ミッションズ・オブ・リング   ~モンドールの支配者?~





「ふっふっふっ。もうこれでオレの役目は終わりだよな?」
いいつつ剣に普通ならばかなりの血糊が付着しているはずなのに。
まったく返り血すら浴びてないその青年。
そんな彼の姿に彼のことをあまりというかほとんど知らないほかの兵士や傭兵などは。
しばし、そんな彼に怯えつつも、その場にとどまり震えていたりするこの現状。
「…ええ、そうですね。お疲れさまでした。ガウリイさん。あ、これ、いつもの直通便ですv」
にっこり笑い、とある代物をそんな金色の髪の男性-ガウリイにと手渡しているオルファー。
「サンキュー!オルファーさん!よっしゃぁぁぁぁ!リナ、今いくからなぁぁあ!」
いいつつ、その手渡されたそれをぎゅっと力強く握り締め、そのまま上空にと放り投げているガウリイ。
それは、ゼフィーリアでも特殊な魔法道具(マジック・アイテム)。
その製法を知っているのは代々の女王と、そして赤の竜神の騎士のみ。
実際のところは、赤の竜神の騎士(スィーフィード・ナイト)が持っている、
赤の竜神(フレアドラゴン)スィーフィードの記憶を元に作り出されているこの道具。
見た目はちょっとした球体のような、不思議な色彩を放つ小さな水晶玉。
それを強く握り締め、行きたい場所、もしくは特定の人などを思い浮かべると。
そこに瞬時に移動できる、という魔法道具(マジック・アイテム)。
普通はゼフィーリアの王室にて管理されているがゆえに。
一般人がその品物の存在を知ることなどははっきりいって皆無。
ガウリイが素直にリナと離れて別の仕事をしている理由のひとつに。
この品物の存在があるのである。
つまりは。
依頼された仕事をきちんとこなしたら、すぐにリナの元にいける、という理由があってこそ。
「リナぁぁぁぁぁ!」
バシュン。
そのままそれを投げると同時に。
ガウリイの体が光の玉のようなものにと包まれて。
その場から上空にと飛び去ってゆく。
そんな光景をみつつ。
「…な、何かものすごいギャップがないか?」
先ほどまでの、信じられないほどの剣技。
それだけをみれば、かなり腕の立つ剣士、としか見えないのに。
なぜか女性の名前を叫びつつ、どこかに飛んでゆくそんなガウリイを目の当たりにすれば。
そんなつぶやきが彼を知らない者たちからもれるのもまた当然、といえば当然のこと。
「うーん、やっぱり、ガウリイさんを使ったらお仕事早く済みますから楽ですねー。
  さ、皆さん。後始末をしてから、私たちも戻りますよー。」
にこやかに、いまだに累々と草原には人が横たわっていたりするのだが。
それらを一箇所にと集め、そのまま、彼らが乗ってきたであろう船にと積み込み。
それをとある術をかけて、彼らを元いた場所にと送り返しているオルファー達。
「はい。オルファー様!」
ガウリイがいなくなったその直後。
そんな会話が、ゼフィーリア軍営の中で見受けられてゆく。

ゼフィーリアに侵略しようとしたものたちの末路は…説明するまでもないその現状。
一度、この地を侵攻しようと出向いてきた国々などは、
二度とこの地には近寄らなくなる、という現実もまた、そこにはあったりするのだが。
だがそれは、彼らにとってはどうでもいいこと。

ゼフィーリア。
それはあらゆる意味で最強の人々の集まりでもある……






「う~ん、もう少しね~。」
とりあえず、さっきのは見なかったことにして。
などとどこか少しばかり現実逃避に走っているリナ。
「そうじゃの。じゃが、油断は禁物じゃぞ。ビンクのリナよ。」
いいつつ、あたりを見回してそんなことをいっているマッケラン。
ま、まあ、あれは見なかったことにするとして…だ。
そんなことを思いつつ。
目の前にある山間の合間にある短い道をみつつ。
「しかし、こんな場所でもし敵でも襲ってきたら厄介じゃのー。」
視線を落とせば、その下すらも見えないまでの深い谷底。
少しばかり谷底から、蒸気が上ってきているのは。
この谷底には多少なりともマグマが噴出し、それと同時に地下水、というか自然の温泉が湧き出ている証拠。
「…だから、そのピンクはやめて…」
もはや、いっても無駄のような気もしなくもないけど。
それでも、やっぱりその呼び方ははっきりいって好きではない。
まあ、そんな呼び方されるのが好き、という女の子や女性がいたらそれはそれで変わっているとは思うが。
そんな会話をしている最中。
ドグワァァァン!!!!!
「って、そういうことをいうからお約束に襲撃者がきたじゃないのよぉぉぉ~!」
マッケランの言葉にリナの叫びがこだまする。
今までの経験上。
こういった、かなり地の理などが悪いときに、敵とかの襲撃があったら困る。
などといった会話をしているときにと限って。
必ず、といっていいほどに、お約束なまでに襲撃があるのは。
それはある意味常識的なまでの理とリナの中では成り立っている。
…事実、そのとおりに、周りは木々ひとつもない、岩肌とむき出しの地面。
あるのは、切り立った断崖絶壁。
崖と崖、というか、山と山との間をつないでいる道は、細いひとつの岩の道のみ。
リナの言葉と同時。
ドグワァン!
さらに響き渡る爆発の音。
それとともに、目の前の崖の下から、何か近づいてくる気配がひとつ。
「先手必勝!フリーズ・ブリッド!」
近づいてくる気配に向けて、不意打ちに呪文を放っているリナ。
ここで、火の属性の魔法を使うのは、あまり賢い選択とはいえない。
何しろ、いったいどんなキッカケで、地下に存在するマグマが活性化するかがわからない。
― もっとも、人間が駆使できる程度の火力で、自然界のマグマをどうにかする、というのもかなり無理があるのであるが。
だがしかし。
バキィン!
澄み切った音とともに、その攻撃がかき消される音。
それと同時に、リナとマッケランの目の前に突如として出現する二つの影。
といっても、ひとつは巨大な見た目どうみても、『化け物』としか表現できないような。
よく野にと野生化している野良デーモン、それの巨大化バージョン。
といったところであろうか。
そこにいるのは、右手に鞭らしきもの、そして左手に長剣をそれぞれ両手に備え。
なぜか緑色の肌に覆われ、手足に灰色の毛が覆われている生物がひとつと。
そして、そんな緑色の肌と対照的に、真っ白いとがった歯は異様に口のみを引き立てていたりする。
羊の角のようなどこか少しねじりを交えている左右の二つの角。
そして、頭の家にはどこにでもあるようなロッドを持った真っ白い服に包まれた男性が一人。
「おお!!あれは!悪鬼バルログ!」
その生物の姿をみて、叫んでいるマッケラン。
そして。
「ふははははは!待っていたぞ!指輪の所持者よ!
  われこそは「モンドール」の支配者「白のクリストファー」!!!!お前たちの命運ももはや…!」
などといいつつ、丁寧にわざわざと説明を開始しているそんな白い人物であるが。
もっとも、髪も、そしてマッケランと同じく伸ばしている白いひげも、はっきりいって似合ってない。
「出たわね!黒幕!というわけで!振動弾(ダム・プ゛ラス)!!!!!」
悪人のお約束、自己紹介をだらだらと相手が述べている間に。
そんな彼に向かって呪文を放っているリナ。
「もはや、これま…でごわっ!」
ドゴン!!!!
もはや、これまで、観念するがよい。
そういいかけたそんな白い人物にとリナの放った呪文が正面から直撃する。
悪人のお約束、丁寧なまでの説明、を言い終える間もなく。
あっさりと緑色の生物…彼らが悪鬼バルログ、と呼んだ生物の上から、ものの見事に呪文によって弾き飛ばされ。
そのまま、がけ下にと落ちていっているその全身白尽くめの男性。
「…むぅ。身もふたもないのぉ。」
それをみて、それでものんびりとそんなことをいっているマッケラン。
「ふん。術者を即効で倒せば召喚獣なんて恐るるに足らないわよ!」
『モンドールの支配者』と名乗ったその人物ががけ下に落ちてゆくのをみつつ。
いともあっさりとそんなことをいっているリナ。
まあ、確かにそのとおりではあるのだが。
よっしゃ。このまま、次はあの召喚獣のバルログを!
そう思いつつ次なる呪文を唱え始めるリナの体に。
次の瞬間。
ビシッ!
「えっ!?」
一瞬のうちにとリナの体は紅い鞭にと絡めとられてゆく。
そのまま、その鞭にとつかまれ、上空に持ち上げられるリナ。
「アチチチっ!」
鞭から伝わるのは炎の熱。
とっさに冷気の術を唱え、熱の干渉は抑えているにもかかわらず。
直接鞭から体に伝わってくる炎の熱は。
さすがのリナとて、熱く感じてもしかたのないこと。
「ふはは!ひっかかったな!」
そんな鞭を持っているのは、緑色の肌をしているその生物。
リナたちが、『悪鬼バルログ』と呼んでいたその召喚獣。
リナを捕らえたことに歓喜し、笑みというか笑い声をあたりにと響きわたらせつつ。
「ふははは!貴様が倒したのは影武者よ!儂こそ本物のクリストファーだ!」
などといいつつ、今まで鞭で絡めていたリナの体をその手にとつかみゆく。
「な、何ぃぃぃぃ!?」
つーか、こいつの手、どこさわってんのよぉぉぉぉお!!!?
こういった状況…つまり敵に捕まっている状況、というのに、どこか違う点で怒っているリナ。
さすが、というよりほかにはないのかもしれないが。
「ふはははは!儂は脆弱なる人の器を捨てて、自らを合成獣(キメラ)に改造したのだぁぁ!」
ふははは!
勝った!あの!リナ=インバースに!
などと勝利の笑みに浸っているクリストファー。
つまりは、彼は強くなるために召喚した悪鬼バブログと自らを合成し。
人の意識と知能、そしてバブログの力を手にしたのである。
あるが…彼はその合成によってできた欠点に気づいてないのもまた事実。
「って、でぇぇ!?しまったぁ!?つーか、こいつも人間やめてる口かぁぁ!
  つうか、このスケベ!どこさわってんのよ!はなせぇぇぇぇ!」
リナの小柄な体はすっぽりとクリストファーの手の平の中に納まっていたりする。
かろうじて手の平の中から逃れているのは足とそして顔のみ。
リナのそんな言葉をききつつ。
よっぽどうれしいのであろう、その肉体にと存在するお尻にある尻尾が。
まるで犬のようにパタパタと振り千切れんばかりに振られていることに。
クリストファーと名乗った彼はまったく気づいてはいない。
「うぉぉぉ!ピンクのリナよ!おぬしの尊い犠牲は忘れぬぞぉぉぉぉ!」
いいつつ、涙を流しつつ、といっても嘘なき、というのがばればれであるが。
何しろ直前にその両目につばをつけているがゆえに。
そんなことを叫びつつ。
そのまま。
ダンっ!
その手にもった杖を地面にとたたきつけているマッケラン。
そして。
「礫波動波(ヴィーガスガイア)!!」
ゴゴゴゴォン!
マッケランが杖を突きたてたその場所より。
そこを中心にと巻き起こる、強い波動。
この術は、ある一定の範囲に強い衝撃を与え、強いていうなれば、範囲限定のちょっとした強い地震。
そんなものを起こすことのできる術。
精霊魔術の部類に入り、その属性は『地』。
マッケランの言葉と同時。
リナが捕まっている『クリストファー』が今その上にと乗っている、細いひとつの岩の道。
それにと振動が伝わり、大きな音を立て、その足元が崩れてゆく。
「じじぃぃぃぃ!そーくるかぁぁぁぁぁ!!!」
リナがその意図に気づき、マッケランに対して抗議の声を上げているが。
ともあれ、リナもよくこの手のことは行うこと。
というか、ゼフィーリア出身のものは、こういったことは日常的に行うのもまた然り。
「でぇぇぇぇぃ!させるかぁぁぁ!死なばモロトモ!破砕鞭(バルス・ロッド)!!!」
足元が崩れ、その拍子にリナをつかんでいる手の力を緩めたクリストファー。
その期を逃さずすかさず手の中より手だけでも逃れ、そして術を唱え、
そのまま崖の上にいるマッケランの足を魔力の鞭で絡めとるリナ。
ビシッ!
逃れようと一応はもがくものの。
それでも、当然、呪文からは逃れられず、そのまま足を絡めとられ。
「ぬぅぅぅ!お、往生際の悪いぃぃい!」
いいつつ、リナと同じくそのままリナはクリストファーに捕まったまま。
マッケランはリナの魔力の鞭で足を絡み取られたまま。
そのまま、三人同時にがけ下にと転がり落ちてゆくそんな彼らの姿。



同時刻。
…ママたち、何やってるんだろ?
そんな光景をゼフィーリアにて視つつ、そんなことを思っているレナの姿が。
店の後片付けをしている光景の中見受けられていたりするのだが。
そんな光景がそこにひとつ……




「お、往生際の悪い!」
いいつつも、こちらもこちらで。
必死に壁をしっかりとつかみつつ、そんなことをいっているマッケランに。
「やかましいわ!あんたが先にやってきたんでしょうが!」
ガラガラガラ。
そんな会話を繰り出しつつも、
ちょっとした大きさの岩とともにどんどんがけ下にと落ちてゆくリナとマッケラン、そしてクリストファーの姿。
「見苦しい、見苦しいぞ、お前らぁぁぁ!」
そんな二人をみてそんなことを叫んでいるクリストファーであるが。
「「悪の黒幕に言われたくないわぁぁぁぁあ!」」
そんな彼の言葉にまったく異口同音偽りもなく同じ言葉をいっているリナとマッケラン。
ある意味、はっきりいって、似たもの同士、としかいいようがない。



ズガドガシャァン!!!!!


そんな会話をしつつも。
やがて三人はがけ下にとそのまま岩とともに崩れ落ちてゆく。



「くっ。」
ガラガラガラ。
地面に達する瞬間。
どうにかクリストファーの腕より逃れ。
それでも、多少は落下した衝撃に不満の声をあげつつも周りの岩を押しのけて、立ち上がりつつ呻くリナに。
「…も、もう逃げられんぞ…指輪を…渡せ!」
ガラガラガラ。
こちらも同じく、体半分、岩に埋もれつつも、それでもいまだにあきらめていないクリストファー。
ガラリ。
そんな彼の言葉とまったく同時。
リナとクリストファーの間の地面が盛り上がり。
そこから出てくる一つの灰色の影。
「…ふむ。決着をつけるときがきたようじゃな…」
などと格好をつけつつ、岩の中から這い出るマッケラン。
「ぬぅ!?」
しばし、そんなマッケランとクリストファーのにらみ合いがその場にて見受けられ。
そんな彼らの周りでは、周りに滾るマグマの熱と、
それと地下水がマグマの熱で熱せられ、温泉というか熱湯となっているそんな水蒸気の湯気が彼らの周りにと満ち溢れ。



「…まいりました。指輪を私ますから、命ばかりはお助けを。」
「うむ。」


ゴゲシャ!!!!!!


素直というか、そのまま、ひざをついて、指輪をクリストファーに渡しているマッケラン。
それをみて、思わずこけているリナ。


「な、何を考えとるんじゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!?」


リナの叫びが、あたりにと響き渡ってゆく……



                             -続くー

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まえがき:

さてさて、このたび。ほとんど漫画のままv(こらこら
そろそろ、ガウリイ&レナちゃん。でてきますので、あしからずv(こらまてや!
この後は完全オリジナルだなー。
だって、漫画このちょっと先までだけだもん(だからまて!
何はともあれ、いっきます!

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あとがきもどき:

薫:・・・・・・・・・いいのか?それで?マッケラン?と、あのシーンみたとき、思わず私もリナと同じ意見。
  まあ、その後のギャグが何ともvあれは、どちらかといえば、スペシャルのノリですなー。あははははv
  しっかし、はぁぁゃく、発売にならないかなv青版の次の赤版v楽しみにしてるんですよー。うふふふふv
  まあ、これの原作?何?という人は。ドラゴン・オールスターの青版(書籍)を購入しましょぅ。
  短いですがスレイヤーズ、乗ってますv
  まあ、今回も意味のない文章でしたが。何はともあれ、それではまた次回にてv

    2004年2月21日某日

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