黒曜の宝石    ~新たな出会い、そして・・・~



「うーん。簡易的ではあるけど、どうやらこれ、成功してるみたいだね。」
セルシウスと共同開発したとある品物。
とはいえ、彼、アレクはどちらかといえば魔法とかは好きではない。
何しろそのせいで父は死んだも同然だからして。
だがしかし、魔法などを利用した道具を作るのは彼の趣味でもあり。
後は様々な怪しい薬なども彼はよく作り出していたりする。
俗にいう魔法薬品。ともいえるような代物を。
範囲は十分。
少しばかりレグレスバンの仕組みを改良しそして空気中にある微弱たる電気を利用し、声を電波にみたてて開発したとある装置。
それを実はこの城、ディルスの王城。
王城を取り囲むようにして聖六芒星の位置にその装置を配置し。
そして何となく研究で集めた賢者の石、それを細かく砕き濃縮した石を媒体に。
シルフィールの胸元の石と連動させていたりする。
城を一瞬淡い光が多い尽くす。
青白い光というべきなのか。
城と、そしてここ、謁見室。
二つ重ねのさすがの聖なる魔法陣にはいくらたとえ魔族といえども居心地がよいはずもない。
そもそも魔というものは本質的にはこの物質世界にいないはずのものが。
その力で無理やりに具現化しているという代物。
亜魔族などと呼ばれるレッサーデーモンなどは小動物の体などを媒介にしているがゆえに、そのような問題はあまりないのだが。
いかんせん、ある程度の力があるものからは自力で具現化していたりする。
それゆえに歪みを直す役割がある聖六芒星の中ではある程度その実力にも応じるが。
極端に彼らの力は激減する。
そして―。
目の前にいる魔族、ネクロミドにとってもそれは例外ではない。


「きゃぁぁぁぁ!」
周りが悲鳴で満ち溢れる。
つい先刻まで同僚として過ごしていた人物が、いきなり異形とかせば驚くというのが普通である。
しかも。
ここだけではなく城全体でそのような悲鳴が巻き起こる。
今や、ここディルス王城は。
悲鳴と混乱にあふれかえっていたりする。


アレクにいわれ半身半疑ではあったものの。
こうして術により異形と化す様を目の当たりにすれば、それはやはり認めざるを得ない。
目の前にいるネクロミドの体がどろりと変化を始めてゆく。
その肉はぼたぼたと腐ったにおいを振りまきながら。
床にと滴り落ちてゆく。
そしてその下から見えるのは白い何か。
「き…貴様、人間の風情で!」
シルフィールが今放ったこの術は【場の力】を正常の状態にと返還させる術。
大概、ある程度の術などは何かしらの歪みを発生させて出現させるもの。
そしてそれは。
彼ら、魔にもそのとおりにあてはまる。
耳元まですでに裂けた口をぐわっと赤く開き、術を放ったシルフィールめがけて突っ込んでゆくネクロミド。
彼としてはこの王室に取り入っていずれは国王をも操って。
人間世界に混乱を招くように。
という命を受けているのである。
それを邪魔するものは容赦などはしない。
だがしかし、目の前にいるたったの一人の女の子の手により、その計画は今や風前のともし火。
ならば。
せめてこのままでは物質干渉力がなくなるのは目に見えている。
その前にせめてこの子供たちだけでも!
そう思い立ち、そこにたっているセルの格好をしているアレクとシルフィールにと向かってゆくネクロミド。
「ただではころさん、まずは貴様らは俺の手足として!」
などといいつつすでにもはや短なるホネとそしてなぜか、その腕が四本ある姿となっているネクロミドは。
一番近くにいたシルフィールにと突っかかってゆき。
「きゃぁ!」
その四つの手のうちのひとつから何かの塊らしきものがシルフィールに向かって投げられる。
にやり。
これでもうあの巫女見習いは我が意思のまま。
勝利を確信し笑みを浮かべるネクロミドのその瞳に。

パキィィィン…

まるで何かにはじかれるようにして掻き消えてゆくその塊。

「ナ゛!?」
思わず絶句するネクロミドに。
「いまだよ!シルフィールちゃん!」
「はい!」
アレクの言葉にどうにか立ち直り震える声を押してカオスワーズを唱え始める。
そして。
「ラティルト!」
一時もしないうちにシルフィールの術が完成し。
そのままシルフィールの放った青白い炎がネクロミドの体を包み込んでゆく。

まさか、まさかそんなはずはない。
普通ならば今放ったあれを防ぐことなどはできはしない。
たかが弱い人間の精神力では。
-そう、普通では。
あれは精神を崩壊させるその直前の彼らがよく人形とするのに用いる術。
それをひとたび受ければもはや術者の操り人形とどんな人間であろうと貸してゆく。
― そう、普通ならば。
だが、それは確かに少女の精神を蝕もうとしたその瞬間。
何かにはじかれ…そして、消えた。
「まさか!?」
ひとつだけ可能性がある。
それは。
「ひっ!おま…から…ま…さ…ま…」
ざらっ。
何をいっているのかわからない言葉を叫びつつ。
シルフィールのほうにと手を伸ばし。
そのままそのネクロミドの姿は塵と化してゆく。


「国王!城中で異形の魔が暴れています!って!ああ!アレクどの!?まさかこれは貴殿の仕業か!?」
そこにいるアレクに気づきそんなことをいっている駆け込んできた兵士の一人。
「ひどいなぁ。僕はただ、この城の中に潜入していた魔を。あぶりだしただけだよ。このシルフィールちゃんの協力の元ね。
   さすがにサイラーグ、時期巫女頭というだけのことはあって、シルフィールちゃんの実力は折り紙つきだからね。」
アレクが何かの実験でいろいろなことをしているのはもはや城中、そして町中でも、知らないものはいない。
それゆえに彼を変人扱いしている頭の固い人間などもいたりする。
「このたびのことはこのアレクの協力もあって判明したこと。
  我が城の中にあまたの魔が入り込んでいたらしい。気づけなかった我が不覚。ともかく!
   今のアレク殿たちの活躍で今一時、この城の中に入り込んでいる魔は力の安定を失い異形と化している!全員戦闘配備!」
『な゛!?は!わかりました!』
まさかそんな馬鹿な。
といいたいが、事実城のあちこちで今は異形の生き物が破壊活動などをしている真っ最中。
国王の言うことが事実だと信じたくはないが信じざるを得ない状況。



「エルメキア・ランス!ブレイク!」
チュドド!
あたりに青白い閃光の槍がほとばしる。
「まったく、キリがないというか。」
彼、セルシウスが後宮に巣くっていた魔をあぶりだすのとほぼ同時に。
アレクの方も仕掛けたらしく。
女官などが驚愕しているそんな中。
あたりところかまわずに出てくる出てくる、異形の存在。
それでも今の崩魔陣(フロウブレイク)の関係で相手の力が減っていることと。
そして自分はアレクから渡されている魔力増幅機能があるかもしれない。
というよくわかならい怪しいアイテムによる効力なのか。
術の影響もなくスムーズに相手を撃退できていたりする。
「しっかし…どうしてここまで魔がはいりこんでて、誰もきづかないんだぁぁぁあ!?」
一人、絶叫を上げているセルシウスの声が。

内殿の広い渡り廊下にて。
しばらくの間響き渡ってゆく……




しばらくの間。
ディルス王城は殺伐とした混乱した光景が繰り広げられてゆく。





「何の用?無用なものは滅しなさい。」
せめて人質でもとり、あれを殺さねば。
精神の一部を切り離し、せめてアレクを亡き者とし。
そして主にあのことを知らせねば。
そう思いアレクの実家にと移動してきているネクロミド。
だがしかし。
そんな彼の目の前にどこか聞き覚えのあるような声が耳にと届く。
「ふふ。ご苦労様。とりあえずこれで。シルフィールの中に魔王様の欠片があるのは明白。もう用はないから。」
くすり。
そう笑う声がすると同時に。
ふと振り向けば。
そのまま。
パチン。
何かを鳴らす音がひとつ。
彼が最後に見た光景は。
にっこりと微笑んでいる・・・主である冥王によく似た少女の姿。
それだけであった。
一声もなく少女……ヘルが指を鳴らしただけでそのままネクロミドは滅してゆく。




「―え?私がスィーフィード・ナイト様のご案内を?」
かつてこの国、しかも王室に魔が入り込んだことがあった。
そしてそれを救ったのは旅にちょうどたまたまきていたサイラーグの見習い巫女。
そして…
「そう。シルフィールちゃんもそろそろ雑用ばかりじゃ飽きたでしょ?
   そういえばスィーフィード・ナイト様、妹を連れてくるとかいってたから。
   年頃は確かシルフィールちゃんより二つしたとかいってなかったっけ?」
シルフィール、ただいま五歳。
あれから一年。
結局のところ帰りたくない。
というシルフィールの意向をうけて、巫女の修行、と称して、ここ、ディルスでお世話になっているシルフィール。
一応家には連絡してあるがゆえに。
巫女見習いとしてここディルスにと勤めているシルフィール。
といってもまだ幼女であるがゆえにほとんど見習いというか雑用であるが。
「-ぎくっ。」
その言葉に横にいた書類をもっていたヘルが思わずびくりとする。
冗談ではない。
間違いなくあんなものと出会ったらしたら。
それこそ自分がいったい何なのか正体は完全に知られてしまう。
ヘルの記憶とそして魂。
それを模写して人格を形成しているのはほかならぬ、【彼】自身に他ならない。
「あ、そういえばシルフィール、私一度サイラーグに戻ってくるわ。」
とりあえず前々から一度は戻ってはどうか。
という意見は大人たちの間から出ていたこともあり。
さりげなく話題を振るヘル。
「ええ?ヘルお姉ちゃんも一緒に行事に参加してくれないの?」
もうすぐ慰霊祭が行われる。
かつてのカタート侵攻にて命を落とした者たちの。
そのこともあり、今うわさの赤の竜神の騎士を。
ディルス王室お抱えの一人の賢者が少女を招待したのである。
「シルフィール、こういった行事はそのうちに、あなたは一人でしなければいけないんだから。早いけどちょうどいい機会よ。」
さらりと何とも回りが怪しまない言葉をいい、シルフィールを言い含める。
「ま、確かにそれは一理あるかもしれないね。シルフィールちゃん、いろいろと見聞するのもこれからの役にたつよ?
  それに、自分たちからは家族に連絡とってないんでしょ?」
「う゛っ…」
手紙を書くのも何となくいやだった。
それゆえに代理にセルやアレクに頼んで書いてもらったのだ。
しばらくここディルスで厄介になる…と。
「じゃ、決まりね。早いほうがいいから。私は明日の朝早くに出かけるから。」
「ええええ!そんな!ヘルお姉ちゃん!」
ぱたぱたと手をふりつつ退室してゆくヘルをみて思わず叫んでいるシルフィール。
「それじゃ、シルフィールちゃんは儀式とかの練習してみる?」
「えええええ!?」
どちらかといえば堅苦しいことは苦手なシルフィールは。
にっこりと笑う王室お抱えでもある四人の賢者の一人の女性の言葉に。
目を見開いて驚きの声を上げてゆく。



「ねーちゃん。だからってこれはないんじゃないのぉ~……」
べそをかいている少女が一人。
だがしかし。
「はい。文句を言わない。そのまま姿勢でついてきなさい。」
「はひ……」
ふよふよとある程度浮かんだまましかも歩く姿勢で。
道を歩いている一人の少女。
その目の前をいく黒髪の少女が一人。
浮遊の術を維持したまま普通道理に歩くのはかなりの集中力と、そして精神が必要。
そして。
それだけでなく。
ビュン!
「うきゃぁぁぁぁ!?」
青空に栗色の髪のまだ幼い少女の悲鳴がこだまする。
どうにか浮遊の術を保っている少女の周りにいきなり飛んでくる無数のなぜか風の刃が。
「ほら。リナ、きちんとこれくらいよけなさい!」
「ねーちゃぁぁぁぁぁん!」
それでなくても術を保ったまま姉についてゆくのが精一杯。
にもかかわらず、いきなり不意打ちのようにナイフが飛んできたり、
または石がはっきりいって目にも留まらない速さで飛んできたり。
それを交わしつつの旅の最中。
「リィナ♡まさかこれくらいで根をあげるように私は育ててるつもりはないわよ?」
髪をおかっぱにしている少女が浮いている少女をみつつにっこりと笑う。
「はひ。」
目の前にいる姉に逆らえばどういったことになるのか。
まだ二歳になって間もない少女はよく身にしみてわかっている。
わかっているからこそ。
「はい。とりあえず次の町までに完全にその飛行術をマスターすること
♡」
しくしくしく。
「わかった……」
もはや逆らうことは不可能とあきらめ。
とにかく死なないようにがんばるしかない。
と幼いながらに思いつつ道中を姉と一緒に目的地、ディルスにと向かう二人の姉妹の姿が。
とある街道の一角で見受けられ。

「この旅の中でしっかりとリナを鍛えないとね。」
そんなことをいいつつ。
妹の特訓をしつつ招待されたディルスにと向かう少女の姿が。
少女の名前をルナ。
ルナ=インバース。
ゼフィーリアに誕生したという、伝説の赤の竜神の力を宿しているという、
通称、赤の竜神の騎士(スィーフィード・ナイト)その当人。
そして、その妹のリナ。
リナ=インバース。
よくもまあ、まだ七歳と二歳の娘を二人だけで旅にだす家族も家族であるが。
とりあえずルナとリナ。
二人の旅は今始まったばかり。



                                      -続くー

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まえがき:

  何があったのか詳しく触れないままに。
  ルナ姉ちゃん登場です!(笑)
  ついでにリナもねv
  昔、リナとシルフィール。
  出会っていることにしてみたり。
  (でもいろいろあって二人ともそのこと忘れてるが・・・・←こらまて)

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 あとがきもどき:
      薫:ただいま窓の外にいるヤモリに両手でぽてぽてしているうちの猫たち。
        うーん、ほのぼのv
        というか窓の外にいるんだから無理ですよぉ?(笑)
        まあこいつらには間違いなくつかまらないだろうけどね。
        いまだに何かを捕まえたことなし。
        うちの猫って・・・(笑)
        えっとリナとルナ。五歳違いにしてみました。
        だってどこにも表記されてないしねぇ。
        ルナねーちゃんとリナの年齢の差・・・(笑)
        リナちゃん、幼いころから苦労(?)してます。はい。
        それでは、次回、あの話を聞く回です。
        ではではv
        でまたまた一気に年代・・・飛ばすかなぁ(こらまてぃ!)


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