黒曜の宝石 ~ディルスお家騒動真っ只中~
長い廊下を歩きしばらくいくと。
すでにもう用意がなされているのか扉の奥からいいにおいが立ち込めてくる。
ぐぅ。
シルフィールのお腹が気持ちよくなっていたりするが。
「あ、わぁぃ!ごはんだ!」
今のシルフィールにはともかくテーブルに並べられている食事にしか目はいっていない。
進められるまま席につき。
「ね、食べてもいいの?いいの?」
ぐぅ。
キュルル……
その声と同時に発せられるシルフィールのお腹の音。
『………』
一瞬その場にいる全員がその音を聞き目を丸くし。
そして。
『く…くくくくくっ。』
『くすくすくす。』
同時にシルフィールをみて笑い始めていたりするすでに席についていたセル達二人。
「とりあえず腹ごしらえしてから説明するから。シルフィールちゃん、食べてもいいよ?」
くすくす笑いつついってくるそんなセルの言葉に。
「そうだね。とりあえず食事をしつつでもいいんじゃない?それに君たちのこと、セルから聞いてはいるけど、きちんとは聞いてないし。」
そういってくるその言葉に。
「そういえば僕もきちんときいてないよね。どうしてシルフィールちゃんとヘルちゃんがここに?」
アレクの言葉にふと今さらながらに思い出したようにそんなことをいっているセルシウス。
「あ、それは私から話しますわ。」
そういいつつシルフィールにと変わり話し始めるヘル。
まあかなりかいつまんでの話なのであるが。
ひとつはシルフィールの父親であるエルクに再婚話がもちあがったこと。
それがシルフィールの面倒をみているルシェールだということ。
以前実はエルクとルシェールは恋人同士であったこと。
それをシルフィールの母親であるエミーリアは知っていたこと。
など。
「…で、シルフィールがエルクに今は会いたくない。っていうから。こうして散歩をかねてちょっと二人で遠出をしているの。」
にこやかにいうヘルの言葉に。
「いや、それは遠出というより思いっきり家出というものでは…」
思わず突っ込みをいれているセル。
まあ当然ではあろうが。
「あら、散歩よ。絶対に。」
「そう、ヘルおねいちゃんのいふとおり、さんぽ!」
そういいつつ口いっぱいそこにあるイチゴをほうばっていっているシルフィール。
そんな無邪気な様子に思わずその場にいたほかの人間たちも思わず笑みがこぼれる。
今この場にいるのは。
この家の次期、主人でもある、ディルス=アレクサンドレッタ=ガイリア。
そして。
シルフィールの親戚でもあるセルシウス=グリーンフィールド=アンボワーズ。
そしてこの家に仕えている数名のメイドたちに。
そしてシルフィールとヘル。
この数名が今この部屋に存在している。
「しっかし、ま、別にいいけど。気がすんだら家にもどるんだよ。」
そういう問題?
などとも思うがまあそれは彼、セルの性格上、あまり細かくはこだわらない。
彼の性格はどこかが飛んでおり、その行動は計算の上になされているのだが、
なかなか回りには理解されないこともしばしば。
それゆえに、ここディルスに行儀見習いとしてグレイは家から出しているのだから。
「でもよりによってこんな時期にねぇ。」
そういいつつ思わず苦笑しているのはアレク。
「多分気がついているだろうけど。今ちょっと面倒なんだよね。
お母様はそれでなくても体が弱いから、心配かけたくないから詳しくは言ってないけど。」
カチャカチャと食事をすませ。
そしてデザートに取り掛かり、食後の飲み物を飲んでいる、そんな中。
ぽつり、ぽつりと今の状況が説明されてゆく。
「数年前にこの国の王。別名英断王。
彼がカタートに侵攻して、そして五千の兵士ともども死亡した。そのうわさというか話はしってるよね?」
そういうアレクの言葉にこくりとうなづくシルフィール。
ちなみにヘルはにこやかに笑ったままでデザートを口に運んでいたりするが。
「ま、そのとき。全員死亡。そういわれてたけど。僕の父。
ガイルス=パロ=ウル=ガイリア。彼だけは無事に戻ってきたんだよね。
でも魔の何かしらの術をうけて元の姿とは見た目をまったく変えて。」
以前は美男子であったその彼は。
戻ってきたときにははっきりいって目も当てられないほどになっていた。
だがそんな彼を、大怪我をし、それでも息があった彼を介抱していたのが、他ならない、アレクの母親であるエルシア。
そして外見とは異なり彼の優しさに触れ、そして二人は結婚。
そして生まれたのが、彼、アレク。
というわけである。
だがしかし、彼が生まれて一年もたたないとき。
王室から使いがきて。
実は変わり果てた姿で戻された、英断王。
それを元に戻す方法がないか、そう相談され。
一人、国王、つまりガイルスにとっては親戚に当たるのであるが。
彼の体を元に戻すべく方法を探しに出かけ。
そして。
何かしらの情報をつかんできたのか、彼が戻ってきたのはそれから一年後。
だがしかし。
出迎えるエルシアとそしてアレク、当時まだ二歳であったのだが。
その目の前で彼は、いきなり襲撃してきた魔により、命を落とした。
エルシアと子供をかばって。
そのときからである。
エルシアがそれでなくても病弱だった彼女が、ほとんど寝たきり状態になってしまったのは。
最後の最後にほんの一瞬。
元の姿に戻り、微笑んでそして消えていったガイルス。
当時まだ彼は幼なかったとはいえその光景はまぶたに焼き付いている。
「で、父は英断王とははっきりいって従兄弟。何しろ父の母親は英断王の父親、彼の妹だしね。
当時といっても英断王は早く結婚していたから、確か皇太子がすでに十。
そんなときにあのカタート侵攻はなされて。で、当然、死亡した彼の後を今の国王が継いだわけだけど。」
そんなこんなではや数年。
だがしかし、いまだに彼の世継ぎはいない。
父が元の姿に戻るまでは。
などといっていまだに后を娶っていないのが現状だからなのであるが。
そして、白羽の矢がたったのは。
何しろ王家、しかもその血筋は直径にとあたる彼、アレク。
何しろ、前々々国王の実の孫。
そしてそれは当然面白くないやからも多々といるわけで。
なぜかここ最近、そのお家騒動がやけに表面化してきているのである。
男の子。
それだけで権力のいい駒というか利用されない。
というので外見がほとんど女の子にしかみえない。
そんな容姿を利用してほとんど外出するときなどは女の子の格好をさせて。
エルシアなどはアレクを守っていたのであるが。
だがここしばらくは。
あからさまに彼に対して刺客などが送られてきている。
「で、世継ぎがまだいない。それで王家の血筋の直径である、アレクにどうやら、白羽の矢がたったみたいで。
それはまあ昔から言われてたんだけど。ここ最近、なぜかアレクに刺客は送られてくるわ。
暗殺者は屋敷に忍び込んでくるわ。あからさまになってきているんだよね。行動が。」
ずずっ。
アレクに続いて、そう説明しつつ出されている紅茶を飲むセルシウス。
「ちなみに僕の調べではどうやら新しく採用された大臣の。その彼が裏で糸を引いている。そこまではわかったんだけど。」
「何しろ証拠がねぇ。それに国王にも心労、かけたくないしね。」
それゆえに、二人で共謀し。
わざと外に出かけては相手の動きをみて。
そして動かぬ証拠をつかもうと、そんな行動をしていたそんな中。
シルフィールたちがやってきたのである。
国王に跡継ぎが生まれたとき、まっさきに命を狙われる危険。
それは国に携わるものであるばわかりきっている。
だからこそ。
自分の身は自分で守る。
父から受け継いだ、王家に伝わっていたというエルメキア・ブレードとともに。
そして、彼は。
母親の性格を受け継ぎ。
ちょっとした趣味の持ち主でもある。
アレクの母親のエルシアは子供のころから病弱だったがためか。
なぜかその体を直すために様々な薬などの研究にと手を出し。
なぜかその過程で、物理的ダメージを与えられる強力な代物。
などといった物騒なものなども数多く発明していたりするのであるが。
たとえば小瓶ひとつに入った液体一つで軽く町が吹き飛ぶ・・・・など。
後はある品物と品物を混ぜ合わせると、大爆発を起こす。
それや手の平サイズで持ち運び自由な爆弾。
などと、いったいどうやったらそんなものが出来上がるのか?
といったような行動など、昔から母親のそばで見ていたがゆえに。
彼もまたその手のことには今ではかなりエキスパートになっていたりする。
そして、それに加えて。
父のガイルスから受け継いだ才能。
それゆえに少し変わり者、などとして王家の者たちからは見られていたりするが。
逆に民衆などの声はぜひに彼を後継者に。
という声は年々高まってきていたりする。
何しろまだ子供であるのに、流行しかけたちょっと厄介な病気を、彼が作った薬で撃退したりしていたりするのであるからして。
その動きは当然といえば当然なのかもしれないが。
「ま、そんな理由で今ちょっと僕、命、狙われているんだよね。これがまた。ははははは。」
「僕はアレクとはどことなく雰囲気似てるから。おとりとなって裏幕、おびき出しているんだけどね。
これがまた面白いまでに相手はひっかかってねぇ。はははは。」
この二人。
アレクとセル。
実は性格上、どことなく似通っている二人ではある。
類は友を呼ぶ。
そんな言葉ばふとヘルの脳裏にと浮かぶが。
「で、こんな状態だけど、ここにいたいんだったらいてもいいよ?どうする?えっと、シルフィールちゃんにヘルちゃん?」
命を狙われている。
そういわれてもビンとくるわけもなく。
何しろシルフィールの周りは愛情に満ちていた。
よくどんなことなのかわからないが。
とにかく家には戻りたくはない。
「私、ここにいる!」
シルフィールの一言で。
ここ、ガイリア家に、新たに居候としてシルフィールとヘルとが住まうことと、今ここに決定してゆくのであった。
「まだわからないのか?」
父の姿を元に戻す方法を探してはや数年。
だが一向にその方法は見出せない。
そんなことをいいつつ。
「ところで?町の噂で何やらアレクの命が狙われている。とか聞いたのだが?真実は知らないか?ネロー?」
最近大臣に起用したばかりのその彼は。
まだそんなに年は言ってないにもかかわらず世界の伝説などに通じており。
それゆえに父を元に戻す役に立つかも。
という理由で採用した、このネロー大臣。
本名、ネクロミド。
「さあ、しかし、国王、町のものの声になど耳を傾ける必要はありません。
それより国王は北の魔の脅威、そしてこの国を守る責任、そして、お父上を元に戻す。
そのような大役があるのですから。周りのことは気にせずに執務に励んでください。」
そういいつつ一礼する。
「うむ。確かにいうとおりであるな。事実は兵士にでも確認させよう。」
「その役目、このネローがいたします。」
「うむ。頼むぞ。」
そんな会話が城の王の間にて繰り広げられていたりする。
その言葉にネローの目が怪しく光ったことには気づかずに。
「御衣。」
再び一礼してその場を立ち去るネロー。
黒い髪を短くそして少しばかり天然バーマが入っており。
そしてその瞳の色はなぜか緑。
かなり顔立ちも整ってはいるものどこか近寄りがたい雰囲気の男性ではある。
そして国王に一礼し、そのまま部屋を出てゆくネローの姿が。
「ふふ。とりあえず冥王様の言われるとおり、すでにほとんどの城のものは私の操り人形。この国さえ落とせば、もう…ふふふ。」
カタートより動けない、魔族。
いや、動けるには動けるが。
やはり主たる魔王が封印されている今の状況ではあきらかに、彼ら、魔の全体的な力も減少しているのが現実。
それゆえに、手っ取り早く人間の世界に再び戦争を起こさせ。
新たな魔王の欠片を宿すものを見つける。
そのためには軍事力などにおいては、まずこのディルス王国がかなり無難。
エルメキア、セイルーン、ゼフィーリア。
そんな大国もほかにはあるが。
ゼフィーリアはなぜか立ち入った魔族がことごとく死亡する。
という昔からのお国柄。
当然それは却下され。
エルメキアはあまり好戦的ではない。
セイルーンなどはあの国を形作っている六紡星が。
あまり実力のない魔の力をそぐ結果となっていたりするのでこれまた却下。
一番、手っ取り早く。
そしてまた乗せやすい国。
それがこの国。
ディルス王国。
そんなことを思いつつ。
「ひとまずは危険なのはあの子供だ。あれさえいなければ。」
王家の中でまだ子供ながら頭の回るあの子供。
ほかのものはただいうがままの中において。
あの子供が一番の脅威であると彼の本能がそう告げている。
だからこそ。
「ふふ。アレクサンドリア太子。悪いですけどわれらの目的のために。死んでもらいますよ。ふふ。」
邪悪な笑みを浮かべつつ。
そのまましろのろうかの闇にと消えてゆくネロー。
ネクロミド。
彼が所属している一派は。冥王サイド。
彼は知るはずもない。
その計画は、ある少女の中に眠っている欠片を目覚めさすための、だたのちょっとしたイベントである。
ということを。
―つまりは彼は主に使い捨ての駒にされている。
・・・・・ということを―
この地での生活はシルフィールにとっては少なからず。
その心において成長を促してゆくには十分過ぎるほど。
何しろ忍び込んできた刺客を問い詰めると。
実の肉親でもある王家のとある一員が彼の暗殺を依頼した。
などと目の前で聞かされては。
普通肉親というものは、子供を大切にするものではないのか?
それが当然と思い込んでいたシルフィールにとってはそれはショッキングな事実。
「ま、ネクロミド大臣の差し金だから。」
そうぱたぱたと命を狙われている。
というのにあっさりしているアレクの強さにも心を打たれ。
そしてまた。
危険だというのに自ら率先してアレクの影武者として行動しているセルシウスにも。
日がたつにつれ、シルフィールはそんな状況を近くで見ることによって。
精神的に成長を果てしてゆく……。
-続くー
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こんにちわ。
セイルーンもお家騒動が多いですけど。
私としては絶対にディルスも多いと思うんですよねぇ(こらまて)
ま、すぐ隣に魔の山、カタートがあるから絶対にいろいろとあるはず。
ついでに魔のちょっかいもかなりかけられているはず。
でないとあっさりとあんなラーシャートのいうがままに、
戦力拡大、といった状況にはならないはず(笑)
ま、何はともあれ、いっきます!(だからまて)
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あとがきもどき:
薫:打ち込んでて判明したこと。
・・・・ハザマと連動して打ち込んでいるせいか。
あ゛あ゛!グレイの名前がグレンになってるところがある!?
気づいたら直してるけど・・・直してないところは変換して読んでください(こらまて)
さてさて、次回で一気に少し時間が飛びますv
まあそれはご愛嬌。てへv
それでは、また、次回でv
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