たちに何とか儂の無事を知らせ、安心させてやりたいのじゃ。」
そういい、ちらり、とグレイを見つめ。
「このグレイも持ち回りで五日に一度は王宮の神殿で仕事につくが…
…そこでつなぎをとらせるのは危険すぎるのでな。」
そういうフィルに対し。
「あら。ならお父様。私がもどって伝えればいいのでは?」
ナーガにしてはまともなことを言っていたりする。
「いや。いかん。そんなことをすれば、今度はお前が刺客に襲われかねない。
お前も死んだ母さんに似てか弱いからな。」
ナーガにか弱い、という表現はあまり当てはまらないわよ♡フィル♡
ナーガにそう言い放ち、そして。
「伝言をしてもらいたい相手は二人。
どちらか片方に接触してもう片方に伝言してくれるように伝えてくれればいい。
ただ、二人とも、王宮の外に出てくること滅多とない。
もし引き受けてくれるならば、王宮に忍び込むことになろう。
かなり危険なことになることは確かだな。」
顔をしかめて説明してくるフィルだけど。
あら♡
一人はよく城の外に出向いてるけどね。
今はこんな状態だから回りがとめてるけど♡
「しかし、殿下…ですよね?この暗殺騒ぎの首謀者が誰かまったくわからないんですか?」
「…ガウリイ様?熱でもありますの?」
「あ…あのなぁ…シルフィール……」
珍しく話しについてきているガウリイの言葉に突っ込みをいれているシルフィール。
「うむ。検討はついておる。…だが、確たる証拠も証人もいないのでどうにもできん。」
そういい、ため息一つ。
「それで、つなぎをとってほしい相手だが、はっきり言って危険なことだ。
無理強いはせん。いやなら素直にいってくれ。」
そんなフィルの言葉になせかあたしをみてくるルナだけど。
くすっ。
「別にかまいませんよ?やっても♡それに危険、なんてことはあたしには皆無だし♡」
「リナさんがいいのでしたら私も問題はないですわ。」
そんなあたしとルナの台詞に。
「…いや、リナさん…『危険なんてことはない』…って十分に危険なような気が……」
何やらつぶやいているシルフィールはひとまず無視。
「すまん。」
そんなあたし達に対して頭を下げてきているフィル。
このフィル。
相手が誰であろうと、謝るときにはきちんと謝る。
その辺りができてるから、結構国民や王宮内部でも人望が厚いのよね♡
誰でも分け隔てなく接するし♡
あたし達の言葉をうけ。
「ならば、話を進ませてもらおう。
つなぎをとってもらいたい相手というのは、一人はクロフェルといって、
儂の身の回りの世話をしてくれているものじゃ。そしてもう一人はアメリア。」
フィルが言いかけると。
「アメリア?そういえばあの子元気ですの?」
フィルに問いかけているナーガ。
「女の人…ですか?」
シルフィールの問いかけに。
多少いまだに声が震えていたりするけども。
「確かこの殿下の二番目の娘さんです。」
そんなシルフィールに説明しているルナ。
そんなルナの説明に。
「「娘!?」」
面白いまでに、シルフィールとガウリイがナーガのほうをみてたりするし。
そして、同時にフィルとナーガを見比べていたりする。
二人とも、どっちに似ているのか…などと思っていたりするんだけど♡
「…お母上様にお二方とも似ておられて。
アメリア様もグレイシア様同様、綺麗な御方ですよ?」
そんな二人の心情を汲み取り、フォローをいれているグレイ。
「…で?お父様?誰ですの?その黒幕と思しき人物…というのは?」
ナーガの問いかけに。
「…うむ。おそらくは…クリストファ=ウル=ブロッソ=セイルーン…儂の弟だ…・・・」
「叔父様がそんなことを?」
そんな会話をしているこの父娘。
「弟……」
そんなフィルの言葉につぶやいているシルフィール。
ちなみに、頭の中ではフィルが二人になってたり♡
そして…
「はうっ!」
そのまま再び気絶していたりする。
あらあら♡
くすくすくす。
そんなフィルたちの様子にあたしをなぜか見てきているルナ。
くすっ。
「まあ、じゃあ、とりあえず、今晩にでも♡」
「おお。やってくれるのか!?しかし…今晩…とは?いいのか?」
あたしの言葉に、驚きつつも念を押してきているフィルだけど。
「あら♡こういうことは早いほうがいいのよ♡ね♡ルナ♡」
あたしの言葉に。
「は…はい。」
なぜか素直に従ってくるルナ。
…何かエル様…たくら…とと、考えてらっしゃいますわね…
などとそんなことを思っているけど。
「あら、考えてるだなんて♡ルナだってわかってるでしょうに♡」
「??リナ?一体?」
あたしの言葉になぜか真っ青になっているルナをみて、首をかしげて聞いてきているガウリイ。
くすっ。
「内緒♡」
そして……
その日の夜。
あたしとルナは潜入を開始することに。
といっても、ガウリイとナーガとシルフィールは、つれてきてはいないけど。
ナーガとフィルをよろしくたのむ。
と言付けて、あたしとルナだけで出てきたのだけど。
その方が何かと都合がいいしね♡
「本当に大丈夫か?」
などとガウリイなどは聞いてきたりもしたが。
ガウリイがいたら、何かとややこしくなるしね♡
「…エル様。この町、一応中級魔族の一人が入り込んでいるようですわね…それも宮殿に。」
ルナがあたしと二人っきりになったので、呼び方を元に戻していたりするけど……
「あら♡気づいてたのね♡気づいてなかったらそれはそれでお仕置きだったんだけど♡」
ずざっ!
なぜかあたしの言葉に顔を真っ青にしているルナ。
「しっかし、何をやってるのかしらねぇ♡
何だって、魔竜王ガーヴは以下の一人がこんなところで何をしてるんだか♡
ラグラディアのかけた中途半端な術程度でSのやつから今は離反してるらしいけど。
まったく…もうちょっとかけるならかけるで本格的に術を施さないとね。ラグラディアも♡
ついでにSはSで何をやってるんだか……」
あたしの言葉に。
「す…すいません。本人に確認…
といっても、彼女は今はかなり能力を失っているもので、意識のほうに確認したところ…
能力をあのとき大半失っていたので術が中途半端になった…とはいってましたが……」
なぜか冷や汗を流しつつも説明してくるルナ。
そして。
「と…ところで?どうやって入ります?空間移動でいきますか?」
…話題を変えたわね。ルナ…
…ま、いいでしょう。
「ふっ。まあいいわ。その件はまた今度よぉくね♡
入るのは正面からに決まってるでしょうが♡
姿を消していけばいいのよ♡というか相手側に見えなくするだけで問題ないでしょ♡」
あたしの言葉に。
「姿を消して…ですか?」
「そう、人に見えないようにするくらい、簡単でしょうが。
たまには歩いてみる、というムダもいいものよ♡」
あたしの言葉に。
「…わかりました……」
なぜか素直に従うルナ。
心の中では、何か絶対にたくらんでおられますね…・・・
などと思っていたりするルナだけど。
…後でみっちりとお灸をすえておきましょう♡
とりあえず、そのまま正面玄関から堂々と入ってゆくあたし達。
だが、面白いことに見張りの姿は一人たりとていなかったり♡
まったく、無用心ったら……
向かってすぐ右が神官たちの、そして左が巫女たちの詰め所。
そして、中央にあるのが神殿。
公式行事等はすべてそこにて行われていたりする。
で、神殿の後ろにあるのが本宮。
まあ、他にもいろいろとあるが、あまたとあるあたしの宮殿や神殿ほどではないしね♡
フィルは一人に伝言すればいい。
とかいっていたけど、当然、二人にコンクトをとることに決めてたり♡
なぜかこの程度の姿を隠している状態でっまたく気づいていない人間達。
存在自体そのものも感じ取っていなかったりする。
まったく、情けないったら……
まあ、一人より二人のほうが何かと面白いし♡
ちなみに、余談。
このセイルーン王国の名前の由来。
セイルーンは町自体が巨大…といっても、些細な大きさだけど。
町全体がちょっとした六紡星の形を成している。
いわば町全体が、六紡星の結界、となっているのに他ならない。
それゆえに、白魔法、とか俗に言われている精霊魔法などの威力は格段にとあがっている。
この結界は、物事などの浄化、気の流れを通常値に戻す効果があるがゆえに。
まあ、それでも微々たる程度だけど。
これ以上の大きさ等になったら、
自然界のバランスが崩れ、逆に面白いことになったりするんだけどね♡
夜風をきって、あたしとルナは進んでゆく。
兵士の前を堂々と歩いてもまったく気づいてないし。
…まったく、職務怠慢よねぇ…
こんなんだから入り込まれてもむ防備なのよ。
セキュリティとかは万全にしとかないと♡
どこにいるか、などとはわかっているけど。
とりあえず、軽く部屋を見て回る。
まあ、一種の見学みたいなものだしね。
そして……
とある部屋の中にと入るあたし達。
二間続きの奥の部屋。
外の明かりが差し込むベットに一人の老人が眠っている。
人相はフィルがいったとおり。
「ルナ♡一応、この人物、あってるかどうか照合してね♡」
本人だ、というのはわかってるけど。
こういったムダもあえて楽しいし。
あたしの言葉に。
「はい。」
その眠っている人間の脳裏を覗いて確認しているルナ。
「はい。どうやら本人に間違いありません。クロフェル公です。」
「あら。そ♡」
パチンvv
軽く指を鳴らす。
と、あたし達の姿が誰にでも見えるようにと変化してゆく。
そんなあたしたちの気配に気づき。
今さらながらにようやく目を覚まし。
「…な…お前たち…は…」
目を覚ました老人が、面白いまでに警戒、そしていぶかしり、あたし達を見てくるけど。
ちなみに、
あいつに今気づかれたら面白くないから、軽くこの部屋そのものに結界を施していたりする。
あたし達が出たらすぐさまに解かれるような簡単なシロモノだけど。
「おぬしたち…いったい……」
確かに、自分の目の前にいるのに、あたしとルナの存在感は…まったくいってもない。
というか気配がない、というほうが正解なんだけど。
まあ、気配は隠してるからねぇ。
あたしは。
ルナはルナで隠してるし。
そんなクロフェルに対し。
「フィリオネル殿下からの伝言を預かってまいりました。」
ルナが黙るように、と軽く動作で指示をだし、静かに彼にむかって説明する。
「殿下の!?」
その言葉に思わずベットから飛び起きているこのクロフェル。
「お静かに願います。ただ、自分は無事だから、心配するな。と。
あなたとアメリア姫にそう伝えてくれ、とだけ。」
そう説明するルナの言葉に。
「…おお…」
歓喜の声がその口から漏れて医入。
「…そうか、やはりご無事で…よかったよかった……」
というか、涙を流しつついわなくても……
「それで?殿下は…いや、よそう。居場所は聞かぬほうがよいな。」
いつ、何どき、そのことがもれて殿下の身に万が一のことがあっては…
などと思い、聞くのを思いとどまっていたりするけど。
「一応、伝言はしましたからね。それじゃ、あたし達はこれで。」
そういうと同時に再び、姿が見えないようにとするあたし。
それをみて。
「!?いったい、あなた方は!?」
なぜかかなり驚いていたりするけども。
このクロフェルは。
いきなり目の前であたし達の姿が見えなくなったのにかなり驚いているみたいだけど。
まったく、この程度で……
「ご心配なく。ただ姿が見えないようにしているだけですから。」
そんな彼にむかって一応説明しているルナ。
「まあ、そんなことより。いくわよ。スィーフィード。」
あたしの言葉に。
「あっ!待ってください!では、失礼いたしますね。クロフェル公。」
いいつつ、相手に姿が見えない、というのにもかかわらずにお辞儀をし。
あたしの後にとついてきているルナの姿が。
声はすれども姿は見えず。
おまけに気配も何もない。
…が。
「…スィーフィード??」
その言葉を聞いて、何やら考え込んでいるこのクロフェル。
しばし、そのままの状態で考え込んでいる姿がその部屋で見受けられていたりするけど。
ま、どうでもいいことだしね。
次にちょっぴし空間を移動してとある場所にと出ているあたし達。
「アメリアのほうには神託って形で教えておきましょうかね♡」
あたしの言葉に。
「それでは、私のほうから伝えます。」
いって少しばかり精神を集中させ。
「すみました。本人も了解していたようです。」
アメリアに伝言し、あたしに言ってくるルナ。
と。
ゴグォン!
あたし達がいる目の前の窓の外にて。
ちょっとした爆発音が鳴り響く。
ざわっ!
その爆発の音をききつけ、一気にざわめいている辺りの空気。
「何だ!?今のは!?」
「何があった!?」
「騒ぐな!持ち場にもどれ!あれは外の連中にまかせろ!」
面白いまでに、その音が原因で騒いでいる兵士達のやり取りが聞こえてきていたりする。
「あら♡ようやく出てきたみたいね♡あいつ♡」
くすっ。
あたしの言葉に。
「そうですね。」
などといいつつ、ルナもまた、空を眺めていたりする。
あたし達はそのまま、瞬時のうちにその中庭にと出ていたりするんだけど。
それはそれ。
空中に一人の男性。
いや、男性の格好をしている
長いマントを夜風にはためかせ、星を背に空中にとういている。
まあ、人間からしてみれば、
ちなみに本人とすれば、ハンサムの部類に入るといった容貌のつもりだったり。
右の頬に大きな刀傷をつけている。
…別にそんなものまでわざわざつけているように実体化しなくても……
…だが。
「…ちっ。話し声がしたんで仕掛けたのに…誰も出てくる気配がない…な。」
などといってほざいていたりする。
というかあたし達はあんたのすぐ真下にいるんだけど♡
「…こちらに気づかないんでしようか?エル様?」
首をかしげあたしに聞いてくるルナの言葉に。
「気づくとおもう?あんな下っ端が?
でもこの程度の姿消しで気づかない…なんて、やっぱりなってないわねぇ。」
「…普通はわからないと思いますが……。
まあ、それはそうとして。やはりあの魔族、魔竜王ガーヴ配下のモノですね。
どうします?捕らえますか?」
そんなことをいいつつ、あたしに聞いてくるルナに対し。
「今はまだやめときましょう♡面白いこと思いついたしね♡ま、今はとにかくもどりましょ♡」
あたしの言葉に。
「わかりました。」
そして。
あたし達はそのまま、何やらいまだに文句をいっているソレを後に。
その場を空間を渡り後にしてゆく。
「やはり気のせいなのか……」
などとまったくあたしたちに気づくこともなく、
何やらぶつぶついいながら、ソレは闇にと溶け消えてゆく……
-続くー
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あとがき:
薫:はいvでてきましたねぇ。カンヅェル(笑)
しかし…エル様…普通、姿消してたら、しかも気配も何も消してたら…わかりませんって(滝汗・・・
さて、次回。ようやくアメリア登場ですvそれではv
2005年1月23日某日
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