エル様漫遊記  ~バトル・オブ・セイルーン編~


「…けど、思っていた以上に混乱しているようですわね。この町。」
食後のお茶をすすりつつ、小さな声でそんなことをいっているシルフィール。
「……しっかし……」
それに続いて、ぽつり、とつぶやくガウリイ。
そして。
「?何だってこの町・・・こんなにざわざわしてるんだ?」
ポロッ。
思わず面白いことに手にしているフォークを取り落とすルナ。
シネフィールの目は点になっていたりする。
「あ…あの?ガウリイさん…」
「…もしかして、何でこの町が今ごたついているのか……
  そのあたりの事情がぜんぜんわからない…なんてことは……」
「全然知らない。」
ガウリイのきっぱりした一言に面白いまでに硬直しているし♡
「ナーガ、あんたからとりあえず説明しといて。」
あたしは一応ナーガに話をふり説明を求めておく。
一応彼女の実家のことではあるしねぇ。
「ふっ。まあいいわ。簡単に説明すると、私の家がお家騒動の真っ最中なのよ。」
ぐびぐびとジョッキを飲み干しつつもガウリイにといっているナーガ。
「?私の家?って、ああ、そうか!」
いいつつ、何やらぽん、と手を叩くガウリイ。
「確かあんたセイルーンの……」
「ストーップ!!」
そんなガウリイの声をシルフィールがさえぎり。
「ガウリイ様。そんなことを大声でいうものではありません!」
強い口調でいっているシルフィール。
「半年ほど前にお爺様が病気で倒れてね。
  ベットから起き上がることができない状態になっているの。
  …もちろん、私も急いでもどろうとしたんだけど……」
そういいかけ、ナーガが言葉に詰まる。
「つまり♡半年も道に迷って、帰れなくなり、オマケにお金もなくなった…っと♪」
あたしの言葉に。
「ふっ。そのとおりよ。さすがね!リナ!
  さすが私の永遠のライバルだけはあるわ!おーほっほっほっ!」
「「半年も……って……」」
そんなナーガの台詞にガウリイとシルフィールが何やらつぶやいてるけど。
「と、とにかく。そのころからいろいろと騒ぎが起こっているらしいの。
  私のほうにもそのあたりの事情は流れてきているわ。
  …で、王室からちょっとした依頼もあったから私も一緒についてきているの。」
と、ルナ。
「第一王位継承者が殺されかけたのに始まって、
  町の中やら王宮やらで、何人ものおえらいさんが暗殺されたり。
  そのうち、第一王位継承者が王宮から姿をくらませちゃって…
  町のどこかに身を隠しているんだろう。
  ってことで兵士達や怪しい連中が始終待町中をうろついているのが現状なの。わかった?」
あたしの説明に。
「…う~ん…何となく……」
「…ガウリイ様……」
「………」
首をかしげ、腕を組んでよく理解してないガウリイに、あきれた視線を向けているシルフィールとルナ。
まったく、この人間は。
だからまあ、面白いんだけど♡
「で…でも、何でですの?その【第一王位継承者】という呼び方は?」
気を取り直しつつ、シルフィールがあたし達にと聞いてくる。
少し眉をひそめながら。
「何っていいましても。つまり王の地位を受け継ぐ権利が……」
ルナが説明しかけると。
「そうではなくて。どうしてリナさんが、そういう言い方をするのかって思ったものですから。
  結局のところ、平たくいえばこの国の王子様でしょう?」
「…うっ。」
あ、面白い、ルナが一瞬固まってる。
…あのフィルが王子様…ねぇ。
イメージがすこぉし違うわよねv
「ま…まあ、でもしかし。
  あのフィル殿下を応じって呼びたくないのはよくわかりますけどね。
  私も殿下で通してますもの。」
どこか遠い目をしてそんなことをいっているルナ。
「…??けど、暗殺者に命を狙われ、王宮を終われ、町に身を隠した王子様♡
  さぞかし素敵な方なんでしょうね。」
面白いまでに、夢見るようなまなざしでそんなことをいっているシルフィール。
ダガシァャ!!
あら♡
そんなシルフィールの言葉にルナとナーガが椅子ごとひっくり返る。
くすくす。
どうにか笑いをこらえつつ。
「シルフィール。王子っていっても、このナーガの父親よ?
  そんな夢みたいなことは忘れたほうが身のためよ♡」
「ふっ。確かにお父様は見た目にはちょっぴり応じというイメージではないでしょうしね。」
あたしの言葉に続いてそんなことをいっているナーガ。
「あんたも姫ってイメージじゃないとおもうが?オレは?」
そんな突っ込みをいれているガウリイ。
「ふっ。この私のセンスがわからないようじゃ。あなた、まだまだね!おーほっほっほっほっ!!」
そんなガウリイの言葉をうけて、高笑いをまたまた始めているナーガ。
「???…え??」
意味がわからずに戸惑っているシルフィール。
「ま、そんなことより。
  それよりシルフィールさん。手紙を届ける親戚の家の人には連絡しているのですか?」
さり気に話題をさらり、と変えようとしているルナだし。
「ええ。前にカノン・シティのメッセージ・センターで連絡を取りましたから。」
そんなルナの質問に答えるシルフィール。
そして。
「間違いはない、と思いますけど。
  その親戚というのは、神官と魔法医を掛け持ちでやっている人なんです。」
しばらくあっていないその人物のことを思い出し、笑みを浮かべるそんなシルフィールの様子に。
「かけもちで…って。そういえば、知り合いにもそんな人がいるわねぇ。」
そんなことをいっているナーガ。
「まあ、いいじゃないか。それはそうと、ならとっとといこうぜ。ご飯もたべたし。」
あっさりといっているガウリイ。
「「私も賛成です。いきましょう。リナさん。グレイシア様。シルフィールさん。」
そんなガウリイの言葉に賛同して、そんなことをいっているルナだけど。
ルナ、さらり、とフィルの話題から話をそらしたわね♡
「それもそうね。それじゃ、そろそろいきましょうか♡」

あたしの言葉をうけ。
あたし達は、シルフィールの叔父がいる、というその場所に向かうためにと。
店を出て、再び出発してゆく。



「あ、あれです。あの茶色い屋根の家。」
シルフィールが指差したのは、セイルーン・シティの町の中心部。
王宮のわりと近くにある一軒の家。
まっすぐ伸びる通りの向こうに王宮を囲んでいる高い壁が見えている。
そちらに向かって右側に彼女の指し示す家はあったりする。
それほどに大きな館ではないが、まあつくりの一応はしっかりとした家ではある。
「…あの?よろしければよってくださいません?」
家の近くまできて、あたし達にといってきているシルフィール。
「そあうね。一応その人に挨拶しておいたほうがいいでしょうね♡」
にっこりとそんなシルフィールに答えるあたし。
というかいかないと面白くならないしね。
「リナさんがそういうのでしたら…」
「オレはどっちでもいいぞ?」
「じゃ。決まりね。」
あたし達はそのまま、家の門をくぐり…そしてシルフィールの叔父の家の前にまでたどり着く。

狼の頭をかたどったドアノッカー。
コンコンコン。
シルフィールがそれを数回鳴らし、そしてまつことしばし。
「…??留守かしら??」
小首をかしげ、彼女が再びノッカーに手を伸ばしかけたとき。
ようやく家の中で気配が動く。
ややあって、少し開いたドアから顔をのぞかせたのは…一人の中年男性。
顔には面白いまでに、疲労と警戒の色が濃く出ていたりする。
そんなに顔にだしたら誰にでもばれちゃうわよ♡
が、扉の前に立つシルフィールの姿をみてとり、その警戒の色は瞬く間に掻き消える。
そして。
「おお!シルフィールか!!」
一転して、笑顔を浮かべ扉を大きく開け放つ。
「お久しぶりです。グレイ叔父さん。む
そんな彼にむかってやはり笑顔で挨拶を返しているシルフィール。
「久しぶりだなぁ。いやいや、前きたときはまだまだ子供だったが。すっかり綺麗になって。
  とにかくよくきた。立ち話も……」
そこでふと、ようやくあたし達に気づき、目をとめて。
「…この人達は?」
たずねる言葉と瞳の色のは面白いまでにと不審の念が見え隠れしていたり。
シルフィールはあたし達のほうを振り向き。
「ああ。こちらはリナさん。そしてガウリイさん……」
あたし達の紹介をシルフィールが始めるのとほぼ同時。
「あら。どこかで見たことがある家だなぁ。とおもったら。それに、あなたグレイじゃない。
  ご子息のトラン君はどうなさったのかしら?まあとにかく久しぶりね。」
今さらながらに気づいて声をかけているナーガ。
そんなナーガに向かって。
「…??あ、あの?グレイ叔父さんを知ってるんですか?」
首をかしげて聞いているシルフィール。
ふと、グレイはナーガのほうに視線をむけ…
びしっ。
そして固まってたりするし。
「グ…グレイシア姫!?」
叫び、そしてハタ、と自分の口を押さえ。
そして……
「と…とにかく!こんなところでは何ですから。あがってください!話はそこで!」
いうなり、あたし達をそのまま、家の中にと押し込んでゆく。

バタン!
周囲を見渡し、人の気配が他にないことを確認し、ご丁寧に鍵までかけていたりする。
「ささっ!どうぞこちらに!」
そうして、家にとあげられたあたし達は、とりあえず客間にと通される。

「あら、マリア。久しぶりね。」
ふと、出てきた人物に話しかけているナーガ。
「まっ。まさかグレイシア様!?まあ。お懐かしゅう存じます!」
お茶を差し出しているのは、グレイの妻でもあるマリア。
ナーガの姿を確認し、驚愕の声を上げていたりするけども。
ちなみに、あたし達のことはっまたく気にしていないけど。
…ま、い~けどね♡
そして、ふと。
「あっ。こうしてはいられないわ!」
いいつつ、パタパタと、部屋の中から奥の部屋にと入ってゆくマリア。
「…あ~。こほん。ところで…シルフィール?
  グレイシア様はともかくとして、このほかの方々は?」
グレイが聞いてくる。
その言葉をうけ。
「あ、さっき説明の途中でしたね。叔父さん。こちらがリナ=インバースさん。
  で、こちらがガウリイ=ガブリエフ様。
  叔父さんもご存知とは思いますが、光の勇者の子孫様です。
  で、こちらがルナ=インバース様。
  こちらのリナさんのお姉様で、ゼフィーリアからやってこられています、赤の竜神騎士様です。」
あたし達を順次に指さして説明しゆくシルフィール。
―ブッ!!!!
「ス…スィーフィードナイトって……」
今マリアが出したお茶を口に含んでいたグレイは面白いまでにお茶を噴出して、
そしてむせこんでいたりする。
と。
「おおお!おぬし、いつぞやの魔法娘ではないか!」
横手からあたし達に向けられてくるちょっとしたダミ声。
その声に振り向いているシルフィールたち。
あたしは彼がいるのわかってたし、別に驚くこともないけども。
「…?」
その人物をみて、シルフィールが面白いまでに不思議そうな顔をする。
隣の部屋にと続く扉。
そこに一人の男性が立っていたりする。
人間などがたとえるところでいうならば、
暑苦しいほどの大柄でドワーフをそのまま大きく引き伸ばしたようながっちりとした体格。
ヒゲづらで、四十がらみのその男性…
ちなみに、あたしもルナもよく知ってる顔だったり♡
「あら。お父様!お久しぶりでございます!お元気そうで何よりですわ♡」
ナーガがそんな彼
…いうまでもなく、彼女の父親でもあるフィルにと向かって立ち上がり、近寄っていたりする。
「おお!グレイシア!会いたかったぞ!!」
ひしっ!
いって、ひしっ。とナーガにしがみつく。
「どれどれ。うんうん。ますます母さんに似てきたな。
  …おや、ずっとその母さんの形見の服をきてるのか?」
ナーガに話しかけているその男性。
「…え?…え?…ええぇぇ!?…えっと…グレイシア様のお父様…ということは……」
いまだに理解ができていないシルフィール。
「お久しぶりでございます。フィリオネル殿下。ご無沙汰しております。」
いいつつ、かるく頭を下げているルナ。
「ん?おおー!赤の竜神騎士スィーフィードナイトのルナ殿ではないか!!
  いや、こんなところで会うとは奇遇、奇遇。時に何でグレイシアとそこの魔法娘と一緒にいるんだ?」
いまだにナーガを抱きしめたまま、少し首をかしげ問いかけてくる。
そんな彼にむかってにっこりと微笑み。
「あら、それでしたらリナさんは私の妹ですので。」
…それも本当は恐れ多いことなんですけど…
そんなことを心で付け加えつつ、この男性…フィルにと説明しているルナ。
そんなルナの説明に。
「何と!そなた、赤の竜神騎士スィーフィードナイト殿の妹であったのか!?」
などと驚いているこのフィル。
フィリオネル=エル=ディ=セイルーン。
ナーガの父親であり、このセイルーンの第一王位継承者、その当人。
そんなフィルの様子に。
「…あ、あの?お知り合いですか?」
戸惑った様子でたずねているグレイ。
「うむ。以前少々な。それにルナ殿には何度か王宮にもきていただいている身であるしな。  この人達ならば信用してもよい人物だ。」
「……そうでしたか……」
そんなフィルの言葉に、グレイは大きく安堵のため息をつき。
がっくりと椅子にその身を預けていたりする。
「????あの??叔父さん?」
意味がわかっていないシルフィールがいぶかしりながら、不審な表情を浮べ。
「そのかたは…いったい??」
いいつつその視線でフィルを指し示していたりする。
聞かないほうがいいと思うけどね♡
「あ、ああ。この方はな。大きな声ではいえんがな。」
そんなシルフィールの質問をうけ、姿勢をただし、大きくはないがはっきりとした声で。
「実はこの御方こそ、フィリオネル=エル=ディ=セイルーン様。
  この聖王国セイルーンの第一王位継承者であらせられる。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「……え?」
しばらく意味をとりかね、一瞬無言になったのち、シルフィールが短い声を漏らす。
彼女はかすれた声で小さくつぶやき。
そして、一瞬の間をおき。
ギギギィ。
顔をぎこちない動作であたし達にとむけてくる。
「…おうぢ……さま?」
かすれる声のシルフィールに、沈痛な表情で。
「ですから夢みたいなことは忘れたほうがいい…とリナさんがいわれてたのですが……」
そんなことをいっているルナ。
やがて、その直後。
「…はうっ。」
短い言葉を残し、その場に失神していたりするシルフィール。
「あ、私が直します。」
そんなシルフィールに向かってすかさず手をかざしているルナ。
「う……ううぅん……」
ルナの柔らかな光をうけ、シルフィールはその直後に目を覚ます。
「ときにグレイシア?なかなか帰ってこなかったが、また道にでも迷っていたのか?」
フィルがナーガと話しつつ、
あたし達が座っている向かいのソファーに腰をかけつつナーガにと話しかけていたりする。
「ふっ。その通りよ。お父様。
  たまたまリナ達がここ(セイルーン)へくるっていうから。一緒に帰ってきたの。
  で、お爺様の具合は??」
フィルの横に座りつつ、フィルにと問いかけているナーガ。
そんな二人に対し。
「あの、ところでフィリオネル殿下?どうしてこんなところにおられるのですか?」
疑問に思ったことを問いかけているルナ。
…間違いなくエル様は、このフィリオネルがここにいるのがわかってて。
『家による』、といったのは間違いないですわね…
そんなことを思っていたりするけど。
あら、正解♡ルナ♡
そんなルナの質問に。
「おお。そうだったの。では、今度はこちらが説明するとしよう。」
ルナの言葉にもっともだ、という表情を浮べ。
フィルが簡単にあたし達にと説明を開始してゆく……


             -続くー


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あとがき:
薫:ちなみに、この回、2ページ半vv
  アメリア登場はもうちょっと先ですvではではv次回、エル様とルナが?(笑)です。
  ではvv


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