黒曜の宝石 ~運命~
ぱたぱたぱた。
元気にかけてくる女性が一人。
その長い黒いストレートの髪が風にとなびく。
「あ、ルシェール!こっち!こっち!」
そんな少女に声をかけているのはこちらもまたそのストレートの髪がきれいな一人の少女。
「あ、ルシェール、こっちだよ!」
そういいつつこちらもまた同じく黒い髪のこちらは少年。
町を見下ろせる丘の上。
ここが彼らがいつも遊んでいる場所である。
「ゴメン、ゴメン、何か巫女の仕事が入って。」
などといいつつ丘にと走ってきてそんなことをいっていたりするのは。
その艶やかな長いストレートの髪がとても似合っている一人の少女。
「そういえば今日、ルシェールのお姉さん、セイルーンにいってるんだっけ?」
そういうもう一人の少女のその言葉に。
「うん、だからって・・・どうして妹の私が巫女頭代理をしないといけないのかしら・・・」
などとぶつぶつ腕を組んで文句を言っているルシェールと呼ばれたその少女。
「そういえばエルクもじゃない?」
そういう少女のその言葉に。
「でも僕は兄がしっかりしているから。まあ神官長の家計は滞りないし。」
そういっているエルクと呼ばれた少年。
「なぜか昔から北と東の神官長の家系、絶対に直系のものが継ぐこと。という面倒くさい規則があるからね。」
ふとそれを思い出ししみじみいう少女のその言葉に。
「エミーリアはその点、家の規則みたいなのないから楽といえば楽よね。」
そういうその言葉に。
「そうでもないわよ?うちの家系は・・・」
そういいかけてため息ひとつ。
「そういえば、エミーリアの家系はその魔力が高いのを考慮に入れられて。
その時々で必ず北、もしくは東、どちらかの神官長の家系にはいらないといけない。
という何とも理不尽な決まりがあったわね。」
ふとそのことを思い出し三人で顔を見合わせ。
『はぁぁぁぁぁ・・・・・』
顔を見合わせ三人同時にため息を盛大にと吐き出してゆく。
別にこのサイラーグにある規則がどうの。
というわけではない。
ないが将来を勝手に大人たちや町にと決められるのは面白くない。
「私・・・いつかこの町・・・・出たいな。」
そういうルシェールのその言葉に。」
「それをいうなら僕も。そのうちにきちんとしたところに就職して。ルシェールを迎えにいくよ。」
「・・・・エルクったら・・・。」
その言葉に少し頬を染めているルシェール。
この三人。
エルク、ルシェール、そしてエミーリア。
彼らはいわゆる幼馴染同士。
そしてまた、女の子二人、男の子一人、そういった友達同士ではあるものの。
ルシェールとエルクは親などにはいえないが一応は両思い同士でもあり。
内緒の恋人同士でもある。
それは・・・・彼女たちの家が起因する。
なぜかここ、サイラーグ。
この地の北と東の神官長の家系の一族は絶対に互いの神官長の家系のものと、結ばれてはならない。
・・という町ぐるみの暗黙のおきてが存在しているがゆえに。
彼らの関係は町の人にもそして両親にもすべてに内緒にされなければいけないこと。
本来ならば一緒に遊ぶのすらもあまり望ましくない・・とされるのであるが。
そこはそれ。
もう一人の人物、エミーリアがそこにいることにより。
どうにか周りに気づかれることなくそしてまた怪しまれることなく今まで来ているこの状況。
「とりあえず今いろいろと勉強してるんだ。
うまくいったらこの町から出て新たな職につけそうなんだ。そうしたら一緒に町をでようね?ルシェール?」
そういってにっこりと微笑むエルクに。
「・・エルク・・・・」
「ルシェール・・・・」
そんな会話をしつつしばし見詰め合っているこの二人。
「あ゛ー、はいはい。お二人さん、こんなところで見詰め合ってたら。
人目があるわよ?いつもの秘密基地にいくわよ?まったくあいかわらず仲がいいわよね。二人とも。」
そんな二人をみてやさしく微笑んでいるエミーリア。
彼女にとってはルシェールは妹のようなもの。
そしてまたエルクはどちらかというと兄のようなもの。
そんな二人の仲を心から応援しているのもまた・・・今の段階では彼女一人だけ。
という悲しい現実があるのだが。
「ほら、とにかく人に気づかれる前に、いきましょ。」
ちなみにルシェールの家族は彼女はエミーリアと遊びにいっている。
という話になっており。
エルクはというとこちらは別に兄がとてもしつかりしているのであまり家族に干渉されていない。
それゆえに彼がどこにいこうとあまり両親は気にしてない・・・というのが実情なのだが。
そんな会話をしつつ。
彼らの、いつもの集合場所。
サイラーグの町が見下ろせるちょっとした小高い丘の上。
そこから瘴気の森・・とも呼ばれている神聖樹フラグーンの樹の幹にと進んでゆく三人の姿。
これは彼女たちが子供のころからの隠れ家。
町の人々はこの樹を神聖扱いしてほとんどというかめったに近づいてこない。
子供にとっては絶好の隠れ家でありそしてまた秘密基地でもある。
しかも、この樹・・・樹とはいうもののかなりの大きさを誇り。
そしてまたその樹の幹には空洞ができ・・・ほとんど活動には支障がない。
それゆえにこの中で生活できるように一式こつこつといろいろと持ち込んでは、生活できるようにと一部改造しているこの三人。
そんな会話をしつつ彼ら三人はフラグーンの大木の中にといつものようにと入ってゆく。
それはいつもと変わり栄えのしない日常のこと。
すでにもう日にちとかの決行も決め。
この町を出る覚悟も決まりそして互いに駆け落ちという形で。
一緒になろう・・・と誓ったのは二ヶ月か三ヶ月前のこと。
周りに気づかれないようにその処理もすべて整った。
あとはもう時期をみて出発するだけ。
ルシェールとエルク。
二人は駆け落ちし、そして結婚しよう。
そう互いに約束を交わし、後はもう町を出るだけ・・・そのはず・・・であった。
そんな出発を三日後に控えたある日のこと。
それは・・・唐突に運命は・・・・彼らに皮肉をもたらす結果と成り果てる。
それは彼女たちの・・・三人の運命を変える出来事が。
今まさにその日に起こったのである。
ざわざわざわ。
「?何かいつもと様子が違うよね?」
いつもは静かな森が・・・いつにもまして騒がしい。
いつものように父親の変わりに聖王国セイルーンにと出向いていた一人の神官。
時期東のサイラーグの神官長としてその務めを果たすべく。
それは確かにいつもと変わりない様子のはずなのに。
そしてまた通いなれた道であるはずなのに。
どこかがおかしい。
どこがおかしい・・・というのはわからないが。
ともかく何となく・・・彼の勘がそう告げている。
「・・・・・何か危険な予感がします。遠回りをして戻りましょう。」
そう彼が言うのと同時に。
ざわっ。
森が・・・一瞬にて雰囲気そのものが凍り付いてゆく。
『デーモンだぁぁぁぁぁあ!!!!!!』
旅に同行していた仲間たちの悲鳴と。
そして。
『るぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
耳にとはっきりと聞こえてくる異形のその声は。
「な゛!?ブラス・・・デーモン!?それに・・・あれ・・・は!?」
思わずその声の方をみればなぜか手が七本、足が四本・・・・
そして、その二つの目が上下に分かれ、そして・・頭にぱっくりと開かれている赤い口らしきもの。
そんなものは知識にはないが、だがしかし。
危険だ・・・と本能が継げている。
「とにかく!逃げるんだ!」
そういうアークのその言葉に。
そこから逃げようとする同行していた仲間たち。
だが次の瞬間には。
彼らは逃げる最中に・・・光にと貫かれてゆく。
「きゃははははは!人間の逃げ惑う姿って・・・面白いな!きゃはははは!」
その完全に異形の存在がそんな耳障りな声を立てて笑っていたりする。
「くっ!俺はこんなところで!」
それが何なのか・・・・ようやく理解する。
何しろ・・・・魔術が通用しないのである。
物質的な魔術が通用しない存在など・・・普通はありえない。
そう・・・普通ならば。
「き・・・・貴様は・・・・魔・・・・魔族か!?」
「きゃははははは!さあ、じっくりとたのしませてくれよな!」
その言葉と同時に。
あたりに・・・・黒いなにともいえない無数の針らしきものがとびちってゆく。
ばたばたばたばた!
「?お父様?どうかしたのですか?」
すでにもう家をでる用意はできている。
後は機会をまつのみ。
そんな中。
いきなり町中が騒がしくなる。
「あ、リュシェール、大変だ。東のサイラーグの時期神官長である、アークさんが魔に殺された!」
「・・・・・・・・・・・・え?」
その言葉に一瞬言葉を失う。
「すでにもう即位式も済んでいたというのに・・・ああ!安定を図るために葬儀より前に新たな即位式を行うこととなった。」
即位式・・・・って・・・・。
その言葉が意味するものは。
・・・・・・・・・・・・エルク!
どさり。
「り・・・・リュシェール!?」
その言葉をきき、リュシェールは完全にと意識を失った。
・・・・・私・・・・あなたに・・・・いってないことが・・・・・エルク・・・・・。
倒れる直前に彼女の脳裏によぎったのは・・・。
「リュシェールさんは私が見ましょう。それよりはやくいってください。」
大慌てでやってきているのは聖王国セイルーンよりやってきているグレイ。
北と東、それぞれのここサイラーグの町とはかかわりが深いがために、報告に彼はやってきていたのである。
「すまん、頼む!」
それだけいって長女をつれてあわてて東の町にと繰り出してゆく北のサイラーグ神官長。
寝台に彼女を横たえる。
「・・・・・ん!?こ・・・・これは!?」
そして診察した彼女から、彼・・エルクは驚愕の事実を知らされることとなる。
「そんな!」
「・・・・これは命令だ。エルク。」
そんな・・・・リュシェール!
兄の死。
それは次男であるエルクにとんでもない結果をもたらした。
それまでは自由にさせていた彼にすべてのものがのしかかり。
しかも兄の代わりに神官長を引き継げ。
そういうのである。
二日後にはリュシェールと駆け落ちの手はずはすでに整っていた・・・というのにもかかわらず。
それはいきなりのこと。
「いいか?エルク?この地に神官長がいないとなると。安定が乱れる。この町だけでなく世界までもが滅びかねん。」
何をそんなまだたわごとを・・・・。
昔から伝わっている伝説。
東と北。
二つの神官長の家系が途絶えそれぞれに頂点に立つものがいなくなったとき、この地は滅び世界に混沌を撒き散らさん。
そのような伝説が古よりここサイラーグの地にはある。
だが若い世代はそれは単なる昔の人のたわごと・・・と思っている。
事実たかが二つの家柄がなくなっただけで世界が滅ぶ・・・など、ありえないこと。
「貴様が何といおうと、すぐに即位式は行う!すでにもうスターティス家にはそのように伝えている。」
その言葉に驚愕し。
「ま・・・・まさか!」
「そう、神官長の即位式とともにスターティス家のものとお前の婚儀を発表する。」
「!!!父さん!」
エルクの抗議もむなしく。
兄が死亡したことにより・・・・彼はいやおうなしに神官長の位を受け継ぐことと成り果てたのである。
「・・・・・・え?」
エルクとの縁談。
それは断れない・・・ということ。
「そ・・・・そんな!?」
どうして自分が?
自分はエルクは兄弟のように思っている・・・それに。
「エミーリア、これも町を・・・いや、世界を守るためです。」
母親の言葉にエミーリアはそのまま勢いよく家を飛び出した。
「リュシェール!」
彼女が向かった先はリュシェールの家。
「あ、エミーリアちゃん!こっちに!」
その声をききつけて家の中からグレイがでてくる。
「・・・・・・・・・え?・・・・・にん・・・・・し・・・・ん?」
ベットに横たわるリュシェール。
「ああ。間違いない。一ヶ月に入ったところ・・・というところか?・・・・やっぱり・・・・相手は・・・・」
「・・・・そ・・・・ん・・・・な・・・・」
思わずその場にぺたんと座り込む。
エルクはすでに問答無用で新たな東の神官長にと据えられ。
そしてまたその伴侶に勝手に彼女との婚儀までもが決められた。
「・・・・・おじさん。私・・・考えがあるんですけど・・・」
「・・・・・エミーリアちゃん?」
グレイ、エミリーア、そして・・・・ルシェール。
グレイを解し、その計画は・・・・彼にと伝えられ。
計画は・・・実行されることとなる・・・・・。
-続くー
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まえがき:
・・・・・・あり?
・・・・確か二人の名前・・・考えてたはずなんだが・・・。
・・・・度忘れしてしまった・・・なので変わる可能性がでてきました(おい!)
あ、ラッキー。人物設定に名前のせてた(安心、安心・・←こらこら・・・)
あ、ところで。
ただいまイベントでとあるPRGやってます。
やってますが・・・結構これが大変なんですよね・・・しみじみと(やってからわかった)
でものんびりと進めるつもりですので長い目でみてやってくださいな(こらこら)
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あとがきもどき:
薫:はいv回想シーンは終わりです。
次回からシルフィール登場・・・・かな?(多分)
ちなみに、ルシェールの子供の父親。
いわずともなくエルクです。
その事実を知っているのは両親である二人とそしてエミリーリアとグレイさん。
・・・・このことが将来ある出来事を引き起こして生きます。
ではでは。
2003年8月17日某日
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