黒曜の宝石 ~出生の秘密~
ほぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
部屋に響き渡る赤ん坊の泣き声。
「・・・・よくがんばったわね・・・・」
「・・・・エミーリア・・・・」
ベットに横たわる黒髪の女性と。
そしてまた同じくこちらもまた黒髪ではあるが違うのはその髪の長さ。
「よくがんばったな。ルシェール。女の子だ。」
そういいつつ産湯につけてきれいにした今生まれたばかりの赤ん坊を。
そっと横にと寝かす。
「・・・・・私の・・・・」
そっとその子供にと触れる。
「とりあえず、・・・・でもいいの?本当に?エミーリア?」
戸惑いの表情を隠しきれないルシェール。
「当然よ。この私が何のために目くらましとしてあいつと結婚したと思ってるのよ?」
妊娠したために養生するためにここ、エルクの家にとやっかいになっている。
ルシェールはそのお手伝いとして。
表向きの理由はそうなっている。
・・・・が、実は逆。
そのまま駆け落ちしてもよかったのであるが。
だがそれでは・・・・。
宿った命がどのような結末を迎えるのか。
・・・・・過去にあった数件の事例から・・・・わかりきった事実。
「・・・・・馬鹿な言い伝えに縛られて。あなたとエルクの子供を。殺させてなるものですか。ええ。絶対に!」
その黒い瞳に決意が燃える。
サイラーグの伝説のひとつに。
二つの血、まざりしとき、世界は破滅への序曲をかなでん。
という伝説がある。
・・・・そのため、北と東の者たちの婚姻は。
元からサイラーグにすんでいた一族の間では・・・ご法度。
そしてまた・・・・生まれた子供は。
・・・・世界を守るため。という名目のもと・・・これまでいったい、いくつの数え切れない子供が闇へと葬られたことか。
フラグーンの中、隠されていたとある図書室で、その事実をしったエミーリアとルシェール、エルク、そして・・グレイは。
ルシェールの中に宿った命。
北と東の神官長の血を引く新たな命を助けるために。
世間をだます方法を考え抜いて思いついた。
それは。
形だけの結婚。
「それに・・・・私は子供作れない体だしね。」
自分で調べてそれはもうわかっている。
どうやら幼いときに高熱が続いた事が原因で。
どうやら自分が子供ができない体質であるということは。
誰にも話していないが・・・・まあそういうことなのだ。
そういいつつ今生まれた大切な親友の赤ん坊をそっとなでる。
「・・・・この子は私の実子。そういうことにすれば。・・・・誰もこの子の命を狙うものはいなくなる・・・・」
そう。
今まで闇へと葬られた子供たちのように・・・この子をそんな目に合わすわけにはいかない。
生まれたことすら知らされず闇から闇へと殺され。
そのために発狂した女たちは・・・・数知れず。
そんな闇の部分をもっている死霊都市サイラーグ。
いつのころからか、百年以上前から・・・・そのようにいわれているのは。
まさにそんな裏の闇の部分を象徴している言葉なのかもしれない。
「・・・・名前はどうするの?」
「・・・・・エルクともう相談して決めているの・・・」
「それは・・・・・」
今日。
この日。
世間をだましとおして・・・・新たな命がここセイルーンにて。
誕生したのであった。
数年後。
「こら!シルフィールちゃん!」
「きゃぁぁ!」
元気に駆け回る少女が一人。
この東のサイラーグ神官長の所の一人娘。
そのつややかな黒髪が風にとたなびく。
元気に笑い元気に町の中を駆け回る姿は。
この町の人々の間では違う意味で有名になっている。
そして・・・・今日もまた。
・・・・いつものごとくにちょっとしたいたずらを起こし。
大人たちを困らせている・・・・まだ二歳程度の女の子。
彼女の名前をシルフィール=ネルス=ラーダ。
ここ東のサイラーグ、神官長エルクの一人娘であり時期巫女頭であり。
そしてまた時期神官長になるべき少女。
元気よくすくすくと成長してゆくその姿は。
町の人たちにとってもそれはとても好ましいこと。
「あ、ルシェールさんにこれもっていこ!」
町から離れた場所に住んでいる一人の女性。
母親であるエミーリアの友人らしく。
そしてまたどうやら北のサイラーグ出身者であるらしいが。
一人ひっそりと町から離れて暮らしている女性。
幾度か母親と父親と共に物心つく前からであったことがある。
なぜかシルフィールは彼女のところに遊びに行くのが好きだった。
彼女が遊びにいくとルシェールもまたとてもうれしそうに対応してくれる。
父や母が彼女を名前で呼びすてにするのでまだ幼い彼女もまた。
その人物を名前で呼ぶのが当たり前・・・というような感じで名前で呼んでいるのだが。
どちらかというと彼女はシルフィールにとってはお姉さん的な存在。
そしてまたなぜかそばにいたらとても落ち着いた安心した気持ちになる。
そのことがとてもシルフィールは好きだった。
それゆえにあまり町からそんなに離れたところではないにしろ。
人里はなれた一軒や。
そこに毎日のように遊びにいくシルフィール。
お仕事で忙しい彼女の相手をしてくれるのもいつもこのルシェールなのだ。
父は神官長の仕事で。
母は巫女頭の仕事で
いつも忙しく働いている。
まだ幼い彼女の周りには・・・・同じ年頃の子供たちはあまりいないというか、ほとんどいない。
そんな彼女に付き合ってくれる大人の女性。
それでなつかない子供がいるはずもない。
ぱたぱたと幼い足で人里はなれたその人家に向けて今日もまた走って行く、髪を長くした緑の瞳の少女。
小さな子供の足ではそこまではかなり時間がかかる。
それでもほとんど毎日のように通いつめるそんな彼女を。
いつも手作りのお菓子を作り出迎えてくれるその女性、ルシェールが。
幼いシルフィールはとても好きなのである。
「ルシェールおねーちゃぁぁぁん!きたよぉ!」
元気よく声をあげて。
今日もまたルシェールの家を訪れるシルフィール。
「いらっしゃい。シルフィールちゃん。」
いつも暖かな目で自分を見てくれるこの瞳は。
父と母と同じもの。
だからここはなぜか居心地がいい。
そんなことをおもいつつ。
「ねね!ルシェールおねーちゃん!今日もまたあそこにつれてって!」
くす。
小さなその手が服のすそをつかんでくる。
「その前にシルフィールちゃん?汗かいたでしょ?水浴びしてきなさいな?」
そんなシルフィールをやさしくみつめやさしく問いかけるルシェールのその言葉に。
「はぁぁぁぁぃ!」
いつシルフィールがきてもいいように。
水浴びなどができる体制がこの家では整っている。
この家に住んでいるのはこのルシェールただ一人。
それがどうしてなのかはシルフィールは知らないが。
ぱたぱたとかけてゆくシルフィールをみつつ。
「・・・・・健やかに元気に育って・・・シルフィール・・・・」
それが願い。
常に一緒に暮らせない。
それはかなり悲しいことかもしれないが。
だが・・・・・知られるわけにはいかない。
もし知られれば・・・・過去の恒例どおりに・・・シルフィールが闇から闇へと葬られ・・・すなわち殺されるのは・・・・明白。
これは彼女と・・・そして表向きには実母と実父とされているエミーリアとエルク。
そして・・・・シルフィールを取り上げたグレイしか知らない事実。
誰も知らない。
このシルフィールが・・・・実は北と東の神官長の家計の血を引いている。
母をルシェールとし父をエルクとする・・・ということは。
命を守るためのうそ。
くだらない伝説にのっとってこの命を殺させないがための。
だが・・・そのことは。
まだ幼いシルフィールも・・・そして町の誰もが知らない事実。
「あ、ルシェールおねーさぁん!またこれもらってもいいの!?」
水浴びにいくとそこにはいつものように新しい服がすでに用意されており。
目をきらきらさせているシルフィール。
「ええ。きっとシルフィールちゃんに似合うとおもってね。」
「ありがとー!」
シルフィールは父と母の友人というのしかしらない。
そして・・・・彼女がよもや実の母だということすら。
だがしかし、血のつながりとは深いもので。
ほとんど毎日のようにこの家にと入り浸っているシルフィール。
ルシェールはもう子供が産めない体というのは。
以前ちょっと聞いたことがある。
そしてまた。
昔生んだ子供が生まれてすぐに死んだ・・・ということと。
そしてその子が生きていればシルフィールと同じ年だということを、シルフィールは聞いている。
・・・・・事実は死んでなどおらず。
その子供こそシルフィールなのだが。
だが・・・・その事実はシルフィールの命を守るために。
絶対に一生永遠に隠し通さなければならない事実だということを。
エルク、ルシェール、エミリーリア、グレイ。
この四名はよくわかっている。
いつものように新しい手作りの服をもらいご機嫌なシルフィールをみつつ。
微笑つつそんなシルフィールの姿をみているルシェール。
実の母だと知られなくてもいい。
こうしてすこやかに育ってくれているのをみれるのなら。
本音を言えば一緒に住みたいがそれはかなわぬ願い。
どこから本当のことが漏れ出るかわからない。
・・・・・そうなれば。
・・・・これまでも。
隠れて子供をなした家族が・・・・北と東。
・・・・・夜盗などに襲われ・・・子供が惨殺された事柄は。
・・・・・表立ってはいわれないものの・・・・必ず。
東と北の住人の間に子供がなされた場合には。
・・・・その家族は不幸をたどる。
というのは・・・もはやこの町、サイラーグでは・・・・暗黙の事実。
「わぁぁぁぁぃ!ルシェールおねーちゃん、ありがとー!」
いつもシルフィールに似合う服をつくってくれるルシェールに。
その小さな体を飛びつかせてゆくシルフィールの姿が。
ほほえましくもここルシェールの家にて見受けられてゆく。
「さ、着替えたらまた探検しよっか?シルフィールちゃん?」
「うん!」
子供の自分に文句を言わずに遅くまで付き合ってくれるこの女性が。
シルフィールは子供心ながら好きなのである。
子供というものはやさしくしてくれる人や遊んでくれる人になつくもの。
そう解釈しているがゆえに町の人たちも・・・・
・・・・よもや、シルフィールが実はルシェールの娘だとは・・・誰一人として疑っては・・・いない。
平和に健やかに。
ずっとこの平和は続いてゆく・・・・誰もがそう。
秘密を抱えた四人ですら。
そう信じてやまなかった。
・・・・・が。
運命は・・・・誰に味方をしているものか。
・・・・それは誰にも想像すらしなかった出来事が。
二年後に彼らに襲い掛かろうとしているのであった・・・・。
-続くー
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まえがき:
ふふふ。
シルフィール出生の秘密に少しばかり触れてます。
・・・・・で、幼いシルフィールのついに登場です!
・・・・さて・・・・本気で何話になるのかなぁ?
えっと・・・エミーリアが病気で死亡して・・・でルシェールとエルクの再婚。
反発したシルフィールの家出・・・・でガウリイと出会うサイラーグの事件・・・。
・・・・・ま、おいおいとがんばりますね。多分・・(笑)
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あとがきもどき:
薫:・・・・スレイヤーズっていろいろと影響あたえてるんですねぇ。
いや、今月号10月号のドラマガでひしひしと実感・・・・。
まあ・・・確かにもう十五年もたっていれば・・・・影響うけたひと。
かなりいるんでしょうねぇ。(しみじみと)
しかし、今回のあの幽霊の話は結構まとも・・・かなぁ?
つーかやっぱり本当にいたんじゃ?(笑)
しかし、ナーガが怪談話に弱いというのが判明した今回の話。
まあ何はともあれ。
・・・・なぜリナをエル様に変換して考えるのって・・・。
面白いんでしょうか?(こらこらこら)
ちなみにあのバージョン。
仲良し四人組プラスゼロスつき。
人間リナ&エル様リナ。
両方思いつきましたが?続編・・・(まてまてまて)
・・・・・さてどうするか(だからまてってば)
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