黒曜の宝石 ~黒幕と真実~
どうしてそこにヘルがいるのか。
確かヘルは死んだはずでは?
シルフィールの脳裏にそんなことが浮かぶが。
「なるほど。な。今回の一件はあんたの仕業か。ほとんど。」
そういいつつ、剣をチンと鞘に収めているガウリイ。
そんなガウリイの様子をみつつ、くすくすと笑い。
「人間にしては鋭いようだね。そ。まさか、ルシェールの中にある水竜王の力が計画の邪魔をするとは思わなかったけどね。
とっとと殺しておけばよかったよ。」
そういいつつすっと目を細めてそんなことを言っているヘルの姿。
あたりはすでに廃墟と化し。
あたりに生き物の気配ひとつすら見当たらず。
あるとすれば。
そこに転がっている何ともいえない不気味な肉の塊のような物体と。
そして。
人の姿はかろうじて保っているものの。
その体のいたるところから無数のまるで触手のようなものをはやしている、かつてのカイル神官長の姿。
いったい全体何がどうなっているのか、シルフィールにはわからない。
たしか、自分は北のサイラーグの神殿にそこの神官長が何か今回の一件にかかわりがある。
そうめぼしをつけて忍び込んだ。
そこまでは-そう、覚えている。
それから先はまるで霞がかかったかのように思い出せない。
覚えているのはそれが現実なのかどうなのか。
目の前でガウリイに斬られて塵と化していったルシェールの姿。
そこに死体でもあればそれが現実だとシルフィールにももう一度確信がもてるであろうが。
そんなものは皆無。
なぜかけだるい体をゆっくりと起き上がらせつつ。
目の前にいる、ヘルをしばし呆然と見つめるシルフィール。
「…ヘル、お姉…さん?」
ゆっくりとそう話しかけるその声に。
くすりと笑みを浮かべつつ。
「まったく、せっかくここまで舞台をそろえたのに。人間の親子の愛情は理解しがたいよね。
自分を犠牲にしても子供を助ける。だなんて。ルシェールが馬鹿なことをしなかったら、シルフィール。
君は新たなお父様のいい依り代だったのに。」
ときどきヘルの感情とかが高まったときに男の子口調になることはあったが。
だがしかし、今あきらかに間違いなく目の前にいるのはヘルであろう。
その口から発せられているその声は。
シルフィールが知っているヘルの声ではない。
「ま、オレにも理解しがたいがな。何しろオレの親はオレを殺そうとしていた。そんなやつらだったからな。」
ガウリイには両親の愛情。
そんなものを受けた思い出はない。
いや、それより、実の母親ですら彼を殺そうとしていた。というのが現実。
少なくとも、彼を愛してくれたのは、今はなき祖母のみ。
そんな環境で育っているからなのか、はたまた伝説の剣を受け継いでいる一族であるがゆえに、頻発するお家騒動。
幾度一族が魔と契約などを交わし、栄華を極めようとしたことか。
そのたびにその契約を破棄、否壊していたのもまた彼らの一族が伝えていた光の剣。
どうしてそれが魔と契約を結んだものを滅ぼせるのか。
などといったことはわからないが。
そう、一族の誰もがわかってはいないのだ。
これがいったい何なのか、ということを。
淡々とそんなことをいっているガウリイの言葉に思わず目を丸くする。
今、このガウリイ様は、何といった?
―親が子供を殺そうとしていた。そういわなかったか?
そんなこと、今まで聞いたことも…ない。
「―しかし、あんた。力ある魔族だな。あんたその死体。まるで生きているように操っているじゃないか。
見たところその体の持ち主はもうかなり前にしんでるんじゃないのか?」
そういいつつヘルを見ていっているガウリイのその言葉に。
「へぇ。君、できるね。」
すっと目を細めてガウリイをみているヘル。
一目みただけで死体を遠くから、その力で操っている。というのを見抜くなど、普通の人間には不可能。
「普通わからないよ。というかこの子が死んで、
今までこの僕がこの死体をまるで生きているように、魂もすべても操っていた事実に気づいたのは誰もいなかったよ。」
「普通わかるだろ。それに少なくとも人間からは微量たりとも、そんな瘴気はでていないからな。」
あきれたようにきっぱりと言い切っているガウリイ。
「???」
そんなヘルとガウリイの会話をききつつも。
シルフィールには何が何だかまったく意味がわからない。
「-へえ。きみなかなかやるね。人間にしてはおしいね。だからか、ゴルンノヴァが君を選んでいる理由は。」
そういってガウリイの腰にある剣をちらりと具間みているヘル。
「まあ、これがあんたらに近いものだってことはわかってるからな。」
―だから、これをもって家を飛び出した。
というのも理由のひとつ。
まったく意味不明の会話をしているそんな二人に。
「…ヘルお姉さん?いったい……」
つぶやきにもにたシルフィールの声がふと漏れる。
そんなシルフィールをちらりとみて。
「まったく、数年かかった計画もルシェールのおかげでだいなしだよ。
―せっかく、北と東、二つの血筋で封印されてたお父様の魔力。それが復活した、というのに。」
しみじみと腕をくみそんなことをいっているヘルに。
「?」
その言葉に首をかしげているシルフィール。
「ああ、そういえば君はしらなかったんだっけ?シルフィール?
君、今までこの町の人々がその血筋のものが生まれたら闇にと葬っていた、二つの町の血の。
つまりは二つの神官長の家系の直系だっていうこと。
君は自分の母親はエミーリアと思ってたようだけど、本当の君の母親はルシェールだよ。
二人とそしてエルクが共犯で、君の存在を人々から守るためにつくった嘘。
もしかして今の今まで本当に気づかなかったの?君とルシェール、そんなにそっくりなのに?ふふ♡」
「―!?」
いきなりのその言葉をきき思わず声を詰まらせる。
「何を馬鹿な!?」
そういいかけるシルフィールに。
「人間って目の前にあるものしか認めないよね。
ま、いいさ。ルシェールがその身をもって封印したのは魔王様の意識のかけら。
君の中にはまだ魔王様の魔力、のこってるし。これからまた違う作戦でもたてるよ。あ、シルバート。
も、好きにしてもいいよ。そのほうが逆にこの子が意識を呼び寄せる可能性あるから。」
それだけ言い放ち、くすくすと笑いつつ。
ふわりとヘルの体が上空にと浮かび。
「とりあえず、『しばらくはたのしかったわよ。シルフィール。』」
くすくすくす。
今までとは違うヘルとしての口調でくすくすわらいつつそんなせりふが頭上から語られる。
そのまま、ぶわりと。
その体が一瞬、闇にと覆われ。
そして、彼女の体から突き抜けるほどに出現する巨大な天を貫く黒い光。
いったい全体、何がどうなっているのかまったくもって理解不能。
いまだに先ほどの言葉が信じられなく呆然としているシルフィールの前で。
くすくす笑いつつ、やがて、ヘルの体は闇にと解け消えるように。
その場から掻き消え。
後にのこるは、彼女の横のカイル神官長とガウリイの姿のみ。
やがてあたりから闇が掻き消えると同時に。
「さて、ヘルマスター様の許可が下りたことでもあるし。この地の封印をとくこと、それが私の使命。」
そう言い放ち。
ルォォン!
空にむかって一声いななくカイル。
それと同時に。
見た目はそのまま人のままである。というのに。
カイルから感じられるのはすざましいまでのプレッシャー。
「なるほど。その人間にとりついて、そして魔力を増幅させる。―それが貴様の能力か。魔獣ザナッファー、『シルバート』。」
そんな様子をみつつふっと笑みを漏らしているガウリイ。
「-へえ。さすがはガブリエフの一族。ゴルンノヴァを受け継いでいる一族のことはあるね。
そ、僕がシルバート。五人いたザナッファーの中で人々を取り込む役目をおっていた、
もっとも、僕たちが誕生するきっかけとなったのは、もともと赤瞳の魔王様を復活させるための手段の一つだったんだけどね。」
そういいつつ、お尻から生えている棘のついた十本の銀色に輝く尾をゆっくりと自らの腰にまき。
その細い尾はまるで編みこまれたようになり、腰にあるベルトのような形態をとる。
「僕の、いや僕たちの復活にはどうしても君の一族の血が必要だったし。―そのあたりでいうなら、あのラグルはいい人間だったよ。」
自らの欲望のために自分がいったい何をしているのか。
まったくもって理解してなかったあの人物。
自分がただ、魔獣を、そして魔王を復活させるだけのこまにされていた。
とは彼はまったくもって気づくことなく。
ただ、力を求めて、この地にあったかつて先祖がかけた封印をほどき。
そして、古の人々がその血筋で封印していた魔王の意識の欠片の封印。
最後のひとつを解き放った。
「でも、ま、あのルシェールが自らの身と引き換えに滅ぼしたのは、ほんの魔王様の意識の一部。
―知ってるかい?シルフィール?二つの血筋を受け継ぎしものよ。魔王さまの復活に必要なのはね。
かつて封印を施した二つの一族の血肉。
この地には以前魔王様が七つに分断されるより少し前、あのかたが封じていた精神体の一部のそのものが眠っているんだよ。
―そして、町、という形をとりそれはこの地に封印されている。
裏を返せば町さえ壊せば、力のバランスが崩れ。ほかに人の心にと封印された魔王様の欠片、それが目覚めやすくなるんだよ。
まあ、君には最後の最後でルシェールがさらに封印を強める何かの術をかけたようだからねぇ。
いくら僕やそして冥王様でも水竜王の力の封印を解くことは不可能だけどね。
―でもそれ以上の力が目覚めれば。君は選択の余地なく、君も魔王様の力の一部と成り果てる、という事実があるんだよね。」
くすくすくすくす。
完全に楽しんでいるようなその口調に。
「何を馬鹿な!?」
いきなりそんなさきほどから信じられないようなことを続けて聞いているシルフィールには。
そう答えるより方法はない、といっても過言ではないであろう。
「―信じる、信じないは君の勝手。
だけどあくまで僕たちが作られた目的。それはあくまでも魔王様の復活、そして目覚め。
そのためには器となる可能性がある君を殺すわけにはいかないからね。何しろ君は封印をとく鍵だから。」
そういいつつすっと横にと手を伸ばす。
みればいつのまにかガウリイもまた剣を抜き放ち。
すでに光の剣モードで構えていたりする。
「へえ?邪魔するき?僕がこの地を破壊するのを?」
そう問いかけるカイルのその言葉に。
「一応身内の不始末なんでね。」
あくまでも別にどうでもいいが、という口調で言い放っているガウリイ。
「―君もご苦労だね。君も誘いがあるんだろうに。いっそのこと、どうして魔に入らないのさ。」
「ばあちゃんの遺言なんでね。」
唯一自分をかわいがってくれていた祖母。
人の心は捨ててはだめよ。―苦しくても。
その言葉とおりに、いくら魔から勧誘があろうとも、命を狙われても。
人であることをやめようとしていないこのガウリイ。
「―…人間って不便だね。そんな形のない約束にとらわれて。
――今、この僕がその定めを断ち切ってあげるよ。ついでにあの目障りなフラグーンも消滅させたいし。」
そういいつついまいましくその視線の先にあるフラグーンにと視線を移すカイル。
人にと寄生している状態のそれ、シルバートとて。
自らを形づくっている瘴気そものもともいえる精神体。
それをこの間にも耐えることなくフラグーンは彼より瘴気を奪い取っている。
近くに枝があったそれは先ほどの衝撃派で。
あたりというかフラグーンの片側はすでにただの木の枝のみ。と化していたりするが。
その状態を復活させようとして樹がさらなる栄養を求めているのだ。
「もっとも、とりあえず、先にこの地を破壊するのが先決だけどね。」
それだけいいつつ。
そのままゆらり。
その場より掻き消えるカイル。
「…い、いったい…」
いったい全体、何がとうなっているのか。
理解ができない。
つぶやくシルフィールに。
「どうやらあいつはあっちの町に移動したようだな。」
すっと森の反対側、そちらにと目をやるガウリイの姿が。
すでに人の気配も何もない廃墟というか瓦礫の山、そんな空間に、二人してたたずんでいるのみ。
ドォォン!!!!
それはいきなりの出来事。
「何だ!?」
先ほど何かすざましい衝撃派ともいえる風が吹き荒れたばかり。
いったい全体、何が起こっているのか。
人々が家々の外に飛び出してそして目にしたものは。
風でおそらく吹き飛んだのであろう木々に。
家々の瓦など。
そして。
「あ…あれ……」
誰ともなく空を見上げそこにたたずむひとつの影を目の当たりにする。
その体は太陽の光を浴びて銀色にと輝き。
そして無数にその体より伸びている触手のようなもの。
大地に足をつけている人々からは完全には見えないが。
それが、人ではないのは明らか。
一人がその姿をみとめ。
そらを指差し。
そして、次々に人々は町の上空にいるそれに気づき。
空を見上げてゆく。
ちょうど逆光になっているので完全には姿はみえない。
見えないが、本能がそれは危険だ。
と全員が全員ともその身に危険を感じ取る。
感じ取るが、ただただ唖然とその空中にと浮かぶその影を、見上げている町の人々。
-と。
すっと、そのおそらく手、なのであろう。
その手が、町の一箇所にと振り下ろされたその直後。
カッ!!!!
ドゴガァァァン!!!!
空中にたたずむ影から白光をする光の筋が伸びてきたかと思うと。
町の一角をその光は直撃し。
次の瞬間、町の中に満ちる爆音と、そして衝撃派。
そして、立ち込める煙の多さ。
人々がそれに攻撃された、と気づくのは一瞬の時間を要し。
『ぎゃぁぁぁぁ!?』
『うどわぁぁぁぁ!?』
『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
町は一瞬のうちに悲鳴と混乱にとあふれかえってゆく。
人々が目にしたものは。
先ほどまであった町並みが。
一瞬のうちに、その延びてきた光の筋らしきものに直撃され。
破壊、消滅させられた。
という何とも信じられない出来事。
「あれは!?まさか!?」
文献にてその姿形は知っている。
いや、この地に住まうものならばほとんどのものが知っているであろう。
古の、といっても百年ばかり前、この地を滅ぼしたといわれている、魔獣、ザナッファー。
その姿は町のいたるところなどの神殿などにかつての惨劇を忘れぬよう、
そして、勇者の恵みを忘れぬように絵として主だった場所には描かれている。
目の前に浮かぶそれは-まさに、光の勇者が退治している、古の魔獣、ザナッファー。
その姿形にまったくほとんど酷似している。
朝になっても起きてこないシルフィールを心配し、部屋にといっていたエルク。
だがしかし部屋はもぬけの空。
あわててルシェールの部屋にいってもそちらも空。
いったい二人して、どこに!?
とあわてて二人を探し始めようと外にでた矢先の出来事。
空を見上げるエルクの目にはいったものは。
かつて滅ぼされたはずの、間違いようもない空にと浮かぶ魔獣ザナッファー。
キュドドド!!
あたりかまわずに上空から、町に……光の雨が貫いてゆく。
「おー。派手にやったなぁ。」
みればほとんどすでに町並みはなきに等しく。
あたりに満ちるは混乱とそして嗚咽、そして悲鳴の声のみ。
「な゛!?」
自分を無視して走り始めたガウリイの後をただ夢中で追いかけてきたシルフィールの目にはいったものは。
確かにここは自分が生まれ育った町。
町並み、昨日まで通りを子供などの笑い声が満ち溢れていた。
だがしかし。
あたりの家々からは炎が立ち上り。
せっかくの天気だというのに空は家々が燃える煙でどんよりと曇っている。
そして。
石を敷き詰めてある道もまた、何かの衝撃をうけたのか。
石がひっくりかえったり。
と足場すらもかなり怪しくなっている。
「…そんな。」
今の現実の現状と、昨日までの風景。
見比べるまでもなく、今この町がどんな状態に置かれているのかは一目瞭然。
それでなくても、いったい全体何が原因でああなったのか。
―北のサイラーグの町はもはやもう誰も生きているものなどはなく。
完全に廃墟、というよりは瓦礫の山と化している状態。
それもたったの一時の間に。
いったい自分が気を失っている間に何があったのか。
シルフィールはわからない。
さきほどカイル神官長の姿をした何かがいったことが真実とは到底思えない。
これはきっと悪い夢、夢よ。
そう言い聞かせていたシルフィールにさらに追いうちをかけるこの惨状。
その場に思わずぺたんと座り込み。
「―はっ!お父様!ルシェールさん!?」
さきほどみたあれが、ルシェールが塵と化したあの光景は、きっと悪い夢。
そう思い直し、ふと二人のことを思い出しあわてて立ち上がり。
神殿があるほうにと駆け出してゆくシルフィール。
いきなり突然に、目の前でしかもほとんどシルフィールの意識はなきに等しい。
そんな状況で、目覚めたときにルシェールがガウリイに斬られるところを目撃しては。
まあ信じたくない気持ちはわからなくもないが。
「ずいぶんと派手にやってるな。シルバート。」
あきれた口調で空に向かって問いかけるガウリイに。
「とりあえず、近づいたらこの身から私はあれに吸収されてしまうからね。
―いまいましい、竜族のもたらした樹だよ。まったくあれは。
あれを完全に破壊しておいてから、君の相手をしてあげよう。―かつての屈辱を晴らすためにも…ね。」
そんなガウリイにちらりと一瞥をくれ。
そのまま大地に向けて光の雨を降らせてゆく元カイル神官長の姿が。
ここ、サイラーグシティ、東の町の上空にて見受けられてゆく。
「お父さま!?…な゛!?」
しるフィールが目にしたものは、神殿の半分は完全に壊れ。
そこらに転がる瓦礫の山。
「お父様!?」
だっ!
あわてて、神殿のそばにある家にと向かってゆくシルフィール。
すでにそこには避難してきた町の人々でごった返し。
怪我をおっているものは多数。
そして、横たわっているものの横でないているもの多数。
そして。
「―こっちににも回復を!」
「いやまて!これは!」
などといいつつ、自らも包帯をまきつつ。
翻弄している神官や巫女、そして魔道士、といった人々の姿が。
在住している駐屯兵や、そしてこの町が雇っている警備兵といった人々は。
人々の避難とそして、消火活動などにと追われている。
ばたばたばた。
「おお、シルフィール!無事だったか!とにかく今は詳しく話している暇はない!お前も手伝ってくれ!」
自らも頭に包帯をまき。
怪我人たちにと回復呪文などをかけて回っているシルフィールの父親、エルク。
そんな姿をざわめく人々の中にみつけ。
シルフィールの姿に気づいたエルクがあわててシルフィールの横にとかけよってきて、彼女の肩にとぽんと手をおく。
「いったい!?」
いくらなんでもこの惨状は。
あたりにはすでに死臭とそしてなにともいえない血の特有のにおいが立ち込めている。
そして何かが燃えるようなにおいと、そして、まるでかんきつ類を燃やしたような何ともいえない匂いすらあたりに充満していたりする。
―わが子、家族が死んだことが納得できずにすがってないている人々。
そして。
あたりに響くのは子供や大人たちの嗚咽の混じった鳴き声。
「わからん。いきなり攻撃がされてきた。 しかも-あれは。」
エルクがいいかけたその矢先。
「誰かが封印をといたのよ!ザナッファーの!」
誰ともわからないかなきり声が響き行く。
そうとしかかんがえられない。
肉体は滅ぼしたものの思念は残っている。
その伝説はこの町に住むものならば知らないものはいない。
そして、その思念はフラグーンのどこかに封印されているらしい。
ということもまた町ではうわさにはならないものの誰でもしっているトップシークレット。
だからこそ、大人たちはフラグーンに近寄るな。
そう子供たちにと言い聞かせ、育てる。
「ちょっと!?あれって、まさか…カイル神官長じゃないの!?」
ふと煙の間より太陽の光が空中にたたずむその影をてらし。
地上にいる人々にもくっきりとその姿を浮かび上がらせる。
確かに姿形はカイル神官長。北のサイラーグシティの。
だが、その体より生えている無数の触手に、そして後ろに生えている数本の尾らしきもの。
「…カイル神官長が封印をといた張本人…」
誰ともなくつぶやいた、そんなつぶやきがあたりを支配してゆく。
ゴォォォ・・・・。
その手より炎のようなそれでいて異なる何かが放出され。
それはそのままフラグーンの木々をそぎ取ってゆく。
「とりあえず、あんたにはこれ以上好き勝手させるわけにもいかないからな。悪いが、とっととカタをつけさせてもらうぞ?」
しばらく相手の出方をみていたものの。
どうやらこのままほうっておいても別にいいのだが。
一応は身内が呼び覚ましてしまったもの。
カタをつけるのがまあ人の道、というものだろうしな。
などとおもいつつ。
すっと上空に浮かぶカイルにと青い光の刃を突きつける。
といっても刃で上空にいる彼を指し示している、というような格好にガウリイはなっているのだが。
「できるかな?この私は以前とは違い。まだこの人間、カイルの意志はあるんだが?」
つまりは自分を殺すこと、すなわちカイルの命も絶つこと。
その声は、町の人々の間に深くまるで響くようにと届き行く。
いったい全体あれは誰にむかっていっているのか。
普通ならばその相手を探しに野次馬などができるところではあるが。
今このとき、そんな余裕があるものなどは一人たりとて存在しない。
「―それがどうした?別に関係ないさ。ともかくオレはあんたを消滅させる。それ以外はどうなろうとしったことじゃないな。」
あっさりときっぱりとそういいきられ。
「な゛!?貴様!?この人間を殺して、我を消滅させる!というのか!?貴様それでも光の勇者の末裔か!?」
などといった声が空より一箇所めがけて振りそぐ。
「好きで生まれたわけじゃない。―それに、これは。普通の、剣、というか生き物だってあんたもしってるんだろうが?」
まったく周りを気にせずに淡々と話しかけているガウリイ。
「降りてこい。でないと、こっちから…いくぞ?」
その声と同時に。
すっと剣を構え。
そのまま力をいれて一気にそれを押し出す。
と同時に。
剣の先に光が伸びてゆき。
その青い光はそのまま一直線にとカイルめがけて進んでゆく。
「きさま!?本気か!?― 先ほどもそうだ!
赤瞳の魔王の意識を自らの体に閉じ込めた、ルシェール巫女頭代理をあっさりと切り捨てたのは!?」
「「な゛!?」」
あまりのその上空から聞こえてくる内容のその言葉に。
町の人々は思わず言葉を失ってゆく。
「別にそれがどうした?―いくぞ。ゴル。」
あっさりとそんなカイル、否シルバートの言葉を受け流し。
そのまま剣を構えなおしているガウリイの姿が。
町の広場の一角にて見受けられていたりするが。
「― 貴様、それでも人間か!?」
「おまえにはいわれたくないね。それに、オレ以外のものがどうなろうと知ったことじゃないからな。
貴様を滅ぼすのはまあ一応身内がやった後始末。それだけのことだ。」
淡々とそんなシルバートにむかって語りかけるガウリイ。
「― くっ!」
カイルの魂と自我、それを人質にガウリイに攻撃をさせないままに、彼を葬ろうと画策していたシルバートにとって。
それは、おおきな誤算以外の何ものでもなく。
空中に浮かんでいたその体を。
ゆっくりとガウリイの目の前にと降り立たせてゆくのであった。
シルバートとガウリイ。
否、ザナッファーと光の勇者の末裔。
今、まさに百年前の戦いがここサイラーグの町にて。
再見されようとしているのであった。
-続くー
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####################################
まえがき:
こんにちわ。
うーん。この宝石のエピローグ。
どれでしめよっかなぁ・・・・。
などと悩み中。(まてこら)
シルフィールがガウリイと再開したところにするか。
その場合はこちらは小説版となってますのでリナ登場です(こらまて)
それとも、巫女頭を継いだところにするか(だからまて)
ま、誰かの意見があったらそれできめよう。うん。
とりあえず、黄昏の夜明けは今のところ十対0で、しない。
に決定しそうだけどね(だからここで発表すなって・・・笑)
何はともあれ、いくのですv
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あとがきもどき:
薫:・・・・・・・・・・・ガウリイ、すさみすぎ・・・・。
・・・・・一応、今のガウリイ、冷徹以外の何ものでもありません・・・・。
でもまあ、一応あくまでもこの話の主人公はシルフィール。
多分あまりガウリイのことには深くふれない・・・・かな?(そーか?)
何はともあれ、次回。
滅び行く魔獣、そしてガウリイが町の救世主扱いに。
ですね。
ちなみにルシェールは魔王をその身を挺して封印した。
と勝手にシルバートの話を聞いていた町の人々が判断して。
彼女を巫女神としてたたえたりしていきます。
シルフィールは、父から母親がルシェールであったことを聞き。
そして、ガウリイ、町を立ち去り、そーしてシルフィール、
ルシェールの葬儀がおわって巫女頭、正式に就任。ですね。
あともーすこしぃぃv
まあ、何はともあれもうすこぉぉぉしこんな駄文にお付き合いくださいませv
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